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POCKET MONSTER RUBY



第84話 『戦う女と、突っ走る女』




『4月13日 時刻12:50 第0スタジアム・控え室』


ユウキ (やれやれ…次は厄介そうだ)

キヨハ 「…ユウキ君、準備は大丈夫? 次の相手は…強いわよ」

キヨハさんは少し真剣な表情で、そう言う。
俺は軽く笑い。右手を上げて大丈夫と答えた。
とりあえず、暇潰しと思って参加した大会だ、楽しめなきゃ意味は無い。
さて…行きますか。



………。
……。
…。



『同日 時刻13:05 第0スタジアム・試合会場』


ワアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!


コトウ 「大歓声の、ここ第0スタジアム! 今まさに凄まじい戦いが始まろうとしております!!」



ユウキ 「……」
キヨハ 「………」

ヤエコ 「……」
ミヅチ 「………」



………。



ハルカ 「な…何か重いわね」

ノリカ 「真剣勝負ですな〜…互いの気迫が伝わってきます!」

サヤ (さて…どちらが転んでも優勝の可能性は高い、どうなるのか)



………。



審判 「それでは、ポケモンを!!」

ユウキ 「出番だ、『ラグラージ』!」
キヨハ 「任せるわ、『コータス』」

ヤエコ 「『フライゴン』!」
ミヅチ 「『ドククラゲ』」

ボボンッ!! ボボンッ!!

ラグラージ 「ラグッ!」
コータス 「コー!」

フライゴン 「フラー!」
ドククラゲ 「クラ〜」



………。



ゴウスケ (ドククラゲか…やっぱりな)

ミツル 「ゴウスケさん…どうかしたんですか?」

ゴウスケ 「え? いや…何でもあらへん。このバトル…タダでは終わらんやろな」

ミツル 「? そうですね…」

ゴウスケさんは、そう言って会場に集中する。
何を考えているのかはわからないけど、まるで思い出すかのような表情に見えた。
ゴウスケさんって…謎が多そうだけど、一体?



………。



コトウ 「さぁ、互いのポケモンが出揃った! 相性で言えばヤエコ・ミヅチのペアが若干有利か?」
コトウ 「しかし、相性だけで終わるようなバトルとは思えません! いよいよ始まります!!」


審判 「それでは、バトル・スタート!!」


ヤエコ (相手は素早さが遅い! まずは先手を取って揺さぶる!)
ヤエコ 「フライゴン! ラグラージに『りゅうのいぶき』!!」

ユウキ 「『まもる』だ!」

キヨハ 「ドククラゲに『あくび』!」

ミヅチ 「『みがわり』」

フライゴン 「ラーーー!!」

ラグラージ 「ラグッ!」

ピキィィィンッ!! ドバアアアァァァッ!!

コータス 「コ〜…」

ドククラゲ 「!」

ボンッ! ポワ〜ン…

ユウキ (まずは様子見…とはいえ、いきなりやばそうな雰囲気だな)

相手はフライゴンにドククラゲ。
キヨハさんはコータスだ…下手に『なみのり』や『じしん』は使えない。
まぁ、それは相手も同じこと、体力&パワーのこっちと違い、向こうはスピード&パワーだ。
下手な攻撃は打てないが、『みがわり』を使われたとなると、一手一手が非常に重要になってくる。


コトウ 「まずは互いに様子見か!? しかし、『みがわり』を無条件で作り出せた分、ドククラゲに余裕ができました!」



………。



ハルカ 「…うん? でも『あくび』が決まったのよね?」

サヤ 「『みがわり』に…ですね、『みがわり』を眠らせても意味はありませんよ」

ハルカ 「…あ、そっか。状態異常を無効化するんだっけ」

ミカゲ 「…あなた、そんなことも忘れていたの?」

ハルカ 「いや〜…それほどでも」

リベル 「絶対褒めてませんから!」

ジェット 「それより、次の動きが始まるぜ!」



………。



ユウキ (まずは、『みがわり』を潰す!)
ユウキ 「ラグラージ『じしん』!」

キヨハ 「コータス『まもる』!」

ラグラージ 「ラグーーー!!」

コータス 「コー!」

ピキィィンッ!! ドッギャアアアアアアアアアァァァンッ!!!

ドククラゲ 「!!」

ボンッ!

フライゴン 「フラッ!」

ヤエコ 「隙だらけよ! フライゴン『りゅうのいぶき』!!」

フライゴン 「フラッ!!」

ドギュアアアァァッ!!

ラグラージ 「グラーーーー!!」

『りゅうのいぶき』が直撃する。
俺は瞬時にラグラージの状態を見て、安堵の息を漏らす。
麻痺はしなかったようだな…重畳。

ミヅチ 「『ギガドレイン』」

ドククラゲ 「クラ〜」

ユウキ 「やべぇ!?」

キヨハ 「コータス!!」

コータス 「コーー!!」

ピョンッ!! ドギュゥゥゥンッ!!

コータス 「! コー!!」

ズシィンッ!!

ドククラゲ 「クラ〜」

ドククラゲが長い触手を伸ばし、ラグラージの前に飛び出てきたコータスの体力を『ギガドレイン』で奪う。
この『ドレイン』系の攻撃は、範囲がイマイチ掴みにくい。
使うポケモンによって、吸収方法が違うからちょっとばかり対応し辛い。
とはいえ、威力はそこまで高くは無い、コータス位の耐久力なら全然平気だろう。

ユウキ (とはいえ…『みがわり』で減った体力を少しなりとも回復されたな)


コトウ 「目が全く離せません! 互いに駆け引きを兼ねた技の応酬!」
コトウ 「一手のミスが即ダウンに繋がりかねないこのバトル、流れを両者共に渡しません!!」


ユウキ (ともかく、距離は縮まった! まずは1体を叩く!)
ユウキ 「ドククラゲに『マッドショット』!!」

ラグラージ 「ラグー!!」

ドバァァァンッ!!

ドククラゲ 「クラーーー!!」

ラグラージは足元の地面に右手を突き立て、地面を瞬時に泥へと変える。
その瞬間、泥は地面から勢い良く飛び出し、近くのドククラゲを直撃した。
『どろかけ』とやり方は同じだけど、こっちは威力が違う。
普通に口から撃つより飛ばないが、物理攻撃として使うならこのやり方が一番だ!
ドククラゲは特殊より物理の方が効くからな…

ヤエコ 「く…ラグラージに『ドラゴンクロー』!!」

キヨハ 「『オーバーヒート』!」

フライゴン 「フラー!!」

コータス 「コーーーーーーーー!!」

ゴバァッ!! ドグォオオオオオオオォォォォッ!!

近づいてきたフライゴンに対し、コータスがまたしてもラグラージをカバーする。
効果は今ひとつだが、タイプ一致の威力を返すにはこれが一番だ…これならフライゴンもタダでは済まない。

フライゴン 「フ…フラッ!」

ドスッ!

ヤエコ 「立つのよフライゴン!!」

ミヅチ 「『なみのり』」

ヤエコ 「なっ!? フライゴン『そらをとぶ』!!」

ドククラゲ 「…クラ〜〜〜!!」

ドズズズズズズアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァパアアアアアアアアァァァァァァァ!!!!

フライゴン 「フ、フラーー!!」

バビュゥッ!!

フライゴンはギリギリで空を飛び、難を逃れる。
逆にこっちはとてもかわせるタイミングじゃない。
フライゴンのことなんか目にもかけずに指示しやがった…とはいえ。

ユウキ (結果的には最速最良の指示だな、クソッタレ!!)
ユウキ 「ラグラージ『ふぶき』だ!!」

ラグラージ 「ラグァーーーーーーー!!」

ビュゴオオオオオオオオオオオオオオオォォォォッ!!! パキキキキィィィンッ!!!

コータス 「!!」
ラグラージ 「!!」

ラグラージはコータスのすぐ後ろから『ふぶき』を口から放ち、波を凍らせる。
元々全体攻撃の技だが、フライゴンは高空にいるため当たらない。


コトウ 「これは凄まじい! 大波と猛吹雪の激突!!」
コトウ 「ラグラージは波をできるだけ引き付け、至近距離で自分の周りにくる波だけを凍結!」
コトウ 「近くのコータスも同時に守る、最良の選択だ!!」


ユウキ (だが、俺のラグラージじゃ、大した威力にはならない…やべぇな)
ユウキ 「…ってマズッ! 『まもる』だ!!」

キヨハ 「『だいばくはつ』!!」

ラグラージ 「ラ、ラグゥッ!!」

コータス 「コーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

フライゴン 「フラーー!?」

ドククラゲ 「ゲッ!?」

カッ!! チュッドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォンッ!!!



………。



ユウキ 「………」

キヨハ 「……」

ヤエコ 「あ…」

ミヅチ 「……!」

審判 「…あ、コ、コータス! フライゴン! ドククラゲ! 全員戦闘不能!! よって決勝進出はユウキ、キヨハ・ペア!!」

ワアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァッ!!!



コトウ 「な、何とコータスの『だいばくはつ』が炸・裂!!」
コトウ 「事前に打ち合わせをしていたのか、ラグラージは『まもる』で完全に難を逃れました!!」
コトウ 「まさに、見事なコンビネーション!! 決勝進出に名乗りを上げたのは、ユウキ、キヨハ・ペアだーーー!!」



………。



ユウキ 「…ふぅ、あっぶね〜」

キヨハ 「いい判断だったわ…ちゃんと読んでくれたわね」

試合後、戻るための通路を歩いている中、キヨハさんがそう言って笑う。
俺は苦笑しながらも、大きなため息をつく。

ユウキ 「何となく雰囲気で察しましたよ…たまたまと言ってもいいですね」
ユウキ 「まぁ…運がよかっただけです」

俺はそれだけ言って歩く。
キヨハさんは、わずかに俯き、そして僅かに笑った。
完全に信用されてたようだな…マジで危ねぇ。
下手すりゃ、勝者のいないバトルになる所だった…。



………。



ヤエコ 「最後の、『なみのり』…ワザとやったの?」

ミヅチ 「さて、な…あのタイミングなら、かわせると思っただけだ」
ミヅチ 「現にかわせたろう? それなら結果的にあれが最良の攻撃だ」
ミヅチ 「負けたのは、相手の方が上手だった…それだけだろう」

カツカツカツ…

そう言って、ミヅチは去っていく。
私はそれ以上は何も言わなかった。
妙な雰囲気を持って、そのまま去っていってしまった。

ヤエコ (あの女…一体何者なの?)

少なくとも、タダ者とは思えない。
あの状況下で、フライゴンのダメージを見切った上での『なみのり』だったとしたら…
私がかわすことを前提にバトルを組み立てていたということになる。

ヤエコ (悔しいけれど、負けたのは完全に私の判断ミス…)
ヤエコ (『そらをとぶ』ではなく、別の回避方法もあったのに…悔やまれるわね)





………………………。





ハルカ 「…終わり、か」

ミカゲ 「あれが、次の相手ね…」

エマ 「うっわ、もう私たち負けてるの?」

カレン 「聞き捨てならない台詞ね」

私たちはほぼ同時に振り向く。
するとそこには、私たちの次の対戦相手であるふたりが立っていた。

ミカゲ 「なぁに? もしかして勝てる気でいるのかしら…」
ミカゲ 「だとしたら、滑稽ね…」

ミカゲはいつもながらのビッグマウスで相手を挑発する。
もう…わざわざ言わなくてもいいことを。

エマ 「あっははー! 言われちゃったね〜」

カレン 「…そこは笑うところじゃないでしょ」

大体わかった…この人たちデコボコだ。
ミカゲの憎まれ口も笑って済ませるエマ選手に、クールにツッコム、カレン選手。
何となく、あのバトルも頷ける…これはある意味戦い辛いかも。

カレン 「…随分、口が軽くなったわね…『M1』」
カレン 「ふっ…『M0』の方が正しかったかしら?」

ミカゲ 「!! あらぁ…どこかで見たことあると思ったら? カレンじゃなぁい♪」
ミカゲ 「イカレ研究者に付きっ切りだったあなたが、今更何の用かしら?」

ミカゲとカレン選手は何やら面識があったようだ。
まさか、例によって火と水かしら…?

カレン 「…少なくともあなたに答える義理は無いわね」
カレン 「今回のバトルは、ある目的のためだけ…試合内容なんてどうでもいいわ!」

エマ 「ちょっ! それはいくらなんでも…」

カレン 「うるさいわよ! あなたとは、今回だけのタッグ!」
カレン 「目的は結局達成できそうもないし…もうどうでもいいわ」

タタタッ!!

エマ 「あ、ちょっと待ってよー! あ、ごめんね〜ふたりとも♪」
エマ 「もうーー! カレンさーーーん!!」

ハルカ 「…嵐のような女ね」

ミカゲ 「…鬱陶しいわ」





………………………。





『時刻13:30 第0スタジアム・試合会場』


コトウ 「さぁ、第2回戦の後半戦が始まろうとしております…」
コトウ 「すでに、両ペアはスタンバイ済み! 今からポケモンを繰り出す所です!」



………。



ハルカ 「ジュペッタ、頼むわ!」
ミカゲ 「…『ムクホーク』」

エマ 「行っけーーーーーー『サンダース』!!」
カレン 「…『ツボツボ』」

ボボンッ!! ボボンッ!!

ジュペッタ 「………」
ムクホーク 「ムクホーーー!!」

サンダース 「サーーーーンッ!!」
ツボツボ 「ツボッ」

ハルカ (どっちも見たこと無いわね…片方は多分電気タイプで、もう片方は……岩? それとも虫?)

サンダースとか言うのは見た目や名前からして確実に電気タイプだろう。
しかし…ツボツボとか言うのは意味がわからない。
フジツボの様な物から出入りしている所を見ると、防御力は高そう。

審判 「それでは、バトル開始!!」

エマ 「突っ込めサンダーーーッス!! 『でんこうせっか』!!」

サンダース 「サーーンッ!!」

ドドドドッ! ヒュンッ!! ズシャァァッ!!

ハルカ 「…ヲイ」

ジュペッタ 「………」

いきなり、エマ選手はズッコケさせてくれる。
こともあろうか、ゴーストタイプのジュペッタ相手に、『でんこうせっか』で思いっきり突っ込んできたのだ。
当然の如く、サンダースはジュペッタの体をすり抜けてジュペッタの背後で着地する。
もちろん、伏線があるとは思えない、あれは間違いなく天然だ!

エマ 「あっれ〜? おっかしいなぁ…てっきり効くと思ったのに」

カレン 「何、馬鹿なことをやってるのよ! ジュペッタはゴーストタイプ、ノーマルタイプの『でんこうせっか』は通用しないわ!」

エマ 「あ、そうなんだ♪ 初めて戦ったから知らなかった☆」

そう言って、ベロを出して微笑むエマ選手。
可愛いのは可愛いけど…痛い。

ミカゲ 「…もっと喜びなさいよ、同レベルの相手が見つかったじゃない」

ハルカ 「うっさい! 気にしてるんだから抉るな!!」
ハルカ 「もう、とりあえず行くわよ! ジュペッタ、ツボツボに『シャドーボール』!!」

ジュペッタ 「ふんっ!!」

ドギュゥゥンッ!!

カレン 「『すなあらし』」

ドォォンッ!!

ツボツボ 「ツボ〜! ボボーー!!」

ドォォォォォオオオオオオオオオオオォッ!!!

ハルカ 「くっ!? すぐに動くなんて!」

ツボツボは『シャドーボール』をまともに受けながらも、まるで怯むことなく『すなあらし』を繰り出した。
ニョロニョロした可愛い見た目とは裏腹に肝の据わったポケモンね…

ミカゲ 「…特別に教えてあげるわ、ツボツボは岩と虫タイプ」
ミカゲ 「単純な防御力は全ポケモンでも最強クラスよ」
ミカゲ 「加えて、『すなあらし』の中では特殊防御力が高まる…下手な攻撃は止めてあなたはサンダースを狙いなさい」
ミカゲ 「『ブレイブバード』!!」

ムクホーク 「ムクホーーー!!」

ビュオオオオオオオォォォッ!! ドッギャアアアアアアァァァァンッ!!

ツボツボ 「ツ、ツボーーー!!」

ガンゴンッ!! ゴロゴロロー!!

カレン 「!? ツボツボが一撃であれほどに…!」
カレン (予想以上のパワーね…! 前に計測した時とは比較にならないわ!)

ミカゲのムクホークは砂嵐の中を突っ切って突撃する。
ツボツボは動くことなく直撃を食らい、地面を数メートル転がるが、何とか持ちこたえていた。



コトウ 「いきなり、強烈な攻撃!! サンダースの無駄な動きに惑わされず、ムクホークがツボツボを強襲!!」
コトウ 「防御力に定評のあるツボツボですが、今のは相当効いたようです!!」



………。



ユウキ 「…あれを耐えるか、すげぇな」

キヨハ 「ええ…ツボツボだから耐えたと言っても良いわね」

ノリカ 「ふんぬーー! ハルカ様ーーー!! 踏ん張れーーーーーー!!! そして踏めーーーー!!」

アムカ 「…砂で、よく見えないよ〜」

サヤ 「………」(汗)

キッヴァ 「ここまでの攻防なら、ハルカさんたちがリードですね」

リベル 「うん、でもまだわからないよ…」

ジェット 「ああ、長引くと引っくり返るかもな!」



………。



ハルカ (くっそ…砂嵐とはいえ、視界がかなり悪いわ!)
ハルカ (ジュペッタ、相手の位置は把握してる?)

ジュペッタ (問題ない…サンダースは背後側で待機している、すぐにでも行動できるぞ)

ハルカ 「うっし! だったら『10まんボルト』!!」

ミカゲ 「…はぁ?」

ジュペッタ 「!!」

バチバチバチィ!!

ジュペッタはすぐに攻撃態勢に入り、まだ動きを止めていたサンダースを攻撃する。
こういう場合は先手必勝! 効果は今ひとつでも当たれば麻痺するかもしれない!

ハルカ 「どうよ!?」

サンダース 「サ〜ン♪」

ハルカ 「ば、馬鹿な…いくら電気タイプとはいえ」

エマ 「サンダースの特性は『ちくでん』! 電気技は吸収しちゃうよ〜?」

ハルカ 「何ぃーーーーーー!?」

そいつぁ驚きだ! つまりは、ノーダメージ所かダメージ回復ですかい!?

ミカゲ 「…ついでに教えてあげるわ。いい? 特別よ…?」
ミカゲ 「電気タイプに『10まんボルト』じゃ、麻痺もしないわ」

ハルカ 「…それはどうも」

どうやら、ハナから作戦は失敗らしい。
ぬ〜…結構考えたのに。

エマ 「とにかく攻撃チャーーーンッス!! サンダース、ジュペッタに『かみなり』!!」

サンダース 「サンダーーーー!!」

バチバチバチィ! ピッシャャァァァァァァァァンッ!!!

ジュペッタ 「!!」

ハルカ (外れた! 助かったわ…あの威力をまともに食らうわけには行かない!)

サンダースの『かみなり』は惜しくもジュペッタの左前方に落ちた。
地面が抉れ、破片が飛び散ったがジュペッタは特に問題無いようだった。

カレン 「ツボツボ! 『ストーンエッジ』!!」

ツボツボ 「ツボ〜…!」

ドガガガガガガガッ!!

ムクホーク 「ムクホーー!!」

ツボツボがバタバタと動くと、ムクホークの足元から尖った岩が噴出される。
しかしながら、大した威力ではないようで、ムクホークはまるでダメージを受けていないようだった。

カレン (さすがに『いかく』の上じゃ無理か…! ツボツボの攻撃力ではどうにもなりそうにないわね…)

ミカゲ 「それで終わりかしらぁ? ムクホーク『つばめがえし』!!」

ムクホーク 「ムクホーーー!!」

ギュンッ!!

ハルカ 「ジュペッタ、サンダースに『サイコキネシス』!!」

ジュペッタ 「よし!」

ギュゥゥゥンッ!! ドギャァッ!!

空間が捩れ、サンダースは『サイコキネシス』の直撃を食らう。
しかし、これまたあまり効いていないようで、まだ向こうはピンピンしていた。

ハルカ (今ので、3割位か…! 思ったよりも特殊防御力が高いわね…)

ジュペッタ (狙うなら物理系だ! 相手は単純思考、一気に攻め込むぞ!)

ムクホーク 「ホーックッ!!」

ズバァッ!!

ツボツボ 「ツボ〜〜〜…!!」

ムクホークはツボツボの死角から攻撃を当てる。
だけど、ツボツボはまだ倒れない、必死に耐えていた。


コトウ 「ツボツボ必死です! ムクホークの強烈な攻撃をまともに受けながらもまだ倒れません!!」
コトウ 「対する、ムクホークは砂嵐のダメージが溜まっているのか、若干疲れが見え始めています!」



ジェット 「…ユウキ君、君ならどう見る?」

ユウキ 「…? 俺すか…そうですね」
ユウキ 「ツボツボの耐久力があっても、もう耐えられない」
ユウキ 「ここまで、攻撃は『ストーンエッジ』一発…だけどほとんどダメージになってない」
ユウキ 「…腑に落ちませんね」

ジェット 「やはりそう思うか…どうにも、おかしいんだよな」

ジェットさんは、何か気になるのか、カレン選手の戦い方を気にしているようだった。
俺はと言うと、別段そこまで気にはしてない。
あのカレンという選手、何か別のことを考えているように思える。
まるで、バトルなんてどうでもいい…って顔だな。

ユウキ (このバトル以上に気になる事態が、『今』あるのか?)

俺の推測はここまでだ。
相手にやる気が無いならそれまで…このバトルはハルカたちの勝ちだな。



カレン (くぅ…これ以上はもう持たない。ダメね…結局見つからなかった)
カレン 「…降参するわ! これで止めます!!」

ハルカ 「はぁ!?」

ミカゲ 「何ですって…?」

エマ 「ちょ、ちょっと待ってよ!! まだ私は戦えるのに!!」

カレン 「だったら、ひとりでやりなさい…私は降りるわ」
カレン 「戻りなさい『ツボツボ』」

シュボンッ!!

カレンさんはポケモンをボールに戻し、さっさと会場を出て行く。
あまりの出来事に、会場が静まり返っていた。
そして…その中で一番静かにできない人間が叫びを上げる。

エマ 「ふっざけんなーーーーーーーーーー!!」

ハルカ 「な、何なのよ〜」

ミカゲ 「…鬱陶しいわね」

エマちゃんは両手を天に突き上げ、思いっきり言う。
それが誰に対しての言葉かは知らないけど、今の彼女の心境をしっかりと表していた。

エマ 「勝手に終わらないでよ! 私はバトルが好きでこの大会に出てるのに!!」
エマ 「ひとりでも私は戦う!! そうだよねサンダース!?」

サンダース 「サンサン!!」

サンダースはエマちゃんと頷き合い、互いの意思を確認する。
彼女は、戦う気だ。

ミカゲ 「戻りなさい…」

シュボンッ!!

ハルカ 「ちょ、ちょっと!?」

ミカゲ 「後はあなたがやりなさいよ…私は鬱陶しいから嫌よ」

そう言って、ミカゲは観戦モードに入る。
どうやら、私にやらせたいらしい…。

ハルカ 「しゃあない!! こうなったら一対一のバトルよ! 決着を着けましょう!!」

ビシィッ!と、私はそう言ってエマちゃんを右手の人差し指で指差した。
それを見てエマちゃんは、静かに体を震わせ。

エマ 「んん〜! 萌えてきたーーーーー…じゃ無かった! 燃えてきたーーーーーーーーーーー!!!」
エマ 「いくよサンダース! 私たちの想いを思いっきりぶつけるんだ!!」

ハルカ 「行くわよジュペッタ! 相手の気迫に飲まれるんじゃないわよ!?」

ジュペッタ 「…ふ、了解だ」

ワアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァッ!!!


コトウ 「さぁ、一時はどうなることかと思いましたが、会場は再びヒートアップ!!」
コトウ 「バトルを放棄したカレン選手がいなくなり、たったひとりで戦うエマ選手に対し、ハルカ選手がひとりで応戦!!」
コトウ 「ミカゲ選手はポケモンを戻し、完全に傍観する気のようです!」



キヨハ 「…これも、ハルカちゃんらしさかしらね」

ユウキ 「確かに…よく厄介ごとに巻き込まれる奴だよ」
ユウキ 「でも、ま…それが『らしい』って言うのかもしれませんね」

ゴウスケ 「その通りかもな…で、どっちが勝つと思う?」

リベル 「私はハルカさん! やっぱりここで実力を見せないと!」

ジェット 「俺も同感だ、一筋縄じゃ行かないだろう!」

キッヴァ 「私もハルカさんですね、相手には残念ですけど」

ゴウスケ 「なんや、賭けにならへんやんか…まっ、それもハルカちゃんの人徳か」

何やかんやで、ハルカちゃんは皆を引きつけとる。
望む望まないに関わらず、そう言う大きな流れの中におる。

ゴウスケ (そら悔しいやろな…同じ様に戦って、同じ様に生きた娘に負けるなら)



………。



エマ 「サンダーーッス!! 『かみつく』のよ!!」
ハルカ 「『ふいうち』!!」

ジュペッタ 「ふんっ!!」

ヒュッ! ドガァッ!!

サンダース 「サーーンッ!!」

サンダースが攻撃態勢に入った瞬間、ジュペッタは一瞬にして接近しサンダースの頭を上から叩き伏せる。
物理攻撃の技だから、結構効いている…もう余力は少ない!

サンダース 「サーーーンッ!!」

ガブゥッ!!

ジュペッタ 「うおおっ!!」

ジュペッタがサンダースに喉元を噛み付かれ、悲鳴をあげる。
サンダースは小さい体ながらも、必死にジュペッタの首に噛み付いて離そうとはしなかった。
さりげなく効果抜群の技…効かないはずが無い!

ハルカ 「『おにび』よ!!」

ジュペッタ 「!!」

ボボボッ!!

サンダース 「サーーンッ!!」

サンダースの体に『おにび』がまとわり着き、サンダースはようやく口を離す。
そして、『やけど』を負い、サンダースは苦しみ始めた。

ハルカ (これでもうほとんど体力は残っていない…反撃の余力があっても、潰す方法はある!)

ジュペッタ 「………」

サンダース 「サ、サン…!!」

エマ 「頑張れサンダース!! まだ倒れるな!! 後一撃!!」
エマ 「『かみなり』だ!!」

ハルカ 「『ふいうち』!!」

エマ 「!?」

サンダース 「…サ、サン〜!!」

ジュペッタ 「!!」

ドガァッ!!

物凄い音がした。
ジュペッタがサンダースの眼前に向かい、右拳を叩き付けた音。

バチバチ…バチッ!

サンダース 「サ…サン…」

ジュペッタ 「…サンダース戦闘不能、これで終りだ」

ハルカ 「…まっ、いっか」

シュボンッ!!

私は状況を確認し、納得してジュペッタをボールに戻した。
ジュペッタは、最後の一撃をサンダースに当てず、地面を殴りつけた。
地面が軽く抉れる位の衝撃だったけど、サンダースは反撃することなく崩れ去った。
ジュペッタは、こうなるのがわかっていたのかもしれない。

ハルカ 「全く、格好つけちゃって♪」

私はジュペッタのボールを見てそう言う。
何だかんだで、思いやりあるんだから、この子は困ったものだ。

エマ 「うう…サンダース、ごめんね〜」

サンダース 「サ〜ン…」

エマちゃんは、泣きながらサンダースを抱きしめていた。
あの尖った毛とか凄い痛そうなんだけど…大丈夫なのかしら?

サンダース 「サ! サンサン!!」

エマ 「え? あうう! また刺さった!?」
エマ 「うう…チクチクする…!」

ごめん、全然大丈夫じゃなかった。
思いっきり、頬から顎から血が出てる!

ハルカ 「ああもう! じれったい!!」

ダッ!

私はすぐさま駆け寄り、エマちゃんの所に向かった。



………。



ミカゲ 「…やれやれ、ね」
ミカゲ 「どうでもいいけど、さっさと試合を終わらせてほしいんだけど?」

審判 「あっ! し、失礼! サンダース戦闘不能!! よって勝者! ハルカ、ミカゲ・ペア!!」

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァッ!!!


コトウ 「これで決着が着きました!! さすがはハルカ選手! ここは貫禄を見せての勝利!!」
コトウ 「エマ選手も気合を見せましたが、及びませんでした!」
コトウ 「しかし! これでついに決勝のカードが揃い、いよいよ残りはラスト一戦となりましたーー!!」



ハルカ 「ほら、これで顔拭きなさい!」

エマ 「…すみません、ついいつもの癖で」

いつもって…そうポンポン出血されても困るでしょうに…

ハルカ 「まぁとりあえず、勝負は勝負! 悪いけど、私の勝ちね」

エマ 「はい…完敗です。でも、楽しかったです!」
エマ 「できるなら、優勝したかったけど…今回はこれで満足です!!」
エマ 「ハルカさん、決勝も頑張ってくださいね!!」

ドドドドドドッ!!

最後にエマちゃんは一礼して嵐のように去っていった。
う〜ん、なんだかねぇ…落ち着きの無い娘だわ。

ハルカ (…ともかく、勝った)
ハルカ (次は決勝…ユウキ、キヨハさんとのバトル)
ハルカ (キヨハさんとは、15日の本番戦でも戦う相手…できるなら、何とか攻略法を見つけたいわね)

私はそう思い、次のバトルへの気を入れなおす。
休憩を1時間挟んでからのバトルだ…全力で行こう!



…To be continued




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