Menu
BackNext
サファイアにBackサファイアにNext




POCKET MONSTER RUBY



第56話 『這い上がる者』




『時刻15:00 ルネシティ・ポケモンセンター内・ポケモン広場』


ハルカ 「……」

ヒビキ 「………」

私はヒビキさんと対峙していた。
特訓の名の下に私はヒビキさんとバトルをするのだ。
だけど、以前の例もあるため、気は抜けない。
秒殺されてたら経験値もクソもない。
ヒビキさんは、無言でモンスターボールを取り出し、下手投げで軽く放る。
そして、そこから1体のポケモンが現れる。

ボンッ!

エアームド 「エアーッ!」

出てきたのはエアームド。
もう、何度も見たポケモンなので確認する必要はない。
割と標準くらいのサイズのようで、キヨミさんやダイゴさんのに比べるとやや小さい感じね。
エアームドは地上に足をつけ、羽を休めながらこちらをじっ…と、見ていた。
どことなく、ジュペッタと性格が似ている気がする…。

ヒビキ 「…そっちは何を出すんだ?」

ハルカ 「…あっと、ええ、それじゃあ」

私はやや慌てながらボールを確認する。
折角の特訓なんだから、こっちも甘えさせてもらわないと。
ということは、出すなら相性のいいポケモンがいい。
炎で弱点をつけるバシャーモ…でも飛行に弱い。
電気タイプのレアコイル…全般的に相性良し。
電気技を覚えているペリッパー…こちらも割と相性良し。
ホエルオーは損得なしって感じ、まぁ鋼タイプが半減できるので、悪くもない。

ハルカ 「よしっ、ここはあえてこのポケモンで!」

ボンッ!

ペリッパー 「ペリ〜」

とりあえず、同じ飛行ということでペリッパーを選抜。
出来るだけ近しいタイプの方が学べることは多いはず。

ヒビキ 「……」

ハルカ 「……」

互いのポケモンが出揃い、しばしの沈黙。
ヒビキさんは自分から仕掛けるつもりはないのか、両腕を組んでこちらを見ているだけだった。

ハルカ 「このまま待ってても仕方がない…仕掛けるわよペリッパー!」

ペリッパー 「ペリ〜!」

私の声を聞いてペリッパーはやる気を出す。
その場から羽ばたき、ペリッパーは地上から飛び上がった。

バサッ! バサッ!

ヒビキ (…動きは悪くない、トレーナーからの反応もスムーズだ)
ヒビキ (やはり、問題はポケモンではなく、トレーナーと見るべきか)
ヒビキ 「来るぞエアームド!」

エアームド 「…エアッ」

エアームドはヒビキさんの声を聞いても、その場を動こうとはしなかった。
ただ、その鋭い眼で、ペリッパーを追っていた。

ハルカ (ぶ、不気味ね…飛行タイプなのにああやって待っているなんて)

だけど、動いてないなら攻撃は当てられるはず!
私は距離に余裕を持たせて攻撃を指示する。

ハルカ 「ペリッパー! 『みずでっぽう』!!」

ペリッパー 「ペリ〜!」

バシュウゥゥ!!

ヒビキ 「エアームド、『そらをとぶ』!」

エアームド 「エアッ!」

ゴウゥッ!! バッシャアンッ!!

エアームドは指示を受けると、すぐにその場から飛び上がる。
後出しにも関わらず、エアームドは見事に『みずでっぽう』を回避すると同時に『そらをとぶ』を行った。
そのスピードは決して速い様には見えない。
ただ、反応が速すぎるのだ。
ヒビキさんのエアームドはヒビキさんが指示を出したと同時にすでに行動に入っている。
私のペリッパーじゃ、ああはいかない…せいぜい反応できても1秒が精一杯だろう。
でも、エアームドの反応は、恐らく0.2秒前後、あれだけ速いとスピードがなくてもかわせるのが頷ける。
やっぱり、根本的な所で私とはレベルが違う。
こればっかりは、長年の経験がモノを言う。
私はまだ、そこまでポケモンと一緒にいたわけじゃない。
どうやったら、その差を埋める要素が見つかる!?
まだ、たったの一手なのに、すでに絶望感に苛まれる。
このままじゃ、何も出来ない気がする。

ヒビキ (今までの戦いで、トレーナー自身がかなりまいっているようだな)
ヒビキ (まだハルカは気づいていないのかもしれない…自分が戸惑えば、ポケモンも戸惑うと言うことに)

ペリッパー 「ペ、ペリ〜」

ハルカ 「!? 何戸惑ってるのよ私…バトル中だって言うのに!」
ハルカ 「ペリッパー『守まもる』!!」

ペリッパー 「!? ペリッ!!」

ピキィィンッ!!

エアームド 「エアッ!?」

私は戸惑うペリッパーを見て、正気に戻る。
ペリッパーは私の声を聞いてすぐにエアームドの攻撃を弾き返した。
馬鹿だ私は…今更何をビビッているんだろう。
差があるのは当たり前だ、それを埋めるために、今頑張るのよ!!

ヒビキ (咄嗟に気づいたか…遅い位だがな)
ヒビキ (今のハルカに、ポケモンバトルの技術を全て身につけろと言うのは無茶だ)
ヒビキ (今あいつに必要なものは、高い技術ではなく豊富な経験だ)
ヒビキ (ポケモンとの深い友情は、時間が必ず解決してくれる…後はトレーナーが自分で知るしかない)
ヒビキ (トレーナーとポケモンは一心同体、トレーナーが成長すれば、自然とポケモンも成長する)
ヒビキ (そして、その逆もまた然りなのだと言う事を!)

ハルカ (考えるのは止める! 今は出来ることを全部やるだけ!!)
ハルカ 「ペリッパー『でんげきは』!!」

ペリッパー 「ペリ〜!!」

ピシャアアァァンッ!!

エアームド 「エ、エアーー!!」

ペリッパーは口から、眼にも留まらぬ電撃を放った。
かわすことも出来ずにエアームドは空中から地上に落下していく。

ヒビキ 「エアームド、立て直せ! そして『はねやすめ』!!」

エアームド 「! エアッ!」

バウゥッ!

エアームドは地上スレスレですぐに体勢を立て直した。
そして、冷静に地上へと着地し、羽を休めた。

ハルカ (『はねやすめ』…? それも技なの?)

キヨミ 「へぇ…あんな技も使うのね」

キヨハ 「確か、体力回復の技ね。エアームドのようなポケモンなら厄介な技になるわね」

フィーナ 「へぇ…知らなかった」

メフィー 「初めて見ました」

サヤ 「………」

ギャラリーの声を聞いて、私は詳細を判断する。
なるほど、体力回復ね…そんな技だったのか。
でも、あの技…。

エアームド 「……」

エアームドは完全に地上で羽を休めてしまっている。
もしかしたら、あの技は弱点もある?

ハルカ (とはいえ…ペリッパーにその弱点を突くことができそうにないわね)

今は、気にしていられない。
体力を回復されたということは、さっきのダメージはほとんどないものと思ったほうが良さそうね。

ハルカ 「だったら、追加するまで! ペリッパー『でんげきは』!!」

ペリッパー 「ペリ〜!!」

ピシャアァァンッ!!

エアームド 「…!!」

エアームドは地上から動くことなく電撃を受ける。
しかし、エアームドはまだまだ元気な様子で、こちらを睨み付けた。

ヒビキ (威力不足だな…元々ペリッパーは攻撃能力が高くない)
ヒビキ (加えて、タイプが一致していない『でんげきは』…相手が対等のレベルなら十分通用するだろうが)
ヒビキ 「エアームド『こうそくいどう』!」

エアームド 「エアッ!」

バビュンッ!!

エアームドはダメージを感じさせない動きで、いきなり速度を上げる。
さすがに速い…こちらとは比較にならないスピードを出している。

ハルカ (でも、『でんげきは』は回避不能のはず! 連発すれば、いつかは…)
ハルカ 「ペリッパー『でんげきは』よ!!」

ペリッパー 「ペリ〜!!」

ピシャアァンッ!!

エアームド 「エ、エアッ!!」

エアームドは再び『でんげきは』を喰らう。
さすがに二発目は効いたのか、動きが一瞬止まる。

ヒビキ (…連発か、常套手段だが、どうかな?)
ヒビキ 「エアームド『はねやすめ』だ!!」

エアームド 「エアッ!」

ビュンッ! ザシャァッ!!

エアームドは空中から猛スピードで地上に降り、すぐに羽を休めた。
これでまた体力を回復されてしまった…このままじゃ先にこちらのPPが切れてしまう。
まずい、どうする!?

ハルカ (攻撃しても、回復される…更に相手は能力アップを使う余裕すらある)

どう考えても、相手の防御力にこちらの攻撃力が追いついていない。
このままじゃジリ貧だ…こちらには対抗策がない。
せめて、一撃で大ダメージを与えられるような技でもあれば…!
攻撃力の低いペリッパーの弱点が浮き彫りとなってしまった。

ハルカ 「? 攻撃力が低い…?」

私はふと思いつく。
今まで、私は攻撃力だけを視点にしていて気づかなかった。
私は、作戦を変更することにした。

ハルカ 「ペリッパー! 『たくわえる』!!」

ペリッパー 「ペリ〜」

ペリッパーは空中で『たくわえる』を行う。
意味があるかどうかわからないけど、やらないよりはずっとマシ!

ヒビキ (本人が気づいているのかはわからないが、この場合正解だろう)
ヒビキ (攻撃力が追いついていない以上、エアームドを倒して勝つのは不可能)
ヒビキ (だが、こちらにもPPという物がある、もし耐え切ることが出来れば…あるいは、か)
ヒビキ 「だが、そのままやらせるつもりはない! エアームド『ドリルくちばし』!!」

エアームド 「エアッ!!」

バオォウッ!!

エアームドは回復を終え、一気にペリッパーへと近づく。
そして、空中で全身を回転させ、まさにドリルのようなくちばしがペリッパーを襲う。

ドギャアッ!!

ペリッパー 「ペ、ペリッ!」

直撃。
ペリッパーは勢いで吹っ飛ぶが、何とか空中で持ちこたえた。
思いの外、ダメージは低かったようだ。
これなら、まだ!

ハルカ 「ペリッパー『たくわえる』!!」

ペリッパー 「ペリッ!」

ペリッパーは再び『たくわえる』
これで2回目、後1回だけ『たくわえる』が成功する。

ヒビキ (2回目か…これでもう相当な防御力になったな)
ヒビキ (あの状態のペリッパーを力押しで倒すのは…無理か?)
ヒビキ 「だが、ダメージはある! 状況はまだ変わらん! エアームド、追加だ!!」

エアームド 「エアッ!!」

ドギャアッ!!

再び『ドリルくちばし』が直撃。
ペリッパーは再び吹き飛ぶ。
しかし、ペリッパーはまだ耐えて見せた。

ハルカ 「行ける! まだ耐えられる! ペリッパー、お代わりよ!」

ペリッパー 「ペリッ!!」

これで『たくわえる』は最大まで溜めることが出来た。
ここから『はきだす』、『のみこむ』で効果を発揮する。
しかし、使えば蓄えた分は無くなってしまう。
回復するには、『のみこむ』を使うしかないのだけれど…。

ハルカ (くっ、何かいい技はないの!? この状況を変えるような技は!?)

私はすがるような思いで、図鑑を開いた。
そして、ペリッパーの技をチェックする。
その時、私は目を疑った。
ペリッパーの技に、いつの間にか追加されている技があったのだ。
それも、この戦闘でいきなり習得していた、この状況を打破する技。
私は、迷わずその技を選択する。

ハルカ 「ペリッパー、『はねやすめ』!!」

ペリッパー 「!! ペリ〜」

ヒビキ 「何っ!? いつの間に…いや、まさか!」
ヒビキ (まさか…エアームドの技を見て、覚えたというのか!?)
ヒビキ (確かに、シンオウ地方に住むペリッパーは、『はねやすめ』を自然に覚えるという…)
ヒビキ (だが、こんな覚え方もあるとはな…面白い!)
ヒビキ 「エアームド、もういい…ここまでだ」

エアームド 「…エア」

ハルカ 「? どうかしたんですか?」

急にヒビキさんはエアームドを止めた。
勝負はこれから…だと思ってたのに。

ヒビキ 「…これ以上続けても、決着は着かないだろう…PP切れなど待っていたら、日が暮れる」
ヒビキ 「このバトルでペリッパーは『はねやすめ』を覚えた…それで十分だろう」
ヒビキ 「レベル差のある、このバトルで随分ペリッパーは成長できたと言えるな」

ハルカ 「そっか…ペリッパー頑張ったわね」

ペリッパー 「ペリ〜♪」

シュボンッ!

私はペリッパーを褒め、ボールに戻した。
これでひとつ自信がついた…新しい技も覚えたし、きっとジム戦でも役に立つ。

サヤ 「それでは、次は私がお相手しましょう…ヒビキさん、退がってください」

ヒビキ 「…いいだろう」

ハルカ 「こ、今度はサヤちゃんか…」

サヤちゃんは相変わらず目を瞑ったまま、まっすぐにこちらを向いていた。
そして、モンスターボールを無造作に放る。

ボンッ!

カクレオン 「レオ〜」

出てきたのはカクレオン。
…確か、以前に蹴っ飛ばした奴ね。
以前はバトルにならなかったけど、今度は大丈夫…のはず。

ハルカ 「とりあえず、次はあなたよ『レアコイル』!!」

ボンッ! キラリ〜ン☆

レアコイル 「PPP」

私はレアコイルを繰り出す。
イマイチ、まだ使い勝手がわからない。
前は出てすぐにやられちゃったし…とにかく、今度はちゃんと戦えますように!

キヨミ 「あら、色違いじゃない」

キヨハ 「へぇ…初めて見たわね」

メフィー 「私も色違いなら…」

ゴンッ

フィーナ 「別に見せなくていい」

メフィー 「ふみゅ〜」

…とりあえず、珍しいようだ。
まぁ、ここは置いておいて。

ハルカ 「さぁ、まずはこの技を見せて! レアコイル『トライアタック』!」

レアコイル 「PPGG」

レアコイルは三角系の光線を作り出し、それをカクレオンに向かって放つ。
『トライアタック』は回転しながら、カクレオンへと向かっていった。

ババババッ!!

カクレオン 「カ、カクレ〜!」

サヤ 「…カクレオン、『れいとうビーム』」

カクレオン 「! カックレー!!」

ハルカ (あれ? 氷タイプの技って…)

コキィィンッ!!

レアコイル 「!! PP」

やっぱり、ほとんど効いていない。
そう、氷タイプの技は鋼タイプに効果が今ひとつなのだ。
なのに、あえてサヤちゃんはそれを撃った。
私にはコンテストのことは良くわからない…でも、これが布石だとしたら?

ハルカ 「って、考えてもしょうがないってば! レアコイル『10まんボルト』!」

サヤ 「カクレオン、『みがわり』」

カクレオン 「カックレ!」

ボンッ! バチバチバチィ!!

カクレオン? 「カックレ〜」

ハルカ 「な、何あの技!?」

いきなりカクレオンは変なぬいぐるみになった。
明らかに人形みたいな形、動きはよくわからない。
しかし、確実にわかるのは、『10まんボルト』を受け止めたということ。
まさか…『みがわり』って、そのままの意味!?

ハルカ (だとしたら、普通の攻撃じゃもしかして通用しない?)
ハルカ 「だったら…レアコイル『でんじは』!」

レアコイル 「PP」

ビビビビビッ!!

カクレオン? 「……」

ハルカ 「嘘、効いてない!?」

『でんじは』は当たれば確実に『まひ』する技。
でも、あの人形には通用しないようだった。

サヤ 「…知らないようですから、教えてあげます」
サヤ 「『みがわり』という技は、使うポケモンの体力を削って、分身を作り出す技です」

ハルカ 「分身…?」

サヤ 「『みがわり』で作られた分身は、削った体力分の耐久力を持っていて、ほとんどの状態異常を無効化してくれます」

それはとんでもない…つまり、あの状態だと、『まひ』しなくても当たり前ってことね。

サヤ 「そして、最後に…この状態でも、攻撃は出来ます…カクレオン、レアコイルの周りに『れいとうビーム』」

カクレオン? 「カクレッ!」

コキコキコキコキィィィンッ!!

ハルカ 「うわ、寒っ!!」

分身は、『れいとうビーム』を薙ぎ払うように放ち、レアコイルの周りにある地面は全て凍ってしまった。
温度がかなり下がってきたようで、私自身も寒く感じる。
一体、これが何の意味に?


キヨミ 「…どう思う、姉さんは?」

キヨハ 「面白いわね…ひょっとしたら、ありえない結果が出るかもしれないわよ?」

フィーナ 「ありえないって…何だと思う?」

メフィー 「さぁ…わからない」

ヒビキ 「……」


ハルカ (元々、レアコイルはあの形だから地面が凍っても移動は問題ないと思うんだけど…)
ハルカ (それとも、他の理由が?)
ハルカ 「とにかく、ダメージを与えれば壊れるんだから、壊すしかない! レアコイル『10まんボルト』!」

レアコイル 「PPGG!」

バチバチバチィ!!

カクレオン? 「!?」

ボンッ!

今度の攻撃でカクレオンの分身は消滅する。
そして、カクレオンの本体が出てきた。
これで、状態異常も通用するはず!

ハルカ 「レアコイル『ちょうおんぱ』よ!」

サヤ 「予想通りです…カクレオン『マジックコート』」

レアコイル 「PPPPP!」

カクレオン 「レオッ!」

パァァァ…

カクレオンは、何か淡い色の膜に覆われる。
そして、向かってきた『ちょうおんぱ』が当たると、その膜は消滅し…。

フォフォフォフォフォッ!!

レアコイル 「!!??」

ハルカ 「嘘っ、跳ね返した!?」

『ちょうおんぱ』はレアコイルを逆に『こんらん』させてしまう。
あんな技もあるなんて…初めて見たわ。
って言うか、今日は初めてばかりね…いい勉強になるわ、本当に。

サヤ 「ちなみに、『マジックコート』の効果は、状態異常にする技を跳ね返す効果です」
サヤ 「使った瞬間にしか効果はないので、相手の攻撃を読む必要があります」

ハルカ (ってことは、後出しだからって成功するとは限らないわけね)

でも、あんな技があるなら、こっちは迂闊に状態異常技が使えない。
混乱状態のレアコイル…でも、様子がおかしい。

レアコイル 「PPGGPG!?!?」

ギュルルルルッ!!

ハルカ 「ちょ、レアコイル!?」

レアコイルは凍った地面の上で高速回転していた。
一体何が起こったのか全くわからない。
わかるのは、混乱しているということだけだろう…訳もわからず自分を攻撃したって所かしら?

サヤ 「…そろそろ、のはずですね。カクレオン『ふぶき』」

カクレオン 「カックレ〜!」

ビュゴゴゴゴゴゴォォォォッ!!

ハルカ 「寒い、寒いって!!」

レアコイル 「!!!!!〜〜〜!!」

ギュルルルルルルルルルルルルルッ!!!

『ふぶき』を受け、更に高速回転するレアコイル。
その回転の速さで、徐々に上へと浮き上がって来ていた。

ハルカ 「って、これってもしかして…超伝導?」

ほ〜ら、液体窒素を磁石に当てると宙に浮くんだよ〜…って言うアレね!!

ハルカ 「って、何か、まずいんじゃないの!? 段々レアコイルの形が変わって来て…って、え? え!? ええ!?」

カアァァァァァァッ!!

キヨミ 「…!! まさかこれが…!」

キヨハ 「やっぱりね…ありえない結果よ」

フィーナ 「嘘〜!」

メフィー 「はわ〜」

ヒビキ (とんでもない荒療治だな…無理やり、あの環境を作り出すとは)
ヒビキ (トップコーディネイターを目指すだけのことはある…大した演出家だ)

レアコイル? 「PP♪」

ハルカ 「えっと…あなたの名前は?」

レアコイル? 「PP?」

過去にレアコイルと呼ばれたそのポケモンは、まるでUFOのような外見をしていた。
左右に磁石の腕が出来ており、ちっちゃなコイルが左右1体づつ乗っていた。
色は金っぽい色から一転して、銀色に。
大きさも結構大きくなっており、前の面影はかなり少なかった。
とりあえず、私は図鑑を見る。


ポケモン図鑑 「ピー…ブツッ!!」

ハルカ 「役に立たん…!」

サヤ 「…折角だから教えてあげます。そのポケモンは、レアコイルの進化系…『ジバコイル』」
サヤ 「本来なら、『テンガンざん』と言う、苛酷な環境でのみ進化する、特殊なポケモンです」

ハルカ 「へぇ…『テンガンざん』って言ったら、北の山よね…確かかなり寒い地方」
ハルカ 「って、まさか!?」

サヤ 「…ちょっと、無理やりですが、あの環境を作り出してみました」
サヤ 「幸い、私は直接行った事があるので、どんな環境か覚えていますから」
サヤ 「でも、本当に進化できるとは思っていませんでした…これもハルカさんの運なのかもしれません」

サヤちゃんはそう言って、微かに笑う。
本当に、そうなのだろうか?
サヤちゃんはこうなることがわかっててあんな方法を取ったとしか思えなかった。
環境を覚えているからって、そんな簡単に出来るものなんだろうか?
まさに、コーディネイターとしての器量を見せられた感覚だった。
フィールドさえ自由に変えてしまう…本当に凄い。

サヤ 「…私に出来るのはここまでです、後はハルカさん次第」

シュボンッ!

サヤちゃんはそう言って、ポケモンをボールに戻した。
こうして、レアコイルはジバコイルへと進化し、新たな戦力となった。

ハルカ 「じゃあ、戻ってジバコイル」

シュボンッ!

私はジバコイルをボールに戻した。
これで2体…次は?

フィーナ 「よーしっ! 次は俺だーー!!」

出た、裏モード。
唐突過ぎるから、怖いのよこの娘。
でもまぁ、何だかんだでこの娘はちゃんと考えているはず。
遠慮なく、向かわせてもらおう。

フィーナ 「よし、それじゃあ行くぜ!」

ボンッ!

カメックス 「カメー!!」

出てきたのは、いかにも水タイプ…と思われる青いポケモン。
見た目は重量級で、パワーもありそうだった。
だけど、動きはそんなに速そうには見えない。
とりあえず、背中の甲羅から出ている2連装キャノンがかなり怖い。
変な技でも飛び出さなければいいけど…。
ちなみに、図鑑で確認はもうしなかった…どうせ出てこない気がしたから。

ハルカ 「さて、お次はあなたよ『ホエルオー』!!」

ボンッ!

ホエルオー 「ホエ〜」

私はホエルオーを繰り出す。
スピードでは勝負にならないけど、体力ならいい勝負になるはず。

フィーナ 「よっしゃあ! 先手は貰うぜ!! カメックス『ハイドロポンプ』!!」

カメックス 「カメーー!!」

ハルカ 「くっ!? ホエルオー『はねる』!!」

ホエルオー 「ホ、ホエッ!!」

グオオッ!! ゴバアアアァァァァァッ!!

カメックスは両肩のキャノンをホエルオーに向け、そこから水を噴射する。
かなりの威力が予想される、まともに貰ったらホエルオーでもまずい。

ゴゴゴッ! ズオオオオォォッ!!

ホエルオーはその場からいきなり跳ね上がり、その場から移動する。
幸い、『ハイドロポンプ』の射線上から外れてくれた。

ホエルオー 「ホエ〜〜」

ズッシイイイィィィィィンッ!!

ホエルオーは腹から地面に落ち、カメックスの斜め前位に移動した。
とりあえず、難は逃れたわね。
今度はこっちから行くわよ。

ハルカ 「ホエルオー『みずのはどう』!!」

ホエルオー 「ホエー!」

ドギュッバァッ!!

フィーナ 「カメックス、『まもる』!!」

カメックス 「カメッ!」

ピキィィンッ!! バッシャアアアァァンッ!!

カメックスは『まもる』を行い、攻撃を防ぐ。
む、さすがに亀の様な姿をしているだけあるわね。
でも、それなら連続攻撃よ!

ハルカ 「ホエルオー『うずしお』!!」

ホエルオー 「ホエーー!!」

ゴオオオォォォッ!!

カメックス 「カ、カメッ!?」

フィーナ 「しまった! カメックス、『こうそくスピン』!!」

ハルカ 「!?」

ギュルギュルギュル!!!

カメックスは足元の渦に対し、自らが高速回転して逃れる。
そして、そのまま回転しながらホエルオーに向かっていった。

ドガァッ!

ホエルオー 「ホエッ!」

カメックス 「カメッ!」

ザシャアッ!

ホエルオーに攻撃を加え、地上に降り立つカメックス。
中々に器用なポケモンね…さすがに鍛えられているわ、対応も速い。
やっぱり、まともな攻撃じゃダメね…少しは捻らないと勝負にならない。

ハルカ (とはいえ、そんな捻った技を持っているわけもなく…)

結局、いつもの戦い方しか出来ないのが空しい。
戦闘バリエーションに差があるのって辛いなぁ…。

フィーナ 「ボヤボヤするなよ! カメックス『ばくれつパンチ』!!」

カメックス 「カメーーッ!!」

カメックスは右拳を握り、接近してくる。
フィーナちゃん、焦ったわね!

ハルカ 「ホエルオー、もう一度『うずしお』!」

ホエルオー 「ホエー!」

ゴゴゴゴゴォォッ!!

カメックス 「カメッ!」

フィーナ 「何度やっても同じだぜ! カメックス『こうそくスピン』!!」

ハルカ 「わざわざ同じ事するわけないでしょ! ホエルオー『たきのぼり』で迎撃よ!!」

フィーナ 「なっ!?」

カメックス 「カメーー!!」

ギュルギュルギュル!!

カメックスはまたしても『こうそくスピン』で『うずしお』から脱出し、ホエルオーに向かって飛んでくる。
でも、そこが絶好のアタックポイント!

ホエルオー 「ホエーーー!!」

ゴゴゴゴッ! ドグワアアアァァァァァァッ!!

カメックス 「カ、カメーー!!」

ホエルオーは自分の周りに水を纏い、空中を飛んでくるカメックスに向かって、水の流れに乗った強烈な体当たりを食らわせる。
ちなみに、この『たきのぼり』…今更だけど、『めざめのほこら』で拾った『ひでんマシン』に入っていた技なのよ。
水タイプが使えるので、ホエルオーに覚えてもらったってわけ。
不用意に飛び込んだカメックスはそれを食らって天高く吹っ飛ぶ。

ハルカ 「今よ! ホエルオー『しおふき』!!」

ホエルオー 「ホエーーーーーーーー!!」

ゴゴゴゴゴッ! ズバッシャアアアアアアァァァァンッ!!

体力がまだまだ残っているホエルオーの『しおふき』は今まで見た中で最高の威力。
空中を吹っ飛んでいるカメックスにかわしようは…。

フィーナ 「カメックス『ハイドロカノン』!!」

カメックス 「! カーーーメーーーーー!!」

ギュアアアァァァァ…バシュウウウウウウゥゥゥゥゥッ!!!

ハルカ 「!?」

何と、カメックスはホエルオーの水を押し返してきた。
とんでもない水量がホエルオーを襲う。
『しおふき』と相まってホエルオーは2倍近い水量を食らうことになってしまった。

ドッバアアアアアァァァァァァンッ!!!!

ホエルオー 「ホ、ホエーーー!!!」

ハルカ 「ホ、ホエルオー!!」

フィーナ 「どうだ! 俺のカメックスの『ハイドロカノン』は!!」
フィーナ (とはいえ、撃った後はこっちも無防備になる…)

ホエルオー 「ホ、ホエッ!」

幸い、ホエルオーはまだ戦えるようだった。
しかし、今の技はヤバイ…あれをもう一発食らったら確実にやられる。
体力を回復させようにも、同じ技が来たらどうしようもない。
こうなったら、強気に…。

カメックス 「カ、カメッ」

ハルカ (? カメックスの様子がおかしい…動きが何だか、ぎこちない…)
ハルカ 「! ホエルオー『ねむる」!!」

フィーナ (! 気づかれたか!?)

ホエルオー 「ホエ〜〜…ZZZ…」

予想通り、カメックスはすぐに攻撃してこなかった。
あの技は強力な技だけど、使うと反動で動けなくなるんだわ。
それなら、ホエルオーの体力を回復させる隙はあると見た!
あの技を連発するのはそれなりにリスクもあるはず!

カメックス 「カ、カメッ!」

フィーナ 「よし、行けるな! カメックス『きあいパンチ』だ!!」

カメックス 「カーメーーー!!」

カメックスは右拳を構えて走ってくる。
ホエルオーはまだ起きない…!

ドッガァァァァッ!!

ホエルオー 「!! ZZZ〜」

ホエルオーは少しだけ後ろにずらされる。
でも、まだ倒れはしない。
このまま、耐え切れればまだ!

フィーナ 「カメックス『ハイドロポンプ』!!」

カメックス 「カメーーー!!」

バシュウウウゥゥゥッ!!

続けてカメックスの攻撃。
ホエルオーもここで反応する。

ホエルオー 「ホエッ!」

ハルカ 「目覚めた!? ホエルオー『はねる』!!」

バシャアアアアアァァァッ!!

ホエルオー 「ホエーー!!」

ホエルオーは声には反応するも、遅れる。
『ハイドロポンプ』をマトモに受けてしまった。
これで、ホエルオーも大分体力を削られてしまった…現状は変わらないのかもしれない。

ホエルオー 「ホエッ、ホエッ!」

ハルカ (ホエルオーの体力は…? まだいけるかしら…)

フィーナ (判断が難しいな…ただでさえ体力のあるポケモンだ)
フィーナ (『ハイドロカノン』は一度見せたら、もう使えないだろうな…となると、相手の体力で威力が変わっちまうけど!)
フィーナ 「カメックス『しおみず』だ!!」

ハルカ 「!? また新技!」

やっぱり出てきた。
果たして効果は!?

カメックス 「カメーーッ!!」

ドバァッ! ドバッ!!

カメックスは両肩のキャノンから水の塊をふたつ撃ち出した。
そして、それはホエルオーに直撃する。

バシャアァッ!! バシャアッ!!

ホエルオー 「ホ、ホエ〜〜〜!!」

ハルカ 「!? 効いてる…見た目はそんなに強そうな技に見えないのに…」


キヨミ 「あれが『しおみず』か…確か、相手の体力がある程度減ると威力が上がるのよね」

キヨハ 「こっちでは珍しい技よね…滅多に見ることはないわ」

メフィー 「でも、『わざマシン』があったりしますから、結構見る機会はあるんですよね」

ヒビキ (とはいえ、ホエルオーの体力が判断できない所だ)
ヒビキ (運良く、ダメージがあったようだが、失敗していたらどうなっていたかな)


ハルカ 「…く、よくわからないけど、頑張れホエルオー!!」

ホエルオー 「ホエッ!」

ホエルオーは何とか耐えてみせる。
よし、これならまだ戦えるわね。
でも、いつの間にか距離は離れてる、この距離だとこっちの攻撃はほとんど当たらない。
飛び道具では勝負にならない…でも接近しても相手には攻撃方法がある。

フィーナ 「こっちはまだまだ行けるぜ!? カメックス追加の『しおみず』だ!!」

ハルカ 「だったら、こんな技はどう!? ホエルオー『じしん』!!」

ホエルオー 「ホエーーー!!」

ゴゴゴゴゴゴゴッ! ドッゴアァァッ!!

カメックス 「カメーー!!」

カメックスは攻撃する前に吹き飛ぶ。
技マシンで覚えさせておいた『じしん』が役に立った。
カメックスは一気に態勢を崩す。

ハルカ (…? この技…まさかこの子も!? だったら、やるしかない!!)

私は図鑑でホエルオーの技を見ていると、またしても新たな技を発見した。
どうやら、ホエルオー『にも』出来るらしい。

フィーナ 「? 何考えてるのか知らないけど、カメックス、『こうそくスピン』だ!!」

カメックス 「カ、カメッ!!」

ハルカ 「行けっホエルオー『しおみず』よ!!」

フィーナ 「!? まずい! 止まれカメックス!!」

カメックス 「カメーー!?」

ギュルギュルギュル!!

しかし、カメックスはもう攻撃モーションに入っている、すでに止まれない。
そして、ホエルオーは口から巨大な『しおみず』を吐き出す。

ギュバァッ! バシャアアンッ!!

カメックス 「カ、カメーーー!!」

ドッシャアァッ!!
ホエルオーの『しおみず』を食らい、カメックスは地上に落ちて苦しむ。
なるほど…こうなるわけか。
『しおみず』の効果は、相手の体力が半分以下なら威力が倍になる効果…と図鑑に書いてあった。
ああなるわけね。

カメックス 「カ、カメ〜!」

フィーナ 「ちぃ…まさか逆に食らうなんて!」

ハルカ 「弱っているわ! ホエルオー、トドメの『しおみず』!!」

ダメ押しにこれほど面白い技はない。
相手のダメージが大きければ、威力は上がるのだから。
まさにトドメ用の技と言えるだろう。

フィーナ 「今度はそっちが焦ったな! カメックス『ハイドロカノン』!!」

ハルカ 「!?」

ホエルオーとカメックスが同時に動く。
互いの水技が同時に発射される。

ギュバァッ!! バシュウウウウウウゥゥゥゥゥッ!!!
ドッ! ズバァァァァァァァッ!!

ハルカ 「!!」
フィーナ 「!!」

水同士の技の勝負は一瞬だった。
カメックスの『げきりゅう』を伴った『ハイドロカノン』を止める術はもはやホエルオーにはなかった…。

ホエルオー 「ホエ〜〜〜…」

ハルカ 「…く、ここまでか」

フィーナ 「ふい〜〜! 勝った勝った! でも危なかったぜ!!」

メフィー 「フィーナちゃん、おめでとう〜」

キヨミ 「…さて、次はどうする?」

キヨハ 「そうね…じゃあジャンケンで勝負よ」

キヨミ 「…望むところよ! ジャン! ケン!」

キヨハ 「ポン♪」

キヨミ 「………」

キヨハ 「はい、私の勝ち〜」

キヨミ 「卑怯よ! グーチョキパーは無しでしょ!?」

キヨハ 「無しと言った覚えはないわよ? あなたも相変わらず、ツメが甘いわねぇ…戦いは非情よ?」

キヨミ 「認めたくないものね…自分の若さゆえの過ちというものは!」


ハルカ 「とりあえず、戻ってホエルオー…」

向こうではすでに誰が来るか決まったようだし。
とはいえ、もうそろそろ容量が増大し始めている…どこまでやるのかしら?

キヨハ 「さて、久し振りにハルカちゃんとバトルね」

ハルカ 「お、お手柔らかに…」

キヨハさんは笑いながら、ボールを構える。
何が出てくるのやら…。

ボンッ!

ヘルガー 「ヘルッ!」

ハルカ 「! ヘルガー? でも、あのヘルガーって…」

私はその時、キヨミさんの言葉を思い出した。
確か、『えんとつやま』で会った時だ…確かあの時、キヨミさんは姉さんからポケモンを借りていると言った。
つまり、あのヘルガーは…。

ハルカ (本来、持つべきトレーナーの所に戻った…)

キヨハ 「さて…何で来るの?」

ハルカ 「あ、えっと…そうですね」

私は熟考する。
この際、相性はどうでもいいかもしれない。
相手に合わせて成長できそうなポケモンをチョイスするべきでしょうね。
だったら、今鍛えるべきは…。

ボンッ!

コノハナ 「コノ〜♪」

久し振りの登場に、コノハナは嬉しそうな顔をする。
相変わらず、トロそうな動きでのんびりと体を動かしていた。
さて、あれからどう変わったのか…まずはそこから考えないとね!

キヨハ 「それじゃあ、まずは軽く行きましょうか…ヘルガー『かみつく』」

ヘルガー 「ヘルッ!」

ハルカ 「来るわよ! コノハナ『タネマシンガン』!!」

コノハナ 「コノ〜〜」

ガブウゥッ!!

コノハナ 「! コノ〜」

ハルカ 「うわ…モロ」

相変わらずの遅さで、モロに左肩を噛み付かれるコノハナ。
さすがに大きさが違うので、そのままヘルガーはコノハナを地面に押し付けた。

ズシャアッ!!

コノハナ 「ノ〜〜〜!!」

ズバババババババッ!!

ヘルガー 「! ヘルッ!!」

そしてコノハナは地面に叩きつけられながらも、『タネマシンガン』で反撃する。
至近距離で喰らったヘルガーは、口を離してさがる。

キヨハ 「…今ひとつにしては効いてるみたいね、ヘルガーの防御力じゃしょうがない、か」

ハルカ 「じゃんじゃん行くわよコノハナ! 『だましうち』!」

コノハナ 「コッノ、コッノ〜♪」

ヘルガー 「ヘル?」

ドガァッ!!

伝家の宝刀、よそ見が炸裂する。
ヘルガーはコノハナの見ている方向に気を取られて、コノハナの右手刀をかわせずに脳天から喰らった。
効果は今ひとつ…なのだけど、さすがのヘルガーも痛いらしい。

キヨハ 「ハルカちゃん、中々怖い技を使ってくれるわね…」

ハルカ 「あはは…どうも」

キヨハさんが笑顔で褒めてくれる。
どうやら、上級トレーナー相手でも十分通用するようだ…空恐ろしい。


キヨミ (…今の一瞬、何が起こったのかしら?)

フィーナ (明後日の方向見ていた所まではわかってるんだけどなぁ…)

メフィー 「???」

ヒビキ (成る程な…あれでかわすのは、ほぼ無理だろうな)

サヤ (『ずぶとい』性格だからこその技でしょうね…普通の精神ならとても怖くて出来ないだろうし)


ハルカ 「よし、攻撃は効いてる! だったら、新技も見せてもらうわよ!! 『かわらわり』!!」

コノハナ 「コノ〜」

キヨハ 「さすがに、貰う気にはなれないわね…『かえんほうしゃ』」

ヘルガー 「ヘルーー!!」

ゴオオオオォォォッ!!

コノハナ 「!? コノ〜〜〜!!」

ハルカ 「しまった! コノハナ!?」

まともに『かえんほうしゃ』を貰ってしまう。
コノハナは正面から喰らい、怯んでしまった。

コノハナ 「コ、コノッ!」

ブオォッ!!

コノハナは何と『かわらわり』の手刀で炎を吹き飛ばす。
何とか、耐え切れたようだけど、ダメージは大きい…このままじゃやられる!

キヨハ 「さて、どうするのかしら? ヘルガー『かえんほうしゃ』」

ヘルガー 「ヘルーーー!!」

ヘルガーはもう一発『かえんほうしゃ』を放つ。
コノハナはかわせない、こうなったら!

ハルカ 「コノハナ、『にほんばれ』!!」

コノハナ 「!! コ〜ノ〜!」

ゴアアアアァァァァァァッ!!

コノハナは喰らう直前に『にほんばれ』を使う。
すると、『にほんばれ』発動時に出来る小型太陽で『かえんほうしゃ』は消滅した。

キヨハ 「! やるじゃない…そんな防ぎ方をするなんて」

前にランが見せた方法と同じ防ぎ方だ。
もっとも、あの時は水を防がれたんだけど…炎相手でも通用したみたいね!

キヨハ 「でも、それが自分の首を絞めなければいいけどね…『ひでり』の効果はもう知っているでしょ?」

その通り。
『ひでり』は炎を強化する。
ただでさえ、効果抜群の炎だ強力になって飛んでくるのだ。
まともに貰ったら、ご臨終もありうる。
でも、それは喰らったらの話よ!

キヨハ 「今度はどう防ぐのかしら? ヘルガー『だいもんじ』!!」

ヘルガー 「ヘルーーーーッ!!!」

ヘルガーは口に炎を溜め、放出しようとする。
ほんの一瞬だけど、隙が出来た。
私はその隙に指示を出す。

ハルカ 「コノハナ、『ソーラービーム』!!」

キヨハ 「!?」

コノハナ 「コ〜ノ〜〜〜〜!」

ゴオォゥッ!! ドギュアアアアァァァァァァッ!!

日照りにより、チャージタイムが短縮され、『ソーラービーム』は『だいもんじ』とほぼ同時に放たれる。
そして、互いがぶつかり合い、大爆発が起きる。

チュッドオオオオオォォンッ!!!

ハルカ 「くっ!」

キヨハ 「…!」

ヘルガー 「ヘルッ!?」

コノハナ 「!!」

どうやら、互いの攻撃が相殺されたようね。
運がいいとも言える…あの威力の攻撃を相殺できるとは、壱か罰かの賭けだった。
二度目はないかもしれない…でも、もうやるしかない!

キヨハ 「…あの威力を相殺するとは思ってなかったわ。さすがにモーションの大きい『だいもんじ』じゃ押し切れないか」
キヨハ 「しょうがないわね…これもハルカちゃんの特訓だものね、それじゃあこんな技も見せてあげるわ」
キヨハ 「ヘルガー…『わるだくみ』」

ヘルガー 「!! ヘルッ!」

ハルカ 「? 『わるだくみ』?」

名前だけではどんな技かわからない。
ヘルガーは低い唸り声をあげて、何か考えているようだった。

ハルカ (この状況で考えられるのは、多分能力アップ!)
ハルカ 「だったら、押し切るしかない! コノハナ『ソーラービーム』」

コノハナ 「コ〜ノ〜〜〜!!」

ギュアアアアァァァァァァッ!!

ヘルガー 「! ヘル〜〜!!」

『ソーラービーム』の直撃を受け、ヘルガーは怯む。
さすがに効いているはず! このまま願わくば押し切れ!

キヨハ 「…判断は悪くないんだけどね、ヘルガー『オーバーヒート』」

ハルカ 「!?」

ヘルガー 「! ヘールーーーーーーー!!!」

ドッ! ゴバアアアアアアアアァァァァァァァッ!!!

コノハナ 「!!」

カッ! チュッドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォンッ!!!!

ハルカ 「きゃああっ!?」


キヨミ 「きゃっ!」

フィーナ 「ひえっ!?」

メフィー 「ぴみゃ〜〜〜!!」

ヒビキ 「!?」

サヤ 「……!」

ヘルガーの『オーバーヒート』はコノハナの『ソーラービーム』を貫通し、コノハナの肩をかすめて後ろの地面に着弾する。
その瞬間、大爆発。
とてつもない爆発で、コノハナはそれだけで吹き飛び、前のめりに倒れる。
近くにいた私でさえも踏ん張らないと飛んでしまいそうに成る程だ。
着弾した地面は直径1メートル以上のクレーターが出来るほど凄まじい威力だった。
幸い、一般客は誰もいなかったので騒ぎにはならなさそうだ。
とはいえ、後でクレームでも来るんじゃないだろうか?

ハルカ (しっかし…わざと外したって訳ね、直撃してたらどうなってたか)

キヨハさんのヘルガーも『オーバーヒート』を遠距離で撃ってきた。
予想してなかったとはいえ、威力が桁違い。
あの威力から察するに、『わるだくみ』と言う技は特殊攻撃力の上昇と予想してみた。
いくらなんでも『ひでり』だけであの威力になるとは思えなかったからだ。
さすがのコノハナも驚きを隠せないようで、尻餅を着きながらキョトンとしていた。

キヨハ 「大体予想は出来ているかもしれないけど、『わるだくみ』は『とくこう』をグ〜ンと上げる技よ」

予想通りだったらしい。
そんな技もあれば、便利ねぇ…私のポケモンは攻撃力を一気に増加させる技を覚えてないのよねぇ。

キヨハ 「ついでだから教えてあげるわ…もしかしたら、ハルカちゃんのポケモンも『わるだくみ』が使えるようになるかもね」

シュボンッ!

そう言って、キヨハさんはヘルガーをボールに戻す。
何だか、気になることを言ってくれたけど…。

ハルカ (でも、今度は図鑑に載ってない…か)

まぁ、キヨハさんももしかしたら…と言っているし、覚えるとは限らない、ってことなんでしょうね。
私はコノハナをボールに戻した。

シュボンッ!

キヨミ 「それじゃあ、やっと私の出番ね!」

キヨハ 「さぁ、そろそろ終わりにしましょう」

フィーナ 「そうですね、フィールドも掃除しないと…」

メフィー 「大変そうですね…」

ヒビキ 「…俺は先に戻る」

サヤ 「…私は買い物をしてきます」

キヨミ 「……」

すでにお開きモードの皆を尻目に、キヨミさんはひとりやる気になっている。
かく言う私も、そろそろ疲れた。

ハルカ 「さってと…地面どうしようかな?」

キヨミ 「……」(しくしく)

ハルカ 「ま、まぁ…また次の機会にお願いしますからっ!」

キヨミ 「そうね、そうよね…どうせもう容量がないものねっ」

キヨミさんは意味不明な言動を発してどこかへ行ってしまった。
う〜ん、案外繊細ねぇ…。

キヨハ 「もう…さっさと帰っちゃって」

フィーナ 「これ、どうしましょう?」

メフィー 「砂、集めます?」

結局残ったのは私を含めた4人。
とはいえ、さっきの爆発で抉られた地面は、ちょっとやそっとの砂では埋められそうになかった。
さすがにこれは…外から運ばないと無理なんじゃ?

ハルカ (うん…待てよ?)

私はふとしたことからとんでもないことを思いつく。
我ながら、頭の悪い使い方かもしれないが、この際緊急事態ということで!

ハルカ 「グラードン、お願い〜♪」

ドギュウウンッ!!

グラードン 「グオオオオォォォ!!」

カアアァァァァァァァ!!

フィーナ 「暑っ、暑いってハルカさん!!」

キヨハ 「あら、冬場にはちょうどいいわよ」

メフィー 「ちょっと暑すぎですけど…」

グラードンの『ひでり』で広場は気温が倍加する。
今はすっかり冬なので、暖房代わりにちょうどいいのだけれど…今はそれが目的じゃない。

グラードン (どうしたハルカ? 我の力が必要になったのか?)

ハルカ 「ええ! あなたの力を貸して頂戴!!」

キヨハ 「…成る程ね」

メフィー 「ハルカさん、ついに幻聴が?」

ドゴッ!

フィーナ 「黙ってろお前は」

メフィー 「ぴぎぃ〜」

とりあえず漫才は置いておいて、私はグラードンに用件を言う。

ハルカ 「グラードン、このクレーターを埋めて!!」

グラードン 「……」

キヨハ 「………」

フィーナ 「……」

メフィー 「新しいボケですか?」

ドゴォッ!

メフィー 「がぴ〜無言で殴らないで〜〜」

ハルカ 「えっと…ダメ?」

私はちょっと可愛い仕草で聞いてみた。
さすがのグラードンも、ちょっと考えているようだった。

ハルカ 「いや、ほらっ、どうしようもなくなった時に呼べって言ったじゃない!」

グラードン (…身から出た錆か)
グラードン 「グオアァッ!」

ズババババァッ!!

フィーナ 「ひぇっ!?」

メフィー 「ひゃあっ!」

キヨハ 「……!」

いきなりグラードンはクレータに向かって何かを吐き出す。
すると、いとも簡単にクレーターは平らになっていた。
でも、色がちょっと黒っぽい?

キヨハ 「…『マッドショット』ね。でも、これだと間違って誰かが入ったら大変よ?」

フィーナ 「泥ですからね…」

メフィー 「底なし沼のように出れなくなりそうですね…」

ハルカ 「……」

何だか、散々な言われようなんだけど?
私はチラリとグラードンを見る。
すると、グラードンは口を開け。

グラードン 「グオォッ!!」

ゴバァッッ! ドオオオォォォッ!!

フィーナ 「うわひゃあ!!」

メフィー 「むぎゃんっ!」

キヨハ 「!!」

いきなりグラードンは『大文字』で泥を乾かした。
荒療治にも程があるけど、これで地面は完全に出来上がっていた。
まさに、『雨降って地固まる』を一瞬で行ってしまった。
さすが大陸ポケモン…陸を増やした伝説は伊達じゃないわ。

ダン! ダン!!

キヨハ 「…完璧ね」

フィーナ 「ジ〜ザス…」

メフィー 「サノバビッチです〜」


ハルカ 「あはは…はぁ」

私はため息をひとつ…はぁ、長い一日だった…そんな気分だわ。

グラードン (…やれやれ)

ハルカ 「…じゃ、戻って」

ドギュウウゥゥンッ!!

私は何とも疲れたようなグラードンを珠に戻した。
そして、何事もなかったかのように、私たちは待合室に戻って行ったのだった…。



…To be continued




Menu
BackNext
サファイアにBackサファイアにNext




inserted by FC2 system