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POCKET MONSTER RUBY



第86話 『ハルカ VS ユウキ』




『4月14日 時刻10:00 サイユウシティ・海岸』


ザザァッ! ザァ…

ノリカ 「はぁっ!!」

ズダンッ!!

ハルカ 「はっ!」

ズシャァッ!!

ダンッ! ザザッ!!

サヤ 「……」
アムカ 「……」

私はノリカを連れ、海岸にて組み手を行っていた。
特に理由は無い。
ただ、体を動かさないと気が済まなかった。

ノリカ 「えやぁっ!!」

ハルカ 「!!」

ガッ! ギリィッ!!

ノリカ 「ぷぎゃ! ギブギブ!!」

私はノリカの右拳を掴んでそのまま瞬時にアームロックへと繋ぐ。
ノリカは前のめりに倒され、私はノリカの右腕を背中側に回して極めた。
ノリカはすぐさまタップし、私は手を離す。

ハルカ 「……」

ノリカ 「ぷひ〜…マジで折れるかと思った」

ハルカ 「…ノリカ、拳の突きが甘いわよ」
ハルカ 「もっと踏み込みは強くなさい、迷いがあるから簡単に取られるのよ」
ハルカ 「本気になってたら返し技位できたはずよ」

ノリカ 「は、はいっ!」

ノリカは真剣な顔つきで答える。
正直、この娘は子供とは思えない位強い。
ちょっと前まで戦場で軍人格闘技を習っていたらしく、その道では相当な腕前だったようだ。
世界は広い…私の知らない所でも、こんな強い娘はいる。
それに比べ…私は。

ハルカ 「……」

ユウキ 「…悩んでるな」

ハルカ 「…! あんた…自分から来るなんていい度胸ね」

私は怒気を込めてそう言う。
そんな私の気をあっさりと流すように、ユウキはサラリと言葉を放つ。

ユウキ 「言いたいことがあるだろうが、こっちは聞くつもりは無い」
ユウキ 「今来たのは、昨日達成するはずだった目的を終えるためだ」

ハルカ 「…目的、ですって?」

ユウキはややかったるそうに言うも、その奥からは真剣その物の気が感じ取れた。
サヤちゃんやノリカもそれがわかったのか、場の空気に支配されるように押し黙ってしまう。

ユウキ 「お前、今のままじゃキヨハさんには勝てないぜ」

ハルカ 「!? わざわざ、それを言いに来ただけ? そんな物はやってから決めるわ!」

私はそう返すも、ユウキはため息を吐き捨てる。

ユウキ 「無駄だね…今のお前じゃどう逆立ちしても勝てない」
ユウキ 「全力を出す前にタコられて負けるのがオチだ」

ハルカ 「…気に入らないわね、何がしたいのよ?」

私は単刀直入に聞く。
こいつがわざわざここに来て無駄なやり取りをしに来たとは思えない。
と、なるとさっき言っていた目的とやらが、私に関係しているのは確実。
ユウキは、数秒黙り…そして口を開く。

ユウキ 「…俺とバトルをしてもらう」
ユウキ 「昨日みたいな手抜きは無しだ…本気でやってやる」
ユウキ 「使用ポケモンは俺は3体、お前は好きなだけ使え」

ハルカ 「!? 何よそれ…バカにしてるの!?」

ユウキはあっさりとハンデ宣言をする。
余程の自身があるのか、またため息をひとつ吐く。

ユウキ 「バカにするも何も、お前じゃ俺には勝てない」
ユウキ 「昨日の戦いでもわかったと思うが?」

ハルカ 「!!」

私は言葉に詰まる。
言い返す言葉も無い…確かに完璧な負けだ。
状況ひとつ掴めず、相手のことを何も理解しないまま、終わってしまった。
今までの中でもあの負けは特に酷い…最悪のパターンだ。

ユウキ 「…ついでに宣言してやる、俺が使うのは『ジュカイン』、『サーナイト』、『ボスゴドラ』だ」
ユウキ 「順番はサーナイトから、俺は途中で交換はしない」
ユウキ 「俺のポケモンを3体倒せばお前の勝ち、以上だ」

ハルカ 「…そのバトルに何の意味があるのよ?」

ユウキ 「…答えるまでも無いね、お前が一番良く知ってる」

私はあえて聞いてみたが、答えは予想通りだった。
こいつは、初めから全部ワザとやってる。
今まで騙しながらやってたのをバラしただけだ。

ハルカ 「…いいわよ、受けて立ってやるわ!」

ユウキ 「…なら、早速始めるぞ。出ろ『サーナイト』!」

ボンッ!

サーナイト 「…サ〜」

宣言通り、最初に出てきたのはサーナイト。
確かエスパータイプで、ミツル君が使っていたのを覚えている。
エスパーに有効なのは、虫、悪、ゴースト。
私は早速、ポケモンを決めて繰り出す。

ハルカ 「行け、『アーマルド』!」

ボンッ!

アーマルド 「アマーー!!」

重低音の響く鳴き声をあげ、アーマルドは登場する。
サーナイトに比べるとこちらは鈍重だが、その分パワーは違う。
どの位強いかはわからないけど、こうなったら全力でぶっ倒して後悔させてやるわ!

サヤ (あのサーナイト、相当なレベルですね)
サヤ (相性の悪い相手を繰り出されても平然としてる)

ノリカ 「よっしゃー! ハルカ様ぶちのめせーー!!」

アムカ 「ふみゅーーーん!!」

ノリカとアムカがふたりで応援する。
とはいえ、さすがのハルカさんも少なからず慎重になってる。
嫌な雰囲気を感じ取っているようですね。

ハルカ (くっそ…全然隙が無さそうじゃないのよ)

ユウキ (何だ…カッカしてるかと思ったら、割と冷静じゃねぇか、面白くねぇな)
ユウキ 「サーナイト『ねんりき』だ」

サーナイト 「サ〜!」

ドバァンッ!

アーマルド 「ア、アマッ!」

ユウキはいきなり小技でアーマルドを攻撃する。
とはいえ、小技の割りにアーマルドはよろめいた。
ミツル君のと比べても、それだけ威力差があるのかしら?

ハルカ 「アーマルド! 『れんぞくぎり』!!」

アーマルド 「アーマッ!!」

ズシンズシンッ!!

ユウキ 「……」

ハルカ (傍観? ワザと食らう気!?)

ザシュウッ!!

サーナイト 「…!!」

アーマルドはまず一太刀浴びせる。
この技は連続で当てて初めて意味がある。
ここから他の技を使わずに、同じ技を連続で繰り出さなければならないのが弱点だ。

ハルカ 「もう一発!」

ユウキ 「『テレポート』」

ヒュンッ!!

アーマルド 「ア、アマッ!?」

ズシンッ! ズシンッズシンッ!!

アーマルドは突如相手を見失い、勢いでよろめく。
『れんぞくぎり』は一度でも外れると、威力が初段に戻ってしまう…見事に破られた。

サーナイト 「……」

サーナイトはアーマルドの斜め右後ろで静かに静観している。
余裕なのか、無口なだけなのか、まるで動じていないようだった。

ハルカ (くっそ…あしらわれている感じね)

ユウキ (さて、次はどうする?)

ユウキは本気でやると言っていながら、まるで攻撃してこない。
まずはこちらの戦力を調べてから…とでもいう気かしら?
とにかく、やるからには全力で突っ込む!

ハルカ 「アーマルド! 振り向いて『ロックブラスト』!!」

アーマルド 「! アーーッマ!!」

バババババッ!!

アーマルドはサーナイトのいる方向に向けて振り向き様『ロックブラスト』を放つ。
全弾当たれば大威力、多少なら外してもいい!

ユウキ 「『リフレクター』」

サーナイト 「サー」

ピィンッ! ドガガガガッ!!

サーナイト 「!!」

サーナイトは前面に『リフレクター』を張り、攻撃を和らげる。
4発入ったが、実質2発程度のダメージになってしまった。

ユウキ 「続いて『ねがいごと』」

サーナイト 「サ〜…」

パァァァァ…

サーナイトは祈りを捧げるかのようなポーズで天に祈りを捧げる。
よくわからないけど、チャンスはチャンスだ!

ハルカ 「アーマルド『げんしのちから』!!」

アーマルド 「アーーッマ!!」

ゴゴゴゴッ!! ドッガァァッ!!

サーナイト 「…!!」

アーマルドは足元の砂地から多量の岩を作り出し、それを自分の身にまとう。
そのままサーナイトへ向かって体当たりをし、壁ごと吹っ飛ばした。
いいわよ! 結構効いてる!!

パァァァァ!

サーナイト 「! サ〜」

ハルカ 「!? 傷が回復した!」

ユウキ 「おいおい…『ねがいごと』の効果も知らないのか?」
ユウキ 「『ねがいごと』は使用後、1分程度後に傷を回復させる効果の技だ」
ユウキ 「『じこさいせい』と違い、速攻効果はないが後発のポケモンを回復させることのできる便利な技だ」

なるほど…それは厄介ね。
ただでさえ壁で攻撃を和らげられているのに、回復できると来た。
だったら、一気に攻略するしかない!

ハルカ 「アーマルド『れんぞくぎり』!」

ユウキ 「だから、お前はアホなんだよ…『おにび』!」

サーナイト 「サ〜」

ボボボッ!!

アーマルド 「ア、アマーーー!?」

ズシンッ! ゴロゴロゴロッ!!

ハルカ 「ア、アーマルド!?」

アーマルドは突撃するも、突然に身の回りに現れた『おにび』を食らって地面を転がる。
この技は対象を『やけど』にする技。
『やけど』になると、攻撃力は半減し、有効な打撃が行えない。
これで益々追い詰められた…押しているつもりが、完全に押されてる。

ユウキ 「バカの一つ覚えで勝てるか。アーマルドは物理攻撃力が高い種族」
ユウキ 「その物理攻撃力を削いでしまったら、大した怖さはない」
ユウキ 「サーナイト『サイコキネシス』!」

サーナイト 「サー!」

ドギュゥンッ!!

アーマルド 「アマーー!!」

ズッシャァァッ!!

地面を転がるアーマルドに『サイコキネシス』が炸裂する。
空間の歪みが爆ぜると同時、アーマルドは宙を飛んで地面に落ちた。

アーマルド 「ア…アマ〜!!」

ハルカ 「アーマルド…やれるの!?」

ユウキ (!! こいつぁ驚いた…結構なダメージだと思ったんだがな)
ユウキ (まっ、『いじっぱり』なあいつの性格じゃ、あれが限界か…あいつの本業はこんなんじゃないからな)

アーマルド 「アマッ! アマアマッ!!」

ハルカ 「?」

アーマルドは何かを訴えてくる。
私はアーマルドの考えを読む…

アーマルド 『技だ!! 新しい技を使わせてくれ!!』

ハルカ (新しい…技!?)

私は咄嗟に図鑑を開く…そして驚愕する。
すると、アーマルドには確かに新たな『技』が習得されていた。
この土壇場で、この子はレベルアップを果たした。
だったら、行けるとこまで行くか!!

ハルカ 「アーマルド! 気合入れて『つるぎのまい』!!」

アーマルド 「アーマッ!!」

ズシンッ! ズシシンッ!!

ユウキ 「! 攻撃アップか、しゃあねぇ乗ってやる!! サーナイト『ギガインパクト』だ!!」

サーナイト 「! サ〜〜!!」


ノリカ 「ひぇっ!? サーナイトで『ギガインパクト』!?」

サヤ 「…なるほど、そう言う育て方をしたと言うわけね」

アムカ 「頑張れハルカさーーん!!」


サーナイト 「サーーー!!」

サーナイトはこれまでにない気迫を持って右拳をアーマルドに振るう。
その重圧はこれまでにない威力を想像させる。
だけど、アーマルドは退くことなくそれを正面から受けて立った。

ドッギャアアアアァァァンッ!!!

アーマルド 「ア…アマ〜〜!!」

ズンッ!! ズシィィンッ!!

ハルカ 「!!」

グッ!と、私は小さくガッツポーズを取る。
凄まじい衝撃だったけど、アーマルドは倒れそうな所で踏ん張り、耐え切った。
私はお返しとばかりに新技で対抗する。

ハルカ 「アーマルド『シザークロス』!!」

ユウキ 「!!」

アーマルド 「アーーー! マーーーー!!」

ザシュッ! ザシュゥゥゥッ!!

サーナイト 「サーーーー!!]

目の前で完全に動きを止めていたサーナイト。
無防備な相手に対し、アーマルドは全力で新技を繰り出す。
両手の鎌をクロスさせ、十文字に相手を切り裂いた。
虫タイプの技ではかなりの高威力で、アーマルドの攻撃力を如何なく発揮できる技だ!

ユウキ 「…ちっ、後10秒か」

ハルカ 「…?」

ユウキは何やらカウントを取っている様だった。
とにかく、今がチャンス! サーナイトはボロボロだ、このまま一気に…

アーマルド 「……」

ズシィィンッ!!

ハルカ 「あ…」

追撃をさせようかと思った矢先、アーマルドはダウンしてしまう。
そうだった…アーマルドもギリギリだった。
『やけど』は徐々に体力を奪ってしまう…さっきの攻撃が…限界。

ハルカ 「…ごめんなさい、戻ってアーマルド」

シュボンッ!

ユウキ 「……」

サーナイト 「…サ〜…サ〜!」

サーナイトは荒い呼吸でこちらを見ていた。
最初の印象とはまるで違う…荒っぽさを感じる。
さっきの大技といい、もしかしたらあのサーナイトって、物理攻撃重視?

ハルカ 「…まぁいいわ! とにかく次はあなたよ『ジュペッタ』!!」

ボンッ!

ジュペッタ 「……」

ジュペッタはいつもの様に無口で相手を見据える。
そして、いつになく真剣な顔で相手を睨み付けていた。

サーナイト 「!! サ〜…!」

ユウキ 「落ち着けサーナイト…まずは呼吸を整えろ」

サーナイト 「! …サ〜〜」

サーナイトはユウキに言われて深呼吸する。
なるほど…どうやら見た目とは裏腹に荒っぽい性格みたいね。

ハルカ (ここは一気に攻めていけば…)

ジュペッタ (よせ…下手な考えは止めろ)
ジュペッタ (相手は今までと訳が違う…正攻法で勝てる相手ではない)
ジュペッタ (体力は残り少ないようだが、何か危険な予感がする…)

ハルカ (なるほど…)

言われて、確かに嫌な予感がある。
あのサーナイト、落ち着いているように感じるけど、実は全然落ち着いてない。
心の中で、ダメージを食らったことをかなり気にしてる。
どうやって仕返ししてやろうかと、考えているようだ。

ユウキ 「ちっ、落ち着けって!」

サーナイト 「……!」

再び、ユウキはサーナイトを落ち着かせようとする。
よっぽど、意地っ張りなのか…サーナイトはジュペッタにガンを飛ばしまくっていた。

ジュペッタ 「…やれやれ、こいつはタチが悪そうだ」

ユウキ 「悪いな、手間を取らせたようだ…遠慮なく来いよ」

ユウキはサーナイトの状態を確認して、そう言う。
私はジュペッタの状態を確認し、先手を取る。

ハルカ 「ジュペッタ! 『おにび』よ!」

ユウキ 「『ちょうはつ』」

サーナイト 「サー! サーナ!!」

ジュペッタ 「!! ちっ…!」

ジュペッタは舌打ちしてサーナイトを睨む。
まさか、そう来るとは…あれだと『ふいうち』でも失敗してた。
今の状態を確認した上での行動だ…

ユウキ 「行け! 『シャドーボール』!!」

サーナイト 「サーーー!!」

ギュンッ!!

ハルカ 「えっ!?」

ジュペッタ 「接近戦だと!?」

サーナイトは『シャドーボール』を右手に作り出し、それを持ったまま接近してくる。
今までにない攻撃法だ、まさか零距離射撃!?

ハルカ 「くっ! 『シャドークロー』!」

ジュペッタ 「おおっ!!」

ジュペッタは右手に影の爪を作り出し、サーナイトを迎え撃つ。
接近戦ならジュペッタだって相当な攻撃力よ!?

サーナイト 「!!」

ヒュンッ!

ジュペッタ 「!?」

ハルカ 「消えた!?」

ドォォォンッ!!

ジュペッタ 「!!」

ズドンッ! ゴロゴロゴロー!!

ジュペッタは背後から攻撃を食らって地面を転がり吹き飛んだ。
サーナイトは瞬時に『テレポート』し、ジュペッタの背後に現れる。
そして、無防備なジュペッタの背中に向けて右手の『シャドーボール』を右手で押し付けるように叩きつけたのだ。
あんな使い方をしてくるなんて…!

ユウキ 「どうだ? あれが物理型の『シャドーボール』だ…」

ハルカ 「? 物理型…?」

ユウキ 「…ポケモンの攻撃技に物理型と特殊型があるのは知っているだろう?」

ハルカ 「馬鹿にしないでよ! それ位は当たり前じゃない」

私がそう言うとユウキはひとつため息を吐いてこう言う。

ユウキ 「なら、同じ技でも物理型と特殊型の使い方があるのは知っているか?」

ハルカ 「…? 同じ技で物理型と特殊型…」

そう言えば、そこまでは考えたことがなかった。
だけど、今思えば、バシャーモの『オーバーヒート』には二種類ある。
直接殴りつけて爆発させる接触型。
口から放射して放つ、放射型。
どちらも同じ特殊型の攻撃技だけど、接触かどうかの違いはある…
だけど…物理と特殊の違いって。

ユウキ 「…例えば、さっきのアーマルド」
ユウキ 「『げんしのちから』を使っていたが、あれは物理型だ」

ハルカ 「そりゃ…そうでしょ。直接ぶつけてるんだし」

ユウキ 「…だが、シンオウとか別の地方では『げんしのちから』は特殊型の場合があるんだよ」

ハルカ 「はぁ!? 何で?」

ユウキ 「理由は知らないさ…そこまでは勉強してない」
ユウキ 「だが、ポケモンの育った場所や環境で使い方を変える技もあるってことだ」
ユウキ 「今の『シャドーボール』がひとつの例…普通なら飛び道具として放つ『シャドーボール』は特殊型だ」
ユウキ 「だが、俺のサーナイトは意地っ張りでね…特殊よりも物理が得意だったりする」
ユウキ 「んで、編み出したのがあの物理型『シャドーボール』だ」
ユウキ 「球を作る所までは一緒だが、力技で殴りつける効果を含めているから特殊防御の高い相手にも良く効く」

ユウキは事も無げに笑って言う。
編み出したって…つまり、それだけの練習をしたってことだ。
ユウキはベテラン並みのトレーナーって聞いてた…やっぱり、本当はそれだけの努力を培って強くなったんだ。
あのサーナイトや、前のジュカインは、その時のポケモンだ…

ハルカ 「ふふふ…あーーっはっはは!!」

ユウキ 「な、何だ? 頭がおかしくなったか?」

私の高笑いに驚くユウキ。
私は一頻り笑い終えると、いっきに気が楽になる。
そして、ようやく立ち上がったジュペッタを私は一喝する。

ハルカ 「ジュペッタ! 一発くらいでよろめいてるんじゃないわよ!?」

ジュペッタ 「…! ふっ、そうだな…」

ジュペッタは私の言葉でよろめく体をしっかりと踏ん張らせる。
もう吹っ切れた。
ユウキは凄いトレーナーだ…それでいいじゃない。
ロクなやり方じゃないけど…私のためにわざわざやっているのはわかった。
不器用よね…お互いに。

ユウキ 「…ちっ、嫌な笑いしやがるぜ」

ハルカ 「ジュペッタ! 『かげうち』!!」

ユウキ 「ヤベッ! サーナイト!!」

サーナイト 「…!! サーー!!」

ギュンッ! ドバァッ!!

ジュペッタは自分の影をサーナイトの側まで伸ばし、影で攻撃する。
自らが動かなくても直接攻撃が出来る、便利な先制技だ。
サーナイトは不意を突かれ、ようやくダウンした。

ユウキ 「…ちっ、油断したぜ」

シュボンッ!

ユウキは舌打ちしてサーナイトを戻す。
相当な自信があったんでしょうけど、まだまだ!
こうなったら、最後まで付き合ってやるんだから!!
強くなれるなら、どこまでもやってやるわ!

ユウキ 「…出ろ、『ボスゴドラ』!」

ボンッ!

ボスゴドラ 「ボッス!!」

ドッズウゥゥンッ!!

ハルカ 「うわっ、凄い重量!」

出てきた時点で地響きの様な重量感が砂浜を揺らす。
見た目からして、超重量のポケモンね…
頑丈そうだけど、鋼タイプかしら?

ジュペッタ 「あれは鋼タイプと岩タイプのポケモンだ」
ジュペッタ 「物理防御力がすこぶる高く、力勝負じゃ話にならん」
ジュペッタ 「覚える技も多彩で、何をしてくるかわからん…気を抜くな?」

ハルカ 「OK! 徹底的にやってやるわ!」

ユウキ (…さて、実に久し振りにバトルだからな、どこまで動けるか)

ハルカ 「ジュペッタ『おにび』!」

ユウキ 「跳べ、ボスゴドラ!」

ハルカ 「はいぃっ!?」

ジュペッタ 「!!」

ボボボッ!!

ボスゴドラ 「ボッスー!!」

ズバァンッ!!と、重厚な音を立ててボスゴドラは高く跳ぶ。
『おにび』を瞬時にかわし、空中でジュペッタを睨みつけた。

ユウキ 「よし、『れいとうビーム』だ!!」

ハルカ 「くっ! 『10まんボルト』!!」

ボスゴドラ 「ボスーーー!!」

コオォォォォォッ!!

ジュペッタ 「くぅっ!!」

バチバチバチィッ!! ドォォォンッ!!

ジュペッタは反応が遅れたのか、目の前まで迫った『れいとうビーム』を相殺する。
いや、遅れているだけじゃない…あのボスゴドラが速い!?


ノリカ 「嘘〜…あんな素早いボスゴドラ見たことないよ〜?」

サヤ 「凄い速度ね…あそこまで鍛えるのは相当な時間がかかるわ」

アムカ 「うぅ…いかつい」


ボスゴドラ 「ボッスボッス!!」

ズドドドドッ!!

ハルカ 「いっ!? 命令無しで向かって来る!?」

ユウキ 「おいおい! 無理すんな!!」
ユウキ (ったく! 『せっかち』な女だ! 久し振りでハシャいでやがる…)

ジュペッタ 「…はぁっ!!」

バチバチバチィッ!!

ボスゴドラ 「ボスーー!!」

ボスゴドラは突っ込んできた所を『10まんボルト』で迎え撃った。
今度はまともに当たり、ボスゴドラは怯む。

ユウキ 「あの馬鹿…『がんせきふうじ』!」

ボスゴドラ 「! ボッス!」

ズンッ! ドガガッ!!

ジュペッタ 「おおっ!」

ボスゴドラは素早くユウキの指示に反応し、地面を足で突いて岩を迫り出す。
ジュペッタの足元から現れた岩はジュペッタの動きを封じてしまう。
ツツジさんの18番…『がんせきふうじ』! ここで食らうなんて!

ユウキ 「よしっ『ステルスロック』!」

ボスゴドラ 「ボーーース!!」

ヒュヒュヒュヒュヒュ!!

ジュペッタ 「うっ…!?」

ハルカ 「な、何よあれ!?」

突然、ボスゴドラが無数の岩を吐き出すと、それらはジュペッタの周りを回る。
それほど高速ではないけれど、攻撃してくるわけでは無さそうだ。
しばらく浮遊したかと思うと、岩は急に姿を消してしまった。
とりあえず、この隙にジュペッタは岩から抜け出す。

ユウキ 「続けて『ロックカット』だ!!」

ボスゴドラ 「ボス〜!!」

キンキンキンキィンッ!!

ボスゴドラは金属を削るような音を出して何やら技を行う。
能力アップ系…? でも聞いた事がない。

ジュペッタ 「ハルカ! あれは速度を倍化させる技だ!! 来るぞ!!」

ハルカ 「えっ!?」

ユウキ 「『アイアンヘッド』!!」

ボスゴドラ 「ボスーー!!」

ドギュンッ!! ズザザァァァッ!!

ボスゴドラは更に速くなった速度で、砂浜を駆け抜ける。
まるでエマのサンダースだ! あの巨体がそこまで動く!?
そして、ジュペッタの横から一気に頭突きで突撃してきた。

ドッガァァッ!!

ジュペッタ 「ぐふぅ…!?」

ハルカ 「ジュペッタ!?」

ジュペッタはまともに食らってしまう。
ダメだ…もう体力は…

ジュペッタ (俺はここまでだ…だが、やることはやらせてもらう!!)

ドギュゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!!

ハルカ 「こ、これは!?」

ユウキ 「しまった!? 『トリックルーム』かっ!!」

ジュペッタ (できるのは…ここまでだ)

ドサッ!!

ジュペッタは『トリックルーム』を発動させ、ダウンする。
最後の最後で、命令もしてないのにいつもあの子は…!

ハルカ (だったら! グズグズしてられない!)
ハルカ 「行けっ! 『ホエルオー』!!」

ボンッ! ドズゥゥゥンッ!!!

ホエルオー 「ホエ〜〜〜!?」

ドシュドシュドシュゥ!!!

ハルカ 「な、何!?」

ホエルオーが登場と同時、ホエルオーの体を尖った岩が傷つけた。
あれは、さっきの『ステルスロック』!?
ステルス…って、まさか目に見えない攻撃!?

ユウキ 「『ステルスロック』はポケモンが登場したと同時に攻撃する特殊な技だ」
ユウキ 「相手が交換をした時でも発動はする…が、それ以外では逆に発動しない」
ユウキ 「あくまでポケモンが登場した時だけだ…だが、相手の手持ちが多ければ多いほど、このダメージは意味が出る…」

ホエルオー 「ホ、ホエッ!」

ハルカ (それほどのダメージじゃない…小技を貰ったようなものだわ)
ハルカ (でも、体力の高いホエルオーから考えると、大きいかもしれない…)

ボスゴドラ 「ボ、ボスゥッ!?」

ユウキ 「しっかし、そのホエルオー…あの時の奴か! でかくなりやがったな…」

ユウキは感慨深そうにホエルオーを見る。
そうか…そう言えば、元々ユウキのポケモンだったっけ。
思えば、あの時交換してたんだった。
だけど、懐かしんでる暇はない。
ここは一気に決める!

ハルカ 「ホエルオー! 『しおふき』!!」

ユウキ (!! ダメか…この状態じゃかわせない!)

ホエルオー 「ホエーーーーー!!!」

ゴゴゴゴゴゴッ! ドッバァァァアアアアアアァァァァァァァシャァンッ!!!!

ボスゴドラ 「ボ、ボスーーーーー!!」

ハルカ (うっ!? ボスゴドラの体力が減らない!?)

私は大量の水を浴びて姿の見えないボスゴドラの体力を感じ取る。
いつもなら、ダメージを受けたポケモンの体力は増減がわかる。
だけど、今回のケースは…まるでダメージを受けてない!?

ボスゴドラ 「ボッスーー!!」

バッシャァァァァッ!!

ボスゴドラは豪快に両腕を広げ、水を弾き飛ばした。
一瞬、特有の淡い幕が見えた…あれは『まもる』!!

ユウキ (ちっ…野生の勘は衰えてないか! よく守ったぜ!)
ユウキ 「ボスゴドラ、『かみなり』だ!!」

ハルカ (まだ早い! ボスゴドラよりもこっちが先に動く!!)
ハルカ 「ホエルオー『みずのはどう』!!」

ボスゴドラ 「ボッスーーー!!!」

ホエルオー 「ホ〜エーーー!!」

ドギュッバァッ!! バッシャアアアアァァァンッ!!

ボスゴドラ 「……!! ゴーーーー!!」

ピッシャァァァァァァンッ!!!

ホエルオー 「ホ、ホエーーーー!!??」

ハルカ 「た、耐えられた…! でも、こっちも…!」

威力の少ない技で先手を取ったはいいけど、倒せなかった。
相手はそのまま反撃でこっちに大打撃を与える。


サヤ (…安定感を重視したために大きな犠牲を払いましたね)
サヤ (『しおふき』でもあのタイミングなら間に合ったはずだけど)

ノリカ 「く〜! 全然レベルが違うみたい…!」

アムカ 「ふにゅ…」


ハルカ (く…予想以上に馬力差があるのか!)

ユウキ (手を誤ったな…『しおふき』ならこっちが危なかったからな!)

ホエルオー 「…!」

ボスゴドラ 「…ゴー!」

私は互いの状態を確認する。
ホエルオーの方がダメージは大きい。
向こうはまだ動ける…もう『しおふき』の威力は期待できない。
だったら一か八か!!

ハルカ 「『じしん』よ!!」

ユウキ 「『まもる』だ!」

ホエルオー 「ホエーーー!!!」

ボスゴドラ 「ゴドッ!」

ドッギャアァァァァンッ!!

地面が割れる炸裂音。
ボスゴドラは『まもる』の態勢で乗り切ってしまう。
そして、ついに時間が来てしまった。

ヒュゥゥ…

ハルカ 「…く」

ユウキ (終わったな…このまま終わるか? それとも…)

『トリックルーム』の効果が消える。
これで、もう先手を取ることはできない。
相手は相当なスピードを持ってる…倒せる、のか?

ハルカ (弱気になるな! できないなんて考えるな!)
ハルカ 「ホエルオー! 『じしん』よ!!」

ユウキ 「ジャンプだボスゴドラ!」

ボスゴドラ 「ボッスッ!」

バァンッ!

地面が抉れるほどの踏み込みでボスゴドラは4メートルほど飛び上がる。
ホエルオーは『じしん』の態勢に入るも、相手は空中…当たるわけは無い。


ノリカ 「ひえぇ〜! あんな高く跳ぶ!?」

サヤ 「……」

アムカ 「ほえ〜」


ホエルオー 「!? …!!」

ハルカ 「…!?」

ユウキ (…何だ? 何かヤバイ!?)
ユウキ 「ボスゴドラ『はかいこうせん』だ!!」

ボスゴドラ 「! ボッスーーーー!!」

キュィンッ!! ドギャアアアアアアアアアァァァァァァァッ!!

ホエルオー 「ホエーーーーー!!!」

ドッガアアアアアァァァァァァンッ!!! ドオオオオオオオオオオォォォンッ!!!

ユウキ 「何ぃ!?」

ハルカ 「…な、何て方法を!」

ホエルオーはボスゴドラがあまりに速く動きすぎたためか、攻撃のタイミングを自分で変えた。
しかも、ボスゴドラの攻撃に合わせ『じしん』の効果で地面をせり上げて壁を作る。
ボスゴドラの『はかいこうせん』はそれを軽く貫く威力だったけど、ホエルオーはまだ健在だった。

ハルカ (『はかいこうせん』は使った後動きが止まる! 後はこれで決めるしかない!!)
ハルカ 「『しおみず』よーー!!」

ボスゴドラ 「…!!」

ホエルオー 「ホエーーーーー!!!」

ゴゴゴゴゴッ!! ドッパァァァァンッ!!!

ホエルオーが体を震わせたかと思うと、口から大きな水の塊を吐き出した。

バシャァァンッ!!

ボスゴドラ 「!? ゴ、ゴドーーーーーー!!!」

ドッズゥゥゥゥゥンッ!!!

ボスゴドラの重い体が地面に沈む。
今度こそ、倒れた…体力はない!

ユウキ (…2体で相手3体か。思ったよりやってくれるじゃねぇか)

ハルカ 「……」

シュボンッ!

ユウキは無言でボスゴドラをボールに戻し、微笑する。
これで、あいつは残り1体、こっちは4体だ…


サヤ (思いの他、余裕ですねユウキさんは)
サヤ (さしずめ、最後のカードに余程の自信があるということですね…)

ノリカ 「頑張れハルカ様ー! ラストーー!!」

アムカ 「ふみーー!!」


ユウキ 「…最後だ、『ジュカイン』!!」

ボンッ!

ジュカイン 「……」

ハルカ 「…出たわね」

昨日の悪夢が蘇る。
だけど、同じ過ちは繰り返さない。
強いのはわかりきってる、だからその強さは利用させてもらう!

ユウキ 「『でんこうせっか』!」

ジュカイン 「ジュカッ!」

ドゴォッ!

ホエルオー 「ホ、ホエ…」

ズンッ!!

ハルカ 「…!」

ユウキは涼しげな顔でジュカインに指示を出す。
ジュカインは目にも留まらぬ速度でホエルオーの顔面を殴りつける。
元々体力の少なくなっていたホエルオーに耐える術は無かった…

ハルカ 「…戻ってホエルオー」

シュボン!

私はホエルオーをボールに戻し、次のボールを手に取る。
残り3体…どこまでやれるか。

ハルカ 「出てきて『ライボルト』!」

ボンッ!

ライボルト 「ラ〜イ♪」

ライボルトはいつもの能天気さで鳴き声をあげる。
だが、今回は能天気にかましている場合ではない。
せめて、一撃でも与えることができれば…

ユウキ 「……」

ユウキは仕掛けてくる様子はない。
お得意の速度を生かしてカウンター戦法って所ね…
スピード差が尋常じゃないだけに、並の攻撃は当たってくれそうに無い。

ハルカ 「とにかく当たれば! 『でんじは』!!」

ユウキ 「『みきり』」

ライボルト 「ライッ!」

ビビビッ!

ジュカイン 「……」

ヒュッ! バァンッ!

ジュカインはス…と左にズレ、『でんじは』を軽くかわす。
注目すべきは、その際のジュカインの視線だ。
ジュカインは回避する時でもライボルトのことを見て離さない。
いつでも反撃できる状態を保っている証拠だ。
迂闊な攻撃は全ていなされてしまう…どうやって捉える!?


サヤ (凄い…トレーナーを信じきってなければ、あんな気は放てない)
サヤ (ジュカインの背後に絶大な信頼感を感じる…ハルカさん、苦労しそうですね)

ノリカ (う…隙が無さ過ぎ!)

アムカ 「…ふみ」


ユウキ 「『じしん』だ!」

ハルカ 「ジャンプよ!!」

ジュカイン 「ジュッカ!!」

ドゴォッ!!

ライボルト 「ラ、ライー!!」

ギャァンッ!!

ジュカインは短いモーションで『じしん』を放つ。
さほど威力は感じない『じしん』だけど、出るのが相当速い。
ライボルトはジャンプが間に合わず、飛び上がるのと同時にもらって、押し上げられる形になった。

ユウキ (思ったより、反応がいいな…威力は半減…ってとこか)
ユウキ 「追加だ! 『リーフブレード』!!」

ジュカイン 「ジュッカ!!」

ハルカ 「ライボルト立て直して! 『かえんほうしゃ』!!」

ユウキ (!? ちっ、当たるなよ!)

ライボルト 「ライーーー!!」

ゴオワァァァァッ!!

ジュカイン 「ジュッ!!」

ゴバァッ!!

ジュカインは空中で身を捻り、直撃を避ける。
掠りはしたけど、ダメージとしては薄い。
ジュカインはそのまま空中でライボルトに右腕の葉で切りつける。

ザシュゥッ!

ライボルト 「ライッ!!」

ズザァッ!!

ライボルトはジュカインのブレードを浴びて地上に落とされる。
ライボルトは地上スレスレで態勢を整えて着地する。
そして、まだ空中にいるジュカインを見上げた。

ハルカ 「チャンス! 『でんじは』よ」!!

ユウキ 「甘い…『みがわり』」

ライボルト 「ライー!!」

バチチィッ!!

ジュカイン 「!!」

ボンッ!

パァンッ!!

乾いた電気音が響く。
ジュカインは空中で体力を削って『みがわり』を作り出す。
現れた身代わりは『でんじは』を受けるが、身代わりには何の効果も無い。

ハルカ (しまった…あれで防いで来るなんて!)

ユウキ 「まだ読みが甘い…こう言う状況も想定することだな! 『じしん』!」

ハルカ 「『かえんほうしゃ』!! 相打ちで突っ込め!!」

私はユウキの攻撃タイミングに合わせて指示を出す。
相手は素早い、回避してからの攻撃じゃ間に合わない!

ジュカイン 「ジュッカ〜!!」

ライボルト 「ラーーーーーイ!!」

ゴオアアアァァァァァァッ!!!

身代わりは『かえんほうしゃ』を浴び、消え去る。
だが、同時にジュカインは全力で『じしん』を放ってきた。

ドッガアアアァァァァァァァンッ!!!

ライボルト 「!!」

防御することもできずにライボルトは『じしん』を受ける。
そのままライボルトは地面に沈んだ。

ハルカ 「…戻ってライボルト」

シュボンッ!

ユウキ (…ライボルトで『みがわり』一発分か、上出来だ)

ジュカイン 「……」

ジュカインはこちらをじっ…と見る。
観察されているようでいい気はしない。
だけど…トレーナーを見る、ポケモンって…


サヤ 「…ノリカ、ジュカインは何を見てる?」

ノリカ 「え? ハ、ハルカさん…だけど」

サヤ (…やはり、ですか)
サヤ (相当対人訓練をされたポケモンのようですね…ポケモン自身がトレーナーを判断してる)
サヤ (…やはり、私の想像通りの人物?)

アムカ 「?」


ハルカ (嫌な感覚ね…)
ハルカ 「出てきて『マッスグマ』!!」

ボンッ!

マッスグマ 「……」

マッスグマは出てきて静かに立ち上がる。
ジュカインの強さを感じ取ったのか、無言のまま戦闘態勢に入った。


アムカ 「ふみーーー!! 頑張れマッスグマーー♪」

ノリカ 「…うぐ、本当なら押せ押せなのに」

サヤ 「そう上手くはいかないわね…」


ユウキ (いいポケモンだ…ハルカのポケモンでは長い付き合いのようだな)
ユウキ (どんな戦いをしてくるかは、やや未知数か…)

ハルカ 「行くわよマッスグマ! 『ふぶき』!!」

ユウキ 「! 『みがわり』!」

ジュカイン 「!!」

ボンッ! ビュゴオオオオオオオオオォォッ!! ボォゥンッ!!

ジュカイン 「!!」

ジュカインは咄嗟に『みがわり』を出し、攻撃を凌ぐ。
だが、体力はまた減った…これならいけるかも!

ハルカ 「マッスグマ、もう一発!」

ユウキ 「そう来ると思ったぜ…『こうそくいどう』!」

ジュカイン 「! ジュッカ!!」

ビュンッ!!

マッスグマ 「グマー!!」

ビュゴオオオオオオオォォォッ!!

マッスグマはジュカインの動きに合わせて広範囲の『ふぶき』を放つ。
だけど、予想以上にジュカインが速い。
一瞬でマッスグマの視界から消え去り、『ふぶき』はかわされてしまった。


ノリカ 「ほ、ほとんど見えない!」

サヤ (…まるでテッカニンですね、見て捉えるのは不可能かもしれません)

アムカ 「ふ、ふみゅ〜ん! マッスグマーー!!」


ハルカ 「…後ろよ!!」

マッスグマ 「!?」

ユウキ 「『リーフブレード』!」

ジュカイン 「カッ!」

ザシュゥッ!!

マッスグマ 「グマーー!!」

ジュカインはマッスグマの背後から一瞬で切りつけてくる。
マッスグマはかわすことができずに吹き飛んだ。
ジュカインはそのまま速度を落とさずに駆け抜ける。

ハルカ (は、速すぎる…! とても捉えられる速度じゃない!)

マッスグマ 「…グ、グマッ!?」

タタタッ! ババッ!!

ジュカインは上下左右と、高速に動き回る。
そのスピードはまるで忍者…マッスグマは見えているように思えなかった。

ユウキ (ノッテ来たな…こうなると簡単には止まらないぜ)
ユウキ 「『きあいだま』!」

ハルカ (来た! もうこの瞬間しかない!!)
ハルカ 「マッスグマ『はかいこうせん』!!」

ユウキ 「相打ち狙い…!?」

ユウキの顔が一瞬曇る。
分の悪い賭けだ…当たるとも限らない。
だけど、私は賭けに出た。
『きあいだま』は威力こそ大きいもの、命中率が悪い。
しかもあの速度で正確に狙ってくるのは無理だと判断した。

ジュカイン 「ジュカ〜!!!」

ギュゥゥンッ! ドギュンッ!!

ジュカインは移動しながら、両手を胸の前に近づけ、気の球体を作り出す。
そしてそれをマッスグマに向かって移動しながら放った。

マッスグマ 「…グ〜…マーーーーーーーーーーーー!!!」

キュィィ…ドギュアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァッ!!!

マッスグマは正面に『はかいこうせん』を放つ。
ジュカインの姿は見えない。
だが、間違っていない…その方向を遮ればいいのだから。

ジュカイン 「…!?」

ドオオオオオオオオオォォォォンッ!!!
 ドバァァァンッ!!

ユウキ 「!? ジュカイン!!」

ハルカ 「!!」

私は小さくガッツポーズを取る。
予想通り…ジュカインはあまりに速すぎる動きで動いていたため、あらぬ方向に撃った『はかいこうせん』の軌道上に飛び出てしまう。
人間で言う所、交通事故に似ている。
スピードを出しすぎた車は急に止まれないわよ…

ジュカイン 「…グッ!」

ダンッ!!

ジュカインは、爆発に飛ばされながらも、踏ん張って留まる。
さすがに直撃とは言い難かった…少しでもブレーキをして威力を抑えたわね…
だけど…ここまでだ、あの娘にできたのは。

マッスグマ 「………」

シュボンッ!

私はすでに『きあいだま』の直撃で倒れているマッスグマを戻す。
『はかいこうせん』撃つ以上、動きは完全に止まっていた。
ジュカインを褒めるべきか…あの動きの中で確実に狙ってくるなんて…


アムカ 「うぐ…ヤラレチャッタ」

サヤ (それは、ちょっと古いわカタナ…)

ノリカ 「…あれ食らっても倒れないなんて」


ユウキ (…これで、互いに1体か)
ユウキ (久し振りだな…あいつのアレを見るのは)

ジュカイン 「……!」

コォォォ…

ハルカ 「!?」

私はジュカインを見て驚く。
ジュカインの体からは強烈な気が放たれている。
淡い新緑の色が気となってジュカインの体から放たれていた。

ハルカ (似てる…バシャーモの『もうか』に)

ユウキ (『しんりょく』…追い詰められた時に発動する、特性だ)
ユウキ (褒めてやるぜハルカ…俺のジュカインをここまで追い詰めたのはお前がふたり目だからな)

ハルカ 「…最後よ、出てきて『バシャーモ』!!」

ボンッ!!

バシャーモ 「シャモーーー!!」

バシャーモはいつに無く、大きな雄たけびで現れる。
状況は察しているのだろう。
責任感は誰よりも強い娘だ…
昨日の敗戦は私以上に悔しかったかもしれない。
だけど…それは今返せばいい。
これを乗り切れば…私は……!!

ユウキ (もう一撃も耐える力は無い…だが、当たるつもりも無い)

ハルカ (当てる! 一撃でいい!! 当たれば勝てる!!)

ユウキ 「これが最後だ! 思いっきり来い!! 昨日みたいなヘマするなら秒殺するぜ!?」

ハルカ 「やれるもんならやってみなさい!! あんたに勝って私は優勝してみせる!!」

ユウキ 「!! …嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか」

ユウキは若干だが顔をしかめた。
私は本気で言っている。
勝って優勝する…それが、ユウキから受け取ったバトンだ。
ユウキは言った…

「ハルカに勝てるなら、このまま俺もポケモンリーグを目指そうかと思ったけど、負けたから諦める」

どう言った理由があれど、あの言葉に嘘は感じられなかった。
私はユウキの才能を遮ってまで、ポケモンリーグに出ている。
ユウキは私に負けて、諦めると言った…あいつが本気なら、リーグで優勝できるかもしれない。
だったら、私はあいつに勝つ以上、優勝しなきゃ顔向けできない!!

ハルカ 「…ハンデマッチは不服だけど、今の私じゃ勝てない」
ハルカ 「だけど、あんたのやろうとすることに答える!!」

ユウキ 「…だったら、もう言葉はいらねぇ」
ユウキ 「行くぜ!? これに勝てなきゃ優勝は無理だ!!」

ハルカ 「勝つわ! 勝てば優勝みたいなもんだもん!!」

私たちは互いに大声で叫びあう。
気持ちはお互い伝わった。
私たちはそう…一緒なんだ。
ただ、ポケモンが大好きな…それだけの……

ユウキ 「ジュカイン!」
ハルカ 「バシャーモ!」

ユウキ&ハルカ 「行けーーーーーーーーー!!!」



…To be continued




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