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POCKET MONSTER RUBY



第57話 『決戦ルネジム! 負けられない戦い!!』




『ルネシティ ポケモンジム リーダー:ミクリ −水を愛する、アーティスト!−』




『1月15日 時刻10:00 ルネシティ・ルネジム・バトルフィールド』


ワアアアアァァァァァァァァァッ!!!

耳がつんざくような歓声。
正直ウザかった。

ハルカ 「………」

ミクリ 「……」

女観客A 「キャーーーー!! ミ・ク・リ・様ーーーーーー!!」
女観客B 「素敵ーーーーー!! こっち見てーーーー!!!」

ハルカ 「…ウザ」

ミクリ 「はははっ、まぁそうぼやかないで! 気楽にしてください!」

そう言って、ミクリさんは 観客相手に愛想を振舞う。
その姿に女性客は大歓声。
まるでアイドルのステージだ…正直、ウザい。


フィーナ 「…凄い歓声ですね」

メフィー 「華やかですもんね〜ミクリさん」

キヨミ 「やれやれ…ね」

キヨハ 「あら、機嫌悪そうね?」

キヨミ 「…別に、そういうわけじゃないけど」

ヒビキ 「…くだらん」

サヤ 「………」

ハルカさんは少なからずプレッシャーを感じているようだった。
このジムは水タイプのジム。
フィールドは陸ではなく、プールを凍らせたフィールドになっている。
トレーナーの立ち位置は、高台のような場所になっており、『なみのり』を使用してもほとんど問題はなさそうね。
ちなみに、室内気温はかなり低い…温度計で測れば、−2℃位…と言った所でしょうね。
それでも、観客席は熱気に溢れており、暑い位に感じられた。
果たして、戦いの場に立っている者はどれほどの気温に感じられるのか。



ハルカ (とうとう、この時が来た)

観客の声は次第に私の耳から掻き消えていく。
集中力が上がっている証拠だ。
私は次第に頭が戦闘モードに切り替わる。
これで、何も聞こえない…私の前にはミクリさんしかいない。
私はいつもこうやってコンセントレーションを高める。
周りがどう騒ごうと、戦う者には関係ない。

ミクリ (…さすがですね、ハルカちゃん、凄い殺気です)
ミクリ (ですが、それだけ殺気を放つとは…ポケモンバトルには必要ないと思うのですが、ね)
ミクリ (まぁ…あのダイゴがあれだけ評価しているのですから、油断はできませんね)

ハルカ 「…ふぅ〜」

私は軽く体を動かしながら、集中する。
今回のジム戦は、実質最後のジム戦。
これをクリアすれば、私は晴れてポケモンリーグへの挑戦が認められる。
負けても、まだ時間はある…とはいえ、気を緩めては駄目だ。
絶対に勝つ! それ位の気迫がないと、そこから先には通用しない。

観客女A 「キャーーーーー! ミクリ様ーーーー!! 」
観客女B 「そんな女、やっつけちゃえーーーーー!!!」

ハルカ 「……」ピク

一瞬、心が揺らぐ。
いかんいかん…こういう時こそ冷静にならねば。


フィーナ 「あの女共…さっきから聞いてりゃ、いい加減に!」

ウオオオオオオオオオオオオォォォッ!!

フィーナ 「!! っとぉ…!?」

突然、咆哮のような叫び声があがる。
そして、次の瞬間。

男観客A 「じゃぁかぁしい!! 女共に何がわかる!?」
男観客B 「おうよ!! そこにおわす方を誰と心得る!?」
男観客C 「そのお方こそ、世界最強の格闘家ーー!! ハルカ様だーーーー!!」
男観客D 「てめぇら、死にたくなかったら、そのお方の名を言ってみろーーーー!!」
男観客E 「言えねぇ奴はノコを引かしてやるぜーーー!!」

女観客共 「………」

ハルカ 「……」

ミクリ 「……」


…し〜ん…

一瞬の静寂。
何か、思いっきり場が退いた…。
いつの間に私は、ハッタリ野郎になったのかしら…。


フィーナ 「う〜ん、モテモテだなハルカさん」

メフィー 「さすがは胸に七つの傷を持つ女…」

ヒビキ 「どう考えても、ないだろうがな」

サヤ 「…ボケにしては、やや無理がありますね」

キヨミ (論議することかしら?)

キヨハ 「本当に面白いわね…ハルカちゃんって」



………。



審判 「それでは! これより第2503回! ポケモンリーグ公認、ルネシティのジム戦を行います!!」

ワアァァァァァァァッ!!

実況 「さぁて、今日もやってまいりました! ホウエン地方で最も華麗と言われるジムリーダー! ミクリ選手のジム戦です!」
実況 「実況は、私! コトウがお送りいたします!!」

会場全体に実況の声が響き渡る。
カナズミの時もあったけど、ここでも実況が入るのね。
観客席もかなり広く、今まで見たジムの中でも最大の広さを誇っていた。
ミクリさんは水タイプの使い手。
ゆえにホエルオーのような大きなポケモンが戦うことを前提に考えられているフィールドなのでしょうね。
こちらとしては、初体験のフィールドだけど、果たしどう影響するのか。

審判 「ルールは5体使用のシングルバトル!」
審判 「交換は両者共に有効! 使用できる道具は『まんたんのくすり』がひとつ!」

ハルカ (5体使用で、道具はひとつか…)

回復させるタイミングはかなり難しい。
5体も使うとなれば、それだけ強力なポケモンを長く戦わせるのに必要となるはず。
もちろん、ミクリさんも使えるのだから、どこで使わせればいいかが重要になってくるわね。

審判 「それでは、ジムリーダー! 最初のポケモンを!!」

ミクリ 「では、行きますよ! 最初はこのポケモンです! 『ラブカス』!!」

ボンッ!

ラブカス 「ラブ〜」

ミクリさんは踊るようなフォームでモンスターボールを投げる。
そしてそこから現れたのは、ハート型の体をしたポケモンだった。
私は念のために図鑑で確認しておく。


ポケモン図鑑 『ラブカス:ランデブーポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:0.6m 重さ:8.7Kg タイプ:みず』
ポケモン図鑑 『熱帯の浅い海で暮らしている。カップルを見つけると後ろにくっついて泳ぐ事から、この名前がつけられた』


ハルカ (確か、スピード系のポケモンよね…)

水中での速度はかなり速かったはず…とはいえ。

びっちびっち!

ラブカス 「ラブ〜…」

ハルカ 「……」

ラブカスは氷の上で跳ねていた。
水棲系なんだから当然だけど…。

ハルカ (あれが、あのポケモンの戦闘態勢…こっちは全力でいくしかない!)

審判 「では…チャレンジャー、ポケモンを…」

ハルカ 「先発は任せるわよ、『コノハナ』!」

ボンッ!

コノハナ 「コッノ〜♪」

私は審判に指示される前にポケモンを繰り出す。
最初に出したのは『コノハナ』
草タイプは水タイプに相性がいいので、先発で出して様子を見るには丁度いいだろう」

コトウ 「さぁ、互いのポケモンが出揃いました! 果たして初戦を制するのはどちらのポケモンか!?」
コトウ 「間もなくバトル開始です!!」

ワアアァァァァァァッ!!
オオオオオォォォッ!!

審判 「それでは! バトル開始!!」

大歓声の後、審判が手を振り下ろし、バトル開始を合図する。
そして、ほぼ同時に私たちは動き出す。

ミクリ 「ラブカス『みずでっぽう』!」
ハルカ 「コノハナ『タネマシンガン』!」

ラブカス 「ラ〜ブーーー!!」

コノハナ 「コ〜〜」

ズバッシャンッ!!

  コトウ 「ラブカスの技がクリーンヒットォ!! しかし効果は今ひとつだぁ!!」

コノハナ 「!! 〜〜ノ〜〜〜!!」

ババババババッ!!

コノハナは相変わらずのトロさで『みずでっぽう』をまともに喰らう。
そして、それに怯むことなく、『タネマシンガン』で反撃に出た。

ミクリ 「ラブカス、『ダイビング』!!」

ラブカス 「ラブッ!」

パキィンッ! バシャァンッ!!

ラブカスはいきなり足元の氷を割って水中に潜る。
『タネマシンガン』はラブカスのいた場所を攻撃しただけで、効果はなかった。

ハルカ (ダイビングは一度水中に潜ってから攻撃する技!)

コトウ 「さぁ、ミクリ得意の水中戦! 一体どんな攻撃が飛び出すのか!?」

ドガァァッ!!

コノハナ 「コノ〜!」

コトウ 「何とーー! ラブカス、コノハナの足元からいきなりの攻撃!! コノハナ、空中に吹っ飛んだぞーー!?」

ハルカ 「! コノハナ『タネマシンガン』!!」

コノハナ 「! コノ〜〜!!」

バババババッ!!

コノハナは空中で首の向きだけ変え、『タネマシンガン』を放つ。
今度はすぐに出たため、ラブカスも反応できてない!

ズドドドドドドッ!!

ラブカス 「ラ、ラブ〜〜!!」

コトウ 「コノハナの『タネマシンガン』が炸裂! 効果は抜群だーーー!!」

ミクリ 「しっかりしなさいラブカス! 『みずのはどう』!!」

ラブカス 「! ラブ〜!!」

ギュッバァッ!!

コノハナ 「!?」

今度はラブカスが反撃してくる。
『タネマシンガン』の当たりが甘かったか…。

バシャァンッ!

コノハナ 「コ、コノッ!」

コノハナは地上に落ちる前に反撃を貰ってしまう。
態勢を崩したまま、コノハナは氷の上に落ちてしまった。

バリィンッ!!

ハルカ 「! しまった!?」

コノハナは氷を突き破って水中に落ちてしまう。
このフィールドの氷は薄い…ゆえに、こんな事態が多発する。
陸上系のポケモンはいかにして地に足つけて戦うかが鍵なのに…。

ハルカ 「コノハナ、戻って!!」

シュボンッ!!

私はコノハナをボールに戻す。
不利な状況を変えるにはこれしかなかった。

コトウ 「チャレンジャー、一旦ポケモンを戻して態勢を整える!」
コトウ 「だが、ジムリーダーに絶好の攻撃チャンスを与えてしまったぞ〜!?」


キヨミ 「…いい判断よ、現状ではベストの選択ね」

キヨハ 「そうね…でも、そこから先をどうするか、ね」

フィーナ 「ラブカスで追撃するなら…」

メフィー 「『ちょうおんぱ』や『こうそくいどう』がベターですよね」

ヒビキ (果たして、ハルカはそれに気づいているのか? それが、この先の戦況を占うだろうな…)

サヤ 「………」


ハルカ 「頼むわよ、ペリッパー!!」

ミクリ 「よし、ラブカス『こうそくいどう』だ!」

ボンッ!

ペリッパー 「ペリ〜ッ」

ラブカス 「ラブラブラブ〜!!」

コトウ 「チャレンジャーが出したのはペリッパーだ! その隙にラブカスは『こうそくいどう』でスピードアップ!!」
コトウ 「さぁ、どう出るチャレンジャー!?」

ハルカ 「ペリッパー! 『でんげきは』!!」

ミクリ 「!?」

ペリッパー 「ペリ〜!!」

ミクリ 「ラブカス『ダイビング』!!」

ラブカス 「! ラブッ!!」

ピシャァアンッ!!

ハルカ 「!?」

『でんげきは』が放たれるよりも速く、ラブカスは水中に潜る。
いくら回避不能の技でも、攻撃範囲に相手がいなければ効果はない。
しまった…焦りすぎた!?

コトウ 「ペリッパー、『でんげきは』を放つも、不発! ラブカスは『ダイビング』で攻撃を回避だーー!!」

ミクリ 「ふぅ…危なかった、『こうそくいどう』を使ってなかったら、間に合わなかったでしょうね」

ハルカ 「……」

私は全神経を集中して水中の動きを見る。
氷が張られている以上、水中からの攻撃は氷を割らなければ出来ない。
だったら、攻撃のタイミングは自ずと読むことが出来るはず!

ピシッ!

ハルカ 「そこね! ペリッパー、氷のヒビに向かって『でんげきは』!!」

ミクリ 「ふ…」

ハルカ 「!?」

ペリッパー 「ペリ〜!」

バキィンッ!! ピシャァンッ!! ズバッシャァ!!

コトウ 「ペリッパー、再び『でんげきは』!! しかし、そこから飛び出したのはただの水だーー!!」

ハルカ 「そんなっ!?」

ミクリ 「読みが浅いですね、ハルカちゃん! ラブカスのスピードを甘く見ては困ります!」

ラブカス 「ラブーー!!」

ペリッパー 「!?」

ドッガァッ!!

コトウ 「ラブカスの『ダイビング』がクリーンヒットォ!! ペリッパー、ゆっくりと落下していく!!」

ハルカ 「く…このタイミングなら! ペリッパー『でんげきは』!!」

ペリッパー 「! ペリ〜!!」

ペリッパーは空中ですぐに態勢を立て直し、反撃に移る。
だけど、ミクリさんはすぐに対応する。

ミクリ 「同じ技を何度も使うのは、愚行ですよ! ラブカス、『みずのはどう』を目の前に集中させるのです!!」

ラブカス 「ラブ〜!!」

ギュゥゥン!!

ラブカスは口の先で水を集める。
そして、その水を口先に集めたまま…。

ペリッパー 「ペリ〜!!」

ピシャァンッ!!

ハルカ 「弾かれた!?」

コトウ 「さすがはジムリーダー・ミクリ! 水を使わせればホウエン一!!」
コトウ 「水で弱点の電気を屈折させ、軌道を逸らしてかわしたー!!」

ハルカ 「あ、あんなことも出来るなんて!」

これが、ホウエン地方最強のジムリーダー…弱点の技を持ってしても、手が出せない…。

ミクリ 「さぁ、そのまま撃ち出すのです!!」

ラブカス 「ブーー!!」

ギュッバァッ!!

ラブカスは溜めた水を一気に撃ち出す。
溜めた分、通常よりも威力が高い。
ペリッパーは反応できずに直撃をくらう。

バッシャァンッ!!

ペリッパー 「ペリ〜!!」

コトウ 「ラブカスの『みずのはどう』が直撃! ペリッパー大丈夫か〜!?」

ハルカ 「ペリッパー!?」

ペリッパー 「ペ、ペリ〜…??」

ペリッパーは混乱してしまう。
これはまずい…このままじゃ何も出来ずにやられてしまう!

ハルカ 「…戻ってペリッパー!!」

シュボンッ!

私はペリッパーをボールに戻す。
こうすれば、混乱は回復する。
しかし、相手の攻撃を無条件に一撃受けなければならない…さて、どうするかな?

ハルカ 「…もう一度頼むわよ! 『コノハナ』!!」
ミクリ 「ラブカス『ちょうおんぱ』!!」

ボンッ!

コノハナ 「コノ〜♪」

ラブカス 「ラブー!」

フォフォフォンッ!!

コトウ 「チャレンジャー、再び『コノハナ』を投入! 同時にラブカスは『ちょうおんぱ』発射ーー!!」

コノハナ 「コ〜ノ〜♪」

ハルカ 「? 効いてるの?」

ミクリ 「外れましたか?」

互いに良くわかっていないようだ。
どうにもこの娘は判断が出来ない…。

ハルカ 「まぁいいわ! コノハナ『タネマシンガン』!!」

コノハナ 「コノ〜〜♪」

コノハナはその場で回るようにステップする。
やばい…『こんらん』してるようだ。

ミクリ 「どうやら、効いていたようですね! ラブカス『ダイビング』!!」

ラブカス 「ラブッ!!」

バシャァンッ!!

ラブカスは再び潜る。
再三、この技に悩まされる…一体どう対処すればいいのか?

ハルカ 「んも〜! コノハナ言うことを聞いて!! 『だましうち』で迎え撃つのよ!!」

コノハナ 「コノ〜♪」

しかし、コノハナは命令を聞いていないようだった。
駄目だわ…自然に解けるのを待つしかない。

ラブカス 「ラブ〜!!」

コノハナ 「コノ〜♪」

ババババババババッ!!

ミクリ 「何っ!?」

ハルカ 「何でそこで『タネマシンガン』が!?」

コトウ 「いきなりの『タネマシンガン』!! ラブカス、至近距離でもらってしまったーー!!」

ラブカス 「ラ、ラブ…」

審判 「ラブカス、戦闘不能! コノハナの勝ち!!」

ハルカ 「うっそ…」

ワアァァァァァァッ!!

何とも冗談のような勝利である。
あの娘、どこまでトロいのよ。

ミクリ 「やれやれ…これも運と呼ぶのでしょうか? 仕方ありませんね」

シュボンッ!

ミクリ 「さて、次はこのポケモンです! 『トドグラー』!!」

ボンッ!

トドグラー 「トドッ!」

次に出てきたのはトドグラー。
氷タイプのポケモンでもあるから、コノハナでは不利だ…ここは入れ替えた方が。

審判 「バトル、開始!!」

ハルカ 「コノハナ、戻って!!」

シュボンッ!

私はコノハナを引っ込める。
トドグラーは氷タイプ、だったら…この娘でも相性は悪くないはず!

ハルカ 「行けっ、『バシャーモ』!!」
ミクリ 「トドグラー、『オーロラビーム』!!」

ボンッ!

バシャーモ 「シャモッ…シャモッ!?」

ビィィィィィッ!!

コトウ 「お〜っとぉ、いきなりの『オーロラビーム』! しかし、効果は今ひとつだ!!」

ミクリ 「炎タイプですか…あえて不利なタイプを繰り出すとは」

ハルカ 「バシャーモ、大丈夫?」

バシャーモ 「シャモッ」

大して効いてはいないようだ…これならさほど問題はない。

ハルカ 「さぁ、行くわよ! バシャーモ『にどげり』!!」

バシャーモ 「シャモー!」

ミクリ 「トドグラー『みずのはどう』!!」

トドグラー 「トドッ!」

ドガァッ! バキィッ!!

トドグラー 「トドーー!!」

コトウ 「バシャーモの『にどげり』が決まったー!! 効果は抜群だーー!!」

トドグラー 「ト、トドッ! ドーー!!」

ギュッバァッ!!

ハルカ 「かわせバシャーモ!!」

バシャーモ 「シャモッ!」

バシャァンッ!

バシャーモはジャンプ一番で回避する。
そして、そのまま私は攻撃に移る。

ハルカ 「バシャーモ『ひのこ』!!」

バシャーモ 「シャシャシャ!」

ゴゴゴゴゴゴッ!!

トドグラー 「!! トドッ!」

ハルカ 「!? あまり効いてない…? 相性は普通のはずだけど」

ミクリ 「トドグラーの脂肪に炎は今ひとつですよ! トドグラー『みずのはどう』!!」

トドグラー 「トドーー!!」

ギュバァッ!!

バシャーモ 「! シャモーー!!」

コトウ 「『みずのはどう』がクリーンヒットーー!! こちらも効果抜群だー!!」

ハルカ 「まずい! バシャーモ!?」

バシャーモ 「シャ、シャモ…!」

かなり効いている! まずった!
炎が効きにくいとは…予想外。

ハルカ 「こうなったら…ダメで元々! バシャーモ『オーバーヒート』!!」

ミクリ 「トドグラー『ダイビング』!!」

バシャーモ 「シャモーーーーー!!」

ゴッ! ゴバアアアアァァァァァ!!
バッシャァンッ!!

バシャーモは、グラードン戦で新たに覚えた、遠距離型の『オーバーヒート』を口から放つ。
しかし、ミクリさんの的確な指示に、これは不発に終ってしまった。
これで一気にバシャーモは力を失い、動きが鈍くなる。

コトウ 「トドグラー間一髪で回避ーー!! バシャーモ絶体絶命か!?」

ハルカ 「外した!?」

バシャーモ 「シャ、シャモ…」

トドグラー 「トドー!!」

ズバシャアンッ!!

バシャーモ 「シャモーーー!!」

バッシャーーンッ!!

バシャーモ 「………」

トドグラーは水中からバシャーモの真下に移動し、『ダイビング』で攻撃する。
相手を見失ってしまったバシャーモにかわす術はなかった。

審判 「バシャーモ戦闘不能! トドグラーの勝ち!」

コトウ 「何とか切り替えしたジムリーダー! これで4対4だ!」
コトウ 「さぁ、次に出すのはどんなポケモンだ!?」

ハルカ 「…く、頼むわよ! 『ホエルオー』!!」

ボンッ!

ドッ! ズバッシャアアアアアアアアアアアアアァァァァァンッ!!!!

ミクリ 「!?」

ハルカ 「わわわっ!!」

ホエルオー 「ホエ〜〜」

ホエルオーが出たと同時に氷がほとんど全て沈む。
さすがに大きさが違うだけに、一気に氷が減少したわね。

ミクリ 「ホエルオーですか…」

審判 「バトル、開始!!」

コトウ 「さぁ、ホエルオー対トドグラー! 勝つのはどっちだーー!?」

ハルカ 「ホエルオー『しおふき』!!」

ミクリ 「トドグラー『みずのはどう』!!」

ホエルオー 「ホエ〜〜!」
トドグラー 「トドーー!!」

ギュバァッ! ゴゴゴッ!!

ホエルオー 「ホエーー!!」

ホエルオーは『みずのはどう』をまともに受けながら、体を振るわせる。
そして、一気に水を頭上へと噴き上げた。

ゴゴゴゴゴゴゴバァッ!!

トドグラー 「ト、トドッ!? トドーーー!!」

ドババババァンッ!!

トドグラー 「と、トドッ!!」

トドグラーは耐え切る。
あれだけの水量を貰っても無事なのか…凄い体力ね。

ハルカ 「でも、これで終わりよ! ホエルオー『みずのはどう』!!」

ミクリ 「トドグラー『ダイビング』!!」

ホエルオー 「ホエーー!!」

ドギュッバァッ!

トドグラー 「トドッ!」

バッシャァンッ!!

トドグラーは潜って技を回避する。
今回のバトルは本当にこれをよくやられるわね…でも!

ハルカ 「いい加減、対策は出来てるわよ!! ホエルオー『なみのり』!!」

ミクリ 「!? しまっ!!」

ホエルオー 「ホエーー!!」

ザザザザザザザァァァァァッ!!!

コトウ 「ホエルオーの『なみのり』! フィールドの水が一気に流れ出すぞーーー!?」

ザッパアアアアアアアアァァァァンッ!!

トドグラー 「ト…トド〜〜」

水中に潜り、安全と思ったトドグラー。
しかし、『なみのり』は水中の相手に対してもダメージを与えることができるのだ。
これにより、トドグラーは水中でフィールドの端に叩きつけられた。

審判 「トドグラー戦闘不能! ホエルオーの勝ち!!」

ハルカ 「よっし! 2体目!!」

ミクリ 「見事です…あれをやられてはかわしようがありませんね」

シュボンッ!

ミクリ 「さて、次に行きましょうか! 『アズマオウ』!!

ボンッ!

アズマオウ 「アッズ〜〜」

出てきたのは『きんぎょポケモン』アズマオウ。
前にも何回か見たことはあるし、戦ったこともある。
攻撃力の高いポケモンだから、気をつけないと…。
とはいえ、まずは図鑑チェックよ。


ポケモン図鑑 『アズマオウ:きんぎょポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:1.3m 重さ:39.0Kg タイプ:みず』
ポケモン図鑑 『秋になると♀にプロポーズするために川底で踊る♂を見ることができる。体の色が最も美しい季節』


ハルカ (魚としては結構大きいけど…)

ホエルオー 「ホエ〜」

これに比べれば、蟻のようなものね…。
とりあえず私はこのまま戦うことにする。

ミクリ 「さぁ、行きますよ! アズマオウ『つのドリル』!!」

ハルカ 「へ?」

アズマオウ 「ズママママママーーー!!!」

ドギャルルルルルルルルルッ!!!

ホエルオー 「ホエーーーーーーーーー!!??」

ハルカ 「………」

審判 「…ホエルオー戦闘不能! アズマオウの勝ち!!」

コトウ 「決まったー! アズマオウの『つのドリル』!! 一撃必殺!!」

ハルカ 「冗談もたいがいにしてよね…」

シュボンッ!

まだまだ体力に余裕のあったホエルオーが一撃でダウンしてしまった。
どんな攻撃力なのよ…あれをまともにもらったら、全滅もありうるわね。
さて、これでこちらも3匹…誰で行こうかしら?


キヨミ 「…レベルの低さを露呈したわね」

キヨハ 「ホエルオーは、ハルカちゃんのポケモンじゃ低めのレベルだったのね」

フィーナ 「くっそ…追い抜いたと思ったら、すぐに追いつきやがる」

メフィー 「まだまだわかりませんね…」

ヒビキ (命中率の低い技を食らったのは、運か…微妙なラインだな)

サヤ 「………」


ハルカ 「こうなったら、任せるわよ『ペリッパー』!!」

ボンッ!

ペリッパー 「ペリ〜!」

コトウ 「チャレンジャーはペリッパーを選択! さぁ、今度はどうなる!?」

審判 「バトル、開始!!」

ミクリ (さすがに、連続で『つのドリル』を貰ってはくれないでしょうね…)
ミクリ 「アズマオウ『あまごい』!」

ハルカ 「…天候変化!」

アズマオウ 「アッズマーーー!!」

アズマオウは口から黒い煙玉を吐き、雨雲を作り上げる。

ポツポツ…ザアアアアァァァァァァァァッ!!

ハルカ 「! 視界が…!」

思ったよりも雨がきつい。
ここまで広いフィールドだと、雨で視界が悪くなってしまう。
とはいえ、ペリッパーは目がいいのでこれくらいなら問題ないはず。

ハルカ 「ペリッパー…」

ミクリ 「アズマオウ『たきのぼり』!」

アズマオウ 「ズマーー!!」

ズドオォォンッ!!

ペリッパー 「ペリーー!!」

ハルカ 「速い!? あれほどの速度があるの!?」

予想外のスピードだった。
『あまごい』を使って、すぐに行動してきた。
普通はタイムラグが生まれるはずなのに…。

ハルカ 「反撃よペリッパー、『でんげきは』!!」

ミクリ 「アズマオウ、『つのドリル』!!」

私たちはほぼ同時に指示を出す。
とはいえ、私の方速かったはず、距離もあるし…これなら!

ペリッパー 「ペ、ペリ…!」

ハルカ 「!? 怯んだ…!?」

何とペリッパーは先ほどの攻撃で怯んでしまう。
そして、まるで予測していたかのようにアズマオウは『つのドリル』を放ってくる。
動きの止まったペリッパーは格好の的でしかなかった…。

ドギャギャギャギャギャ!!!

コトウ 「またしても『つのドリル』がクリーンヒットォ!! 一撃・必殺!!」

ペリッパー 「ペ…ペリ……」

審判 「ペリッパー戦闘不能! アズマオウの勝ち!!」

ハルカ 「…後、2体」

思いっきり追い詰められてしまった…。
幸か不幸か、後に残っているのは水に相性のいい、2体。
ミクリさんのポケモンは後3体…残りの2体も前に見ているからわかっている…。
と言うことは、ここで出すべきポケモンは…。

ハルカ 「…お願い、踏ん張って『コノハナ』!!」

ボンッ!

コノハナ 「コノ〜♪」

コトウ 「チャレンジャー、コノハナで対抗! この嫌なムードを変えられるかぁ!?」

審判 「バトル、開始!!」

ミクリ 「確かに水は草に弱い…ですが、こんな技はどうです? アズマオウ『メガホーン』!!」

ハルカ 「コノハナ『にほんばれ』!!」

アズマオウ 「ズマーーー!!」

コノハナ 「コノ〜ッ」

ドバババババッ!!

アズマオウは凄まじいスピードで迫ってくる。
どんな技か知らないけど、当たらなければどうと言うことはないわ!

カァァァァァッ!!

アズマオウ 「ア、アズマッ!?」

ミクリ 「くっ! このタイミングで放つとは…!」

コノハナの『にほんばれ』によって、小型の太陽が生まれる。
それを目の前で出され、さすがにアズマオウは突進を止めた。
いくら水タイプでも、あれだけの熱量を放つ球体には近づけないようね!
そして、コノハナは球体を真上に放り上げ、『おおあめ』を『ひでり』に変える。

カアアァァァァァァッ!!

ミクリ 「…いけない、アズマオウ!!」

ハルカ 「今度はちょっと遅い! コノハナ、『ソーラービーム』!!」

コノハナ 「コ〜〜ノ〜〜ッ!!」

ギュアアアアアアァァァァァッ!!!

アズマオウ 「ア、アズマーーーーー!!」

バッシャアアアンッ!!

ミクリ 「ア、アズマオウ!!」

コノハナは『ソーラービーム』を即座に発射する。
不意を突かれたアズマオウは直撃を食らい、向かい側の壁まで叩きつけられ、水面に落下した。

アズマオウ 「……」プカ〜〜

審判 「アズマオウ、戦闘不能! コノハナの勝ち!!」

ハルカ 「よしっ、追いついた!!」

これで、2対2。
残りのポケモンを考えても、有利なはず!

コトウ 「『ソーラービーム』が炸裂! アズマオウ、たまらずダウンだーーー!!」
コトウ 「勝負はまだまだわからない! さぁ、ジムリーダーの4体目は!?」

ミクリ 「…さすがですね、ハルカちゃん」

シュボンッ!

ミクリ 「…ですが、まだこれからですよ!」

ボンッ!

ナマズン 「ナマ〜」

出てきたのはナマズン。
しかし、ナマズンは草タイプに対してかなり弱いタイプ。
この状況で出してくると言うのは…。

ハルカ (草に対しての対策があると見るべきね…)

とりあえず、私は図鑑を参照してみることにした。


ポケモン図鑑 『ナマズン:ひげうおポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:0.9m 重さ:23.6Kg タイプ1:みず タイプ2:じめん』
ポケモン図鑑 『縄張り意識がとても強いポケモン。大きな沼全部を縄張りにしている。敵が近づくと暴れて地震を起こす』


ハルカ (それほど、大きいタイプのポケモンじゃないけど、体力は高いのよね)

長期戦になれば不利だ。
ここは一気に攻めてみよう。

審判 「バトル、開始!!」

コトウ 「さぁ、追い詰めるのはどっちだー!?」

ハルカ 「先手を取って、決めるわよ! 『ソーラービーム』!!」

ミクリ 「ナマズン、『まもる』!!」

コノハナ 「コ〜ノ〜〜!!」

ナマズン 「ナマッ!」

ギュアアアアアアアアアァァァァッ!! ピキィィィンッ!!

コトウ 「コノハナ、先制の『ソーラービーム』! しかしナマズンはノーダメージだーー!!」

『守る』の効果により、ナマズンはノーダメージ。
加えて、『ソーラービーム』を放ったコノハナは、若干の隙を作ってしまった。

ミクリ 「ナマズン『ドわすれ』!!」

ナマズン 「ナマ〜〜」

コトウ 「ナマズン『ドわすれ』! これでナマズンの『とくぼう』はグ〜ンと上がったぞー!?」

ハルカ 「く…コノハナ『ソーラービーム』!!」

コノハナ 「コノ〜〜〜!!」

ギュアアアアァァァァァッ!!

ナマズン 「ナ、ナマ〜!!」

コトウ 「『ソーラービーム』がナマズンに直撃! 効果は抜群だーー!!」

ミクリ 「ナマズン『ねむる』!!」

ナマズン 「ナマ〜…ZZZ…」

ハルカ 「回復技…! でも、今の内に!!」

ミクリ 「ナマズン『いびき』!!」

ナマズン 「ZZZ…ナマーッ!」

バァンッ!!

コノハナ 「コ、コノッ!」

ナマズンの『いびき』でコノハナは怯む。
しまった、こういう技も使えるとは…でも、まだ起きるには時間がかかる。

ハルカ 「コノハナ『ソーラービーム』!!」

ミクリ 「こんな技もありますよ! ナマズン『ねごと』!!」

ナマズン 「ZZZ…ナマ〜!!」

ギュッバァッ!!

コノハナ 「!? コノ〜〜!!」

コノハナが『ソーラービーム』を撃つよりも速く、ナマズンの『みずのはどう』がヒットする。
どうして!? 眠っているはずなのに…。

コトウ 「『ねごと』で『みずのはどう』が炸裂! コノハナは混乱してしまったようだぞ〜!?」

ハルカ 「!? コノハナ!」

コノハナ 「コ、コノ〜」

コノハナはフラフラと体を揺らす。
まずい、今の一撃で混乱に!

ハルカ (交換すれば、混乱は直る…けど、ナマズン相手に交代際は危険すぎる!)
ハルカ 「お願い反応してコノハナ! 『ソーラービーム』!!」

コノハナ 「! コ〜ノ〜〜〜〜!!!」

ギュアアアァァァァァァッ!!

ナマズン 「ZZZ…ズマッ!?」

ドギュアアアアァァァッ!!!

コトウ 「『ソーラービーム』が三度炸裂!! ナマズン、目覚めたと同時に大ダメージだー!!」

ミクリ 「く…技をしっかりと出してきましたね! ですが、まだまだですよ! ナマズン『ねむる』!!」

ハルカ 「こんな技だって使えるわよ!? コノハナ『いばる』!!」

コノハナ 「コノ〜ッ!」

ナマズン 「ナっ!? ナマナマッ!? 〜〜〜ナマ!?!?」

ミクリ 「し、しまった!?」

コノハナの『いばる』でナマズンは技を止めてしまう。
『いばる』は相手の攻撃力を倍化させ、代わりに混乱にしてしまうと言う、トリッキーな技だ。
通常の混乱よりも激しく混乱するため、トレーナーの声はより届きにくくなる。
だが、当然デメリットも存在し、それは反撃時の攻撃力が倍加すること…
運悪く混乱が解けてしまったら、敗北必至とも言える技だ…まさに、ギャンブル!

ミクリ 「仕方ありません! ナマズン『みずのはどう』!!」

ナマズン 「ナ、ナマナマ〜〜!!??」

ナマズンはミクリさんの声に反応できず、その場でバタバタとしているだけだった。
私はその隙を見逃さずにコノハナに指示を送る。
こっちも混乱しているけど、そんな物は気合でカバーよ!!

ハルカ 「行けぇ!! 『タネマシンガン』!!」

コノハナ 「コ、コノ〜〜!!」

バタバタ!!

コノハナはその場でバタバタと踊ってしまう…ぬぅ、何ともならなかったか。(汗)

ハルカ 「しか〜し! この際気にせん!! 『だましうち』!!」

コノハナ 「コノッ」

コトウ 「コノハナ、華麗なステップで接近! そして残された氷の上を伝ってナマズンへ近づいていくぞーー!!」

タッ! タッ! タッ!

ミクリ 「くっ!? ナマズン動くのです!! 『ねむる』!!」

ナマズン 「ナマ〜?」

ナマズンは辛うじて混乱から立ち直ろうとする、が…
すでにコノハナはナマズンに接近している、こういう時に限って突然素早く動くから、あの娘は読めない…

コノハナ 「コノ〜?」

ナマズン 「ナマ〜?」

観客 「?」

コトウ 「?」

ドゴォッ!!

コトウ 「あ、ああーー!! いつの間にかナマズンがダウンしているーー!!」
コトウ 「一体何が起こったのかーー!? チャレンジャーはすでにガッツポーズを取っているーーー!!」

審判 「ナ、ナマズン戦闘不能! コノハナの勝ち!!」

審判がややためらいがちに勝利を宣告する。
会場中がキツネにつつまれた様な表情をしていた。
さすがは『だましうち』…回避不能と言うだけあるわね。


キヨミ 「…極悪ね」

キヨハ 「あら、悪タイプらしいわよ」

フィーナ 「上から会場全体を見下ろしてないと、確認不能だよな…」

メフィー 「はえ〜…いつのまに」

ヒビキ 「……」

サヤ 「……後、一体」


シュボンッ!

ミクリ (恐ろしい『だましうち』ですね…わかっていても回避することは出来ない)
ミクリ 「…さて、これが最後のポケモンです!」

ボンッ!

ミロカロス 「ミロー!」

ワアアァァァァァァッ!!

コトウ 「ジムリーダー最後のポケモンはミロカロス!」
コトウ 「ジムリーダーと共に、幾多のバトルを勝利に導いた、ルネジム最強のポケモンだ!!」

ハルカ 「……」

ふと、嫌な思い出が脳裏を過ぎる。
以前にミロカロス使いのトレーナーと戦ってボロ負けした思い出だ。
あの頃とはレベルが違う…同じ結果にはならないはず!
私は、自分のポケモンを信じるだけだ!

審判 「バトル、開始!!」

ミクリ 「さぁ、行きますよミロカロス! 『たつまき』!!」

ミロカロス 「ミロー!!」

ビュオオオオオオオオォォォッ!!!

ミロカロスは尻尾を振り、『たつまき』を作り出す。
『たつまき』は高スピードでコノハナへと迫る。

ハルカ 「かわしてコノハナ!」

コノハナ 「コノッ!」

ミクリ 「ミロカロス『まきつく』!!」

ミロカロス 「ミロッ!」

コノハナ 「コ、コノッ!?」

ガシィッ!!

コトウ 「ミロカロス、コノハナの行動を先読み! 『まきつく』でコノハナを捕らえたー!!」

足場の不利を利用された…。
コノハナは残り少ない氷の上を移動しなければならないため、自ずと回避ルートは絞られてしまう。
そこを読まれてしまっては、どうしようもなかった。

ハルカ 「く…コノハナ! 振りほどくのよ!」

ミクリ 「そうは行きません! ミロカロス『れいとうビーム』!!」

ミロカロス 「ミロ〜〜!!」

コオオオオオォォォキィィンッ!!!

コノハナ 「………」

コトウ 「至近距離で『れいとうビーム』が炸裂! コノハナ、凍りついたーーー!!」

ハルカ 「コノハナッ!?」

ミクリ 「ミロカロス、『アイアンテール』!!」

ミロカロス 「ミローー!!」

ドッガァァァンッ!!

コノハナ 「コノ〜〜!!」

バッシャアアンッ!!

ミロカロスは氷ごとコノハナを攻撃し、氷を叩き割る。
コノハナは糸の切れた人形のように、無力に水中へと沈んでいった。

審判 「コノハナ戦闘不能! ミロカロスの勝ち!!」

ワアアアァァァァァァッ!!

大歓声。
今までで一番大きな歓声のようだった。
それだけ、ミクリさんのミロカロスには期待が集まっているのがわかる。
強いのは百も承知…でもこれに勝てないようじゃ、ポケモンリーグなんて夢のまた夢!!

ハルカ 「ここまで、皆頑張ってくれた…後は、あなた次第だからね!」

ボンッ! きらり〜ん♪

ジバコイル 「PPP〜」

オオオオオォォォッ!!

コトウ 「これは珍しい! 何と、ジバコイルの色違いだー!!」
コトウ 「ジバコイルというポケモン自体がこの地方では珍しいと言うのに、その色違いとは!!」
コトウ 「俄然会場は盛り上がります! いよいよジム戦もオーラスです!!」
コトウ 「果たしてチャレンジャーはバッジをゲットできるのか!? 最後の戦いです!!」

審判 「最終戦! バトル開始!!」

ミクリ 「ジバコイルとは、少々驚きました…ですが、相性の悪さは何度も経験済みです!」
ミクリ 「臆することはありませんミロカロス! 『みずのはどう』!!」

ハルカ 「ジバコイル『10まんボルト』!!」

ミロカロス 「ミローー!!」

ジバコイル 「PGPG!」

ギュッバァッ! バリバリバリィッ!! ドジュウウウゥゥッ!!

コトウ 「ジバコイル、『10まんボルト』で迎撃! 『みずのはどう』をかき消したぁ!!」

ミクリ 「く…さすがに技の相性が悪すぎますね。ミロカロス『ハイドロポンプ』!!」

ハルカ 「大技!? ジバコイルかわして!!」

ジバコイル 「PP!」

ミロカロス 「ミ〜ローーー!!」

ゴバアアアァァァァッ!!

ミロカロスは水を口に溜めて一気に放出する。
圧縮された水を放出すると、それは水柱となってジバコイルを襲う。

ズババババババァッ!!

コトウ「ジバコイル、間一髪回避! ミロカロスは隙だらけだーー!!」

ハルカ 「ジバコイル、『10まんボルト』!!」

ジバコイル 「PP!!」

バリバリバリィッ!!

ミロカロス 「ミローー!!」

コトウ 「ジバコイルの『10まんボルト』がクリーンヒットーー!! 効果は抜群だーー!!」

ミクリ 「く、ミロカロス『じこさいせい』!!」

ミロカロス 「!!」

パァァァァ…

ハルカ 「回復技! ジバコイル、で…!」

私は言いかけて止める。
これでは以前と全く同じ結果だ。
ミロカロスには『リフレッシュ』がある。
状態異常にしても、すぐに回復できてしまうのだ。
ここは力押しで一気に攻める方がいい!!

ハルカ 「ジバコイル『きんぞくおん』!!」

ジバコイル 「GGGG!!」

ギギギギギギギッ!!

ミロカロス 「ミ、ミロ〜〜!!」

何とも寒気がするような『きんぞくおん』が鳴り響く。
これでミロカロスの『とくぼう』はガクッと下がった。
こうしてしまえば、耐久力が下がり、『じこさいせい』もあまり意味を成さなくなる。

ミクリ 「チャンスはこの隙しかありませんね! ミロカロス『さいみんじゅつ』!!」

ハルカ 「!?」

ミロカロス 「ミロ〜〜」

フォンフォン…

何やら、怪しげな音が鳴り響き、ジバコイルは動きを止める。

ジバコイル 「ZZZ…」

ハルカ 「眠った!?」

コトウ 「ミロカロスの『さいみんじゅつ』! ジバコイル眠りに落ちたー!!」
コトウ 「まさに死への秒読みかーー!? チャレンジャー絶体絶命!!」

ハルカ 「ジバコイル、起きて!!」

ジバコイル 「ZZZ…」

ミクリ 「さぁ、一気に決めますよ! ミロカロス『ハイドロポンプ』!!」

ミロカロス 「ミ〜ローーー!!」

ゴバアアアアァァァァァァシャアアアアアアアンッ!!

ジバコイル 「!! …ZZZ」

コトウ 「『ハイドロポンプ』が直撃! ジバコイル、なおも眠っているーー!!」

ハルカ 「そんな、ここまで来て、負けるわけにはいかないでしょ!!」
ハルカ 「ジバコイル! 起きるのよ!! あなたが起きなきゃ、勝てないのよ!?」

ジバコイル 「ZZZ…」

しかし、私の声も空しくジバコイルは眠り続ける。
そして、ミロカロスは追撃を加える。

ミクリ 「ミロカロス、もう一度『ハイドロポンプ』です!!」

ミロカロス 「ミ〜ローーーー!!」

ゴバアアアアアァァァァァッ!!

ジバコイル 「ZZZ…」

ズバシャアアンッ!!

ハルカ 「!?」

ミクリ 「外れた!?」

コトウ 「何と、これもチャレンジャーの持つ運か!? ジバコイル、眠りながら『ハイドロポンプ』をかわしたー!!」


キヨミ (違うわ、かわしたんじゃない…ただ外れただけよ)
キヨミ (『ハイドロポンプ』は水タイプの技でもトップクラスの攻撃力)
キヨミ (でも、それだけに命中率は悪い…現に、ジバコイルがちょっと横にずれただけで、外れてしまった)

キヨハ 「ハルカちゃん、これが最後のチャンスね」

フィーナ 「頑張れーーーハルカさ−−ーん!!!」

メフィー 「頑張ってくださーい!!」

ヒビキ (次のターンで全てが決まるだろう…どちらかが倒れる、そんな気がする)

サヤ 「………」


ハルカ 「ジバコイル! いい加減起きて!!」

ジバコイル 「ZZZ…」

コトウ 「トレーナーの声も届かない! ジバコイル、熟睡状態だーー!!」

ミクリ 「残念でしたね、ハルカちゃん…運も実力の内、今回は私が勝たせてもらいます!」
ミクリ 「ミロカロス、最後にしましょう! 『ハイドロポンプ』!!」

ミロカロス 「ミ〜〜〜!」

ミロカロスが水を溜める。
もう、終わるの…?

ジバコイル 「!!」

ハルカ 「!?」

ジバコイルは、瞬間目を覚ます。
しかし、ミロカロスの攻撃はすでに迫っていた。

ミロカロス 「ローーーー!!」

ゴバアアアアアアアアアアァァァァァッ!!

ハルカ 「ジバコイル『ミラーコート』!!」

ミクリ 「!?」

ジバコイル 「P−−−−!!」

バシャアアアアアアアァァァンッ!!

ジバコイル 「P〜P〜GGーー!!」

パァァァァ…ドギュウウウウゥゥゥンッ!!

ミロカロス 「ミ、ミロッ!?」

ドバアァァァァァンッ!!

コトウ 「ジバコイルの『ミラーコート』発動! 『ハイドロポンプ』を耐え切ったーーー!!」
コトウ 「ミロカロス、逆に大ダメージ!」

ハルカ 「今よジバコイル…!」
ミクリ 「タイム!!」

審判 「! ジムリーダー・回復タイム! バトルを一時中断します!!」
審判 「ジムリーダーには、1分間の回復時間を与えます!」

オオオオオォォッ!!

ハルカ 「…げ」


キヨミ 「…ようやく、か」

キヨハ 「…遅かった位ね」

フィーナ 「そ、そうか…忘れてた」

メフィー 「回復タイム」

ヒビキ (俺まで忘れていたとはな…迂闊だな)

サヤ 「…これで、ふりだしですね」

コトウ 「何と、ここで回復タイムとは! あまりに熱くなりすぎたため、私自身も忘れておりました!」
コトウ 「しかし、これはチャレンジャーにも与えられている条件! 何とここまで来て戦いは仕切りなおしとなりました!」


まさに予想外。
私自身も忘れていたわ…って言うか、多分ミクリさん自身もギリギリまで忘れていたような気がする。
最後の最後で思い出したように宣言したものね。
しかし、これでどうなるか、まるでわからなくなった。
ジバコイルも限界スレスレ…『ミラーコート』で返せたのは僥倖と言っていい。
同じ技は二度もくらってくれないだろう…それはこちらも同じだけど。

審判 「時間です! バトルを再開します!!」

ハルカ 「タイムお願いします!!」

審判 「! チャレンジャー・回復タイム! バトルを中断します!」
審判 「チャレンジャーには1分間の回復時間を与えます!」

私はすぐさまタイムを取る。
もう最後なんだから、惜しむ必要はない。
私は配布された薬でジバコイルを回復させる。

ハルカ 「…大丈夫?」

ジバコイル 「PPP♪」

問題はないようだ…でも、これは相手も同じ状態と言うこと。
互いの手口は、ほとんど出しつくした…これ以上、何が出て来るかは私にはわからない。
私には出来ることをするだけ…ジバコイルの使える技は図鑑を見てわかってはいる。
ただ、どんな効果なのかはイマイチわからないのがある。
そんな不確定な技に頼れるかどうかはわからない…でも。

ハルカ (もう、出来ること全てをやるしかない!)

審判 「時間です、バトルを再開します!!」

ハルカ 「行くわよジバコイル! 『ほうでん』!!」

ミクリ 「!?」

ジバコイル 「PPGG!!」

バチィバリバリバリィ!!!

ミロカロス 「ミロ!?」

コトウ 「ジバコイルの『ほうでん』が炸裂! フィールド全体に電撃が轟くーーー!!」

ハルカ 「うわっ! こんな広範囲の技なのね…」

初めて使った技だけに、全く予測不能。
威力で言えば『10まんボルト』の方が上。
でも、これだけ広範囲に渡る技なら、一気に複数の相手を攻撃できそうである。

ミクリ 「く…ミロカロス! 『しんぴのまもり』!!」

ミロカロス 「ミロッ!」

ポォォォォッ

ミロカロスの体を、淡い白色光が包み込む。
あの技は、状態異常を防ぐ技…これで状態異常技は通用しない。
元からするつもりもないけど!

ハルカ 「ジバコイル『マグネットボム』!!」

ジバコイル 「GG!!」

ヒュゥゥゥンッ…ドバァンッ!!

ミロカロス 「! ミロッ!」

コトウ 「今度は『マグネットボム』が炸裂! 効果は今ひとつだが、ミロカロス面を食らっているぞーー!?」

ハルカ 「そ、そうか…今ひとつなのか」

鋼タイプは水タイプに通用しにくいんだった…忘れてたわね。
でも、思いの外ミロカロスは驚いているようだった。
さすがのミクリさんも、ちょっと驚いてるわね。

ミクリ 「…何を考えているのかわかりませんが! ミロカロス『みずのはどう』!!」

ミロカロス 「ミローー!!」

ギュッバァッ!!

ハルカ 「ジバコイル『ミラーコート』!!」

ジバコイル 「PP!!」

パァァァァァ…ドギュウウゥゥンッ!!

ミロカロス 「ミローー!!」

『ミラーコート』がミロカロスを襲う。
この技は、特殊攻撃技を倍返しにする技。
かなり便利なんだけど、ダメージは消せないため、連発は出来ない。
体力のある時にしか、必然的に使用が出来ないのが難点ね。

ミクリ 「やはりそう来ましたか、ならば、ミロカロス『じこさいせい』!!」

ミロカロス 「!!」

パァァァァ

ミロカロスは回復に入る。
これも『ミラーコート』の弱点になる。
相手が回復技を持っていると、不利なのだ。
折角ダメージを受けて反撃しても、回復されてしまったら意味がない。
とはいえ、この状況まで持っていければ今回は十分!

ハルカ 「ジバコイル『きんぞくおん』!!」

ジバコイル 「GGG!!」

ギギギギギギッ!!

私は前と全く同じパターンで『きんぞくおん』を放つ。
今度は互いに回復タイムはできない。
もう、私に出来ることはこれだけ!

ミクリ 「同じパターンとは…! ミロカロス『さいみんじゅつ』!!」

ハルカ 「来た! ジバコイル『ソニックブーム』!!」

ジバコイル 「PG!!」

ミロカロス 「ミロ〜〜」

フォンフォン…ブォバァァァァッ!!!

ミクリ 「なっ!?」

コトウ 「ジバコイルの『ソニックブーム』!! 凄まじい衝撃波で『さいみんじゅつ』をかき消したーーー!!」

ミロカロス 「ミロッ!!」

ハルカ 「今度こそいっけーーーーー!! ジバコイル『10まんボルト』!!」

ジバコイル 「PGPGPGPGPGーーー!!」

バチバチバチバチバチィ!!!

ミロカロス 「ミ、ミローーーーーーー!!!」

ズバッシャアアアアアアアァァァァンッ!!!

ミロカロスは、『10まんボルト』の直撃を受け、大きな体を水面に叩きつけた。
そして、そこに浮かび上がっているのは…。

ミロカロス 「………」

審判 「……」

ミクリ 「…!」

ハルカ 「……」


キヨミ 「……」
キヨハ 「……」

フィーナ 「立つな…立つな!」
メフィー 「そのまま寝ててください〜」

ヒビキ 「………」

サヤ 「…うん」


審判 「ミロカロス戦闘不能!! よって勝者! ミシロタウンのハルカ!!」

ハルカ 「…!! 〜〜っ! いよっしゃーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

ウオオオオオオオオオオオオォォォォォッ!!!!!

しばしの沈黙の後、審判の勝利宣言。
そして、私の咆哮と共に、観客は一気に叫びだす。

コトウ 「ついに! ついに決着!! 何と勝ったのはチャレンジャー・ハルカ!!」
コトウ 「長き戦いがついに終わり、チャレンジャー天を仰いで咆哮!!」

ミクリ 「…お疲れ様です、ミロカロス」

シュボンッ!


ハルカファンA 「さっすがハルカ様ーーーーー!!」
ハルカファンB 「見事な勝利でしたーーー!!」
ハルカファンC 「どうだ見たか女共ーーー!?」
ハルカフォンD 「うわっははは!! 文句のあるやつは消毒だーーー!!」


ハルカ 「………」

何ともバイオレンスなファンである。
問題起こらなきゃいいけど…早めに退散した方がいいかもね。

ミクリ 「ハルカちゃん…お見事です」

ハルカ 「ミクリさん…!」

いつの間にか、チャレンジャーサイドまでミクリさんが来ていた。
ミクリさんは、微笑みながら私に勝利の証を差し出す。

ミクリ 「おめでとうございます…これがレインバッジですよ」

私は最後のバッジをついにゲットし、握り締める。
震える拳を天高く突き上げ、私はもう一度吼える。

ハルカ 「レインバッジ! ゲットォォォォーーーーーー!!!」

ワアアアアアアアァァァァァァァッ!!!!

私の咆哮に観客はノリにノル。
もう、てんやわんやの観客席だった。


キヨミ 「…これで、ようやく同じラインに立てたわね」

キヨハ 「ええ…まだまだ強くなるわよ、あの娘」

フィーナ 「やったぜハルカさーーーん!! これで一緒にポケモンリーグだーーー!!」

メフィー 「おめでとうございますーーー!!」

ヒビキ (新たなライバルの誕生…と言った所か、ふ…面白くなってきた!)

サヤ (…おめでとうございます、ハルカさん)


コトウ 「おめでとうチャレンジャー・ハルカ! そして、負けてもなお美しいジムリーダーミクリ、ありがとう!!」
コトウ 「刻一刻と迫るポケモンリーグ! まだまだ熱い挑戦者が目白押し!! それでは、次のバトルでまたお会いしましょう!!」
コトウ 「今日は、ルネシティのジム戦をお送りいたしました! 実況は私、コトウでお送りいたしました!!」
コトウ 「それでは皆さん! さようなら!!」



………。



? 「…あれが、この地方最強のジムリーダー?」
? 「くだらなぁい…大したことはないわね」
? 「これじゃあ、この地方のリーグは、程度が知れてるわぁ」
? 「まぁ、面白い物は見つけたし、満更無駄でもなかったわねぇ…ふふふ」



………。



キヨミ 「!?」

キヨハ 「? どうかした?」

キヨミ 「…いや、今見知った顔を見つけた気がして」

それは、今いる客席から立ち上がった時のことだった。
一瞬、ここから向かい側の客席出口付近に、長髪のさらりとした髪を靡かせる少女を見つけた。
服装はまるでドレスのような服。
一般的に見れば、お嬢様系の服装にも見えるが、かなり異色なドレスだった。
赤と黒のコントラストで表現されるワンピース型のドレス。
顔は見えなかったけど、薄っすらと脳裏に浮かぶ顔があった。
だが、もしその少女なら、今は丁度ハルカちゃんと同じ位の年齢。
そして、恐らくはポケモントレーナー…。
だが、彼女だとしたら、何故このホウエン地方に?
理由はわからない…でも、彼女がポケモンリーグに参加するとしたら…。

キヨミ (とんでもないことになりそうね…)

キヨハ 「……?」

キヨミ 「ごめんなさい、もう行きましょう」

すでに他の皆はここを後にしていた。
ハルカちゃんもすでに退場している。
観客席も次第に人が少なくなっており、祭りの終わりのようだった…。

キヨミ (本当に…あなたなの? 『ミカゲ』…)



…To be continued




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