Menu




POCKET MONSTER RUBY 外伝



2005年度・クリスマス特別企画! 『ハルカ、空間転移の巻!!』




ハルカ 「ふん、ふん、ふ〜ん♪」
ハルカ 「あれ? 何だろう?」

それは、トウカシティに向かう途中の、トウカの森での出来事だった。
この時、私は何も考えずに行動を起こしたのが悪かった。
ただでさえ、鼻歌なんぞを歌いながら珍しいモノ見たさに手を出したのが原因だ。

ハルカ 「あれ…これって、もしかして」

私はすぐに足元で寝そべっているポケモンと思われる、緑色の生物を図鑑で参照しようとした。

ポケモン図鑑 『データ参照失敗…未登録のポケモンです』

しかしながら、そんな反応をされる。
…何だかなぁ。
どうやら、珍しいポケモンなのかな?
少なくとも、見た感じ、虫っぽく見える…緑色だし、きっと虫タイプに違いない。
とか思っていると、そのポケモンは目覚めて私を見る。

緑のポケモン 「…ビィ?」

ハルカ 「…あなた、野生のポケモン?」

私はそう聞いてみるが、特に反応はない。
だが、そのポケモンは突然私の頭上で飛び回る。

緑のポケモン 「ビィ〜♪」

ハルカ 「…元気なポケモンね、ゲットしていいのかな?」

等と思っていると、突然そのポケモンは輝きだす。
ポケモンを中心に私はその光に飲み込まれてしまった。

カァァァァァァッ!!

ハルカ 「な、何っ!?」

急に重力を感じなくなってしまう。
まるで、宙に浮いているような感覚、足場のわからない状態に私は少なからずうろたえる。
無重力状態がしばらく続いたと思うと、視界がわけのわからない場所を捉える。
何て言うか…緑色のグニャグニャした空間?
とにかく形容できない…こんなこと初めてだ。
まるで、その空間に流されていくように私はただ身を任せた。
そして、一瞬…意識は完全に途切れてしまった。





………………………。





ハルカ 「…う、うう」

意識を取り戻した私は、ふと頭痛を覚える。
ここは…どこだろう?
少なくとも見た感じ、森のようだ。

ハルカ 「…ここって、トウカの森?」

にしては、やけに道が複雑になっている。
というよりも、道と呼んでいいものかさえわからないほどだった。
人の通った形跡さえ感じられない。
ここは、一体?
って言うか、私はどうなったの?

ハルカ 「……」

私は自分の状態を確認する。
体は動く、意識もしっかりしてる。
持ち物は、全部ある、モンスターボールもちゃんと持ってる。
しかしながら、次の瞬間私は驚きを隠せなかった。

ハルカ 「…どうなってるの? 何で雪が…」

少なくとも今はまだ11月半ばだったはず。
雪が降るなんて、どう考えても気候違いだ。
私は、いつの間にか、別の世界に迷い込んでしまったのだろうか?
そう思ってしまう、いきなりぶっ飛んだ考えだけど。

ハルカ 「ん? でもこれもポケモンの技だったりするんじゃ…?」

それだったら雪ぐらい降りそうなものである、そうかそうか。
つまり、どこかでポケモンバトルでもやってて、その影響で雪でも降っているに違いない!
私はそう結論付け、とりあえずこの森を抜けることにした。
私はまずポケモンを出すことにした。

ハルカ 「『マッスグマ』、出てきて!」

ボンッ!

マッスグマ 「グマ…」

ハルカ 「マッスグマ、街とか人の気配を匂いでわからない?」

マッスグマ 「…グマ」

マッスグマは鼻おくんくんとさせ、状況を確かめようとする。
そして、何かを嗅ぎ取ったのかマッスグマは走り出す。

マッスグマ 「…グマッ」

ハルカ 「何か見つけたのね!」

私はマッスグマの走る方向に向かって走っていく。
およそ道と言えない獣道を私たちは走っていく。
そして、10分ほど走ったところで、私は森を出ることができた。

ハルカ 「!!」

そして、私は絶句する。
まず最初に目に入ったのは見覚えのない場所。
今まで見たことのない道路(?)だった。
正確には道路ではなく、空洞のような所だった。
天井があり、トンネルになっているのだ。
近くに海はない、むしろ川があった。
ということは、あそこはやっぱりトウカの森ではない?

ハルカ 「…マッスグマ、人の気配はある?」

マッスグマ 「…グマ」

マッスグマはなおも、嗅ぎ分けようとする。
そして、またもマッスグマは走り出す。

ハルカ 「……」

マッスグマ 「グマッ」

私たちはまた走り出す。
時間にして2分程度、そしてようやく街に到着したようだった。

ハルカ 「…? ここどこ?」

見たこともない街だ。
一体どうなっているのだろうか?
この場所は…一体?
一言で言うなら、谷。
私たちがいる場所は下の方で、上にはいくつか民家があるようだ。

ハルカ (考えられないわ…やっぱり私、変な所に飛んでしまったのよ)

思えば、あのポケモンが妙だった。
きっとあのポケモンに何かされたんだわ。
やだなぁ…祟りとかなんじゃ?
このまま元の世界に戻れないとかありえないわよ…。

? 「あら? あなた見ない顔ね、一体どこから来たの?」

ハルカ 「え?」

突然前の方から声を掛けられる。
どうやら中年女性のようで、エプロン姿のちょっと太っている女性だった。
見た感じは優しそうな人で、話は通じそうだ。
ちょうどいい、この人に色々尋ねてみよう。

ハルカ 「あの、すいません…ここってどこですか?」

女性 「は?」

自分でも意味不明な問いだと思う。
しかしながら、一番的確な質問とも言える。

ハルカ 「あの、私森で迷っちゃって…見たこともない場所なんで困ってるんです」

実際嘘はついていない。
現に私は迷っているといってもいいだろう。

マッスグマ 「グマ…」

女性 「あら、見たこともないポケモンね…あなた、ポケモントレーナーなの?」

ハルカ 「え? あ、ハイ…え、でも見たことないって」

少なくとも、マッスグマはジグザグマの進化系、はっきり言って珍しいポケモンとは思えない。
普通に旅をしていても、ジグザグマは草むらならほとんどどこにでも現れるし、育てているトレーナーも多いと思う。
その進化系であるマッスグマを見たことないなんて…ちょっと信じられなかった。

女性 「この辺りでは、見たこともないよ…珍しいポケモンじゃないのかい?」

女性は、当たり前のようにそう言う。
少し読めてきた、どうやら私は完全に違う場所に飛ばされたようだ。
少なくとも、ホウエン地方ではない気がする。
だとしたら、カントー地方? それともジョウト?
一体何が何だかわからなくなってきた。

ハルカ 「あ、あの…今日って何月何日ですか?」

女性 「え? 12月24日よ」

やっぱり、時空転移してる…確かまだ11月のはずなのに。

ハルカ 「…そうですか、あの…つかぬ事を尋ねますけど、今年は何年ですか?」

女性 「妙なことを聞くわね…1955年だよ」

ハルカ 「55年ーーー!? 50年前じゃない!!」

私は思わず叫んでしまう。
それ位衝撃的だった。
まさか、そこまで吹っ飛ぶとは。
一体、どうなっちゃったのか私…。
これからどうしよう…。
等とうな垂れていると、女性が心配そうに。

女性 「…はぁ? あなた、大丈夫かい?」

ハルカ 「…そ、そんなまさか…私ってばタイムトリップ!?」 ←正確にはタイムスリップ

女性 「そう言えば、あなた珍しい格好してるけど、どこから来たの?」

ハルカ 「え? えっと、一応ミシロタウンから…ですけど」

女性 「…? 聞いた事のない街ね。そんな街オーレにあったかしら…」

ハルカ 「…オーレ? どこですそれ?」

女性 「何言ってるのよ、ここの地方のことに決まってるじゃない! ははぁ、さてはあなた外国から来たんだね?」

女性はわかったような口調でそう言う。
私は逆に固まっていた。
オーレ地方…そう言えば、聞いたことがあるような?
確か、ダークポケモンだとか何だかで、一時期ニュースで報道されたことがあった気がする。

ハルカ 「あ、あはは…ホウエン地方からです」

女性 「ホウエン地方…って、確かここからはかなり遠い所だねぇ」
女性 「って言うか、つい前まで戦争中じゃなかったっけ?」

第2次世界大戦ですね…。
そうか、今頃はギブミーチョコレートか。
今頃は、某ボクサーがボディーブロー二発で外人ボクサーを殴り倒しているところね。
しかしながら、困った…私どうしたらいいんだろう?

女性 「とりあえず、ポケモンセンターにでも行ってみたら? そこの坂を上ったらすぐだから。

ハルカ 「あ、どうもありがとうございます!」

親切に場所を教えてくれた女性に、私はお礼を言ってから走り出す。
マッスグマもちゃんと着いて来ている。
そして、私はポケモンセンターにたどり着いた。

ハルカ 「……」

何て言うか、古さを感じる。
自動ドアじゃない…引き戸だ。

ガラガラガラ…

そんな音を立ててドアが横にスライドする。
そして、中を見てもっとびっくり。

店員 「いらっしゃい、あら…見ない顔ね、別の街から来たの?」

何て言うか、ナースじゃない…普通の一般人みたいだ。
こっちからはかなり違和感がある。

ハルカ 「あ、えと…はい」

店員 「珍しい格好してるわね…フェナスとかだったらそう言うのが流行ってるの?」

店員さんはロングヘアーで20代位の明るい女性。
何やら物珍しそうに私を見ていた。
フェナスとは、オーレ地方の街のことだろう。

マッスグマ 「グマ…」

店員 「あ、ポケモンじゃない! すご〜い、こんなのもいるんだ!」

ハルカ 「…見たことないんですか? マッスグマ」

店員 「うん、これは初めてね! とは言っても、未だに10体位しか見たことないけど」

ハルカ 「じゅ、10体!? それだけ?」

店員 「うん、この村にいるポケモンだったら、2〜体匹じゃないかなぁ? ピカチュウにソーナンス、後は…セレビィとか」

ハルカ 「…全部知らない」

しかしながら、図鑑で一応検索してみる。
ヒットした、ピカチュウとソーナンスはホウエン地方でもいるらしい。
見たことがないだけか。

ハルカ 「あ、セレビィって…載ってないんだ」

検索には引っかからない、どうやらホウエン外らしい。

店員 「それって…何?」

ハルカ 「え? ポケモン図鑑のことですか?」

店員 「図鑑〜? そんなのどこで売ってるの!?」

ハルカ 「あ、いえ…多分販売はされてないと思いますけど」

少なくとも今の時代では。
って言うか、そもそもいくら位するのかしら?
ユウキ君はトレーナーなら必須だって言ってたけど、私以外で持っている人はあんまりいないみたいなんだけどなぁ…。
ユウキ君はオダマキ博士の息子だから、勝手に必須だと思っているのかもしれない。
そんなことを考えていると、店員さんが物欲しそうな顔で。

店員 「ねぇねぇ、ちょっと見せてくれない!?」

ハルカ 「え? いいですけど…」

私は店員さんに図鑑を見せてあげる。
オダマキ博士のおかげで200体全種類登録されているので、店員さんも驚いていた。


………。


店員 「へ〜、こんなにいるんだねポケモンって」

ハルカ 「ですよね、この図鑑に載ってないのもたくさんいるみたいだし」

実際にキヨミさんのポケモンはほとんど載っていない様だったし。
ホウエン地方だけでは、ポケモンは語れないってことね。

店員 「そうだね、セレビィが載ってないもん」

ハルカ 「そういえば、そのセレビィってなんですか?」

はっきり言って聞いたことはない。
元々私はポケモンの知識が0同然なので当たり前だけど。

店員 「あれ、知らない? このアゲトビレッジに住んでるって言われる草タイプの神様なんだよ♪」

ハルカ 「神様…?」

店員 「うん、『ときのふえ』…って言うのを持っていたら会えるらしいらしいけど」
店員 「未だに見た人はひとりだけなんだよね〜」

ハルカ 「ひとり…ですか、あの…そのポケモンってもしかして緑色で、くりっとした可愛い目つきで、虫みたいな薄羽で空飛ぶポケモン?」

店員 「あれ? 何だもしかしてみたことあるの!?」

どうやら当たりらしい…なるほど、あれがセレビィなのか。
草タイプだったのね…てっきり虫タイプだと思ったのに。
しかしながら、神様か…これで原因は判明したようね。
そして、逆に戻る方法も見つかったと言える。

ハルカ (要は、セレビィにもう一度会って返してもらうしかない…か)

店員 「ねぇねぇ! そう言えば、あなたってトレーナーなのよね?」

ハルカ 「? ええ…そうですけど」

店員 「やっぱり! だったら、『バトルやま』とかには行った?」

ハルカ 「あ、あの…ごめんなさい、よく知らないんです、この地方のこと」

店員 「あ、そうなんだ…トレーナーだったら、てっきり『バトルやま』目当てで来たと思ったのに」
店員 「もっとも、フェナスの方では近々スタジアムが作られるらしいから、オーレ地方ももっと栄えるようになるんだろうなぁ…」

ハルカ 「あの、ちょっと聞きたいんですけど、オーレ地方ってポケモンはあまりいないんですか?」

あまりにも不思議に思ったことだ。
自分にとってもポケモンは珍しいものだが、ここの人たちはそれ以上な気がする。
もしかしたら、ポケモン自体そんなにいないのかもしれないわね…。

店員 「うん、そうだね…オーレ地方には野生のポケモンはほとんどいないといっていいから」

ハルカ 「い、いない!? それもほとんどって…」

店員 「あ、やっぱり驚くよね…そうだよね」
店員 「オーレ地方の気候はあまりにも過酷だから、ほとんどポケモンが住めるような環境じゃないもの」
店員 「そりゃ、場所がないわけでもないだろうけど…やっぱりポケモンたちも好き好んで住みたがらないんだと思う」
店員 「特に、人間側もロクでもない奴らが多いから…」

ハルカ 「ロクでもない奴ら…?」

こっちで言う、マグマ団みたいなものかしら?
そう言えば、カントーの方でもロケット団とかそう言うのがいるらしいしね。

店員 「そう、ロクでもない奴ら…外国からオーレにポケモンを売りさばいたりする奴らがいるのよ」
店員 「あまり目立って活動しているわけじゃないけど、ここ最近オーレにトレーナーが増えてきたのも、そのせいかもね…皮肉な話だけど」

ハルカ 「そうですか…なるほどね」

要するに密輸ってわけ…しかもそのおかげでオーレでもポケモンを見ることができるようになっている。
確かに皮肉ね。

店員 「あ、何だかゴメンね! 一応ポケモンの回復に来たんじゃない? すっかり忘れてた…」

ハルカ 「あ、いえ…回復は大丈夫ですけど。ちょっと情報が欲しかったから」

店員 「そう? だったらいいんだけど…あれ? そう言えばあなたのポケモンは?」

ハルカ 「え? あれ、マッスグマ?」

気がついたらマッスグマがいない。
ちょ、一体どこに行ったのよ!
私は思わずポケモンセンターから出る。
そして、周りを見渡す。
近くにはいない…?
私はちょっと焦る。
さすがにこの状態でどこかに出て回るのは危険よ!

マッスグマ 「グマッ」

ハルカ 「あ、何だもう脅かさないでよ! どこに行ってたの?」

マッスグマ 「…グマ」

マッスグマは妙なものを口にしていた。
笛…かしら?

? 「おーい! そんな所にいたのか!!」

ハルカ 「?」

突然、男性が走ってくる。
何かを探しているようだけど、こっちに来た。

男性 「あ、君がこのポケモンのトレーナーかい?」

ハルカ 「え? あ、はい…あの、この娘が何か?」

私が恐る恐るそう聞くと、男性は笑いながら。

男性 「いやいや、見たこともないポケモンだったから! ちょっと珍しくてね、すまない」
男性 「それと、君のポケモンがあまりにも珍しい物を持っていたからね」

ハルカ 「珍しい物?」

もしかしなくてもこの笛のことなのでは?

男性 「その笛だよ、どこから見つけてきたのか、それは『ときのふえ』と呼ばれる道具なんだ」

ハルカ 「『ときのふえ』!? あの、セレビィに会うことができるって言う…?」

男性 「あれ? 何だ知らなかったのかい? てっきりそれが目的でここに来た人だと思ったけど」

ハルカ 「あ、いえ…まぁ、似たようなものかも…」

結果的に、そうなる予定だったし。
しかしながら、いい物を拾ってくれるわね。
この娘がいて本当に助かるわ。

ハルカ 「あ、そう言えば聞きたいんですけど…この笛どこで使えばいいんですか?」

男性 「ん? もちろん『せいなるほこら』さ! セレビィを祭っている村だからねここは」

ハルカ 「そ、そうだったんですか…知らなかった」

ということは、セレビィって言うのはかなり昔から存在しているポケモンだと言うことね。
一体、何の因果で私をここに飛ばしたのか…。

ハルカ 「あの、その『せいなるほこら』ってどこに…?」

男性 「そうだな…タダって言うのもなんだし、ひとつ私と勝負をしてくれないか?」
男性 「君が勝ったら、タダで教えてあげよう」

私はそう言われて、少々男性を睨む。
勝負と言われては退くに退けない理由があるしねぇ。

男性 「君はトレーナーなんだろ? ひとつ、私とポケモンバトルだ!!」

そう言って、男性はモンスターボールを投げる。
そして出てきたのは黄色いポケモン。

ボンッ!

ピカチュウ 「ピッカー!」

ハルカ 「あれが、ピカチュウね!」


ポケモン図鑑 『ピカチュウ:ねずみポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:0.4m 重さ:6.0Kg タイプ:でんき』
ポケモン図鑑 『初めて見る物には電撃を当てる。黒焦げの木の実が落ちていたら、それは電撃の強さを間違えた証拠だよ』


なるほど、見た目は確かに可愛い系ね。
電気タイプとくれば、地面タイプ…と言いたいけど、私は持っていない。
しょうがないので、代用としてこの娘を出す。

ハルカ 「『バシャーモ』、頼むわよ!!」
ハルカ 「マッスグマは戻って!」

マッスグマ 「グマ」

シュボンッ! ボンッ!

バシャーモ 「…シャモッ」

ついに進化した私のバシャーモ。
実力はツツジさんとの再戦で実証済みだけど、もう一度しっかりと見ておきたかった。

男性 「…見たこともないポケモンだな、だけど負けないぞ!」
男性 「ピカチュウ、『でんこうせっか』だ!!」

ハルカ 「バシャーモ、こっちも『でんこうせっか』!!」

ピカチュウ 「ピッカ!」

バシャーモ 「シャーモ!」

2体がほぼ同時に動き出す。
目にも止まらぬ高速の攻撃がほぼ同時に繰り出される。
だが、当たったのは…。

ドガッ!

バシャーモ 「シャモ!」

ハルカ 「く、速い…!」

バシャーモが速度負けした…相当なスピードね。
いや、スピードだけじゃない、そのポケモンは戦い慣れているようだ。

男性 「さぁ、続いていくぞ! ピカチュウ『10まんボルト』!!」

ハルカ 「まずい! バシャーモかわして!!」

ピカチュウ 「ピーカーーー!!」

バシャーモ 「シャモ!」

バチバチバチィ!!!

ピカチュウを中心に強力な電撃が周囲に放たれる。
バシャーモは一旦後ろに退いて距離を置く。

男性 「突っ込めピカチュウ! 『でんこうせっか』!!」

ハルカ 「迎え撃つのよ! バシャーモ『ほのおのパンチ』!!」

ピカチュウ 「ピカッ!」

バシャーモ 「シャーモッ!!」

ピカチュウはそのまま高速で突っ込んでくる。
バシャーモも前に出て、右拳に炎を纏わせる。
バシャーモになってから使えるようになった新技よ!

ドカァッ!!

ピカチュウ 「チュー!!」

ドザザザァッ!!

ピカチュウはカウンターで炎『ほのおのパンチ』を受け、吹っ飛ぶ。
あの体だから、そんなに打たれ強いとは思えない。
確実に効いたはずだけど…?

ピカチュウ 「ピ、ピッカ!!」

男性 「よし、まだいけるな! 負けるなピカチュウ! 『こうそくいどう』!!」

ピカチュウ 「ピカチュ!!」

ピカチュウは左右に高速で移動し始める。
まずいわね、スピードに乗ってきた…はたしてバシャーモに捉えきれるかしら?

ハルカ (いや、捉えるのではなく、捕らえれば?)
ハルカ 「バシャーモ、『ビルドアップ』!!」

バシャーモ 「シャモッ!!」

バシャーモは『ビルドアップ』で攻撃力と防御力を増加させる。
相手が動くなら、こちらは足を止めるのよ。
スピードでは明らかに相手の方が上、追っても空回りするだけ…。

男性 「いい判断だが、ピカチュウが遠距離からでも攻撃できるのは知っているだろう!?」
男性 「ピカチュウ『『10まんボルト』!!」

ハルカ 「来た、バシャーモ『でんこうせっか』!!」

ピカチュウ 「ピーカー!!」

バシャーモ 「シャーモッ!!」

バチバチバチィ!!

正面から突っ込み、バシャーモは『10まんボルト』を受ける。
かなりの威力だけど、耐えられないほどではないわ!!

ハルカ 「行っけーバシャーモ!!」

バシャーモ 「シャーーーモッ!!」

ドガァッ!!

ピカチュウ 「ピッカー!!」

ドザザァ!!

肩から思いっきりピカチュウに突っ込むバシャーモ。
ピカチュウはまたしても大きく吹っ飛ぶ。
今度はどう!? 『ビルドアップ』してるんだからタダじゃすまないはずだけど。

ピカチュウ 「ピ、ピッカッ!」

男性 「ピカチュウ、行けるのか?」

ややためらいがちに男性はピカチュウを見る。
正直、いい根性してるわね。
こっちも見た目よりダメージがないわけじゃないわ。
最後の最後まで諦めなければ、勝負はまだわからないわね。
だけど、続行かどうかを決めるのはトレーナー次第。
さて、どうするかしらね。

ピカチュウ 「ピッカ、ピッカ!!」

男性 「ピカチュウ、やるんだな?」

ハルカ 「……」

男性 「よし、行くぞピカチュウ! 最後の力を振り絞れ!! 『かみなり』だ!!」

ハルカ (『かみなり』!? そんな技も覚えてるの!?)

ここに来て、とんでもないことになってきた。
よりによって、大技だ。
しかもタイプ一致…今のバシャーモが喰らったら、耐えられないかも…!
距離は離れすぎている、こっちからの攻撃は間に合わない。

ハルカ 「バシャーモ、頭部をガードして! 思いっきり踏ん張るのよ!!」

バシャーモ 「シャモ!!」

言われた通り、バシャーモは両手をクロスして頭部を守る。
そして、下半身に力を込め耐える体勢だ。

ピカチュウ 「ピーカーチューーーー!!!」

ピカチュウから凄まじい電気が放出され、バシャーモに降り注ぐ。
相当な威力だ、お願い耐えて!!

ピシャァンッ!! バチバチバチィ!!

ハルカ 「……!?」

男性 「あ…!」

互いに絶句した。
恐らく、最後の攻撃かと思われたピカチュウの雷は、バシャーモのすぐ目の前に落ちていた。
そう…外れたのだ。

ピカチュウ 「…ピ、ピッカ…!」

ドサッ!

そんな音をたてて、ピカチュウは前のめりに倒れた。
最後の力を振り絞った証拠だ。
もう、これ以上は戦えないわね。

ハルカ 「…バシャーモ、戻って」

シュボンッ!

私はバシャーモをボールに戻し、ピカチュウの様子を確認する。

ハルカ 「…大丈夫、ですか?」

男性 「…ああ、大丈夫。気絶しているだけだよ、心配してくれてありがとう」

ハルカ 「いえ…」

店員 「…ローガンさんが負けたの、初めて見た」

ハルカ 「あ、さっきの店員さん…」

気がついたら、外に出ていたようだ。
しかも台詞から判断するに、見物していたらしい。
なるほど、ということは、この人はローガンさんというのね。
うん…? どこかで聞いたような。

男性 「あ、セツナちゃん…ちょうどよかった、ピカチュウをお願いできるかな?」

なるほど、店員さんはセツナさんというのね。
しかし、このふたり…良く見ると。

セツナ 「結構、ダメージが大きいみたい、時間がかかるかもしれませんけど」

ローガン 「仕方ないさ、それだけのバトルだったし」
ローガン 「私はこれから、彼女を『せいなるほこら』に案内するから、後は頼むよ」

セツナ 「あ、はい…」

片思い…でしょうか?
何だか、至って普通のローガンさんに凄く寂しそうなセツナさん。
逆に見れば、それだけ信頼していると言うことだろうか?
まぁ、とりあえずこれでセレビィに会えるのね。

ローガン 「私の完敗だ、えっと…そう言えば名前を聞いてなかったな」

ハルカ 「…ハルカ、と言います」

少し戸惑ったが、名乗ることにした。
これが歴史に影響を与えなかったらいいんだけど。
もう、与えているかもしれないでしょうしね。

ローガン 「君のポケモン、相当鍛えられているんだな…私のピカチュウが負けたのは久し振りだ」
ローガン 「それじゃあ着いて来てくれハルカちゃん…『せいなるほこら』に案内しよう」

ハルカ 「は、はいっ」

私はローガンさんに着いて行く。
どうやら、ポケモンセンターのすぐ側にある坂を降りて行くようだ。

ハルカ (もしかして、私が最初に出てきた森のことなんじゃ)



………。
……。
…。



大当たりだった。
どうやら、森を少し進んだ所であったらしい。
背後だから気付かなかったのね。

ローガン 「さぁ、この祠の側でその『ときのふえ』を吹くといい」
ローガン 「しかし、セレビィに会って、君はどうするつもりなんだい?」
ローガン 「もし良かったら、聞かせてもらえないかい?」

ハルカ 「…信じてもらえるかどうかわからないですけど、私は50年後の未来からやって来たんです」
ハルカ 「セレビィに連れてこられて」

ローガン 「何だって? セレビィの時渡りでやって来た未来の人だったのか…」

これは意外、どうやら違う意味で驚いてくれたようだ。
時渡り…それがセレビィの能力なのかしら?
草タイプにそんなことができるのかしら?

ローガン 「…そうだったのか、そういうことなら何も言わないよ」
ローガン 「君とのバトルは、ある意味二度と体験できないバトルだったのかもしれないな」

ハルカ 「あははっ、そうかもしれませんね」
ハルカ 「私もローガンさんとのバトルは忘れません! きっとローガンさんは凄いトレーナのはずですから!」
ハルカ 「現代に戻っても、きっと忘れません!」

私が強くそう言うと、ローガンさんは笑って答えてくれる。
そして私は『ときのふえ』を吹く。
吹き方なんてわからないけど…何故だか笛はメロディを奏でる。
知らないメロディを勝手に…私の呼吸に合わせるように。
そして、ここに来た時と同じような光が私を包む。
重力がなくなる感覚、間違いない。
私は、現代に…戻るのね。

セレビィ 「ビィ〜♪」

ローガン 「セレビィだ! ハルカちゃん、どうやらさよならのようだね!!」

ハルカ 「はい、ローガンさん御元気で!」

次第に私の体が宙に浮く感覚に襲われる。
もう、時間はないのだろう。
どうせだから、これ位は言っておこう。

ローガン 「ハルカちゃん、現代に戻っても頑張ってくれ!! 君ならきっと私よりも凄いトレーナーになれるはずだ!!」

ハルカ 「はい! あ、それからローガンさん、セツナさんとお幸せに!!」

ローガン 「え! ハ、ハルカちゃん!?」

ハルカ 「あははっ、きっとおふたりなら御似合いですよ♪」

私の体を光が包む。
チラッとセレビィの笑顔が見えた。
この子がどうして私をここに連れてきたのかはわからない。
だけど、来て無意味じゃなかった。
凄い人(多分)とバトルができた、それだけで十分だろう。
私の意識は次第に失われていく。
今度は気持ち悪い感覚ではない。
自然と、その感覚に身を任せた。





………………………。





『西暦2005年 11月12日 某時刻』



ハルカ 「……」

私は恐る恐る目を開ける。
そして、そこに入ってきた光景は、まさしくトウカの森だった。

キノココ 「キノ〜」
ジグザグマ 「ジグジグ!」
ナマケロ 「ナマ〜〜」

ハルカ 「…うん、行こう」

私は気持ちをすぐに切り替える。
夢なんじゃないか? 何ていうありがちな考えはしない。
何故なら、私の手に持たれている『ときのふえ』がその証拠。
私はそれをバッグにしまってトウカの森を出るために歩く。

ハルカ (父さんとの戦い…もうすぐ実現する)
ハルカ (私は、負けない…絶対に!)





………………………。





『同日 某時刻 アゲトビレッジ・ポケモンセンター』



ウィイン!

店員 「いらっしゃいませ」

ローガン 「ふむ、ポケモンの回復をお願いするよ」

ドアを潜ってきたのは、アゲトビレッジの名トレーナー・ローガンさんだった。
確か、『ポケモンそうごうけんきゅうじょ』に行って来たらしいけど、どうなったのかしら?

店員 「あ、ローガンさん! どうでした、リュウト君?」

ローガンさんは、少し苦笑して。

ローガン 「ふむ、さすがリュウト君じゃ…ワシもまだまだ負けられんわい」

どうやら負けたみたいね。
さすがリュウト君、ローガンさんは今でも凄い腕前のトレーナーなのにね。

店員 「あははっ、『若い』頃は無敗のトレーナーだったんでしょ? 皆の憧れですもんね、ローガンさんは」

ローガン 「はっはっは! そう言ってくれるとワシもまだまだやる気が出てくるよ! …しかしな」

店員 「?」

ローガンさんは突然遠い目をして。

ローガン 「昔、負けたことがあるんじゃよ。ひとりの旅人にな」

店員 「え? それって、全盛期のローガンさんが、ですか? 駆け出しの頃とかじゃなくて?」

少なくとも、全盛期のローガンさんは『バトルやま』においても100戦100連勝の記録を持っていたはず。
あのバトラスさんが尊敬しているほどのトレーナーなんだから、まぁ納得だけど。
そのローガンさんが…ねぇ。

ローガン 「そうじゃよ、全盛期のワシがじゃ…爺さんピカチュウが一番力強かった頃じゃな」
ローガン 「あのバトルは未だに忘れられんよ、ワシにとってあのバトルがあったから、今のワシがあると言っていい」

店員 「はぁ…そうなんですか」

ローガン 「それに、愛のキューピッドでもあったしの♪」

店員 「は?」

ローガン 「いやいや、こっちの話じゃよ! さて、それじゃあワシは家に戻るよ」

店員 「あ、はい! …あ、そう言えば、セツナさんが何か困ってたみたいでしたけど?」

ローガン 「何!? そりゃいかん…早く戻るよ!!」

そう言ってローガンさんは急いで出て行ってしまった。
はぁ〜愛妻家ですねぇ♪
なるほど、そんな凄腕のトレーナーがいたとはねぇ…。
世の中は広いものね…。



………。



ローガン 「今、帰ったぞ!」

セツナ 「ああ、あなた!! ほら、TV見て!!」

ローガン 「うん?」

セツナに言われるまま、ワシはTVを見る。
どうやら、ホウエン地方で放映されているTVのようだ。
そして、そこに映っている少女を見て、ワシは絶句する。


マリ 『はーい、私は今104番道路に来ています!』
マリ 『今日は、ここで新しい才能を発掘しようと思います!』
マリ 『今日、私が注目したトレーナーはハルカさん!』
マリ 『私はこのトレーナーに何かを感じます!』

ハルカ 『あ、あはは…』

そう、そこにいたのは…まさしく彼女だった。
50年前のあの日、私と戦った少女がそこにいた。

マリ 『さて、トレーナーの実力を見るには…』
マリ 『戦ってみるのが一番早い! 早速調査を開始します!』
マリ 『「コイル」、お願い!』

ダイ 『「ゴニョニョ」、出て来い!』

ハルカ 『ダブルバトルね、よ〜し! 「バシャーモ」、「マッスグマ」!!』

ボボンッ!!

バシャーモ 『シャモ!』
マッスグマ 『グマ』


ローガン 「おお…あのポケモンは」

セツナ 「あなた、あれはやっぱり…」

間違いなくハルカちゃんじゃ。
そうか…やっぱり、元気にしとったんじゃな。
ワシは思わず涙を流しそうになる。
あの時ワシを倒した少女が、今も元気に映っておるのじゃから。


ハルカ 『バシャーモ、コイルに「ほのおのパンチ」! マッスグマはゴニョニョに「ずつき」!!』

バシャーモ 『シャモッ』
マッスグマ 『グマッ』

ドカッ! ズドオンッ!

コイル 『PPP〜!』
ゴニョニョ 『ゴニョ〜』

マリ 『も、戻ってコイル!』
ダイ 『戻れゴニョニョ!』



………。



マリ 『…と言うわけで、戦ってみたのですが』
マリ 『見事にボコボコにされました! ハルカさんやたら強いですね…』
マリ 「で、戦った感想を言わせて貰いますと」
マリ 『…私、自信を無くしてしまいました』
マリ 『1回も攻撃する暇もなく、すぐに負けてしまいました。ああグスン…』
マリ 『でも、ハルカさんの戦いは一見の価値有りです!』
マリ 『自信のあるトレーナーは、一度戦ってみることをお勧めしますよ!』
マリ 『さて、それではハルカさんにインタビューをしてみたいと思います!』
マリ 『ハルカさん、今の対戦の感想を一言でお願いします!』

ハルカ 『ひ、一言…? えっと…よしっ!』

マリ 『ハルカさんのバシャーモとマッスグマ。そして「よし!」…』
マリ 『んー!! 何か意味の深い言葉よね!』
マリ 『やはりいいトレーナーはいいことを言ってくれますね』
マリ 『さて、それじゃあまた次回の放送でお会いしましょう!』



………。



ローガン 「…ふぅ、これはますますワシも負けてられんのう」

セツナ 「うふふ…そうですね」

ローガン 「よし! こうしてはおれん! ワシはオーレコロシアムの方に行くよ!!」

セツナ 「あ、あなた!!」

そう言ってローガンはすぐに出て行ってしまった。
もう…相変わらず、負けず嫌いなんだから。
うふふ、でも仕方ないわよね…ハルカちゃんが、あんなに元気にバトルをしているんですから。

セツナ 「ねぇ、ピカチュウ」

ピカチュウ 「……」

ピカチュウは答えてくれなかった。
そうだった…今、アゲトのポケモンたちは声を出せなくなっていたんだった。
ローガンに確かめてみようかと思ったけど、やっぱりリュウト君にメールを送ってみた方がいいわね。
私はそんなことを思いながら、TVの電源を落とす。
そして、リョウト君にメールを送るため、文章を打っていった…。





………………………。





ハルカ 「はぁ、まさかあんな所にインタビュアーいるなんて思わなかった」
ハルカ 「あれ、絶対111番道路にいたインタビューだわ」
ハルカ 「あの時無視したから追ってきたのかなぁ? だとしたらかなり執念深いけど」
ハルカ 「はぁ…何だか、ローガンさんとのバトルからすぐに戦ったような感じだから、ちょっと疲れたな」

だけど、トウカシティはすぐそこだ。
休むならそこで休めばいい。
私はふと海を見る。


ザザァン…! ザパァンッ!


ハルカ (あの海の向こうには、オーレ地方がある)
ハルカ (ローガンさんとセツナさん、今も元気なのかな? 今だったらかなり歳をとってしまっているわね)
ハルカ (私のことを覚えてくれているのだろうか? 私はそれだけのバトルをしたと思いたい)
ハルカ (私はこれから、父と戦います…ローガンさんとの戦いはきっと私の力になってくれます)
ハルカ (どうか、ふたりとも…元気でありますように)

私は歩き出す。
目の前に見えているトウカシティを見据え、私は地面を踏みしめる。
大切な一歩を踏み出すために……



…To be continued




Menu




inserted by FC2 system