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POCKET MONSTER RUBY



第40話 『災い転じて、福となる?』




『某日 時刻13:00 ヒワマキシティ・ポケモンセンター』


ハルカ 「これで回復も完了…後は次の街に向かうだけね」

私は、激戦を終えたポケモンたちを、すぐに預けて回復してもらった。
さすがに今回のジム戦は色んな意味で大変だった。
私の方も休みたいのが本音だけど、そうも言っていられない。
私はポケモンセンターを出て、ツリーハウスに登るためのハシゴの前に立つ。

ハルカ 「移動するのに、いちいちここを登らないと行けないのが面倒よね…」

まぁ住み慣れている人は、気にしないのかもしれないけど。
少なくとも、移動するには不便だと私は思う。

ハルカ 「ん…? そう言えば、こんな物もあったわね」

私はそう思って、ひとつの技マシンを取り出す。
いやもとい、『ひでんマシン』だ。

ハルカ 「てってれ・れって・て−て−て−♪ 『そらをとぶ』〜」

私は某猫型ロボの真似をしてそれを取り出す。
特に意味はない。

ハルカ 「さてと、久し振りの登場『ペリッパー』♪」

ボンッ!

ペリッパー 「ペリ〜♪」

ペリッパーも久し振りの登場(7話振り)に喜んでいるようだ。
怪我の方も無事に治った様で、すぐにでも羽ばたきそうだった。

ハルカ 「んじゃ、さっそく『ひでんマシン』セットと」

私は器材を取り出してペリッパーに『そらをとぶ』を覚えさせた。
とはいえ、そんな簡単に行くものなのだろうか?

ハルカ 「とりあえず、乗ってみましょうかね」

私はペリッパーの背中に乗り、指示を出す。

ハルカ 「発進!!」

ペリッパー 「ペリ〜♪」

バサッバサッ!!

ハルカ 「おおっ? おおおっ!」

何と、ペリッパーは見事にテイク・オフする。
ちょっと感動した。
よもや自分のポケモンで空を飛ぶとは…。

ハルカ 「これは役に立つわね、よしっペリッパー! このままヒワマキを出るわよ!」

ペリッパー 「ペリ〜♪」



………。



こうして、私はペリッパーに乗ってヒワマキシティを後にした…。
グッバイ…緑の町。



………。



『時刻13:10 120番道路・北部上空』


ハルカ 「はぁ〜いい眺めね…今日は晴れてるし、絶景」

私は高度20m辺りからの眺めに見とれる。
今までにない視点だから、ちょっと戸惑うけど。

ペリッパー 「ペリ〜…」

ハルカ 「ん? どうしたのペリッパー?」

何やらペリッパーは戸惑うように同じ所を旋回し続ける。
何かあったのだろうか?

ハルカ 「とりあえず、降りた方がいいわね」

私はペリッパーを地上に降りるよう指示する。
ちょっと位置が悪く、橋の下辺りに着陸することになってしまった。

ハルカ 「もう…何があったの?」

ペリッパー 「ペリ〜…」

ペリッパーは申し訳なさそうにうなだれる。
原因は不明だ。
仕方ない…歩いていくかな?

ハルカ 「それなら、あそこから上がれるけど…」

それよりも気になる場所を発見する。
目の前には湖が広がっているのだが、そこにぽつんと小さな山があった。
大体3m位の高さだろう、はっきり言って怪しい。
私は、どうにもそれが気になって行ってみることにする。

ハルカ 「ペリッパー『なみのり』」

ペリッパー 「ペリ〜」

私はペリッパーの背中に乗って湖を渡る。
波がなくても『なみのりとはこれ如何に?



………。



大体1分でその山には到着。
しかしながら、ここからでは何もわからない。
北側からでは、少なくともただの山だ。
私は南側に回り込んで見ることにする。



………。



ハルカ 「あ、これ…洞窟になってるんだ」

どうやら、予感は的中。
この山は内部ががらんどうで中に空間があった。
、 入り口から除いてみると、中は何故か明るく照らされていて、逆に不気味。
しかし、入らずにはいられない!
ということで、突入敢行♪

ハルカ 「…なるほど、水が光を反射して中に流れてるのね」

それで中が明るいのだ。
私は、中をよ〜く確認してみる。
すると、あからさまに怪しい『わざマシン』が見つかった。

ハルカ 「…持って行っていいのかな?」

ついそんなことを思ってしまう。
まぁ、大丈夫だと思うんだけど。

ハルカ 「さて、中身は何かな〜?」

器材を出して確認すると、中身は『にほんばれ』ということがわかった。
確か、アスナさんやマナミさんが使った技だ。
周囲の天候を『ひでり』にする技。
炎タイプの技を強化し、水タイプの技を弱くする。
他にも、コノハナのようなポケモンは特性で素早くなるのだ。
私のパーティにとっては相性がいいと言える。
とはいえ、すぐに使うのは止めておく。
もしかしたら自分の力で覚えるポケモンもいるかもしれないからだ。
私はディスクをバッグにしまって、その場を後にした。



………。



ハルカ 「ふぅ…寄り道しちゃったわね」

私は元の陸に到着してペリッパーをボールに戻す。
時刻はまだまだ余裕。
出来れば、行ける所までは行きたい所だ。

ハルカ 「…あれ? 何かある」

私は目の前に見えない何かがあることに気付く。
私はこの時ピーンと来た。
どうやら、使わないままの秘密兵器ではなかったようだ。

ハルカ 「てってれ・れって・てーてーてー! 『デボンスコープ』!!」

私はターゲットを確認して照準を合わせる。
そしてスイッチを押す。

ピシャッ!

カクレオン 「レオレオッ!?」

デボンスコープの音に驚いて、カクレオンが姿を現す。
私はそれを確認すると、ポケモンを繰り出す。

ボンッ!

バシャーモ 「シャモッ!」

ハルカ 「バシャーモ『にどげり』!」

バシャーモ 「シャモッ」

ドカッ! バキィッ!

カクレオン 「カックレー!!」

カクレオンは蹴りをくらってあっさりと退散する。
う〜ん、ちょっと可哀相だったかな。
少々、弱いものイジメになったかもしれない。

ハルカ 「ここの所、ピリピリしてたからなぁ…」

問答無用で攻撃するのはちょっと控えよう…。

ハルカ 「さて、どうしようかな? って、考えるまでもないか」

私は目の前の坂を登って、高い草を掻き分ける。
この草が非常にウザイ。
周りが見えないうえに、歩きにくいからだ。
ある程度先に行けば、無くなるのだけれど、やっぱりウザイ。
特に雨の後は草に水が溜まって最悪だ。

ハルカ 「はぁ、何でペリッパー戸惑ったんだろ?」

結局原因は不明。
まぁ初めてのことだから、色々と問題があったのかもしれない。
こういうのは、少しづつ慣れていくものだろう。
気長に構えるとしましょうか。
そんな風に結論づけ、私は先に進んでいく。
ここから次の街まではかなり遠い。

さすがに今日中に着くのは難しいだろう。
とはいえ、いつ雨が降るかもわからない場所で野宿する気にはなれない。
私はそう思って、早足に進んでいく。
せめて次の道路までは行きたいからだ。

ハルカ 「…順調なら夕方には着けるはずだけど」

野良トレーナーがこの辺りは多いので、まず上手くはいかないだろう。
この前のエリートトレーナーの例もある、注意するに越したことはないだろう。

? 「あ−−! あなたはハルカさん!!」
? 「ここで会ったのも何かの縁! さっそく取材開始よ!!」

…とまぁ、こんな感じで妨害されるわけだ。
まぁポケモンのレベルアップに繋がるのだから、結果としてはいいのかもしれない。

マリ 「さぁ、どれだけ強くなったか見せてもらいましょう!! 『レアコイル』!」

ボンッ!

レアコイル 「PPP!!」

ダイ 「行けっ『バクオング』!!」

ボンッ!

バクオング 「バーク!!」

これで三度の再戦になったインタビューアーのマリさんとダイさん。
見た感じ、あれから更にレベルアップした様で、見慣れないポケモンが出てきた。

ハルカ 「…結構大きいわね、あのポケモンは……」

私は図鑑を参照する。


ポケモン図鑑 『バクオング:そうおんポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:1.5m 重さ:84.0Kg タイプ:ノーマル』
ポケモン図鑑 『大声の震動で地震を起こす。体の穴から空気を激しく吸い込み始めたら、大声を出す前触れだ』


ハルカ (なるほど、そのままドゴームの進化系ってわけか)

こうなると、さすがに侮れないだろう。
こちらもそれなりの対処をするべきか…。

ハルカ 「よしっ、『バシャーモ』、『コノハナ』!!」

ボボンッ!

バシャーモ 「シャモ」
コノハナ 「コノ〜♪」

今回は相手に弱点を突けるバシャーモと電気を受け止められるコノハナで対抗する。
特にコノハナは最近出番がめっきりなかったので、丁度いい。
勘を取り戻すという意味でも少し慣らしておこう。

ハルカ 「バシャーモ、バクオングに『にどげり』! コノハナはレアコイルに『ねこだまし』!!」

コノハナ 「コノ〜」

パァンッ!!

レアコイル 「!!??」

コノハナはレアコイルの目の前で掌を合わせて驚かす。
レアコイルに効くのかどうか微妙だったが、問題ないようだ。
レアコイルは怯んで、一瞬行動不能になる。

バシャーモ 「シャーモッ!」

ダイ 「バクオング『はかいこうせん』!!」

ハルカ 「なぬ!? んなヤバそうな技を使えるの!?」

確か、父さんが昔使っていたのを微妙に覚えている。
かなり威力があって、まさに○ロモンの悪夢の核バズ……

バクオング 「バークーオーーーング!!」

ドッ! ギュアアアアアアアァァァァッ!!

ハルカ 「バシャーモ!?」

バシャーモ 「!! シャ、シャモ!?」

チュッドォォォオンッ!!

その時、奇跡(?)は起こった。
バシャーモは急ブレーキをし、そのまま思いっきり仰け反って『はかいこうせん』を紙一重で回避したのだ、まさに○トリクス……。
頭を狙ったのが相手の敗因ね。

ハルカ 「と、とにかく運がツイてるわ! バシャーモ『にどげり』!!」

バシャーモ 「シャ、シャモッ!!」

バキッ! ドゴァッ!!

バクオングは無防備な状態で『にどげり』をモロに貰う。
『はかいこうせん』は威力こそ凄まじいが、隙があまりにも大きい。
まさに一撃必殺…かわしたとはいえ、バシャーモの後ろでは大爆発が起きている。
自然破壊もいいところね、とんでもないわ。
と、まぁバクオングはそのままリタイヤする。
後は、1体。

ハルカ 「バシャーモ、レアコイルに『ブレイズキック』! コノハナは『だましうち』!!」

コノハナ 「コノ〜?」

レアコイル 「??」

バシャーモ 「シャモー!!」

ドゴォアァッ!!

コノハナがよそ見でレアコイルの気を引き、隙が出た瞬間バシャーモが蹴りを放つ。
完璧なコンビネーションね。

マリ 「ああ、また負けてしまいました…やっぱり強いですねハルカさんは」
マリ 「と、いうわけで! 今度こそインタビュー受けてくれるわね!?」

ハルカ 「さようなら〜!!」

私はすでにポケモンを戻して駆け出していた。
こういうのはさっさと逃げるに限る。
時間も止まってはくれないしね〜。



………。
……。
…。



『時刻15:00 120番道路・中部』


ハルカ 「ふぅ…結構進んだけど」

あれからトレーナーとの戦いを繰り返して既に太陽は傾き始めている。
ここの所、妙にトレーナーが多い気がする。
ポケモンリーグに近づいている証拠なのかもしれないが、こんな状態を続けていたらいつかは倒れる。
ポケモンたちは不死身ではない、薬にも限界がある。

ハルカ (…進めば進むほど、その辛さが増していくんでしょうね)

ひとりで旅を続ける以上、そう言った苦しさは当然受ける。
金に余裕はあるが、薬は心もとない…正直、ポケモンたちの体力だけはどうにもならない。
いくら、トレーナーひとりひとりのレベルが低くても、ダメージは次第に溜まっていく。
PPとて無限じゃない、いつかは動けなくなるだろう。

ハルカ (…この時点でまともに動けるのは、バシャーモとライボルト、マッスグマか)

この3体は、元々レベルも高く戦闘経験も豊富だ。
攻撃技も比較的多く、PP切れになることはほとんどない。
問題は残りの3体。

ハルカ (コノハナ、ペリッパー、アノプスか…)

この3体は逆に早い段階で限界を迎えた。
コノハナは最近どうにも力負けしている感じがする。
メキメキと進化している相手にはどうしても不利なのだ。
コノハナはあれから進化しそうな雰囲気は全くない。
これがこの娘の限界なのだろうか?
それでも、草タイプは水タイプに対して有効なだけに、役に立つ場面も多い。
できれば、このまま使っていきたいところだ。

ハルカ 「ペリッパーも辛そうに見えるわね…」

思わず呟く。
あの怪我が響いているのか、どうにも本調子でない気がする。
そうでなくても、最近は攻撃力がとにかくなくて困っている。
『なみのり』のお陰で特殊攻撃力はそれなりに強いけど、飛行タイプとしての攻撃力は低い。
元々防御力の方が高いので、攻撃は期待できないのかもしれない。

ハルカ 「アノプスはまだ進化できないのか…」

未だに進化しそうにないアノプス。
あれから随分経験を積ませたはずだけど、一向に進化しない。
いや、それよりも強さそのものがあまり上がっていないように感じるのよね。
少なくとも、パーティ内じゃ一番伸び悩んでいる気がする。
その分、伸びる時は大きく伸びてくれるんだけどね…。

ハルカ 「はぁ…にしても、私自身もちょっと疲れたかな」

結局、ジム戦が終わってからほとんど休まずにここまで来てる。
何だかんだで疲労は溜まっている気がする。
体長管理はしっかりしておかないと、街までが遠いと大変だ。
ポケナビで確認するが、まだ中部。
ここから倍の距離を歩いてようやく121番道路に着く。
そこから、更に倍の距離がかかる…はっきり言って気が長すぎる。
途中で休んだ方が良さそうね…さすがに明日には着くだろうし。
私は結局気楽に考えてゆっくりと歩を進める。
人間、開き直った方がいい時もある。





………………………。





『時刻22:00 120番道路・南部』


ハルカ 「今日はここで野宿ね」

私は高い草の迷路を抜け、橋を渡った所の辺りで、そう呟く。
丁度、橋の南側にいい場所がある。
湖の側で特に障害物もない。
この辺りまで来たら、雨雲も姿を潜めている。
どうやら突発的な雨に悩まされる心配はなくなったようだ。
私は、岩壁側の方に向かってテントを出す。

ボンッ!!

ハルカ 「さて…とりあえずは休もうかな」

私はテントの中に入って荷物を降ろす。
さすがに今回はバトルも多かったせいか、疲れが溜まった。
私は、一旦皆をボールから出すことにする。
ボールの中で休ませるのもいいが、外に出して休ませて上げた方が精神的には回復するからだ。
ボールの中だと、ポケモンは冬眠のような状態になるため、肉体的には休まるがその反面、精神的な休息にならないのだ。
だから、こう言った状況の時は外に出して休ませた方がポケモンもリラックスできるのだ。

ボボボボボボンッ!!!!

ハルカ 「んじゃ、後は自由。好きに休んでいいわ」

バシャーモ 「シャモ〜」
マッスグマ 「グマ…」
ライボルト 「ラ〜イ♪」
コノハナ 「コノ〜」
ペリッパー 「ペリ〜」
アノプス 「アノッ」

それぞれが、思い思いの場所に向かっていく。
どうやらテントの外に出て行くようだ。

ハルカ 「…まぁ、いいか。私は寝よ」

余程の事がない限り、特に問題はないだろう。
少なくともこの辺りの野生のポケモンに、たやすく負けるほど甘い育て方はしていないつもりだし。
たまにはそれぞれの判断で動いてもらった方が応用力も着くでしょう。
そう結論付けて私は寝袋に入る。
今度は私が休まないとね…前みたく、いざってときに動けなくなるのはごめんだわ。
私は目を瞑り、体力の回復に努めた。



………。



バシャーモ 「…ふぅ、何か疲れたな〜」

ライボルト 「バトルばっかだったもんね…体が持たないよ」

ペリッパー 「ですけど、先に行けば行くほど辛くなりますからね」

バシャバシャ!

ペリ君は湖の方に向かって水浴びをする。
それを見て、グマちゃんやアノ君も湖に向かった。

マッスグマ 「……」

アノプス 「ふ〜、何か休まりやすなぁ」

ペリッパー 「確かに…雨は多かったですけど、こうやって水浴びする機会なんてありませんでしたからね」

そう言ってペリ君たちは水浴びをして体の汚れを落とす。
ライちゃんが羨ましそうに見ていたが、行く気配はなかった。

バシャーモ 「…ライちゃんはしないの?」

ライボルト 「…ん、やると皆痺れちゃうから」

確かに…水は電気を通すもんね。
私もちょっと水は…。
ん、でも水に強いコノちゃんは…?

コノハナ 「……」

バシャーモ 「コノちゃん…どうかしたの?」

私が近づいてそう言うと、コノちゃんはやや落ち込み気味な表情を見せた。
何かあったんだろうか?

コノハナ 「…そろそろ、私も辛くなってきた所ですね〜」

バシャーモ 「…え? もしかして、バトルのことを言ってるの?」

コノちゃんは頷く。
どうやら、バトルに着いてこれなくなっているのを気にしているようだ。
コノちゃんの性格から考えると、気にしなさそうだったんだけど…気にしてたんだ。

コノハナ 「…進化することも考えた方がいいのかもしれませんね」

バシャーモ 「え? もしかしてコノちゃんって、進化キャンセルしてたの!?」

コノハナ 「いえ、私はいつでも進化できるだけですよ〜」

あっさりというコノちゃん。
いつでも進化って…何か条件が違うんだろうか?

ライボルト 「…じゃ、何で進化しないの〜?」

コノハナ 「それは〜…そうしてしまうと、もう自力で技を覚えられなくなってしまうからです…」

バシャーモ 「あ! もしかして、コノちゃんの進化って…石を使うの?」

ライボルト 「石…って、進化の石のこと? 『かみなりのいし』とか、『ほのおのいし』とか…」

コノハナ 「そうです〜、私はこの…『リーフのいし』で進化できるんです」

そう言ってコノちゃんはどこから取り出したのか、綺麗な碧色の石を見せる。
進化の石を見たのは初めてだ。

バシャーモ 「どこで見つけたのそれ?」

コノハナ 「ハルカさんと川に流された後です〜…流れ着いた先に見つけたんですよ〜」
コノハナ 「ちなみに、ハルカさんには内緒です」

ライボルト 「え? どうして?」

コノハナ 「ハルカさんの判断よりも、私の判断で進化した方が結果的にハルカさんにとってプラスになると判断したからです」

バシャーモ 「…そうだね、ハルカさんの性格だとそろそろ進化させてしまいかねもんね」

ライボルト 「そうしたら、肝心の強力な技を覚え逃しちゃうってことか…」

コノハナ 「そういうことです〜、せめて…『じんつうりき』を使えるまでは、と思っていますから」

バシャーモ 「…それって、どんな技なの? 聞いたことないけど」

コノハナ 「エスパー技なんですよ〜、私の苦手な毒や格闘タイプに強いので、是非覚えたいんです」

ライボルト 「エスパー技かぁ…確かにそれがあると苦手な相手に強くなれるねぇ」

確かに。そのどちらのタイプも、コノちゃんには相性が悪いから十分な意味がある。
その後に進化すれば、能力も飛躍的に上がって即戦力になれる…か。
でも、それだけにコノちゃんは辛い戦いを続けなければならない。
周りのレベルが上がっていく反面、コノちゃんはそのハンデを背負って戦わなければならないのだから。

コノハナ 「…でも、もしかしたらそれも叶わないかもしれませんね」
コノハナ 「何となく…私はもうすぐパーティを離れる気がします」

バシャーモ 「え…な、何言ってるのよコノちゃん!?」

ライボルト 「そうだよ! 折角ここまで一緒だったのに…」

マッスグマ 「…でも、パーティのバランスを考えたら、ハルカさんだって考えかねない」

バシャーモ 「!? グマちゃん…」

グマちゃんは冷たく言い放つ。
確かに、間違ってはいないだろうけど…それでも、ハルカさんだってコノちゃんと付き合い長いのに。

マッスグマ 「…ハルカさんはコノちゃんの能力にそろそろ疑問を持ち始めている」
マッスグマ 「愛情があるだけに、無理はさせたくないと思う…」
マッスグマ 「結果として、コノちゃんはパーティを外れてしまう可能性が高い」

ライボルト 「だからって…」

コノハナ 「いえ、正しいことだと思います…このまま戦い続けても、かえってハルカさんの足手まといになるかもしれません」
コノハナ 「私にとっては…その方が辛いですから」

アノプス 「…コノさん」

ペリッパー 「…それを決めるのは、他ならぬハルカさんですよ」
ペリッパー 「僕たちが言い合っても、仕方ないです」

水浴びから帰ってきたペリ君がそう言ってくれる。
確かに…決めるのはハルカさん、か。

バシャーモ 「…私たちだって、ずっと一緒とは限らないもんね」

ライボルト 「…うん、そうだね」

マッスグマ 「…大切なのは、適材適所ということ」
マッスグマ 「私たちは、どう頑張っても6体までしか、旅では一緒にいられない」
マッスグマ 「アメちゃんに、アゲ君、クゥちゃんやコイちゃんも一緒の想いのはず」

バシャーモ 「そうだね、怪我をして今は一緒にいられないけど、治ってからすぐに復帰するわけじゃないもんね」

コノハナ 「そうです…大切なのは、どうやって役に立つか」
コノハナ 「今は旅を続けていますから、こういう風にパーティをほとんど変えずにいますけど」
コノハナ 「きっと行き着くところに着けば、皆の力を借りることになると思います」

行き着くところ…それは、どこなのかはぼんやりとわかる。
適材適所か…そうだね、自分に出来る事を頑張ってやるのが一番ハルカさんのためになるんだよね。

マッスグマ 「…大丈夫、コノちゃんはハルカさんにとって大きな力になれるから」

コノハナ 「ありがとうございます〜、そう言ってもらえますと自信が着きます」

マッスグマ 「…ん」

グマちゃんはひとつ頷いて、上の方に歩いていく。

バシャーモ 「あ、グマちゃん! あんまり遠くには行かない方が!!」

マッスグマ 「…大丈夫、ちょっと物を探してくるだけだから」
マッスグマ 「そろそろ、薬が心もとないから」

コノハナ 「でしたら、私も一緒に行きますよ〜」

ペリッパー 「でしたら、僕も行きます。それなら帰る時は乗せていけますし」

バシャーモ 「え…でも2体はきついんじゃ?」

ペリッパー 「大丈夫ですよ、これでも空の運び屋ですからね♪」

そう言って、ペリ君は笑いながら着いていく。
はぁ…仕方ないなぁ。

ライボルト 「私は休むよ〜…疲れてるから」

アノプス 「ふぅ〜む、アッシはまだ動きたい気分です! 湖で泳いできやす!」

バッシャアンッ!!

バシャーモ 「元気だなぁ…私も休もう」

私はライちゃんの隣で寝転がる。
多分一番バトルに出たのは私かライちゃんだろうから、ロクに動けるほど体力は残ってない。
明日すぐに動けるよう、休んでおかないと。



………。
……。
…。



『時刻22:30 120番道路・南部』


マッスグマ 「…あった、『かいふくのくすり』」

コノハナ 「結構集まりましたね〜」

ペリッパー 「そうですね、これだけあれば明日は楽になりそうです」

マッスグマ 「…!」

ガササッ!!

私は草むらに気配を感じて振り返る。
野生のポケモン? でも…。

マッスグマ (この『プレッシャー』…普通じゃない!)

前方の草むらから感じる重圧は、明らかにレベルの違う威圧感があった。
そして、そこからゆっくりと前足を踏み出し、ポケモンが現れた。

コノハナ 「!」

ペリッパー 「…あれは?」

マッスグマ 「…黒い、ポケモン」

見たことのないポケモンだった。
恐らくは野生、でも凄まじいプレッシャーを放っている。
大きさは1m以上…私よりも大きい。
四足歩行のポケモンで、頭の鎌の様な角が印象的だ。

コノハナ 「…あれは、『アブソル』です!」

マッスグマ 「…アブソル?」

ペリッパー 「聞いたことないですね…でも、何だか強そうな感じはします」

アブソル 「…貴様ら、野生のポケモンではないな」

マッスグマ 「…だったら、どうするのですか?」

私は先に戦闘体勢に入ってそう聞く。
すると、アブソルは前足に重心を置く。

アブソル 「その力…試させてもらう!!」

アブソルはそう言うといきなり突っ込んでくる。
『でんこうせっか』だ、かなり速い。
かわすのは無理…だったら!

マッスグマ 「!!」

ドガァッ!!

私は『ずつき』で真っ向勝負を仕掛ける。
互いにぶつかり合い、大きく吹っ飛ぶ。
体重で負けている分、私が押し負けたけど、5分に持っていった。

アブソル 「…! ちぃ…正面からぶつかって来るとはな!」

マッスグマ 「…並の野生のポケモンごときに負けはしません、そんなヤワな鍛え方はされていませんから」

私はそう言い放つ。
あくまで強気だ。
ここで弱気を見せれば、すぐに付け込まれる。
私は、負けないと相手にアピールすることが重要だと思ったからだ。

アブソル 「…なるほど、相当なトレーナーに鍛えられているようだな。そんな無茶な戦い方を教わっているとは」

無茶か…確かにそうかもしれない。
でも、そんな無茶がここまで勝利を導いているのだ、馬鹿には出来ない。

マッスグマ 「…このまま去るなら、見逃します。ですが…向かってくるなら、容赦しません」

アブソル 「……」

コノハナ 「…?」

ペリッパー 「……?」

何やらアブソルは考え込むように俯く。
何を考えているのかがよくわからない。
だけど、不思議とプレッシャーは消えている。
そして、次の瞬間…。

アブソル 「いい女だ…強く、美しい」
アブソル 「俺は、お前のような女を待っていたのかもしれない」

マッスグマ 「! ……」

いきなり突拍子もないことを言われる。
何を考えているのだろうか?
少なくとも私には全く理解が出来なかった。

アブソル 「お前…俺と一緒に来る気はないか?」
マッスグマ 「ありません」

アブソル 「…即答か、ますます好きになる」

マッスグマ 「私は、自分のトレーナーのために今は生きています。あなたの元に行く気はありません」

私は強い気持ちでそう言う。
私は誰の、元へも行く気はない。
私にとっては、ハルカさんの側が一番安らかになれる場所なのだから。

アブソル 「…そうまで言えるほどトレーナーとは何者なのだ? 俺には理解できんな」

マッスグマ 「野生のポケモンには理解できなくて当然です」
マッスグマ 「あの人の優しさ、深さ…そして、悲しさは」

コノハナ (グマちゃん…そこまで気付いて)

ペリッパー 「とにかく、僕たちはトレーナーのポケモンです。自分たちの意思で離れることは出来ません」

アブソル 「いいだろう…それなら、直接会って判断するまでだ」

マッスグマ 「…無駄ですよ、何をやっても私はあなたの所には行きません」

アブソル 「…それはどうかな。確固たる意思も、その原動力がなくなれば何も出来まい?」

そう言って、アブソルは微笑する。
だが、逆に私は笑い返す。

マッスグマ 「…それこそ、無駄なあがきです。あの人は、普通の人間じゃありませんから」
マッスグマ 「返り討ちにあうのが関の山ですね」

コノハナ 「…何を考えているのか予想できますけど、怪我したくなければ去れ…と言う所ですね」

ペリッパー 「確かに…あの人は手加減を知りませんからねぇ」

アブソル 「……どんなトレーナーだ」

マッスグマ 「少なくとも、あなたの想像している程度の人じゃありません」
マッスグマ 「このまま巣へ帰ることを推奨します…今はあの人も休んでいますから」
マッスグマ 「それでも会いたいと言うなら、明日にしてください」

私はそう交渉する。
すると、アブソルは割と素直に答えを返す。

アブソル 「…いいだろう、なら明日もう一度ここへ来る」
アブソル 「その時に、お前を連れて行くか判断する」
アブソル 「逃げても無駄だぞ…俺からは逃げられん」

マッスグマ 「逃げる必要もなければ、そちらへ行く必要もありません…もっとも、そちらの方こそ逃げた方がいいでしょうけど」

アブソル 「ふ…強気なことだ、見た目からはそう見えないのにな」

ザザザッ!!

そういい残し、アブソルは去っていく。
私はやや重くなった頭を軽く横に振ってコノちゃんたちの方に振り返る。

コノハナ 「…グマちゃん、とんでもないことになっちゃいましたね〜」

ペリッパー 「…そうですね、まさか野生のポケモンからプロポーズとは」

マッスグマ 「…私には関係ない、今はハルカさんのことだけで手一杯。旦那の世話まで見てやれない」

コノハナ 「あらら…実は結構まんざらじゃないって事でしょうか〜?」

コノちゃんは意外そうに笑ってそう言う。
私はそれ以上何も言わなかった。
そうすることで、これ以上の会話はなかった。
私とコノちゃんはペリ君の背中に乗って皆の寝床に戻った。



………。
……。
…。



『翌日 時刻7:00 120番道路南部』


ハルカ 「…う〜ん、まだ結構眠いなぁ」
ハルカ 「皆、起きてる〜?」

バシャーモ 「シャモ…?」
コノハナ 「コノ〜」
ライボルト 「ラ〜イ」
ペリッパー 「ペリ…」
アノプス 「ア〜ノ〜」

どうやら、皆まだ眠いようだ。
でも、その中に1体だけいない姿があった。

ハルカ 「? マッスグマは…」

バシャーモ 「? シャモ〜?」

バシャーモはマッスグマを探すように辺りを見回す。
だが、その姿は見つからなかった。
一体どこに行ったのかしら?
あの娘も結構放浪癖な所があるから、ちょっと心配なのよねぇ。

私はとりあえず今の場所から上に坂を昇っていく。
そして、120番道路の本道に出た所でその姿を見つける。
…ついでに見慣れないポケモンも1体いた。

ハルカ 「あのポケモンは…?」

私は反射的に図鑑を開く。
少なくとも見たことはないからね。


ポケモン図鑑 『アブソル:災いポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:1.2m 重さ:47.0Kg タイプ:悪』
ポケモン図鑑 『アブソルが人前に現れると、必ず地震や津波等の災害が起こったので、災いポケモンと言う別名で呼ばれた』


等といきなり不吉な解説をされる。
えっと、地災には襲われたし、水災にも襲われたし、まさか今度は火災!?
さすがの私でも炎の中生きてるほど頑丈じゃないわよ!

アブソル 「…ソル」

マッスグマ 「…グマ」

何やら、アブソルとマッスグマが会話しているようだった。
な、何? この2体何かあるの?
少なくとも共通点といえば4足歩行位しか思いつかない。
私は交互に見るが、よくわからなかった。

ハルカ 「何考えてるのか全然わからない…こういう時ポケモンの言葉がわからないのは不便よねぇ」
ハルカ 「○ンヤクコンニャクでもあればいいのに…ってそれは無茶か」

アブソル 「……」

マッスグマ 「…グマ」

何だかアブソルは呆れたような眼差しで見る。
マッスグマは恥ずかしそうに俯いていた。
う〜ん、何かマズッたかしら。
まぁ、これ以上余計なことはしないでおこう。
どうやら、見た所野生のポケモンみたいだし、ここはバトルと行きますか!

ハルカ 「うっし、早朝からで辛いかもしんないけど! マッスグマ、バトルスタートよ!」

マッスグマ 「…グマ」

私の言葉を受けて、マッスグマは戦闘体勢に入る。
それを見てか、アブソルもすぐに後ろ足に重心を置いた…一気に飛び掛ってくる気ね。

ハルカ 「まずは先制攻撃よ! マッスグマ『10まんボルト』!!」

マッスグマ 「!!」

バチバチバチィ!!

マッスグマは全身から放電して電気を撒き散らす。
アブソルは不意を突かれてそれを喰らってしまう。
さすがに野生のポケモンじゃこんな技持ってるとは思わないんでしょうね。
私は一気に畳み掛ける。

ハルカ 「マッスグマ『ずつき』よ!!」

マッスグマ 「グマッ!」

アブソル 「ソーール!!」

ハルカ 「!?」

突然、アブソルは頭の角を光らせて首を袈裟がけに振り下ろす。
すると、高速の風がマッスグマを襲った。

ドッガァッ!!

マッスグマ 「!! グマッ!!」

マッスグマは正面からそれを受けて吹っ飛ぶ。
かなりの威力だ…驚いた。
あんな技を使うなんて…しかも飛び道具。

ハルカ 「マッスグマ、戦える!?」

マッスグマ 「グマッ」

よし、ダメージはそれほどじゃないようね。
ここは強気に行くわよ。
見た所、あの技は撃つのに時間がかかると見たわ。
ここは速攻戦で決める!

ハルカ 「マッスグマ『みだれひっかき』!!」

マッスグマ 「グマッ」

マッスグマは直進の動きで一気に間合いを詰める。
そのスピードに面食らったアブソルは懐を取られる。

ザシュッ! ザシュッ! ズババッ!!

アブソル 「!! ソール!」

アブソルは4回引っかかれて後ろに退がる。
畳み掛けるのもいいが、ここは変則的にいく。

ハルカ 「マッスグマ、横に動いて!」

マッスグマ 「!!」

アブソル 「ソール!!」

ズドォンッ!!

またしても、さっきの溜め攻撃が襲ってくる。
予想通り、この辺は所詮野生ね。
マッスグマは横の動きでそれを完璧に避けた。

ハルカ 「マッスグマ『ずつき』!!」

マッスグマ 「グマッ!!」

ドッゴオォッ!!

何やら…思いっきり鈍い音がしてアブソルは横に倒れる。
く、首の骨逝ったんじゃないでしょうね?
かなりヤバそうなんだけど…。

ハルカ 「…ま、まぁいいか。マッスグマご苦労様…」

私はマッスグマをボールに戻そうとする。

ボンッ! コロコロ……ゴロッ…ゴロッ…ゴロッ…カチッ!

などと言う駆動音が聞こえる。
私は自分のボールを手に見つめる。
マッスグマのボールよね?

マッスグマ 「…グマ」

ハルカ 「…ゲットしてるーーーー!? 何で!?」

よく見ると、アブソルの入ったボールは紛れもないハイパーボールだった。
私は自分のバッグを見るが、減っている様子はない。
と、言うことは…たまたま落ちててそれに当たったとか?
でもそれだと、バトル中に当たっても不思議ではない。
それ以前に、ハイパーボールがこんな目に付きやすい所に落ちているはずがない。
私は、一番最後に取っておいた予想を口に出す。

ハルカ 「…マッスグマ? もしかして、拾った?」

マッスグマ 「……」

マッスグマは答えない。
しかし、この娘に限ってそれは肯定を表しているとしか思えなかった。

ヒュンッ!

いつの間にかアブソルの入ったボールはパソコンへと転送された。
手持ちはいっぱいだからねぇ。
なんだかなぁ…こんな経験初めて。
マッスグマ…何を考えて、ボール使ったのか。

ハルカ (それ以前に、何で使い方知ってるのよ…普通知らないはずなのに)
ハルカ (いつも一緒にいるから、勝手に覚える物なのかしら?)

真相は闇の中。
しかしながら、ゲットしてしまったものは仕方ない。
私は半分諦めたようにマッスグマをボールに戻し、後ろに残っている皆も回収した。
そして、決意新たに次の道路を見つめる。
そう、121番道路は目の前だ!



…To be continued




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