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POCKET MONSTER RUBY



第76話 『成長』




『4月9日 時刻18:15 RMUビル・屋上』


ハルカ (どうする…何を出す?)

パチリス 「パッチ…パッチ♪」

私は、次に出すポケモンを決めかねていた。
パチリスは、まだ体力がそれほど減っていない様な素振りを見せている。
だけど、やせ我慢のようにも感じる…判断は難しい。
そして、どうしても危険な感じが拭えなかった。

まず、不安その1・パチリスのスピード。
私のポケモンの中で、最も速いライボルトを上回るスピード…これはシャレにならない。

その2・『とっておき』の攻撃力。
パチリスが最後に出してきた大技。
ライボルトを沈めた技であり、文字通りパチリスの『とっておき』
威力はかなり高いようで、タイプはよくわからない。
パチリスのスピードに合わせられると、きついかもしれない。

その3・ランマさんの存在。
結局、これが一番の問題。
ランマさんの経験を持ってすれば、生半可な策は全て流されてしまう。
結局、正面突破が一番いいのだけど、どうすればいいのやら…

ランマ 「…どないしましたんや? はよ次のポケモンを出してくれなはれ」

ハルカ 「言われなくても…!」

私は、結局ロクな考えも浮かばないまま、この子をバトル上に出す。

ボンッ!

アーマルド 「アーマッ!!」

ランマ (岩タイプか…さすがに『とっておき』は無理やな)
ランマ (スピードじゃ歯が立たん思て、パワー勝負に来たか)
ランマ (せやけど、そう上手くはいきまへん…)
ランマ 「パチリス『ほうでん』や!」

ハルカ 「アーマルド『まもる』!!」

パチリス 「パッチ〜〜〜!!」

バチバチバチィッ!! ババババッ!! ピッキィィンッ!!

アーマルド 「…! アマッ!」

アーマルドは『まもる』で攻撃を無効化する。
ここまではいい…問題はこの後。
スピードじゃ勝負にならない…とはいえ、攻撃を当てなければ倒せない。
弱点の地面タイプ技は簡単にもらってくれるとは思えない…何とか別の技で攻撃しないと多分駄目だ。
まずは、状況を作る。

ランマ 「いつまで守り切れるやろな…パチリス『かみなり』や!!」

ハルカ 「!? 大技狙い! アーマルド『すなあらし』!!」

パチリス 「パッチ〜…!! パチィーーー!!」
アーマルド 「…!! アーーマーーーー!!」

カッ! ピッシャァァァァンッ!! ドビュゴオォォォォォッ!!!

まず、パチリスの『かみなり』がクリーンヒットする。
だけど、アーマルドはそれを耐え抜いて『すならし』を巻き起こした。
これで、状況は変わる!

ランマ (さすがに倒しきれんかったか…パチリスの攻撃力やと、これが限界やな)
ランマ (さて、状況は芳しくあらへん…せやけど、交換はでけへんな)
ランマ 「もう一踏ん張りや! 『あまえる』!!」

パチリス 「! パッチ〜ン♪」

アーマルド 「ア…アマ」

パチリスは、アーマルドに甘えだす。
それを見てか、アーマルドは明らかに脱力した。
く…ここで攻撃力ダウンか。

ハルカ 「だったら、上げるまでよ! アーマルド『つるぎのまい』!!」

アーマルド 「! アーッマ!! アマッ!!」

ズシンッ! ズシシンッ!!

パチリス 「!? パチパチッ!」

アーマルドは地面を踏み鳴らすように、大きく舞う。
これで、下げられた分はチャラ。

ランマ (しもたな…それを覚えとったんか)
ランマ (『すなあらし』の状況の中、時間がかかればかかるほどパチリスは不利…)
ランマ (せやかて、この状況で攻撃しても有効な攻撃は与えにくい…)
ランマ 「止むをえんか! パチリス『いかりのまえば』!!」

パチリス 「パッチンッ!!」

ダダダダッ!!

ハルカ (来た! やっとの接点!)

パチリスは一直線にアーマルドへと接近していく。
まだ『つるぎのまい』が終わっていないので、アーマルドにかわす術は無い。
だけど、これはある意味最大のチャンス。

ガッキンッ!!

アーマルド 「ア、アマ〜!!」

ハルカ (効いてる!? 防御力の高いアーマルドでも、そんなに…)

予想以上にアーマルドは苦しむ。
だけど、体力はまだある、私はここぞとばかりに反撃を指示する。

ハルカ 「アーマルド! 『ロックブラスト』!!」

アーマルド 「ア〜マーーー!!」

ズドドドドッ!! ドガガガガァンッ!!

パチリス 「パッチーーー!!」

ドッシャァッ!! ズザザァッ!!

至近距離で、アーマルドの口から多量の『岩』がパチリスに襲い掛かる。
この技は、アーマルドの飛び道具でかなりの高威力。
命中率がかなり問題だけど、この距離なら当てやすい。
パチリスは5発全弾ヒットして大きく吹っ飛んだ。

ランマ 「…OKや、戻り」

シュボンッ!

ランマさんはパチリスを戻し、次のボールを手に取る。
まるで動じていない…冷静そのもの。
この事態も想定範囲ってことね…。

ランマ 「おいでませ、『ラプラス』!」

ボンッ!!

ラプラス 「ラプー!」

ハルカ 「う…大きいわね」

相手は、アーマルドよりも大きい。
確か、以前に見たことがある、水タイプのポケモンだ。
耐久力がかなり高く、打たれ強い。
だけど動きはそれほど速くは無かった、先手を取れれば案外…?

ランマ (考えとるなハルカちゃん…せやけど、読みやすいわ)
ランマ (ここまでのバトルで、こっちは3体失った)
ランマ (状況は押されとるけど、これでハルカちゃんのパターンは大体読めた)
ランマ (こっからは…ワテも本領発揮や)

ハルカ (…ランマさんの表情は変わらない、だけど…得も知れぬ圧迫感を感じる)

ランマさんは、真っ直ぐ私の目を見ていた。
その瞳からは、冷たい視線が突き刺さる、まるで冷たい心を持った、機械の様な印象があった。

ハルカ 「アーマルド! 『ロックブラスト』!!」

ランマ 「ラプラス『ハイドロポンプ』」

アーマルド 「ア〜マー!」
ラプラス 「ラプーーーー!!」

ズドドドドドッ!! ドババババババッ! バッシャアアアアアァァァンッ!!

アーマルド 「ア、アマーーーーー!!」

ドズザアアアアアアアァァァンッ!!

ハルカ 「ア、アーマルド!?」

何と、アーマルドは一発でのされてしまう。
いくら、効果抜群と言っても、砂嵐の状況でこれほど的確に狙ってくるなんて…。

シュボンッ!

ハルカ (く…まさかこっちよりも後に指示して先に動いてくるなんて)
ハルカ (『ロックブラスト』で押し返すのは無理だったか…)

ランマ (迷いが生まれたな…ラプラスは水タイプ)
ランマ (有効な電気タイプのライボルトを失ったとあっては、不安が付きまとうやろ)

ハルカ 「……」

これで、3体3…互いにほぼタイの状態。
砂嵐はもうちょっと続く…私の残りのポケモンは、マッスグマと他2体。
ランマさんのポケモンは、ムウマとラプラス、他1体か。
ゴーストタイプにはノーマルタイプが比較的有効。
マッスグマは、まだ残すべきでしょうね。
と、なると…この時点で有効な攻撃を放つポケモンは!

ハルカ 「行くわよ『ジュペッタ』!」

ボンッ!

ジュペッタ 「………」

ジュペッタはいつもの無表情で、相手を睨む。
ラプラスは、それに動じることなく睨み返していた。

ランマ (ジュペッタか…ゴーストタイプでは攻撃力が自慢のポケモンやな)
ランマ (スピード差は微妙やな…普通の考えならこっちの方が遅いと踏むべきか)
ランマ (さて…まずはどないしよか)

ハルカ (さて、ランマさんが動く前に、行くわよ!)

ジュペッタ (了解だ…任せろ)

バチバチバチィ!!

ラプラス 「ラ、ラプーー!!」

ランマ 「何やと!? 突然攻撃してきよった!!」

ハルカ 「……」 グッ!

私は拳を握り、小さくガッツポーズ。
さすがのランマさんも、心の声までは読めない。
私の能力のひとつだけど、これはまだジュペッタにしか『送信』ができないという代物。
しかも、ジュペッタからじゃないと『受信』も不可…要するに、ジュペッタ以外じゃまだ成立しない行動。
ランやフウ程になれば、相手の心も読めたり、予知もできたりと、とにかく便利。
私はまだそれほどじゃないけど、少しづつ慣れていくしかない。

ランマ (指示なし…いや、読ませとるわけか)
ランマ (ハルカちゃんには、エスパーの素質があるわけやな…こら厄介や)
ランマ (せやけど、タネがわかったなら対処のしようはあるで)
ランマ (要は…相手の考えを読めばええんや)

ランマさんは驚いた表情から一転、微笑する。
まさか、対応策があるって言うの!?

ハルカ (だけど、ランマさんにそんな特別な能力があるとは限らない! ここは強気で行くわよ!)

ジュペッタ (…よし)

ランマ 「来るでラプラス! 『こおりのつぶて』や!」

ラプラス 「ラプッ!」

ヒュヒュヒュッ!! ドガガッ!!

ジュペッタ 「!?」

ハルカ 「!? ジュペッタ!」

ラプラスは素早い攻撃でジュペッタを止めた。
あの技は、ミカゲのマニューラがよく使っていた技だ、飛び道具で威力は低いけど、高速で出せる技。
ラプラスの素早さが遅くても、このスピード…あの技自体の性能が、先制攻撃用ってことね。
とはいえ、威力はそこまで大したこと無い、ジュペッタならまだ!

ランマ 「次は『あられ』や!」

ジュペッタ 「!? …っ」

ラプラス 「ラプ〜」

パラパラパラッ!

ハルカ 「今よジュペッタ! って、どうしたの!?」

ラプラスが動く瞬間、ジュペッタは何かをしようと動きを見せた矢先、動きが止まった。
ラプラスはそのまま『あられ』を使用し、天候が変わる。
そしてジュペッタは苦い顔をした。

ジュペッタ (…『ふいうち』を読まれた、やるな)

ハルカ (!? そういうこと…!)

ランマ (大当たりやな…モロ顔に出とるで)

ランマさんはなおも笑う。
どうやら、ランマさんはこれでも読めるらしい。
瞬時に相手の性格や技を読み、心理を突く…まさに洞察力。
私も、少なからず自信のある方だけど、この人相手にはまるで自信が無い。
そして、それはキヨハさん相手にも言えること。

ハルカ (…相手がキヨハさんでも、同じことになるってわけか)

ジュペッタ (…ハルカ、ここからはお前の声にシフトする)

ハルカ (? どういうこと…)

私は、突然のジュペッタの考えを聞き返す。
すると、ジュペッタはそのまま頭の中で手短に話す。

ジュペッタ (このまま続けても、状況は変わらん)
ジュペッタ (だったら、ハルカの考えで、ハルカの指示を受けて動いた方が、この場は有効だと俺は踏む)
ジュペッタ (…俺より、ハルカの考えの方が読み辛いだろうからな)

ハルカ 「…! しゃあないわね…だったら『シャドーボール』よ!」

ジュペッタ 「ふん!」

ドギュゥゥゥンッ!!

ランマ (なるほど、ストレートに来たか…その方が正解やろな)
ランマ (せやけど、状況は変わらんで!)
ランマ 「ラプラス『ふぶき』や!!」

ラプラス 「ラプ〜!!」

ビュッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォ!!!

ジュペッタ 「!?」

ギュオォォゥッ!!

ハルカ 「ジュ、ジュペッターー!!」

ボッフゥンッ!!

ジュペッタ 「…く」

ジュペッタは何とか踏みとどまる。
ラプラスの強烈な『ふぶき』を食らい、宙に飛ばされ地面に叩きつけられながらも、ジュペッタは立ち上がった。

ハルカ (くっそ…『あられ』のせいで『ふぶき』の軌道が読めない!)

ジュペッタ (この天候下で、『ふぶき』をかわすのは無理だ…後は、できる限りのことをやる)

ハルカ 「!? そう…わかったわ」

ジュペッタは覚悟を決めているようだった。
ラプラスは、決して無傷ではない。
最初の『10まんボルト』が効いているおかげで、体力はかなり減っている。
だけど、今のジュペッタに後押しできる力はない…だから、できる限りのことをやる!

ランマ 「ラプラス『こおりのつぶて』!」
ハルカ 「『ふいうち』よ!」

ジュペッタ 「おおっ!!」

ラプラス 「ラプッ!?」

ドッガァッ!!

ラプラスの攻撃タイミングを読み、ジュペッタは先制で『ふいうち』を決める。
だけど、ラプラスはまだ倒れず、即座に反撃をする。

ドガガガガッ!!

ジュペッタ 「………」

ボスンッ!!

ぬいぐるみが落ちるような音と共に、ジュペッタは再び地面に叩きつけられる。
もう立ち上がれない…ここまでだ。
私は無言でジュペッタをボールに戻す。

シュボンッ!

ハルカ (結局…こうなるのか)

予想はしていた。
前半で有利にはなっていたけど、やっぱり押し返される。
相手がキヨハさんなら、わざとそうする可能性もある。
ランマさんは、ラプラスを繰り出してから、まるでポケモンへの指示タイミングが変わっているように感じた。
相手を見てから動くんじゃなく、先読みして指示を出している感覚。
しかも、その読みが的確…気持ち悪いほどに。
私の手持ちは残り2体…いずれも、ラプラスに相性がいいとは言えない。
だけど、こうなったらやるだけやるしかない!

ハルカ 「任せるわよ! 『ダーテング』!」

ボンッ!

ダーテング 「テン〜…テ〜ン〜♪」

私が繰り出したのはダーテング。
これで、私の手持ちは全部バレた。
だけど、これで開き直れる…不利なのは私だ。
この霰の状況…変えるにはこの娘の力が必要だ。

ランマ (草タイプか…加えて悪)
ランマ (ま、ここまでやろ…とりあえずもらうだけもらってもらおうか)

ハルカ 「ここで落とすわ! ダーテング『はっぱカッター』!!」

ランマ 「『こおりのつぶて』や!」

ラプラス 「ラプーー!」

ヒュヒュヒュッ! ドガガガッ!!

ダーテング 「テ、テン〜〜…! テ〜〜ン〜〜」

ヒュンヒュンッ!! ザシュシュ!!

ラプラス 「ラプ…」

ズゥゥンッ!!

ハルカ 「……」

ラプラスはあえなく倒れる…でも、反撃してきた。
本当なら、無傷で倒すつもりだったのに、予定外のダメージ。
効果抜群の技に、ダーテングは予想外なダメージを負ってしまった。

ランマ (…さて、後は詰めるだけやな)
ランマ 「ほな、任せるで…『ドンカラス』」

ボンッ!

ドンカラス 「カラッ!!」

ハルカ 「く…飛行タイプ!」

何と、ここに来てダーテングに相性が悪い。
ムウマ相手なら、相性はいいんだけど、私はここで究極の選択を選ぶ羽目になった。

ハルカ (ランマさんは、読んでいるはず…予想外の行動は取る暇も無いかも)

相手は鳥系で、素早さは高そう。
加えて、こっちはトロさが目立つ性格。
間違いなく飛行タイプで、まともに戦ったら勝ち目は薄い。
だからと言って、どうする? 退くか?

ハルカ (くっそ…ここで迷うことになるなんて!)

ランマ 「………」

ランマさんの表情からは何も読み取れない。
だけど、こっちが迷っている間に攻撃をしようとは思わないようだ。
何を考えているかなんか、私には読めない。
ただわかっているのは、同じ2体残したバトルでも、私の方が圧倒的に不利だということだ。

ハルカ (もう、やるしかない! 相手の残りと私の残り、後は賭けよ!!)
ハルカ 「ダーテング、『だいばくはつ』!!」
ランマ 「戻り、ドンカラス」

シュボンッ!!

ダーテング 「テ〜ン…!!」

ハルカ 「!?」

洒落にならないことになってしまった。
私が宣言したと同時、ランマさんはポケモンを戻す。
ダーテングはすでにモーションに入っている、もう…止まらない。
そして、ランマさんは何の迷いも見せず、次のポケモンを繰り出した。

ランマ 「『ムウマ』」

ボンッ!

ムウマ 「ムマ♪」

ダーテング 「テーーーーーーーンッ!!!」

カッ!! チュッドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォンッ!!!!!

ダーテングの『だいばくはつ』がフィールドを爆破する。
一瞬の閃光の後、煙と爆音が広がり、耳がやや痛い。
そして、場に残った惨状を私は確認する必要もないまま、私はダーテングをボールに戻す。

シュボンッ!!

ムウマ 「……」 ふぁ〜

ムウマは何のダメージも受けておらず、無邪気にあくびをしていた。
ランマさんは目を瞑って、私の最後のポケモンを待っている。
対する私は、体が震える。
何も出来ない…そんな予感が頭を過ぎる。
そんな考えを払拭しようと私は必死に体の震えを押さえる。
最後のボールを握り締め、私はこの窮地を全てこの娘に託す。

ハルカ 「もう、あなたしかいない! 頼むわよ!!」

ボンッ!!

マッスグマ 「………」

マッスグマは静かに現れ、戦闘態勢を取る。
現在の状況をわかっているのか、すぐにでも飛びかかれる体勢だった。
相手は無傷のポケモンが2体…とても勝てるとは思えない。
でも、負けを認めるのだけは、絶対にしない。

ハルカ (もう、やるしかない…私に出来ること全部!)
ハルカ 「マッスグマ『シャドーボール』!!」

ランマ 「『シャドーボール』や」

マッスグマ 「グマーー!!」

ムウマ 「ムマッ」

ドギュギュウウウゥゥンッ!!! ドバァァンッ!!

ハルカ 「!!」

ランマ 「………」

互いの技がぶつかって消し飛ぶ。
ランマさんは相殺に来た、同じ技なら単純に威力の高い方が勝つ。
相手はタイプ一致の攻撃、こっちは不一致…威力の差は明白、か。

ハルカ 「それなら、別の技よ! 『ふぶき』!!」

ランマ 「『めいそう』や」

マッスグマ 「グマー!!」

ムウマ 「ムゥ…」

ビュッゴオオオオオオオオオォォォッ!!

ムウマは『めいそう』を行って『ふぶき』の威力を下げる。
加えて、攻撃力は上昇し更に自体は悪化した。

ハルカ (やれることだけ、やれることだけだ)

私はそう頭に言い聞かせる。
相手が何をしようと、私は自分に出来ることしかやらない。
相手に合わせるのは無謀、私は私のやり方を貫く!

ハルカ 「マッスグマ『はらだいこ』!!」

ランマ 「…! ここで、か」

マッスグマ 「!! グマーーー!!」

ボンボンボンッ!!!

マッスグマは力強く、自分の腹を叩く。
これにより、マッスグマは最大パワーを得る。
しかし、同時に体力を著しく消耗してしまう、まさに最大の賭けとも言える技。
そのまま攻撃されれば、一気にダウンもありうる…だから私はすぐに次の策に出なければいけない。

ランマ 「ムウマ『でんじは』や!」

ハルカ 「『でんこうせっか』よ!!」

ムウマ 「ムゥ〜!」

マッスグマ 「…グマッ!」

ビビビビビッ!! ダダダッ! ギュンッ!!

ランマ 「かわしたか、せやけどその攻撃は通用…」
ハルカ 「『かぎわける』!!」

マッスグマ 「グマーー!!」

ヒュンッ! ズザァァッ!!

マッスグマは、ムウマの技を高スピードで回避し、一気に体当たりする。
当然、ゴーストには無効なので、マッスグマはムウマの体をすり抜ける。
マッスグマはそのままムウマの背後に突き抜け、すぐに体を反転させて着地する。
そして、振り向きも終わっていないムウマの体をマッスグマは『かぎわける』

マッスグマ 「…!! グマッ!」

ランマ 「ムウマ、『10まんボルト』や!!」

ムウマ 「ムゥマ〜!」

バチバチバチィッ!!

マッスグマ 「〜!!」

ムウマは、振り向きもせず、自分を中心に電気を撒き散らす。
範囲は大きいけど、威力が集中してない、これなら耐えられる!

ハルカ 「マッスグマ『ずつき』よ!!」

マッスグマ 「グマーーー!!」

ドッガァンッ!!

ムウマ 「…〜〜…」

ムウマの攻撃を耐え切り、後頭部に向かって『ずつき』をかますマッスグマ。
耐えることは出来なかったムウマは、そのまま地面にふよふよと落下した。

ランマ 「……」

シュボンッ!

ランマさんは無言でムウマを戻す。
これで、互いに残ったのは1体づつ。
こっちは体力が減っている…後は、押し切れば勝ちね!

ボンッ!

ドンカラス 「ドンッ!」

ドンカラスが現れ、最後のポケモン同士がにらみ合う。
体力をギリギリまで減らしたマッスグマ、無傷のドンカラス。
相手がどんな攻撃をしてくるのかは知らない、だから私でも予測できない行動を取ることにした。

ハルカ 「マッスグマ『ねむる』よ!!」

ランマ 「!!」
ランマ (攻撃をせんかったか、『ふいうち』で終わる予定やったんやが…)

マッスグマ 「…ZZZ〜」

ランマさんは、一瞬苦い顔をした。
予想外のことだったのかもしれない。
だけど、ここから先は私も予想なんて出来ない、後は…マッスグマ次第ね!!

ランマ 「せやけど、眠って凌げるほどドンカラスの攻撃は甘ないで!」
ランマ 「『つじぎり』やドンカラス!!」

ハルカ 「『ねごと』よ!!」

ドンカラス 「!!」

バササッ!!

マッスグマ 「ZZ…グマ〜」

ドンカラス 「! ドンッ!!」

ザシュゥゥッ!!

マッスグマ 「…! ZZZ…」

マッスグマは、何やら鳴き声をあげた。
って言うか、もしかしなくても『なきごえ』か。
幸か不幸か、ドンカラスの攻撃力は下がり、マッスグマは耐えることが出来た。

ランマ (ここで、『ねごと』とはな…運任せか)
ランマ (確かに、これなら誰も読めへん…ポケモンの夢やからな)
ランマ 「せやけど、押せないことはあらへん! ドンカラス『あくのはどう』!」

ハルカ 「『ねごと』よ!!」

ドンカラス 「ドンーー!!」

マッスグマ 「ZZZ…〜!」

ギュゥゥンッ!! ヒュンッ!!

ハルカ 「!?」

ランマ 「…!」

ここで、マッスグマは『でんこうせっか』を発動する。
しかし、見当違いの方向に飛んだため、ドンカラスには当たらなかった。
ドンカラスの攻撃は何とかかわせたものの、あのままでは…!

ドガンッ!!

マッスグマ 「…!!」

ハルカ 「うわ…痛そ」

マッスグマは屋上の壁に突撃してしまった。
かなり痛がっているようだが、マッスグマは衝撃で目覚める。

ランマ (ちぃ…運と呼ぶんやろうが、納得はいかへん!)
ランマ 「路線変更や、ドンカラス『くろいきり』!」

ハルカ 「もういっちょ『でんこうせっか』!!」

マッスグマ 「グマーー!!」

ギュンッ! ドッゴォォォッ!!

ドンカラス 「ド…ドン〜!!」

ビュゴゴゴゴゴゴォォォッ!!

マッスグマはすぐにドンカラスの懐に飛び込む。
しかし、ドンカラスは悶絶しながらも、口から『くろいきり』を噴出した。
視界が一気に悪くなり、状況が確認できなくなる。
イマイチ、この技の効果はわからない。
ただの目潰しにしては、効果が薄い。
他の効果があると思うのだけれど、私にはわからなかった。

ランマ (! これで、ハルカちゃんは能力を下げられたことで何か手を打つはずや!)
ランマ (霧で、一瞬時間は稼げるはず…ハルカちゃんが出すのは『特殊攻撃』! これを耐えて一気に反撃や!)

ハルカ (ただの目潰しなら、私には見える! 一気に最大パワーの『物理攻撃』で押し切る!!)

私は、目を瞑って霧の中の状況を見る。
距離はほとんどない、ドンカラスは地上で待機、マッスグマは相手を見ていないけど、正面にいる!

ランマ 「ドンカラス!」
ハルカ 「マッスグマ!」

私たちは同時に叫ぶ。
この状況で、私たちが取った行動が、勝負の命運を分けた…

ランマ 「『はねやすめ』!」
ハルカ 「目の前に『ずつき』よ!!」

ドンカラス 「!! ドンッ…」

マッスグマ 「! グ〜マーー!!」

ヒュンッ! ドッゴォォ!!

ドンカラス 「!? 〜〜〜!!」

ランマ 「!?」

鈍い音が響き渡る。
ドンカラスは体力を回復しようとした所にモロ、『ずつき』を喰らった。
体力の回復途中に喰らってしまい、ドンカラスは耐え切れずに、ダウンする。

ズンッ!



………。



やがて、霧が晴れて今の状況が互いに確認できるようになった。
私は、最後に立っているポケモンを見た。

マッスグマ 「…グマ……グ」

ドンカラス 「………」

ランマ 「……」

シュボンッ!

ランマさんは、無言でドンカラスをボールに戻した。
自らの敗北を認めた証拠だ。
そして、私は一気に全身から力が抜けた。

ハルカ 「か…勝った」

トスンッ…

私は、両膝を地面に突き、脱力する。
今の状況を整理できてなかった。
とにかく、勝った。
私は、それだけを考える。
そして、一気にこみ上げてくる感情を私は一気に解き放った。

ハルカ 「勝ったーーーーーーーーーーーーー!!!」

両拳を天に突き上げ、私は天を仰いで吼える。
もう、仕事も終わり、人の少なくなっているであろうRMUビルの屋上にて、私の怒号とも取れる咆哮が響き渡ったのだった。

ランマ 「…お見事ですわ、負けるとは思うてへんかったのに」
ランマ 「ホンマ…ハルカちゃんには、妙な運がついとるんでっしゃろな」

ハルカ 「…そんな、ただ運が良かっただけで」

私は、本当にそう思う。
トレーナーとしての実力では、どう考えても負けていた。
勝てたのは運…そう、運だ。

ランマ 「…せやけど、運も実力の内。特に、ポケモンバトルに強いトレーナーは、すべからく強運でっせ」
ランマ 「せやから、ハルカちゃんも誇り、この運に」
ランマ 「さて…ワテはそろそろ仕事に戻ります」
ランマ 「ハルカちゃんも、そろそろホテルに戻った方がよろしいやろ」

カツカツカツ…

そう言って、ランマさんは去っていった。
私は、まだ自分の状況を整理できてない。
でも、前進したんだと言うことだけはわかった。

マッスグマ 「…グマ」

ポンッ

ハルカ 「…マッスグマ」

マッスグマは、両膝を着いたままの私の左肩に右手をポンッ…と置く。
励ましているのか…称えているのか…よくわからないけど。
私は、思いっきりマッスグマに抱きついた。

ガバッ!

ハルカ 「ありがとねマッスグマ! 今日勝てたのは、あなたのおかげよ!!」

マッスグマ 「…グマ」





………………………。





『同日 時刻22:00 RMUビル・第一会議室』


ランマ 「…以上が、今のハルカちゃんの実力やな」

キヨハ 「…そう、期待通りと思っていいのね?」

ランマ 「…さてな、あの娘が勝てたのは運や」
ランマ 「せやけど、その運が天運なら、ハルカちゃんは…」

キヨハ 「それでいいのよ…例え運だろうが実力だろうが」
キヨハ 「私は、ハルカちゃんと戦うことになった…本当は、やりたくなかったけど、ね」

キヨハは、悲しそうな表情を一瞬見せる。
本音やろ…な。

ランマ 「まぁ、お前の考えなんてワテはどうでもええ」
ランマ 「やりたいようにやったらええねん…ワテはこっからは傍観者や」

カツカツカツ…

ワテは、それだけ言い残して会議室を去る。
誰もいない会議室の中、キヨハだけが残った。



キヨハ (…ハルカちゃんか、私は負けるでしょうね)
キヨハ (あの娘の力は、もう誰にも止められない)
キヨハ (キヨミが何を思って戦いの場に戻ったのかは未だにわからない…でも)
キヨハ (ハルカちゃんが理由だと言うなら、少しはわかる)
キヨハ (ハルカちゃんの中に眠る、力…か)





………………………。





『同日 同時刻 サイユウシティ・ポケモンリーグ出場者用宿泊施設・ハルカの部屋』


ハルカ 「…とにかく、勝てた」
ハルカ 「今回のバトルで、レベルが上がったのは…マッスグマとライボルトか」

実感として感じたのはその2体だけ。
他のポケモンはどうとも言えない感じだった。
結果として、勝つことは出来たけど、やはり納得はいかない。
実力で勝てたわけじゃない…あれは負けたと言っていい。
もっと、もっと強くならないと…!

ハルカ 「…さて、結局休みも伸びちゃったし、今日はこの辺で寝ましょうかね」
ハルカ 「明日からは…どうしよう?」

私は寝ようかと思ったところで、ふと汗を気にする。
折角シャワールームがあるのだから、使わないのは損だ。
と、言うわけで、先にシャワーを浴びることにした。



……15分後……



ガチャ…

ハルカ 「ふぅ…さっぱりしたぁ」

私はバスタオル一枚でシャワールームから出る。
そして、私がベッドに座ろうかと思った瞬間。

ガチャッ!

ノリカ 「ハッルカ様ーー!!」

ハルカ 「…ノックも出来んのかおのれは!」

バチンッ!

私は右手で、ノリカの頭を張る。
そんなに強くやってないので、ノリカはちょっと怯んだ程度だった。

ノリカ 「あはは〜、つい」

ハルカ 「ついじゃないわよ! こんな姿で男が入ってきたらどうするのよ!?」

ノリカ 「そんなもん! ハルカ様の拳が光って唸るだけですよ!!」

ハルカ 「私はどこぞのガソダムファイターか!!」

スパンッ!

私は再びノリカの頭を張る。
今度はちょっと強めだ。

ノリカ 「うう…憧れのハルカ様の張り手」

ハルカ 「こいつ…駄目だわ」

私は呆れてベッドに座った。

ハルカ 「ノリカ、冷蔵庫開けてコーヒー牛乳取ってきて!」

ノリカ 「ラジャー! お任せであります!!」



………。



ノリカ 「お待たせしました! コーヒー牛乳であります!!」

ハルカ 「サンキュ〜♪ 風呂上りはやっぱこれよね!」

ノリカ 「はい…あ」

ハルカ 「…ん? どうかした?」

ノリカは、私にコーヒー牛乳を渡すと、何やら顔をしかめた。
どうやら、私の右手を見ているようだった。
私はここで、ああ…と思う。

ハルカ 「…これ? いつもは手袋で隠してるからね」

私はコーヒー牛乳を左手に持ち替え、右手の甲をノリカに見せる。
私の右手には、大きな傷が残っていた。

ノリカ 「あの…ハルカ様、それって」

ハルカ 「…格闘家の名残」
ハルカ 「世界大会の決勝でね、砕けたの」
ハルカ 「もう、本気で右拳を握れなくなったから…格闘家も廃業したの」
ハルカ 「右拳の使えない、格闘家はいないわけじゃないだろうけど、私は頃合だと思ったし、ね」

ノリカ 「ハルカ様、それで…引退を?」

まぁ、そういうこと。
私は別に理由としては十分だった。
右拳を無くしても、別に戦えないわけじゃない。
でも、私は十分だった。
世界最強…名前だけだけど、私はこの称号が欲しかっただけだから。

ハルカ 「…んぐ、んぐ…ぷっはぁ!」

私は一気にコーヒー牛乳を飲み干し、口元をタオルで拭く。
やや胸がはだけたが、相手がノリカなら別に問題はないでしょ。

ノリカ 「う…ノリカもいつかは、こんな巨乳に…!」

ハルカ 「なりたい? これはこれで結構大変よ…動きにくいし」
ハルカ 「私も格闘家の頃は、もうちょっと小さかったんだけどね…止めてから何故か急に成長しちゃって」
ハルカ 「今まで必要ないと思ってた部分だから、急に反応し始めたのかも」

ノリカ 「う〜む、しかしながらそれも萌えステータス!!」
ノリカ 「ツンデレは奇しくも巨乳が多い!!(多分)」

ハルカ 「誰がツンデレよ誰が…」

私は正面から否定するも、すでにハイになり始めているノリカには聞こえていないようだった。

ノリカ 「何の! ハルカ様は立派な萌え! このノリカ全力でマニアからお守りいたします!」
ノリカ 「こうしてはおれぬ! いざ、ハルカ様を追い回すストーカーどもを血祭りにあげてきます!」

ガチャッ! バタンッ!!

ノリカ 「うおおーー! ハルカ様の巨乳はこのノリカが守るーー!!」

ハルカ 「って、大声でんなこと叫びながら外を走るなーーー!!」

私は、そう叫ぶも、ノリカには聞こえていないようだった。
やれやれ、ね。

フィーナ 「ハルカさん、そんな格好で何やってるんですか?」

メフィー 「うひぃ…爆殺ボディですね〜」

ハルカ 「うへぇ…忘れてた」

バタンッ!

私はすぐさまドアを閉め、途中落としたバスタオルを拾って着け直した。
う〜む、ハルカたん不覚…男に見られなくて良かった。

ガチャッ

フィーナ 「ハルカさん、入りますよ〜」

メフィー 「って、もう入ってますけど〜」

ハルカ 「うん、何か用?」

私はバスタオルをしっかりと巻き、ベッドに腰かけ、足を組んだ。
要するに、某悩ましげなポーズと言う奴だ、これも読者サービスね♪(妄想による脳内保管限定)

フィーナ 「いえ、明日の予定はどうなのかな?って」

ハルカ 「予定なし」

メフィー 「うひゃ、即答ですね…」

ハルカ 「で?」

フィーナ 「だってさ」

私はフィーナちゃんに聞き返すと、フィーナちゃんはメフィーちゃんに聞く。
すると。

メフィー 「でしたら、明日は私とバトルいたしましょう!」

ハルカ 「メフィーちゃんと? 別にいいけど…ルールは?」

メフィー 「ダブルのフルバトル…ハルカさんは未経験だと思いますので、いい経験になると思います」

フィーナ 「メフィーはダブルバトルなら私よりも強いですよ、折角特訓やるんですし、相手がいた方がきっと心強いです」

ハルカ 「…ダブルバトルか、確かにあんまり経験ないもんね」

オーレでは、ダブルバトルが主流。
その中でも、メフィーちゃんはダブルを得意としている、か。
確かに、フィーナちゃんの時もそうだったし、経験を稼ぐには絶好。
私は断る理由もなく、快く受け入れる。

ハルカ 「OKよ、じゃあ明日ね」

メフィー 「はい、自由公園に9:00ということで」

フィーナ 「私は応援しますから!」

そう言って、ふたりは部屋を出て行く。
そして、今度こそ私ひとりになる。
明日の予定は決まった…さて、まだまだ強くならないとね。
私はそう思い、ベッドにバスタオル一枚で横になる。
布団を被って、電気を消す。
私は、すぐに頭を切り替えて体を休めた…



…To be continued




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