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POCKET MONSTER RUBY



第83話 『タッグバトル本戦・一回戦 後編』




『4月13日 時刻11:30 サイユウシティ・第0スタジアム』


ゴウスケ 「いや〜、負けてもうたわ!」

ゴウスケさんは、戻ってきていきなりそう言う。
あっけらかんと笑い、負けたショックはそれほど感じさせなかった。
隣にいたミツル君は、やや苦い顔をしている。

ミツル 「……」

パシッ!

ミツル 「!?」

ゴウスケ 「こら坊ちゃん! そないな顔するな! 負けたら誰かて悔しい」
ゴウスケ 「せやけど、負けて得るものもあるやろ…気ぃ落としなや?」

ミツル 「あ、はい…」

ゴウスケさんは、ミツル君の頭を軽く叩く。
ミツル君は答えるも、表情は冴えていなかった。
対して、異様なほど明るいゴウスケさん…

ユウキ (さしずめ…無理に笑ってるって所か)

俺はそう予想した。
悔しくないはずが無い…だから、笑う…か。
やれやれ…次にアレと戦うのは俺たち…面倒なことにならなきゃいいがな。



………。



コトウ 「さぁ、壮絶なまでのバトルが終わり、次は第3試合!」
コトウ 「今大会において、恐らくもっとも注目の集まるペアの登場だ!!」



ハルカ 「いよっしゃぁーーーーーーーーーーーーーー!!!」

ミカゲ 「………」

ワアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァッ!!

私はフィールドに顔を出すと、両手を天にかざして吼える。
気合は乗ってる。ミカゲは心配ないだろう。
私は、観客の注目を一身に浴び、今の空気をかみ締めた。

ハルカ (目的はひとつ! 私は強くなる…)

ミカゲ (…まぁ、せいぜい頑張るといいわ)



コトウ 「続いては、異色トレーナーがペアを組んだ!」
コトウ 「かたや、ピジョットのみを追求するジェット選手!」
コトウ 「そしてもうひとりはキノガッサを追及したリベル選手!」
コトウ 「リベル選手はこだわりの手製キノガッサの着ぐるみで登場だーーー!!」



ワアアアアアアアアアアアァァァァァァッ!!


ジェット 「それ…着ぐるみなのか?」

リベル 「一応、ちゃんとした服ですよ…コスプレとも言いますけど」



ノリカ 「うおおおおおおおっ!! ハルカ様ーーーーーーーー!!!」

アムカ 「……」

サヤ 「ハルカさんの調子は良さそうですけど…」

キヨハ 「ええ、簡単には勝てない相手ね」

ユウキ 「同感ですね…ひょっとしたら、今回最強の相性をしたタッグかもしれない」

ゴウスケ 「せやな…互いに一種のポケモンのみを追求したトレーナー同士、単純に2倍、3倍の膨れ上がりが期待できるわな」

ミツル 「……」



審判 「それではポケモンを!」

ハルカ (悪いけど、ふたりの使うポケモンはわかりきってる…ここは非情に生かせてもらうわ!)
ハルカ 「『ライボルト』! 頼むわよ!!」

ミカゲ 「…『レントラー』」

ボボンッ!

ライボルト 「ライライッ!!」
レントラー 「レンッ!」

ジェット 「行け『ジェッツ』!」
リベツ 「『ファイッ』!」

ボボンッ!!

ジェッツ 「ジョー!」
ファイッ 「キノガッ!」

私たちは、両者電気タイプで構成。
あくまで偶然の一致だけど、ことの他、見解は一致しているらしい。
相手は当然ピジョットとキノガッサ。
前にも見た2体だ…とはいえ、実際に戦ったわけではない。

ハルカ (様子見したい所だけど、そんな余裕は無いかもしれないわね)

ミカゲ 「……」

ジェット (電気が2体か…好都合と言えば好都合だが)
リベル (ハルカさんたちは、ジェットさんを先に倒すつもりなのかしら?)

審判 「…それでは、バトル・スタート!!」

ジェット 「先手を取る! ジェッツ『エアスラッシュ』!」
リベル 「ファイッ『マッハパンチ』!!」

ハルカ 「ライボルト突っ込め! 『でんこうせっか』!!」

ミカゲ 「……」

ジェッツ 「ピジョーー!!」

ライボルト 「ライライライラーーーーイ!!」

ファイッ 「ノガッ!?」

ドゴォッ!

まずはライボルトが先に突っ込む。
スピードで勝るライボルトがキノガッサの胴体に頭から体当たりした。
体勢を崩すキノガッサ、そこへピジョットは『エアスラッシュ』の体勢に入る。
狙いは…レントラーだ!

ファイッ 「ガーー!!」

ドガッ!

ライボルト 「ラーーイッ!」

ズザザザァッ!!

ハルカ 「しまった!?」

一瞬レントラーを見た隙に、『マッハパンチ』をライボルトが浴びる。
そこまで威力の高い技じゃないけどまともに食らえば効く。
ここで一気に持っていかれるわけには行かない! まずはどちらかを先に倒さないと…

ピジョット 「ジョーー!」

ビュォゥッ! バビュゥゥッ!!

レントラー 「…!!」

ズズ…!

ハルカ (わぉ…直撃なのに、大して効いてない?)

ジェット (相当な体力だ…だが、ダメージはハナから期待していない!)
ジェット 「ジェッツ! 続いてライボルトに『どろかけ』!」

ハルカ 「かわせライボルト!」

ジェッツ 「ピジョー!!」

ドバジャァァッ!!

ライボルト 「ライッ!!」

バッ! ズザァッ!!

ライボルトは『どろかけ』をバックステップでかわす。
攻撃を失敗したピジョットに格好の隙が出来た。

ハルカ 「ライボルト『スパーク』!!」

ライボルト 「ラ〜イ!!」

バチバチバチィ!!

地上付近にいるピジョットに向かって、私は『スパーク』を指示する。
ライボルトはバックステップ後、すぐに突進体勢に入り、電気を放出しながら走り出す。

リベル 「ファイッ! 『かみなりパンチ』!!」

ハルカ 「!?」

ファイッ 「!! キノーーー!!」

バチバチバチィ!!

ジェット 「ジェッツ上昇だ!」

ジェッツ 「ジョー!」

ライボルト 「ラーイッ!?」

ビュゴォッ!

ピジョットはその場からすぐに上昇を始める。
だけど、まだ射程距離外じゃない、ライボルトのジャンプなら…

ファイッ 「ガーーッサッ!!」

バチバチバチィ!!

ライボルト 「ラ、ライ〜!!」

バチチィッ!!

ライボルト 「ラ、ライ…」

キノガッサ 「キノ!」

ライボルトが跳ぶ前に、キノガッサが殴りつけてくる。
衝撃で押し返され、ライボルトは攻撃を止められてしまった。

ハルカ (く…電気タイプの攻撃で押し返されるなんて!)

あのキノガッサは、こちらとはパワーが違う。
単純に電力ならこっちが遥かに上だろうけど…

ハルカ (それより…ミカゲは何故動かないの!?)

ミカゲ 「………」

私は隣で何も指示せずにフィールドを見つめているミカゲを見る。
指示を出す素振りは微塵も見せず、傍観を決め込んでいた。

ジェット 「ジェッツ! ライボルトに『エアスラッシュ』!」

リベル 「ファイッ! 『タネばくだん』!」

ハルカ 「ヤバッ! ライボルト!」

ジェッツ 「ジョー!!」

ビュゴォォッ!!

ライボルト 「ラーーーイ!!」

ライボルトは四肢を踏ん張り、まず『エアスラッシュ』を耐える。
ダメージはそれほどじゃない! 飛行タイプだからね!

ハルカ 「反撃よライボルト! 『かみなり』!!」

ライボルト 「ラ…!?」

ハルカ 「ちょっと! 何で!?」

ライボルトは『エアスラッシュ』を受けた反動か、すぐに動いてくれなかった。
当然、すでにモーションに入っているキノガッサの技をかわすことができない。

キノガッサ 「キノガーーー!!」

ドゴォォォンッ!!

ライボルト 「ラーーーーイッ!!」

ドッシャァァァァァッ!!

審判 「ライボルト戦闘不能!!」

ワアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァッ!!!

ハルカ (冗談…)

動きが止まったところに、ジャストのタイミングで『タネばくだん』がヒットする。
着弾と同時に緑の爆風を上げ、ライボルトは吹き飛んだ。
そしてそのままあっさりと倒されてしまう。
さすがに2対1じゃダメだ…何でこうなるのか。



コトウ 「何ということでしょう! ハルカ選手のライボルト轟沈!!」
コトウ 「パートナーのミカゲ選手は、微動だにせず! 完全に静観しております!!」



………。



ユウキ 「おい…何のつもりだよありゃ」

ノリカ 「こらーーー!! ミカゲ少佐ーーーー!! 職務怠慢ですぞーーー!!」

サヤ 「…明らかにわざとですね」

キヨハ 「……」

ゴウスケ 「…嫌なやっちゃなぁ、わざわざかいな」

ミツル 「…一体、何故?」

ヤエコ (…最低ね)

キッヴァ 「……」



ハルカ 「戻って、ライボルト」

シュボンッ!

ミカゲ 「…ご苦労様ね」

ハルカ 「あんた…負けたら承知しないわよ?」

私は、少々強い口調でそう言う。
ミカゲはそれを聞いてか、クスッと笑う。
うわ…ダメだ。

ハルカ (勝つ気マンマンかよ…)

私は相当踊らされていたと言うことに気づく。
しかし、何でわざわざ…?
その理由がちょっとわからない。

ジェット (さて、2対1で悪いが…このまま行かせてもらうぜ!)
ジェット 「ジェッツ! 『はかいこうせん』だ!!」

ジェッツ 「ピジョーーー!!」

キュィィィ…ドギュアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァッ!!

ミカゲ 「『アイアンテール』」

レントラー 「レンッ!!」

ビュッ! ドッゴォォォンッ!!

ハルカ 「…!」

ジェット 「!?」
リベル 「…!」

ピジョットの『はかいこうせん』に対し、レントラーは『アイアンテール』でそれを弾く。
着弾したと同時に爆発…凄い爆風が巻き起こった。
視界が一気に悪くなる、だけどミカゲはすぐに行動する。

ミカゲ 「『ほうでん』」

レントラー 「レーーーーーーーンッ!!!」

バチバチバチバチィ!!

リベル 「ファイッ! ピジョットを守って! 『かみなりパンチ』!!」

ファイッ 「ガーー!!」

バチバチィッ!!

爆風を吹き飛ばし、キノガッサがピジョットの目の前まで飛び上がる。
そして、向かってくる電撃に対し、『かみなりパンチ』で電気を受け止めた。
草タイプには電気は効き難い…ましてやあれがあると、電気は電気で散らされ、まともに通用しない。

ザシャッ!

ファイッ 「ガッサッ!」

ジェット (反動でジェッツはまだ動けない…頼むぞリベル!)

リベル 「ファイッ! 『スカイアッパー』!!」

ミカゲ 「レントラー『こおりのキバ』」

ファイッ 「ガーー!!」

ダダダダダッ!!

レントラー 「ラーーー!!」

ドドドドドッ!!

互いが一気に正面衝突する。
果たして、打ち勝つのは…?

ファイッ 「ガッサーー!!」

ビュッ! ゴォォッ!!

リベル 「!?」

レントラー 「……」

何と、レントラーは直前で右に逸れ、攻撃をかわす。
そして、アッパーを振りぬいたキノガッサはそのまま空中に飛び上がる。

レントラー 「レンッ!!」

ガブッ! コッキィィンッ!!

ファイッ 「!?」

レントラー 「ウゥッ!!」

ヒュッ! ドッギャアァァンッ!!

氷の砕ける音が響き渡る。
キノガッサは飛び上がった瞬間にレントラーに噛み付かれた。
『こおりのキバ』により、キノガッサは凍りつく。
そして、レントラーは凍ったキノガッサの胴体を咥えたまま、地面に叩き伏せたのだ。
結果はご覧の通り…一撃で戦闘不能ね。

審判 「…キノガッサ戦闘不能!!」

リベル 「そ、そんな…!」

ジェット (あっさりと…か! なめてたわけじゃないが…勝負を焦ったのがマズかった)




コトウ 「これで1対1!! ミカゲ選手、実力を見せ付け、あっさりと対等に持っていったー!!」
コトウ 「ミカゲ選手のレントラー、凄まじい力強さで、観客をも圧倒させます!!」



ワアアアアアアアアアアァァァァァァァッ!!


シュボンッ!

リベル 「ごめんね…ファイッ。ごめんなさいジェットさん!」

ペコリとリベルちゃんがジェットさんに謝る。
ハタから見たらキノガッサが謝っているようにも見える。
だけど、ジェットさんの顔つきは鋭い。
一気に有利な所を盛り返されただけに、気合を乗せ直した感じだ。

ミカゲ 「……」

対してこっちは超余裕…ゲージが三本あれば、挑発伝説さえできそうだ。
せいぜいカウンター取られないように気をつけなさいよね…

ハルカ (あ〜あ…やられたら側はこんな暇だとは)

私は頭の後ろで手を組んでダレていた。
今まで、気にもしなかったけど、実際にタッグバトルでやられた方って、暇なのね…
しかも、早々にやられたし…み〜て〜る〜だ〜け〜ってか。

ジェット 「仕切りなおしだ! ジェッツ『どろかけ』!」

ミカゲ 「『まもる』」

レントラー 「レンッ!」

ジェッツ 「ピジョー!」

ドビャァァッ! ピッキィィィンッ!!


レントラーはすかさず『まもる』を使う。
しかも、レントラーはかなり速いタイミングで使用した。
ピジョットはすでに攻撃態勢に入っており、『まもる』を見た後に攻撃した感じだ。



ユウキ (なるほど…『まもる』の隙を極力削ってるわけか)

キヨハ (それを指示なしにポケモンが遂行するなんて…やはり相当鍛えられているわね)

サヤ (…やはり、強いですね)



ジェット 「連続攻撃だ! もう一度『どろかけ』!」

ジェッツ 「ピジョー!」

ミカゲ 「『かげぶんしん』」

レントラー 「レンッ!」

ババババッ!!

ジェッツ 「ピジョ!?」

ドバッ!!

ピジョットの『どろかけ』は外れる。
レントラーは咄嗟に『かげぶんしん』を行い、攻撃をかわしたのだ。

ジェット 「く…! 『つばめがえし』だ!!」

ミカゲ 「焦り過ぎね…『ほうでん』」

ジェッツ 「ピジョーー!!」

レントラー 「レーーーーンッ!!」

バチバチバチバチバチィッ!! バリバリバリィ!!

ピジョットは『つばめがえし』で狙うも、レントラーの広範囲攻撃にあっさりと沈黙する。
いくらスピードがある攻防一致技とはいえ、あそこまで広範囲に電撃が出てはかわしようがない…
まさしく完全勝利…ミカゲの勝ち。

審判 「…ピジョット戦闘不能! よって勝者! ハルカ、ミカゲ・ペア!!」

ワアアアアアアアアアアアァァァァァァッ!!!



コトウ 「何ということでしょう! 2対1の戦力差をあっさりと覆したミカゲ選手!」
コトウ 「決して実力の無い相手では無いにも関わらず、勝利を収めました!!」



………。



シュボンッ!

ジェット 「…すまん、ジェッツ」

リベル 「…負けちゃいましたね」

ジェット 「…ああ、とんでもないトレーナーだ、あれは」
ジェット 「ポケモンもケタが違う…俺たちが束になっても勝てる相手じゃなさそうだ」

リベル 「いるんですよね…やっぱり、ああ言う強さを身にまとった人が」

ジェット 「…ああ」



………。



ハルカ 「ねぇ…」

ミカゲ 「何よ? 勝ったのだから文句は無いでしょ?」

ハルカ 「文句は無いけど…何で、最初動かなかったのよ?」
ハルカ 「最初っから協力した方が、楽に勝てるでしょ?」

私は帰りの通路で、ミカゲを問いただす。
どうしても理由が聞きたかったからだ。
すると、ミカゲは鬱陶しそうに答える。

ミカゲ 「…あなたのライボルト、『ひらいしん』でしょう?」
ミカゲ 「電気が全部引き寄せられても良かったのぉ?」

ハルカ 「…はぁ?」

私は一瞬、何が何だかわからなかった。
まさか…あれはあれで気遣っていたのだろうか?

ミカゲ 「…どうせ、あなたのことだから、自分から突っ込むのは目に見えるわ」
ミカゲ 「だったら、いっそ勝手に行って倒れてくれた方がこっちは楽だっただけ…」
ミカゲ 「『ひらいしん』のことも頭に無いようなトレーナーをいちいちカバーできないわ」

カツカツカツ…

ハルカ 「さ、さよか…」

要するにだ…ミカゲは『ひらいしん』で電気技を放ち難かったから、動かなかったと?
そりゃ…『ほうでん』で一掃した方が楽だろうけどさ。
でも、私がいる内はやらなかったってことは、やっぱり気遣っていたから…?
う〜ん…ツンデレめ。



………。



ユウキ 「よ、お疲れ…」

ハルカ 「どうも! あ〜あ、散々だった…」

ジェット 「はははっ、見事に撃沈だったな!」

リベル 「私たちも人のことは言えませんけど…」

ジェットさんとリベルちゃんは、笑っていた。
負けたことが悔しいはずだけど、そんな素振りは見せない。
う〜ん、何となく大人な感じ。

キヨハ 「それより…次のバトルが始まるわ」

ゴウスケ 「コーディネイターふたりのバトルや! 見ごたえはありそうやで!」

でも、確か相手のふたりは全く情報のないトレーナーだ…
片方はリーグに参加してたらしいけど…一体どんなトレーナーなんだろう?



………。



コトウ 「さぁ、いよいよ第4試合! 続いては何とコーディネイターふたりのペアが参戦だーー!!」
コトウ 「サヤ選手とノリカ選手! 互いにグランドフェスティバルに参加したほどの実績の持ち主!」
コトウ 「実力は折り紙つきだが、両者共にミカゲ選手に敗北しての脱落者!」
コトウ 「その真の実力は、発揮されるのかぁ!?」



サヤ 「……」

ノリカ 「…行こうサヤ!」

私はコクリと頷く。
ノリカは戦闘を切り、走ってフィールドに駆け出した。

ノリカ 「やっほーー!!」

ルカリオ 「バゥッ!」

バババッ!!

ノリカはルカリオとのコンビでフィールドを駆け回る。
ノリカがルカリオの肩に乗り、ルカリオはそれを高く放り上げる。
ノリカは空中でアクロバットな動きをし、ルカリオが下で受け止めた。
いきなりなアピールに会場はヒートアップする。

ノリカ 「エテボース…」

エテボース 「エテボッ!」

キラキラキラ〜!!

ワアアアアアアアァァァァァッ!!

今度はエテボースが横に回転しながら私の前を移動する。
エテボースはふたつの尻尾から『スピードスター』を放ち、私の側面を覆うように星の道を作り出した。



コトウ 「これは粋な演出だーーー!!」
コトウ 「コーディネイターならではの派手な入場に、会場はさながらコンテスト会場のようだー!!」



ハルカ 「やるぅ! 一気に会場を味方につけたって感じね!」

ユウキ 「ああいう華やかさは、一般のトレーナーには無いもんだ…コーディネイターならではだな」

キヨハ 「ええ、ふたりとも楽しそうな顔をしているわ」

ゴウスケ 「ええなぁ…ワイもあれ位やったらよかったなぁ」



? 「…あれが、私たちの相手ね」

? 「凄い凄い!! コンテストってあんな感じなんだーー!!」

私は対戦相手を見て、武者震いする。
ポケモンリーグでは、強さを追い求める相手も多く、何か精神的に辛かったけど、今度の相手はまるでそんな印象を受けない。
まさしく、『楽しい』バトルができそうな相手だ。
私のテンションも一気に上がる。

? 「よっし行くよーー!!」

バッ!



ノリカ 「!?」

サヤ 「………」

エマ 「やっほーーー!!」

チルタリス 「チルルーー!」

突然、対戦相手のひとりがチルタリスに乗り、颯爽と登場する。
だけど、ちょっとスピードが出すぎてる…あのままだと当然。

エマ 「わ! わわ!?」

チルタリス 「チ、チルル〜!?」

ヒュゥゥ…ドッシャァァッ!!

ノリカ 「…うわ、強烈」

サヤ 「明らかに、スピードの出しすぎね」
サヤ 「人を乗せた状態で、あのスピードを出せば上に載っている人間は普通吹き飛ぶわ」
サヤ 「乗り手も素人っぽいし…さしずめ、慣れない事をやった…というところね」

ノリカ 「…サヤ、さりげなく容赦ないね」

彼女は髪を普通に伸ばしているようで、後ろは首辺りで髪を一まとめにしており、腰より少し上くらいまで伸びていた。
髪を染めているのか、オレンジ色…身だしなみを整えるのは苦手なのか、ちょっとぼさぼさだ。
前髪は左右バラバラに分かれ、眉間の辺りで止まっている。
目はやや釣り目気味で、若干怖そうなイメージを受けるが、全体的に顔を見ると子供っぽい気がする。
服装は動きやすい格好を重視しているのか、白いシャツに黄色のジャケット、下は青の半ズボンだ。

エマ 「…あたた、まさか落っこちるとは」

かなり危なげな落ち方だったけど、彼女は割と余裕を持って起き上がってくる。
体についた砂をパッパと落とし、苦笑いを浮かべて観客に両手を上げてアピールした。
…が。

観客 「………」

エマ 「あ…あはは〜」

ヒートアップした場は一気に冷める。
って言うか…



ハルカ 「空気嫁よ…」

ユウキ 「お前が言うか…しかも無理漢するな」

突っ込まれる…さすがね。
しかし…何に対抗心燃やしてんのか?
何だか、変なバトルになりそうね…



カレン 「…馬鹿ね、くだらないことを考えるからよ」

エマ 「うわ…酷〜」

今度は、相方が出てくる。
こっちは、かなり対照的で第一印象はクールビューティ。
キヨハさんやヤエコさんとは、また違ったタイプに感じる。
彼女はトルマリンのような色の瞳に、ガーネットの輝きをした髪。
目元はパッチリしており、髪の毛は邪魔にならないよう肩に当たらない程度に切りそろえている。
服装は至って普通…かなぁ? どっちかと言うと探検にでも行ってそうな服装だった。
茶色の半袖、短パンにポケットの多い上着。
体格も割とがっしりしていて、運動神経は良さそうだ。


コトウ 「さ、さぁ…とりあえず選手が出揃い、バトルの準備は…OK、かな?」


やや、戸惑い気味の解説。
さすがにこの空気を変えるのは無理よね…

審判 「…りょ、両者ポケモンを!!」

ノリカ 「私はルカリオでいくわ!」

ルカリオ 「バゥッ!」

サヤ 「エテボース…お願い」

エテボース 「エテテッ!」

エマ 「よっし、私たちも行くよチルタリス!」

チルタリス 「チルッ!」

カレン 「…『ラムパルド』」

ボンッ!

ラムパルド 「ランパ!!」



ハルカ 「うわっと…強烈そうなのが出てきたわね」

見た感じ、恐竜っぽい姿のポケモン。
ドラゴンタイプとかそういうのだろうか? 見た目ではちょっと判別しにくい。

ユウキ 「…ラムパルド、力だけは凄いポケモンさ」
ユウキ 「もっとも、他の能力は至って平凡…少々扱いにくいポケモンだろうね」

ハルカ 「…力だけ、ねぇ」

確かに見た目からしてパワーはありそう。
だけど、どの位凄いのか…まぁ、ここで負けるなら特に気にしなくてもいいんだけどね。



審判 「それでは、バトル・スタート!!」

ノリカ 「まずは先手! チルタリスに『りゅうのはどう』!!」

エマ 「来るよチルタリス! 『りゅうのまい』!!」

ルカリオ 「バゥッ!!」

ドギャァァァッ!!

チルタリス 「チルルッ!!」

バヒュゥゥッ!!

ルカリオが先手を取るも、チルタリスの予想外な反応の速さに、攻撃をかわされてしまう。
そのままチルタリスは能力を強化し、次の行動に備えた。

サヤ 「エテボース『スピードスター』」

エテボース 「エテボッ!」

ババババッ!!

チルタリス 「チ、チルルッ!!」
ラムパルド 「!! ラム」

エテボースの技が空と地面の2体を同時に襲う。
しかしながら、大して効いていないようで、2体ともまるで怯まなかった。

ノリカ (ラムパルドはともかく、チルタリスも平然としてるなんて…)

サヤ (耐久力が優れたチルタリスに、パワーが自慢のラムパルド…これは予想以上に辛いかもしれないわね)

カレン 「…『もろはのずつき』」

ラムパルド 「ラ〜ムパーーーーーーーーー!!」

ドギュゥゥゥゥンッ!!

ノリカ (うっそ! いきなり!?)

サヤ (指定はしてない、だとしたら近い方に狙いをつけるはず!)
サヤ 「エテボース『かわらわり』!」

エテボース 「エテボッ!」

カレン 「行けっ!」

ラムパルド 「パーーーー!!」

ギャァンッ!!

エテボース 「ボーーー!!」

ドッガァァッ!!

ラムパルド 「!! パーーー!!」

エテボース 「エ、エテーーー!!」

ドッガァァァァァァァンッ!! ズシャアアアアアアアアァァァァァッ!!

審判 「…エ、エテボース戦闘不能!!」

ワアアアアアアアアアァァァァァァァァァッ!!

ノリカ 「………」

サヤは効果抜群の技で相殺にかかった…だけど、ハナから相手になってない。
サヤは横から、軌道を逸らす様に殴りつけたのに…まるで関係なかったなんて。



コトウ 「凄まじい一撃がヒットォ!! エテボース、効果抜群の技で迎え撃つも、あっさりと返り討ちだーー!!」

ラムパルド 「……」

ザッザッ!!

ラムパルドは反動のダメージを気にしてないのか、こっちを睨みつけてくる。
ヤッバ…これってもしかしなくても、絶体絶命?

サヤ 「…戻って」

シュボンッ!!

エマ 「…行けチルタリス! 『ゴッドバード』!!」

チルタリス 「チ〜ルーー!!」

キィィィィィィンッ!!

チルタリスは激しい光に包まれ、力を溜めた。
『ゴッドバード』は飛行タイプ最強の攻撃技。
だけど、撃つにはタメが必要で、すぐには放てない。
攻撃するなら、今がチャンスだけど…

ノリカ (あっちよりもこっちが問題よね!)

私は先に、ラムパルドを睨み付ける。
あの攻撃力があったんじゃ、不利は否めない。
まずは、数を減らさないとね!

ノリカ 「ルカリオ! ラムパルドに『はどうだん』!」

ルカリオ 「バァゥッ!!

ドバァァァッ!!

カレン 「『しねんのずつき』」

ラムパルド 「パッ!!」

バァァァンッ!!

ルカリオ 「!?」

ノリカ 「んな馬鹿な!?」

何と、ラムパルドはこともあろうに、その場から移動することなく顔面に向かってきた『はどうだん』に対して『しねんのずつき』で迎え撃った。
エスパーは格闘に相性がいい…とはいえ。

ノリカ (あの『はどうだん』を…容易く弾き返すなんて!)

カレン 「単純な攻撃ね…必ず当たるなら迎え撃てばいいだけよ」

さらりと言う。
やばい…万策尽きた。

エマ 「行け、チルタリス!!」

チルタリス 「チルルーーー!!」

ドギュンッ! ドッギャアアアアアアアアアァァァァァンッ!!

ルカリオ 「バゥーーーーー!!」

ドシャァッ! ズシャアァァァッ!!

審判 「…ルカリオ戦闘不能! よって勝者! エマ、カレン・ペア!!」

ワアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァッ!!

エマ 「やったやった! 勝てたよ!!」

カレン 「……」

ノリカ 「…う、ごめんねルカリオ」

シュボンッ!

サヤ 「…相手の方が何枚も上手だったわね」

ノリカ 「うん…やっぱ、コンテストとは違うかぁ」

私はがっくりと項垂れる。
バトルはバトルでも、魅せるバトルなら勝てたかもしれないなぁ…

サヤ (例えコンテストバトルでも…あれだけのパワー差を見せ付けられたら、わからないわね)
サヤ (カレンという選手…只者じゃなさそうね)



………。



ハルカ 「…あっさり終わったわね」

ユウキ 「…内容的にはラムパルドのひとり勝ちだ」
ユウキ 「チルタリスは、タイミングよく技が決まっただけ」
ユウキ 「…こりゃ、面倒そうだ」

ジェット 「…ラムパルドのパワーが凄いとはいえ、ああも相性の悪さを覆せるとは」

リベル 「普通のレベルじゃ…ないですよね」

キヨハ (彼女…まるで、こうなるのがわかっていたって顔ね。なるほど…計算機タイプか)

ハルカ 「……」

キヨハさんは、何かを考えクスリと笑う。
う…こう言う時のキヨハさんは、ちょっと怖いのよね。

ミカゲ 「…くだらないわね、次は休憩でしょう? 先に行くわ」

ハルカ 「あ、私も行くわよ! ちょっと!」

ミカゲはさっさと会場を後にする。
私はそれを追いかけるように観客席を立った。
やれやれ…次もとんでもない相手ってことね。
先が思いやられるわ…はぁ



…To be continued




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