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POCKET MONSTER RUBY



第96話 『VS四天王 その2! 幽玄亡呪フヨウ!!』




『4月20日 時刻10:00 サイユウシティ・スペシャルフィールド2』


ハルカ 「…え? 回復は無し!?」

ロボ 「はい、そうです。今回のチャンピオンズ・リーグでは、途中の回復には一戦挟むことになります」

私はそれを聞いて驚愕する。
つまり、カゲツさんとの戦いでダウンしたアーマルドとダーテングは次の試合には出れないって事。
インターバルもほとんどなく、いわば連戦でフヨウに挑むと言うことなのだ。

ロボ 「そこにあるPCを使って別のポケモンとチェンジすることは認められます。交代できるのでしたらそれもよいでしょう」
ロボ 「ただし、一度交代をしたポケモンはリーグ内で再使用することは認められません」

ハルカ 「ええっ!? そうなの?」

更に私は驚く。
と言うことは、ここで私がふたりを入れ替えたら6体で戦うことはできるけど、もうその先ふたりをリーグ内で使うことはできないと言うこと。
かなり過酷なルールだ…ただでさえ実力最強とも言えるチャンピオンを相手にしなければならないのに、四天王まで連戦…
こんなルールをダイゴさんも乗り越えたって言うの…?

ロボ 「…少し、過去のリーグについてもお教えしましょう」
ロボ 「今回のチャンピオンズ・リーグは、ルール改正によって今年から採用された新たなルールなのです」

ハルカ 「? 新ルール…どうして?」

ロボ 「理由のひとつは、トレーナーのレベル上昇が含まれます」
ロボ 「今までと同じルールで行った場合、ハルカ選手のような跳びぬけた実力者は恐らく何の苦も無く優勝してしまうからです」

ハルカ 「……」

ロボは感情も無く軽く言ってくれる…とはいえ、私はミカゲが出場したことを想像してみると…

ハルカ 「…なるほど、挑戦者側が強すぎたら盛り上がらないって訳、か」

ロボ 「その通りです。一応、来年度への有益な収益も計算されておりますので、上からはこう言った処置が取られることになるのです」

ハルカ 「でも、それってホウエンだけ? 他の地方も同じレベルってわけじゃないだろうし…」

ロボ 「同じです、シンオウから開催されたポケモンリーグの新ルールは全て採用されています」
ロボ 「今年は、シンオウ、カントー、ジョウト、ホウエンの4大地方全てにおき、異常なまでのレベル上昇が確認されております」
ロボ 「特にホウエンにおいては、歴代最高の平均値がでております」
ロボ 「最高レベルでも80を超えるレベルのトレーナーがふたりもいたことには予想外と言わざるを得ませんでした」

間違いなくザラキさんとミカゲだ。マリアちゃんでも80なかったんだよね…キヨミさんやラファさんもその下だし。
私は最下位だったわけだけど…(滝汗)

ロボ 「ホウエンほどではないにせよ、今年のレベルは総じて高め」
ロボ 「前年度チャンピオンはいずれもレベル80には満たないものばかり」
ロボ 「平均値で取れば、チャンピオン+四天王でも、リーグ参加者の実力テスト上位5名に及ばないレベルです」
ロボ 「予選時の実力テストですらこのレベルなので、リーグが終わる頃には更にレベルが上がっているはず…」
ロボ 「そうなってしまったら、もはや試合を組むレベルでは無くなると予想されました」
ロボ 「ゆえに、あえて今回は最も過酷と言われた原初のルールから改変したルールを用いたのです」

ハルカ 「!? 最も過酷で…原初?」

ロボ 「はい、歴史で言えば、RMUが設立された初年度ですね」
ロボ 「人類史上、初めてRMUの管轄で行われたポケモンリーグです」
ロボ 「あの頃は、今ほど参加者も多くは無く、予選などと言う概念も存在しません」
ロボ 「ただ、バッジを集め…チャンピオンロードを超え、頂点を目指す…」
ロボ 「初年度はまさに、凄まじいまでの激戦だったそうです…少ない数の中とはいえ、勝ち残れるのはただひとり」
ロボ 「薬や道具の使用も自由、ポケモンの入れ替えなども自由、ルールは最低限のもののみで後は何でもあり」
ロボ 「その中から勝ち残った上位5名が、初代のチャンピオン及び、四天王と言うわけです」

ハルカ 「………」

私は当時を想像してみる…何でもあり、か。
強さだけを追求し、今では考えられない厳しさがあったのだろう。
私は少し体を震わせる…父さんやキヨミさんもそれが嫌になったと言う。
私は…そんな時代のルールで戦おうと言うのか。

ロボ 「…さて、少し話が長くなりましたね」
ロボ 「ハルカ選手、交代はどうしますか? ちなみに前回で残った薬は没収となります」
ロボ 「次の試合では新たにふたつの薬が支給されますので、ご注意ください」

ハルカ 「あ…ってことは、試合中に使い切った方がいいってこと?」

ロボ 「そうなりますね」

試合が終わったら余った分は没収され、次の試合用の物が支給…か。
入れ替えはどうする?
ここで代えてしまうともう使うことはできない。

ロボ 「交代をしない場合は、一時こちらでダウンしたポケモンは預かります」
ロボ 「次の試合では使用できませんが、その次の試合には完全回復いたします」

ということは、ここでダーテングとアーマルドを休ませれば、ふたりはまた出られると言うこと…
カゲツさんとの戦いでは私は2体失っただけ、ダメージは他の子もあるけど、いずれも軽症が多い。
バシャーモはまだまだ大丈夫、アゲハント、アメモースもほぼ無傷。
ライボルトは…ちょっと危ないかも。

ハルカ (先のことも考えないと…確か次のフヨウってトレーナーはゴースト使い!)

更に先は氷使い、最後はドラゴン使い…そしてチャンピオンのダイゴさんは鋼を主に使うらしい。

ハルカ 「…交代するわ! 3体をここで交代!!」
ハルカ 「代わりに呼ぶのは……」





………………………。





ヒュゥゥゥゥゥ…

ハルカ 「……」

私が踏み込んだフィールドは身の毛のよだつ霊園の様な場所だった。
フィールド効果なのか、薄暗く、霧が立ち込めている。
このままだとかなり視界は悪い。
ゴーストタイプのエキスパート相手に果たしてどこまでダメージを抑えられるか…

フヨウ 「よく来たね! 挑戦者さん!!」

ハルカ 「!!」

突然正面から声が伝わる。
薄っすらとした視界の中、ひとり歩み寄ってくる少女。
年は、私と変わらない位かしら? まるで黒人のような肌にショートヘアーで頭に花飾り。
南国のような服のセンスはこの場には明らかに場違い。
とはいえ、相手はあくまで四天王…油断は許されない。

フヨウ 「…思った以上に強いみたいだけど、ここから先は甘くないよ?」

ハルカ 「心配はいりませんよ、初めから全力で行きますから!!」

私はボールを構え、ふたつ投げる。
舐めているわけじゃない、だけど私はこれで行くと決めた!!

ボボンッ!!

マッスグマ 「グマ…」
ライボルト 「ラ、ライッ…!」

フヨウ 「!? そのライボルト…ダメージが残っているけど?」

ハルカ 「気にしないでください! これが私の全力です!!」

私がそう言うと、少しフヨウさんは悩む表情をする。
だけど、すぐに表情を変え、ふたつのボールを手に取った。

フヨウ 「相手が全力で来る以上、私もそれには答えます!」
フヨウ 「行きなさい! 『サマヨール』! そして『ジュペッタ』!!」

ボボンッ!!

サマヨール 「ヨ〜」
ジュペッタ 「ペペッ!」

現れたのは、サマヨールとジュペッタだ。
図鑑参照の必要は無い、どちらも知っている。
ただ…気にかかることは。

ハルカ (後はどんなゴーストが控えているのか…?)

私は経験上でもあまりゴーストタイプにはそれほどお目にかかってない。
元々、種類が少ないタイプらしく、育てている人もそれほど多くは無いらしい。
私もジュペッタを使っているけど、確かにゴーストは色々と癖が強い。
通常のポケモンではできない戦術も多い反面、できることができなかったり…
とにかく、トリッキーな技には注意だ…このリーグのルール、予想以上に怖い。

ハルカ 「気ぃ引き締めるのよ!? 相手は四天王!! 初っ端からぶちかますわ!!」

フヨウ 「いつでもどうぞ! この『幽玄亡呪(ゆうげんぼうじゅ)』フヨウ!! 推して参ります!!」

ハルカ 「マッスグマ『シャドーボール』! ライボルト『じゅうでん』!!」

マッスグマ 「グマー!!」
ライボルト 「ライ〜〜!」

ギュゥゥゥンッ!!

まずはマッスグマが正面に技を放つ。
対象は指定してないが、狙いはサマヨールだ。
ライボルトは『じゅうでん』を使い、特殊防御力を高めつつも次の攻撃に力を溜める。
そして、フヨウさんが動く。

フヨウ 「サマヨール『まもる』! ジュペッタはマッスグマに『おにび』!」

サマヨール 「ヨマッ!」

ピキィィィィンッ! ボォンッ!!

サマヨールが『シャドーボール』を引き付けて『まもる』を使う。
『シャドーボール』は『まもる』のフィールドによって防がれ、黒い爆風が相手の姿を隠してしまった。
その一瞬ジュペッタはニヤリと笑みを浮かべたのが目に見えた。
私はすぐに指示を出す。

ハルカ 「マッスグ…」

マッスグマ 「グマッ!」

ダダダッ!! ボボボッ!!

マッスグマは私が指示する前に駆け始めた。
マッスグマが元いた場所には『おにび』が発生する。
マッスグマはすでに自分の判断で状況を理解していたのだ。
ほとほと、この娘には驚かされる…いや、これも私の力なのかも。

ハルカ (信頼し、強くなる力! 私にはそれがある!!)
ハルカ 「ライボルト! 左25℃の角度に『かみなり』よ!!」

ライボルト 「ラ、ライーーーー!!!」

確実に相手は見えていない、だけどライボルトは私を信じて技を放つ。
確信なんかあるはず無い…けど信じてくれる。
そして、私はそれに答える!!

ワピシャァァァァァァァンッ!!!

サマヨール 「マ、マーーーー!!??」

フヨウ 「!? そんな! この状況下でこんな大技を的確に…!!」

ロボ 「サマヨール戦闘不能です」

ハルカ 「うっし! まずは一体!!」
ハルカ 「マッスグマ『なみのり』!!」

マッスグマ 「グマッ!!」

ザァァァァァァァァァァァァァァッ! パァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!

ジュペッタ 「ジュ、ジュペ〜!!」

相手が見えないなら全体攻撃で一気に揺さぶればいい!
マッスグマは突進しながら水を作り出し、大波で一気にジュペッタを攻撃した。
フヨウさんにもダメージがあったかもしれないが、この際気にしない。

フヨウ 「うぅ…よくも! ジュペッタ『のろい』!!」

ハルカ 「!? その技は…」

ジュペッタ 「ジュペ〜〜!」

ジュペッタはマッスグマを睨み、黒い光を放った。
そして、ジュペッタは一気に体力を失う…もう体力は残り少ない。
マッスグマも『のろい』で徐々に体力が奪われていく。だけどここはチャンスだ!!

ハルカ 「ライボルト『かえんほうしゃ』でトドメよ!!」

フヨウ 「……クス」

ハルカ 「!?」

フヨウさんが笑ったのを私は驚愕する。
ヤバイ! 罠が仕組まれてる!! ゴーストタイプがこのタイミングで何か仕掛けるとしたら…!?

ライボルト 「ライーーー!!」

ゴオオオオオォォォォォォッ!!

ジュペッタ 「ジュペーーー!!」

ボフッ!!

ぬいぐるみが倒れるような音と共に、ジュペッタはダウンする。
だが、その瞬間ライボルトを黒い気流が包み…そのままライボルトを『みちづれ』にした。

ライボルト 「ラ……」

ドシャァッ!!

ロボ 「ライボルト、ジュペッタ、戦闘不能です」

フヨウ 「ふふふ…以外と単純なんだね、ハルカちゃん」

ハルカ 「…くっ」

シュボボボンッ!!

私たちは同時に計3体のポケモンをボールに戻す。
この時点で相手は残り4体…しかし、こちらも残り『4体』なのだ…

ハルカ (アーマルドはこの先も必要と判断した結果だった…)

だけど、まさか四天王がこんな捨て身(?)の戦術を取ってくるとは予想外だった。
倒されても相手を道連れにする…嫌な戦法だ。

フヨウ 「驚いた? これが私の戦い方…」
フヨウ 「相手を撹乱し、落としこめる…私は例え追い詰められても相手に勝っている」
フヨウ 「ゴーストタイプの魅力ってね…思った以上に深いんだよ?」

ハルカ 「……」

身に染みている…私もジュペッタに何度も助けられた。
あの子は他の子とまるで毛並みが違う。
ただ突っ込むだけが脳じゃないことを教えられる。
気が付いたら、頼る場面の方が多くなった…それだけ信頼もできる。
だけど……

ハルカ (いざ相対したら、こんなに嫌な相手だとはね!)

私は次のボールを握り締め、投げた。

ボンッ!

ジュペッタ 「……」

フヨウ 「わっ、あなたもジュペッタを使うのね!? うんうん♪ やっぱりゴーストはいいよね〜」

何だかいきなり微笑まれる、本当に嬉しそうだ。
とはいえ、私は全然笑う余裕がない…正直怖いくらいだ。

ジュペッタ (毒を以って毒を制す、か…だが止むを得まい)

ハルカ (頼むわよ…これ以上の犠牲は出せないわ)

ジュペッタ (善処は…する、が…あまり期待はするな)

珍しくジュペッタは気弱に答える。
今までにないことだ…私のジュペッタはいつだって強気でいつだって俺を信じろと言ってくれた。
そのジュペッタが…期待するな、って……

フヨウ 「うふふ…わかってるんだよねハルカちゃん? 私にゴーストでわからないことはないってこと…」

ハルカ 「!?」

フヨウ 「さぁ、一緒に踊りましょ! 『ヤミラミ』! 『ジュペッタ』!!」

ボボンッ!!

ヤミラミ 「ヤミー!」
ジュペッタ 「ペタタ…♪」

ハルカ 「!? またジュペッタ…!?」

ジュペッタ (…ちぃ)

しかも嫌なポケモンもいる…ヤミラミだ。
確か、ミカルゲと同じで弱点が無く…悪タイプ!
最悪だ…ジュペッタは最高に相性が悪いじゃないのよ。

ジュペッタ (策はある! とにかくまずはグマを動かせ!!)

ハルカ 「! よし! マッスグマ…ってああっ!?」

マッスグマ 「グ…マ……」

何とマッスグマはすでに息絶え絶えだった。
『のろい』がもう進行している! このままじゃマズイ!!

ハルカ 「戻って『マッスグマ』!! くそっ! 出るのよ『バシャーモ』!!」

フヨウ 「『おいうち』!!」

ジュペッタ 「させるかぁ!!」

ヤミラミ 「ヤミラーーー!!」

マッスグマ 「!?」

ドガァッ!!

ジュペッタ 「!?」

マッスグマ 「グ……」

バタンッ!!

ロボ 「マッスグマ戦闘不能です」

ハルカ 「!? マッスグマ…あなた、どうして……!」

マッスグマ (あなたは、ここで傷ついてはいけません…)

ジュペッタ (グマ…お前…!!)

シュボンッ!!

マッスグマは最後に何かジュペッタに視線を送っていた。
何かを伝えたのだろうか? ただ私にわかることは、確かな怒りの感情。
あの冷静なジュペッタが本気で怒っている。
初めてのことだった…だけど、それだけに…後が怖い。

ハルカ 「く…行くのよバシャ…」

ジュペッタ 「必要ない! 退がってろハルカ!!」

ハルカ 「は、はぁっ!?」

フヨウ 「!?」

私だけでなく、フヨウさんまで驚いていた。
って、フヨウさんはどっちかと言うとジュペッタが喋ることに驚いたのかも。

ジュペッタ 「こいつらは俺がひとりで叩く…余計な労力は使うな」

ハルカ 「何言ってるの! 相手は四天王よ!? しかも相性の悪い相手なのに…」

ジュペッタ 「心配するな…物の数ではない」

フヨウ 「言ってくれるね〜、ちょっとそのジュペッタにはお仕置きが必要かもね…」

そう言ってフヨウさんは明らかに不機嫌そうな笑みを浮かべた。
マズイ…いくらなんでもこんな状況で押せる訳が無い!
無茶を通して負けるなんて馬鹿げてる…この戦いは、私たちだけの戦いじゃないのよ!?

ジュペッタ (心配するな…策はあると言ったろう)

ハルカ 「!?」

フヨウ 「さぁ、行くよ! ヤミラミ『あくのはどう』! ジュペッタは『おにび』!」

ヤミラミ 「ラミーーー!!」

ゴォォォッ!!

ジュペッタ(フ) 「ペ〜!」

ジュペッタ 「……」

ハルカ 「来るわよ!?」

ジュペッタはまるで動こうとしなかった…私はこの時点で明らかな異変を感じていた。
何これ…? 一体どうなtって……

ドバァッ!! ボボボッ!!

フヨウ 「あれ? 直撃…?」
フヨウ 「!! ヤミラミかわ…!!」

ジュペッタ 「遅い!!」

ドッギャァァァァッ!!

ヤミラミ 「ミーーー!」

突然、ヤミラミの背後からジュペッタが『だましうち』を放つ。
元いたジュペッタの場所にはもう何も無い。
そりゃそうだろう…あれは『みがわり』だったのだから。
何時の間に使っていたのか…フヨウさんもギリギリまで気づかなかった位だ。

フヨウ 「くっ! ヤミラミ『しっぺがえし』! ジュペッタは『シャドーボール』」

ジュペッタ 「遅いと言った!!」

ドガァッ!!

ジュペッタ(フ) 「ペ〜…!」

ジュペッタはフヨウさんの気性を読み取り、『ふいうち』ですかさずフヨウさんのジュペッタを叩く。
上から地面に叩きつけられ、フヨウさんのジュペッタは地面にめり込んだ。
だが、次の瞬間ヤミラミがスローで突っ込んでくる。

ハルカ 「ヤバイ! あの技は後手だと威力が倍に…」
ジュペッタ 「ガタガタ騒ぐな…耳に障る」

ジュペッタはそう言って右手をヤミラミの前に翳す。
そして何をしでかすかと思ったら…

ドギュアァァァァァァァァァァッ!!

何と『はかいこうせん』…ってゴーストにノーマルは!?

ドバァァァァァァァァァァァンッ!!

ヤミラミ 「ヤ……」

ロボ 「ヤミラミ戦闘不能です」

フヨウ 「そんな馬鹿な!? どうしてノーマルタイプの技がヤミラミに……はっ!?」

ジュペッタ 「言ったろう? 策はある、と…」

ハルカ 「???」

私は意味不明だった、だけどフヨウさんはすでにわかっているようだった。

フヨウ 「『かぎわける』…! ダウンする前に、仕込んでいたの!?」

ジュペッタ 「そうだ…そのおかげでこうしてヤミラミはダウンしている」
ジュペッタ 「まぁ、気づかないのは無理も無い…代わりにグマと交換だったからな」
ジュペッタ 「貸しは返させてもらった…次は、勝利をいただく」

そう言ってジュペッタは親指を立て、下に向ける。
要するにゴートゥヘルと言う奴だ…もしくは『I'm perfect soldier!!』ってとこね。

フヨウ 「やられたよ、やっぱり怖いねゴーストって…」
フヨウ 「でも…それが私にはたまらないんだ!!」

ボンッ!

サマヨール 「ヨ〜」

ハルカ 「またサマヨール!?」

ジュペッタ 「……」

ドガァッ!!

ジュペッタ(フ) 「ペ〜…」

ロボ 「フヨウ選手のジュペッタ戦闘不能です」

私のジュペッタはサマヨールを確認すると、まだダウンこそしてなかったフヨウさんのジュペッタにトドメを刺す。
『おいうち』ね…ダウン追撃と言ってもこの際いい…まぁダメージはあまり無いんだけどね(汗)
だけど、思ったよりフヨウさんは冷静だった。
むしろ、冷たい視線でこちらを見てジュペッタを戻す。
ゾッ…とした、まるで人じゃない物を見る目。
ジュペッタも少なからず感じ取っている…この眼は危険だと。

ジュペッタ 「やれやれ…こいつは確かに強敵だ」
ジュペッタ (さすがの俺も…ここから先は読み切れん、このトレーナー、四天王と言われるだけある、食えんな)

ハルカ 「…? 最後のポケモンを出さないの?」

フヨウ 「ここは、サマヨールだけで行きます…『かげうち』!」

ジュペッタ 「!!」

サマヨール 「マッ!」

ギュンッ!

サマヨールが態勢に入った途端、ジュペッタの足元から影の様な物が襲う。
この暗闇ではかなり見辛い、ただでさえ回避は難しい技なのに。

ババッ!!

ジュペッタ 「ぐぅ…! オオッ!!」

ギュゥゥゥンッ!!

フヨウ 「…『まもる』」

サマヨール 「マッ!」

ピキィィィィンッ!! ドオオォォォォンッ!!

フヨウさんは冷静に対処する、マズイ…さすがにゴーストのエキスパート!
ジュペッタは今の一発で意外にダメージが大きい、このままだと…

ハルカ (薬はふたつ…まだ使ってないんだから、ここはジュペッタを戻して…)

ジュペッタ (いらん! それよりも後のことを考えろ!!)
ジュペッタ (嫌な予感が離れん! 必ず何かあるぞ!!)

ジュペッタはかなり警戒しているようだった。
私にはそれが何なのか想像もつかない、だけど必ずある…それだけはわかった。

フヨウ 「ふふ…『シャドーパンチ』」

ジュペッタ 「オオッ!!」

ドガァッ!!

サマヨール 「ヨ…! マーー!!」

ジュペッタは『ふいうち』で突撃するが、サマヨールはまだまだと言った感じ。
かなり防御力が高い! 一撃じゃビクともしない!!

ドガァッ!!

ジュペッタ 「うおぉっ!!」

ボフンッ! ボフフンッ!!

地面を転がり、ジュペッタは苦しむ…大きなダメージだ…これ以上はマズイ!

フヨウ 「かげう…止めた。やっぱ『おにび』」

ボボボッ!!

ジュペッタ 「がぁっ!!」

ハルカ 「ジュペッタ!?」

フヨウさんは一気にトドメを刺さず、『おにび』でジワジワと体力を奪う。
何故? わざわざこんな…

ジュペッタ (…くそっ! さすがに甘くは無いか……!)

あの子、まだ何か仕掛けて…? あの状態でもまだ…!!

ハルカ 「だったら、私がこんなんでどうするのよ!! 行け『バシャーモ』!!」

ボンッ!!

バシャーモ 「シャモッ!」

フヨウ (出た! 待ってたよハルカちゃん!!)

ジュペッタ 「馬鹿な、何故出した!!」

ハルカ 「黙りなさい! あんたが苦しんでいるのに見過ごせると思うのかこの馬鹿!!」

ジュペッタ 「!?」

ハルカ 「私は勝つためにトレーナーやってんじゃないのよ!! それ位察しろ大馬鹿!!」

私はそう言って、ジュペッタに『かいふくのくすり』を使う。
これで『やけど』と同時にジュペッタは完全回復する。
そして、一気にバシャーモを動かす。

ハルカ 「『オーバーヒート』!!」

フヨウ 「『まもる』! そして『じしん』!!」

ハルカ 「!?」

バシャーモ 「シャモーーー!!」

ゴワァッ!! ドゴオオオオオオオオオォォォォォッ!!!

サマヨール 「ヨマッ!」

ピキィィィィィィンッ!!

サマヨールはすかさず最速のタイミングで『まもる』を使った。
今までに無いタイミングだ…そして私たちの予想を超える反応でサマヨールは技を放ってきた。

ドッギャァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!

ハルカ 「きゃぁぁっ!!」
ジュペッタ 「うおおっ!?」
バシャーモ 「シャ…モーーーー!!!」

ドッシャァァァッ!!

嫌な音がした。
バシャーモは力を放出し終わった所への弱点直撃…
私はジュペッタと共にその場から吹き飛んだ。
何てこと…こんな。

ロボ 「バシャーモ戦闘不能です」

ハルカ 「…そ、そんな」

まだ体力には余裕があったはずなのに…このタイミングで急所って奴?
最悪だ…追い詰めているはずなのに、気がついたらズルズルと。

シュボンッ!

ハルカ 「くそっ! 最後よ!! 『ホエルオー』!!」

ボンッ!

ホエルオー 「ホエーーー!!」

フヨウ 「わぉ…大きいねやっぱり〜♪」
フヨウ 「でも、いいのいきなり出しちゃって? しかも狙いやすい的だし」

ハルカ 「く…」

正直、迷った…ジュペッタひとりでも何とかなるかもしれない…何て甘いことも考えた。
だけど、相手はそんなに甘くないと痛感した。
相手は四天王のひとり! 全力で挑むのが挑戦者!!

ジュペッタ (ハルカ…恐れるな、俺が勝たせる)

ハルカ 「ジュペッタ…?」

ジュペッタはいつぞやの時と同じセリフを吐く。
あの時も、ホエルオーとタッグだった。
再現…って奴?

フヨウ 「さぁ行くよ! サマヨール『のろい』!!」

ゴオォォォッ!!

ジュペッタ 「オオッ!?」

ジュペッタは『のろい』を食らってしまう。
何故ジュペッタなの!? この状況ならホエルオーを狙った方がいいんじゃ…

ジュペッタ 「くそっ! ただでは倒れんぞ!!」

ジュペッタは『シャドーボール』を手に集め、突っ込む。
さすがのフヨウさんもこれには相当驚いている、一体何をするつもりなの…かと。

ハルカ 「ホエルオー! 援護よ!! 『しおふき』!!」

ホエルオー 「ホ〜…エーーーーーーーーーーーー!!!」

ゴゴゴゴゴッ! ドッバアアアアアアアアアァァァァァァァァァンッ!!

フヨウ (くっ…タイミングが合わない!? ここは防ぐ!)
フヨウ 「『まもる』!!」

ドバババババババババァッ!! ピキィィィィィィンッ!!

先に『しおふき』がヒットするが、『まもる』で防がれた。
だけど、これでいい! 元々狙いはそれだったのだから!!

フヨウ 「!? ジュペッタは…」

ジュペッタ 「ここだ!!」

サマヨール 「!?」

ドバァァァァァンッ!!

ジュペッタはサマヨールの背後に回り、『まもる』のフィールドが切れた瞬間に近距離型の『シャドーボール』を叩き込んだ。
ユウキのサーナイトが放ったのと同じやり方。
テレポートこそできないけれど、ジュペッタにはパワーがある。
手に込めた『シャドーボール』を腕の力ごと相手に叩きつける。
力と技が重なった瞬間だ…サマヨールは立てない!!

ロボ 「サマヨール戦闘不能」

シュボンッ!

フヨウ 「やってくれたね…でも、これで私の勝利はほとんど確定…」

ボンッ!

ヌケニン 「……」

ハルカ 「うげぇっ!? あのポケモンって確か…」

ジュペッタ (や、やはり…存在したか、ジョーカーが!!)

フヨウ 「さぁ、これで終わり! ヌケニン!!」

ジュペッタ 「おおっ!!」

フヨウ 「残念…もう食らわないよ、そして、さようなら…」

ジュペッタ 「!?」

ヌケニン 「…!」

ヌケニンはその場で何やらおかしな動きをする。
その行動にジュペッタは目を見開いて驚く。
そして、ジュペッタはこの時点で『のろい』により、最後を迎えた。

ボフッ!!

ロボ 「ジュペッタ戦闘不能です」

ハルカ 「……」

シュボンッ!

非常にマズイことになった…これで私の手持ちはホエルオーのみ。
相手はヌケニン…確か弱点以外は全無効。
確か効くのは、ゴースト、悪、岩、炎……あと飛行。

ハルカ (ヤバイヤバイヤバイ!? 私のホエルオーにあれを倒せる技なんて……)

フヨウ 「考えても無駄! 技が例えあっても受けなければいいわ!!」
フヨウ 「『かげぶんしん』!!」

バババババッ!!

ヌケニンは分身を作って撹乱する。
これではホエルオーの攻撃が当たらない…
私は頭をフル回転させる…そして可能な技を宣告した。

ハルカ 「ホエルオー『ころがる』!!」

ホエルオー 「ホッ! エーーー!!」

バッ! ズズズズゥゥゥンッ!! ズンッ! ズズンッ!!

ホエルオーの巨体が横回転で進んでいく。
だけど、ヌケニンは倒せなかった…分身は潰せても、本体がいない。

フヨウ 「ふふ…いいのかな? そんな気軽に使っちゃって? 『うらみ』」

ボ〜〜…

ホエルオー 「ホエ〜!?」

ホエルオーは転がり続けるしかない。
だけど、ヌケニンはどこにいるかもわからない位置で技を放ってくる。
マズ過ぎる! 行動を制限する『ころがる』は総計過ぎた!!

フヨウ 「ふふ…もう一度『うらみ』」

ボ〜…

ホエルオー 「!!」

ハルカ 「くそっ! ヌケニンは逆方向よ! 転身して!!」

ホエルオー 「オーー!!」

ドズンッ! ゴロゴロゴローーー!!

フヨウ 「!? バレた…! 『あなをほる』!!」

ヌケニン 「!」

ドバッ!!

ゴロロロロロローーー!!

ホエルオーはヌケニンがいた場所を引き潰す。
だけど、ヌケニンは穴を掘って逃げた。
このフィールドはとにかく視界が悪い、地面は特に光が薄く小さなポケモンが隠れたら何も見えない。
だけど、私には見える! その場所を指示する!!

ハルカ 「ホエルオー! また逆方向よ! 転身!!」

ホエルオー 「オーーーー!!」

フヨウ 「何故!? どうしてわかるの!? くっ! 『まもる』!!」

ヌケニン 「!!」

ピキィィィィンッ!!

ホエルオー 「ホエ〜〜!!」

ドッシャァァァァァァァァンッ!!

ホエルオーはついに止まることができた。
だけど、予想以上に辛い。
『ころがる』のPPは残り半分以下…下手に使ったら『うらみ』で一気に削られる。
そうなったかなりヤバイ…どうする!?

ハルカ (待てよ? まだホエルオーは他に有効な技があるわ!)
ハルカ (とはいえ、いきなり使ったら警戒される…ここは耐える!!)

フヨウ (…誘っているわね、確実に有効な技を持っている)
フヨウ (相手がホエルオーだから、恐らくは全て近距離技のはず…だったら!)
フヨウ 「ヌケニン『かげうち』!!」

ハルカ 「くっそ〜〜〜! やっぱり飛び道具か!! 行け『おどろかす』!!」

ホエルオー 「ホエーーー!!」

ヌケニン 「!!」

バババッ!!

ホエルオーはその場から飛び上がろうとしたが、『かげうち』で止められる。
やっぱり駄目だ! 近づかなきゃこの技は当たらない…しかも意表を突かないと!!

フヨウ 「ふふ…万事休すかな? その技もあまりPPは多くないよ! 『うらみ』!」

ヌケニン 「……」

ボ〜…

またしても、削られる…確かに『おどろかす』もPPは低い。
どうすればいいのよ…こんな相手にどうやって技を当てる!?

ハルカ (当てる…いや、考えを逆転させてみよう……当てるんじゃなく当たる)
ハルカ (相手が自分から当たれば…ってそんな上手く行くわけ)

フヨウ 「『かげうち』!」

ハルカ 「ヤバッ!? 『ころがる』!!」

ホエルオー 「ホエーーー!!」

ゴゴゴッ! ドズゥゥゥンッ!! ゴロゴロゴロゴローーー!!

ホエルオーはその場から回転し、『かげうち』から逃れた。
予想以上のスピードでフヨウさんも少しながら驚いていた。

フヨウ 「! 『まもる』!!」

ピキィィィンッ!!

もう今回幾度出たであろうか、『まもる』と言う技。
これにより再びホエルオーは技を止められて動きが止まる。
ホエルオーは体が大きすぎる、ましてや苦手な陸上でのバトル。
こうやって止められると一気に隙ができてしまう。

フヨウ 「『うらみ』!」

ボ〜〜!

これでまたPPが削られる…くそっ、待っては飛び道具、攻めても超反応で返される。
どこぞの尖兵なみに自重が無い…とはいえ、負けるわけにはいかない!
弱点は必ずある! それを突ければ、勝てる!!

フヨウ (予想以上に粘るね…本当ならとっくに終わってるはずなのに)
フヨウ (だけど、こう言った粘り強さはヌケニンが一番苦手する行為…)
フヨウ (私はこんな状況はいくらでも経験してる、だから慌てることも無い)
フヨウ 「ヌケニン『かげうち』」

ヌケニン 「!」

ギュンッ! バババッ!!

ホエルオー 「ホエ〜〜!!」

ハルカ 「くそ…! 体力がもう…!」

ホエルオーはすでに体力が半分以下になっている。
『かげうち』は強力な技じゃないはずだけど、この威力…
多分、何か能力アップを使ってる! 考えられるとしたら…ジュペッタが倒れる直前。

ハルカ (『つるぎのまい』か…それしか考えられない)
ハルカ 「ホエルオー『おどろかす』!」

ホエルオー 「オーー!!」

フヨウ 「『まもる』」

ピキィィィィンッ!!

ホエルオー 「!!」

ドズンッ!!

近づけばこうやって離される。
これが水中ならいくらでも打開できる…がここは地上。
後は…これに賭ける!!

ハルカ 「ホエルオー!! 『はねる』!!」

フヨウ 「は…?」

ホエルオー 「ホ、ホエッ、ホエッ!!」

ズシィィンッ!! ドズゥゥンッ!! ズッシィィィィンッ!!

フヨウ 「きゃあぁぁっ!? 何よこれーー!!」

ハルカ 「知らん! 面白いからやっただけ!!」

もちろん、この技に攻撃能力なぞ無い!
しかし、フヨウさんはこれで明らかに集中力を乱した、そこに勝機はあると私は踏んだ!!

ハルカ 「跳ねろ跳ねろ! 跳ね上がれ!! 空高くーーーーーーーー!!!」

ホエルオー 「ホ〜〜〜〜〜〜!!! エーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

ホエルオーは跳ねるを繰り返し、次第にジャンプ力を高めていく。
そして、私もフヨウさんもしばらくその姿を眺めていた。
誰も予想なんてしない…『はねる』なんだから。
でも、この『はねる』はホエルオーの『はねる』…そこには更なる可能性が秘められていた。

ヌケニン 「……ニ」

フヨウ 「え………」

ドッ!! ズッズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!

大轟音。
フヨウさんは呆然としていた…ホエルオーは今までに無いジャンプ力で空中高く飛び上がり、しばらくの間滞空。
そして、本当に呆然とした時間が過ぎ、ホエルオーはヌケニンの真上に飛び掛った。
そう…『飛び掛った』のだ、ジャンプして。
それは、新たな技の習得でもあった。
私は図鑑を改めて見てみる。

ピッ!


『とびはねる』
タイプ:ひこう
1ターンの間、高く飛び上がり、次のターンに攻撃する
たまに、相手を痺れさせる事がある


ロボ 「…ヌケニン戦闘不能、よって勝者ハルカ選手」

フヨウ 「…へ?」

ハルカ 「…あら〜」

どうやら、決着らしい。
何て言うか…これも、『らしい』っていうのかな?
う〜ん…

ハルカ 「戻って、ホエルオー…」

シュボンッ!

ハルカ 「…お疲れ様」

フヨウ 「…戻ってヌケニン」

シュボンッ!!

ハルカ 「……」

フヨウ 「……」

私たちは互いに顔を合わせて呆然とする。
何が起こったのかイマイチ理解ができていなかった。
でも、すぐに…

フヨウ 「ぷ…アハハハハハハッ!! もう、何あれ〜〜〜!!」

ハルカ 「は、はは…」

フヨウ 「アッハハ…やだ、もう…何でああなるかなぁ〜」
フヨウ 「ふふふ…ハルカちゃんって、面白いね」

ハルカ 「す、すみません…」

もう謝ることしかできなかった。
こんな勝ち方、色々と納得できない…でもこれしかなかったのも事実。
はぁ…

フヨウ 「うん! でも楽しめた! こんな気持ちに慣れたのは久し振り!」
フヨウ 「さぁ、先に進んで! そして、このリーグの怖さを味わって!」

そう言って、フヨウさんは笑って私を送り出す。
怖さ…か……
怖かった…今回の相手は本当に。
そして、想像以上に犠牲も大きかった…



…To be continued




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