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POCKET MONSTER RUBY 外伝V



2007年度・クリスマス特別企画! 『神々の戦い』




『12月23日 時刻11:00 どこかのポケモンセンター』


男 『はぁ…? アラモスタウンへ行くぅ!?』

まだ若さの感じる男の声が、私の耳に響き渡る。
私は、今『とある』ポケモンセンターから、その男に電話で連絡をしていた。
男は、白い研究員の服装で、四角いメガネ、手入れのされていないバサバサの髪で見るからに貧弱そうな男だ。
今は、私の行動に不安があるのか、ややふてくされたような表情をしている。

男 『待ちなよミカゲ! ポケモンリーグは!?』

男は私の名を呼ぶ。
ミカゲ…それが、私の名。

ミカゲ 「バッジは全部取得済みよ…あくびが出るほどだったわ」
ミカゲ 「どの道1〜2ヶ月は余裕があるし、向こうにはちょっと大きな『コンテスト』もあるそうだから、ね」

私が軽くそう言うと、男は慌てたように。

男 「まぁ、待って! 今どこ!? せめて迎えに行くから…」

ミカゲ 「必要ないわ」
ミカゲ 「もう、着いてるもの…」

男 「へ!?」

プツッ

私はそう言って、電話を切る。
そして私は後ろを振り向き、ポケモンセンターを出て行く。



………。



『時刻11:10 アラモスタウン・噴水広場』


男A 「おっ、来たみたいだな!」

男B 「用事は済んだかい? じゃあ始めよう!」

ミカゲ 「…そうね、構わないわよ」

私は外に出ると、すぐに広場へ向かった。
そして、そこには私を待っていた、ふたりのトレーナーが。
ふたりは、私にポケモンバトルを申し込んでいたのだ。
私は先に電話をし、研究員の『カミヤ』に居場所だけを伝えた。
とはいえ…私の近くにはいつも監視している小型ロボットがいる。
どこに行ってもいつかは気づかれる…今回は、ちょっと細工をしてすぐにはバレないようにしたけれど、ねぇ。

男A 「よし、まずは俺からやらせてもらう! 俺の名はダイ!! 戦うのはこいつだ!!」

ややごつい感じの男は、ダイと名乗り、モンスターボールを投げた。
男は青いジャンパーに白いシャツを着込み、黒のズボン。
特徴的なのは、アゴ髭でそこだけは剃っていないようだ。

ボンッ!!

エンペルト 「エンッペ!!」

ミカゲ (エンペルト…それなりには育てているようね)
ミカゲ 「…出なさぁい、『ムクホーク』」

ボンッ!

ムクホーク 「ホーック!!」

私は、ムクホークを手持ちから出す。
ムクホークは地面にしっかりと足を着き、相手を睨む。
その鋭い眼光に相手は気圧されたのか、多少退いていた。
これがムクホークの特性『いかく』…戦う相手の『こうげき』を低下させる特性よ。

ダイ 「あれ位で怯むなエンペルト! まずは先制攻撃だ!! 『アクアジェット』!!」

エンペルト 「ペルッ!!」

バシャァッ!! ドシュゥゥッ!!

エンペルトは全身に水を纏い、高速で突っ込んでくる。
さすがに、先制攻撃技のあれより速く動くのは難しい、私はそのまま見ていることにした。

ズバァァンッ!!

ムクホーク 「…!!」

ズザザァッ!!

ムクホークは衝撃で後ろに吹き飛ぶが、足を地面に引っ掛けすぐに踏ん張る。
大したダメージではない、ムクホークは怯むことなく相手を再び睨みつけた。

ダイ 「く…『いかく』されてダメージは少ないか! ならば、『れいとうビーム』!!」

ダイは高らかに気合を込めてそう叫ぶ。
さすがに、そこまでもらう気にはならない、今度はこちらも動かせてもらう。

ミカゲ 「…『インファイト』よ」

エンペルト 「エン〜!!」

ムクホーク 「ホォォック!!」

ガキィッ!!

ムクホークは相手が技を繰り出す前に接近して技を繰り出す。
まずはカギ爪でエンペルトの顔面を引き裂く、そして翼で体を何度も打ち付ける。

バシッ! ドカッ! ガガッ!!

ダイ 「耐えろエンペルト! 耐えて反撃するんだーーー!!」

ダイは吼える。
そして、それに答えるかのようにエンペルトはダメージを食らいながら反撃に移る。

エンペルト 「ペーーーーッル!!」

コオオォォォキィィンッ!!

ムクホーク 「ホーーーック!!」

ムクホークは『インファイト』の副作用で、防御力の下がったところにダメージを受ける。
かなりのダメージを予想できるが、倒れるほどではなかったようね。

ダイ 「よしいいぞ!! トドメの『アクアジェット』!!」

エンペルト 「エンッペ!!」

バシュゥッ!!

再びエンペルトが水をまとって突っ込んでくる。
だけど、馬鹿正直すぎたわね。

ミカゲ 「『はがねのつばさ』」

ムクホーク 「!!」

バシャァッ! ドォンッ!!

エンペルト 「ペーール!!」

ドシャァッ!!

ダイ 「な、何っ!?」

ダイは驚く。
先制攻撃の『アクアジェット』でトドメを差そうとした矢先、正面からの攻撃を『はがねのつばさ』で弾き返されたのだ。
これも、単純なパワーの違いね…防御力が下がったのなら、攻撃力で弾けばいいことよ。

ミカゲ 「これで終わりね…『つばめがえし』」

ムクホーク 「ホォォック!!」

ヒュンッ! ドッギャアァッ!!

エンペルト 「ペーーッル!!」

ズザザザザァッ!!

エンペルトは態勢を崩した所へ『つばめがえし』をもらい、地面を擦って吹き飛んだ。
いくら効果が今ひとつでも、これで終わりのようね。

ダイ 「…ぐ、凄まじいパワーだ! とんでもないな、君のムクホークは!!」

シュボンッ!

ダイはエンペルトをボールに戻し、私に笑いかける。
負けても、いいバトルだった…そんな顔ね。
私には…理解できないわ。
バトルをするからには、絶対に勝つ…私は勝つためにバトルをやってる。
負けるバトルなんて…絶対にしない。

男B 「さて、それじゃあ次はこの僕、『カツミ』が相手だ! 出ろ『ドダイトス』!!」

ボンッ!

ドダイトス 「ドッダーーーー!!」

ズシィィンッ!!

今度はダイに比べるとやや細身の男、カツミと名乗った男が前に出てポケモンを出す。
こちらは薄緑のシャツに白い上着を着込んでいる、ズボンは灰色だ。
爽やかな表情で、ダイとはやや対照的。
だが、ドダイトスはいかにも…と言った風の風貌を漂わせていた。

ミカゲ 「…戻りなさい『ムクホーク』、出なさい『レントラー』」

ムクホーク 「……」

シュボンッ! ボンッ!

レントラー 「…レンッ」

私は地面タイプのドダイトスに対し、電気タイプのレントラーを繰り出す。
さすがに相手も不思議に思ったのか、やや訝しげな顔をしていた。

カツミ (わざわざ電気タイプのポケモンで地面タイプと戦うのか…だが、さっきのダイの例もある)
カツミ (僕の見た所、彼女は相当なレベルのポケモンを使っている…多分正攻法じゃ勝てない)

ミカゲ 「…動く気が無いなら、こちらから行くわよ?」

カツミ 「!? いいとも! いつでも来い!!」

カツミはそう言って、受ける態勢を整える。
元々鈍重なドダイトスゆえに、後手の方がやりやすい…とでもいう所かしら?

ミカゲ 「…レントラー『かみくだく』」

レントラー 「レンッ!!」

ドドドドッ!!

レントラーはお世辞にも速いとは言えないスピードでドダイトスに向かっていく。
ドダイトスはそのままどっしりと動かず、反撃を狙っているようだった。

カツミ (まだだ…まだ動くなよ!)

レントラー 「レーンッ!!」

ガブゥッ!! ミシミシィ…!

ドダイトス 「ド…ドダァッ!!」

レントラーはドダイトスの首元に噛み付き、一気に砕きに入る。
頑丈なドダイトスといえど、ダメージはあるようね。

カツミ 「今だドダイトス! 『ウッドハンマー』!!」

ドダイトス 「ドッダーーーー!!」

ドグシャァァッ!!

レントラー 「!!」

ズガガガァッ!!

至近距離で、ドダイトスの『ウッドハンマー』が炸裂する。
凄まじい首の力でレントラーを振りほどき、その後頭突きの様に『ウッドハンマー』を繰り出した。
レントラーが2メートルほど吹き飛び、地面に倒れる。

ミカゲ 「…起きなさい」

レントラ 「…レンッ」

カツミ 「く…すぐに起き上がるなんて」

カツミは予想外と言った表情だった。
こちらからすれば、想定内。
例え急所に当たったとしても、一撃では倒れなかったでしょうね。

カツミ 「くそ、状況はこっちが有利なはずだ! ドダイトス『はっぱカッター』!!」

ミカゲ 「『でんこうせっか』よ」

レントラー 「レンッ!」

バヒュンッ! ドガッ!!

ドダイトス 「ド、ドダッ!」

レントラーは高速で頭から突っ込む。
カツミはその攻撃を予測できなかったのか、言葉を詰まらせていた。

カツミ (まさか!? レントラーが『でんこうせっか』を使えるなんて…!)

ミカゲ 「迷った時点で負けよ…『こおりのキバ』」

カツミ 「!? まずい、ドダイトス!!」

レントラー 「ラアァァァッ!!」

ガブッ! キィィィンッ!!

ドダイトス 「ドッダーーーーー!?」

カチコチコキィッ!!

レントラーは再びドダイトスの首筋に噛み付き、今度は冷気を浴びせる。
ドダイトスは氷タイプに弱い…一気に体温を奪われ、凍り付いてダウンした。

カツミ 「…負けた、レントラーがあんな技を使ってくるなんて」

シュボンッ!

カツミはがっくりと膝を落とし、ドダイトスをボールに戻した。
余程予想外だったのか、表情は暗かった。

ミカゲ 「…まぁまぁね、戻りなさい」

レントラー 「……」

シュボンッ!

私はレントラーをボールに戻し、ふぅ…と息を吐く。
まぁ、体のいい練習相手…と言う所かしら?

ダイ 「ふむ…カツミも勝てなかったか! やはり只者ではないようだな!」

カツミ 「ああ…僕たちとはレベルが全く違うようだ」

ミカゲ 「…そろそろ行くわ、少し街を見てみたいし」

ダイ 「そうか、まぁバトルがしたくなったらいつでも来てくれ! 俺たちは大歓迎だ!」

カツミ 「ああ! 次にやる時は勝ってみせるよ!」

ふたりはそう言って、ガッツポーズをとる。
…暑苦しいわね。

ミカゲ 「…気が向いたら、また相手をしてあげてもいいわ」
ミカゲ 「それじゃぁね♪」

私はそう言って、身を翻す。
今回は、コンテスト参加が、『一応』目的だ。
バトル自体は構わないのだけれど、必要以上に構うつもりはない。
とりあえず…一度戻りましょうか。



………。



『時刻11:50 アラモスタウン・商店街』


ミカゲ 「……」

男 「安いよ安いよ! さぁ、買ってくんな!!」

女 「美味しい紅茶はどうだい!? 今ならサービスタイムだよー!」

ザワザワ…ワイワイ…

私は商店街を歩く。
青空の下、私は道行く人間の注目を浴びているようだった。

少年 「ねぇ〜…あのお姉ちゃん、真っ黒なフリフリ着てるー」

母 「しっ! 指差しちゃいけません!」

ミカゲ 「………」

鬱陶しいわね…
しかしながら、私は今のドレス以外の服を持っていない。
私の着ているドレスは、ただ全身を覆えるから…と言うのが一番理由。
もうひとつの理由としては…そのままでもコンテストに出られるから…という横着でもあった。

ミカゲ (…とはいえ、それなりに痛んではきているのよね)

ずっと、この服を着て旅をしてきたせいか、所々傷が出始めている。
結構、気にしてきたのだけれど、さすがに1年以上着ていると、限界と言うことね。

ミカゲ (…次のグランドフェスティバルまでは、我慢するしかないわね)

私はそう思い、歩みを続ける。
すると…

? 「ねぇ! あなた!!」

ミカゲ 「……」

突然、後ろから声をかけられる。
やや高めの声で、女性だと言うのが予想できる。
私は、鬱陶しいと思いながらも、ゆっくり振り向いた。

ミカゲ 「……?」

女性 「ねぇ…あなた、もしかしてコーディネイター?」

ミカゲ 「…どうしてそう思うの?」

女性 「あははっ…何となく、って言っちゃうとそれまでだけど」
女性 「そんな黒いドレスで街中歩くのは、ちょっと普通じゃないかなぁ…って」
女性 「まぁ、それっぽく見えたからよ!」

女はそう言って、笑う。
女の姿は、やや変わった髪形をしていた。
髪を頭の上辺りで団子状に固めてあり、前髪も全部後ろに回している。
もみあげが横にピンッ、と突き出ておりブーメランの様な形で曲がっていた。
服装は、白い長袖のシャツに赤い袖なしの上着を着けていた。
黒い半ズボンに、太ももの辺りまである長く、赤い靴下。
やや長い黒のブーツを履いている、その女はどこか私のことをおかしな目で見ている様だった。

ミカゲ 「……」

スタスタスタ…

私は無視してさっさと先へ進む。
正直、鬱陶しい。
こんな所で、厄介ごとに巻き込まれるのは御免だわ。

女性 「ああ、ちょっと待ってよ! ねぇ、あなた名前は!? 私はマキ!」

女は勝手に名乗って、私に駆け寄ってくる。
マズイわね…何か興味を持たれたらしい。

マキ 「ねぇ…あなた、もしかして友達とかいない方?」

ミカゲ 「………」

私は一瞬歩みを止めるも、すぐに歩き始める。
鬱陶しいわね…余計なお世話よ。

スタスタスタッ!

私はやや早めに歩く。
すると、マキは。

マキ 「ああ! だから待ってってば! もしかして気にしてたの!?」

ミカゲ 「…鬱陶しいわね、関わらないで」

私はやや強めにそう言い、マキを遠ざける。
余計な関係は持たないのが私の信条だ。
これ以上、余計な関わりを持たれると色々面倒だからね。

マキ 「な、何よ…そんな邪険にしなくたって」

ミカゲ 「…何が目的なのよ?」

私はマキにそう聞く。
すると、マキは不思議そうな顔で。

マキ 「…目的って、別にただ友達になろうかと〜」

ミカゲ 「…余計なお世話よ、初めて会って、ちょっと話しただけで友達になれるとでも思っているの?」

私はそう言って、歩き始める。
マキはさすがに、これ以上は追ってくる気も無かったのか、立ち止まってしまったようだ。
やれやれ、ね…



………。



『時刻12:00 アラモスタウン・とある食堂』


店長 「ハイ、お待たせ! ナポリタンよ!!」

ミカゲ 「ありがとう、いただくわ…」

私はフォークを右手にイタリアンパスタを口にする。
中々いけるわね…こじんまりとした店にしては上場だわ。
私は、ナポリタンを一皿、クリームスープパスタを一皿食べて、店を出た。



………。



ミカゲ 「…ふぅ、中々いい物を食べられたわね」

ミカルゲ 「ミカ〜…」

ミカルゲは私のショルダーバッグから顔を出す。
『かなめいし』はいつもバッグの中に入れてあるから、ミカルゲは普段からボールに入ることは無い。
108kgもの重量だけれども、私にはさして重くも感じない。
さすがにバッグはHP団特製で高強度の皮を使われており、ちょっとやそっとでは破れもしないし燃えもしない。
耐水性も抜群で、多少の水では中に染みこむ事も無い…ミカルゲにとっては、それなりにいい環境のようね。

ミカゲ 「…しまったわね、今はポケモンフーズがないわ」

ミカルゲ 「ミカッ!? ミカ…」

ミカルゲはお腹が空いていたのか、悲しそうな声を出す。
今日はまだ一度も食事をさせていなかったわね…どうしようかしら。

女性 「あら、その子…お腹空いてるんじゃない?」

ミカゲ 「……」

正面から女性の声。
私の前には金髪の女性が笑顔で立っていた。
前髪は左右に分けており、肩の下辺りでモコモコっと、綿の様になっている。
服は赤い色で、太ももの辺りまで伸びるワンピースで、黒のアンダーウェアを着込んでいる。
首に青いマフラーを巻いており、腰には黒いベルトを巻いてバッグがぶら下がっていた。

ミカルゲ 「ミカ〜…」

女性 「うふふ…よく育てられるわね、あなたのポケモン」

ミカルゲは女性に褒められ、やや照れたような顔をする。
女性は、おしとやかそうな女性で、さっきのマキとは大分違いが感じられた。

女性 「あなた、良かったら着いていらっしゃい。木の実が生っている庭園があるの」

スタスタスタ…

女性はそう言って、歩いていく。
私は、少々考えつつも、まぁいいかと思って着いていくことにした。
抑えられる食費は抑えた方がいいものね。



………。



『時刻13:00 アラモスタウン・とある庭園』


ミカゲ (ここは…)

ミカルゲ 「ミカ〜…」

女性 「綺麗でしょ? ここはとある有名な人物がデザインした庭園なの」

ミカゲ 「……」

ルクシオ 「ルク?」
マリル 「マリリ!」
ウパー 「パー」
ヌオー 「ヌー…」

女性 「あら…あなたたち! ふふ、こちらはお客さんよ♪」
女性 「…ヒコザル!」

ヒコザル 「ヒッコー!」

ミカゲ 「……」

女性が、ヒコザルを呼ぶと、どこからかヒコザルが現われた。
ヒコザルは女性に近づくと笑顔ではしゃぐ。

ミカゲ 「…あなたのポケモン?」

女性 「ええ…そうよ、自己紹介が遅れたわね。私は『アリス』、あなたは?」

ミカゲ 「…ミカゲ、よ」

私たちは互いに名前を交わす。
アリス、ねぇ…さしずめ究極の少女と言ったところかしら?
と言う、冗談は置いておきつつ、私はモンスターボールを投げる。

ボンッ!×5

レントラー 「レンッ」
マニューラ 「…マニュ」
ドクロッグ 「ググッ」
チェリム 「………」
ムクホーク 「ホークッ!」

アリス 「わぁ! それがあなたのポケモン!? 凄いわぁ…皆とても強そう」

ミカゲ 「…ミカルゲ、木の実でも探してしばらくゆっくりしてなさい」

ドッズゥンッ!!

アリス 「!? い、今のミカルゲの『かなめいし』よね? あれって…100kg位あるんじゃ」

ミカゲ 「…気のせいよ、錯覚でも見たんでしょう?」

アリス 「そ、そうよね…いくらなんでも」

私はつい、いつもの癖でミカルゲを放り投げてしまった。
いつもは自分で降ろさせるのだけれど、面倒なのよね。

ミカルゲ 「…ミカ〜?」

ミカゲ 「…私はしばらくこの辺りを散歩してくるわ」
ミカゲ 「問題だけは起こすんじゃないわよ?」

私は念を押して言っておく。
普段から言い聞かせてはいるけれど、一癖も二癖もあるポケモンたちだから、安心はできない。
まぁ、多分大丈夫だとは思うんだけど…。

ミカゲ 「ドクロッグ、ムクホーク! あなたたちが責任を持って指揮するのよ?」

ドクロッグ 「…ググッ」
ムクホーク 「ホーク!」

アリス 「へぇ…何だか凄いわね、いかにも凄腕のポケモントレーナーって感じ」

ミカゲ 「…別に大したことじゃないわ、それより庭園を案内してくれる?」

アリス 「あ、いいわよ! それじゃあこっちから…」

私はアリスに案内され、庭園を見て回ることにした。



………。



ミカルゲ 「…えっと、それでどうするの?」

ドクロッグ 「…ググ、木の実を探すとするか」
ドクロッグ 「レン、鍋はあるな?」

レントラー 「おう」

ドクロさんは、レン君が背負っている鍋を取って自分が背負う。
ドクロさんはポフィンやポロック作りの名ポケで、木の実があれば作ってくれる。
普段は無口で近寄りがたい雰囲気だけど、気は優しくてとても気遣いのある、いいポケモンだ。

ムクホーク 「…あっちに木があるようだな」

マニューラ 「何でもいい、腹が減ったぜ…」

チェリム 「………」

ミカルゲ 「ムクちゃん…」

ムクホーク 「よし、行くぞミカ」

ムクちゃんは私が繋がれている『かなめいし』をカギ爪で掴んで持ち上げる。
そのままムクちゃんは飛行し、目的地へと飛んでいく。

マニューラ 「…おいレン、チェリを運んでやれ」

レン 「おう…チェリさん、乗んな」

チェリム 「………」

トスッ

チェリちゃんは、何も喋らずにレン君の背中に乗った。
チェリちゃんは普段無口で、日差しが弱いといつもこんな感じだ。
この庭園にも、チェリムの姿は何体か見つかる、皆『ポジフォルム』だ。
あの様に、通常のチェリムは、真昼の日差しがあればそれだけでもフォルムチェンジはできる。
だけど、うちのチェリちゃんだけは『にほんばれ』並の日差しを受けない限り、決してチェンジすることはない。
そうする理由が…あるから。

レントラー 「よし、行くぞ!」

マニューラ 「遅れんなよ?」

ドクロッグ 「ググ…先に行くぞ」

タタタタッ!

マニュ君とドクロさんは警戒な足取りでムクちゃんと私を追ってくる。
レン君もそれに続いて、チェリちゃんを乗せて走った。
そして、数分後に目当ての木に私たちはたどり着いた。



………。
……。
…。



ドクロッグ 「……」

グツグツグツ…!

鍋が煮えたぎる音。
ドクロさんは丁寧に木の実を混ぜ、ポフィンを作っていく。
今回の木の実は『オレンのみ』と『モモンのみ』だ。
甘酸っぱい匂いがしてきて、食欲をそそられる。

マニューラ 「……」

レントラー 「暇だな」

ムクホーク 「すぐに食事は出来あがる、今はじっとしていろ」

マニュ君は木に背中を預けて腕枕をしながらゆったりしている。
レン君はやや、暇なのが気になるのか、周りを見渡していた。
ムクちゃんは、そんなレン君を言い咎める。

チェリム 「………」

ミカルゲ 「……」

私とチェリちゃんは、じっ…とドクロさんの調理を観察する。
ドクロさんは人型に近い姿をしているから、あんな器用なことができる。
いつも、ドクロさんのおかげで、私たちは助けられていた。

ドクロッグ 「ググ…よし、ほらミカ」

ドクロさんはお皿に焼きあがったばかりのポフィンを私の側に置いてくれる。
私には手も足もないから、下に置かれているのを食べなければならない。

ミカルゲ 「ドクロさん、いつもありがとう」

ドクロ 「…グッ、今更何だ? 別に気にすることもないだろうに」

そう言って、ドクロさんは皆に皿を配っていく。
全員に渡ったころ、ドクロさんはようやく自分もポフィンに手を着けた。

モグモグ…

ドクロッグ 「…グッ、まぁまぁか」

マニューラ 「…腹の足しになりゃ、文句は言わねぇよ」

レントラー 「同じく」

ムクホーク 「ふ…素直に美味いと言え」

ミカルゲ 「うふふ…どっちも素直じゃないから」

マニューラ 「ちっ…言いたいこと言いやがって」

マニュ君はそう言いながらふてくされる。
こういう所が素直じゃない。
それでも、マニュ君がドクロさんの料理を認めているのは確かだ。

チェリム 「……」

ドクロッグ 「…どうしたチェリ? 食わないともたないぞ」

チェリちゃんは、1個食べただけで後は手をつけていなかった。
いつもなら、2〜3個は食べるのに。
すると、チェリちゃんの後ろの方から何か視線を感じた。

ルクシオ 「……」
マリル 「……」
ウパー 「………」

レントラー 「あんだ? 野生のポケモンかよ」

ムクホーク 「…どうやら、ドクロの料理に興味があるようだな」

見ると、まだどれも小さな子供のようだった。
ポフィンはあまり見たことがないのか、興味津々にチェリちゃんの皿を見ている。

マニューラ 「ちっ…追い払うか?」

ミカルゲ 「ダメよ…そんなことしたら可哀想だよ」

ムクホーク 「とはいえ、野生のポケモンは野生のポケモンだ」
ムクホーク 「私たちがわざわざ施す必要はないと思うが?」

ドクロッグ 「ググ…まぁ、そう言うな。別に木の実はまだまだある」
ドクロッグ 「ほら…欲しいならこれを食うといい」
ドクロッグ 「出来立ての、ポフィンだ」

ルクシオ 「!! …ありがとう、おじさん」

パクッ!

マリル 「ありがとっ」

ウパー 「だ〜」

タタタタッ!

子供たちは、ドクロさんからポフィンをもらうと、お礼を言って去って行った。
それを見て、ドクロさんは満足そうに再び鍋へと向かう。

マニューラ 「…おじさん、だとよ」

ドクロッグ 「ググッ、別に間違いじゃない…俺はもう25だからな」
ドクロッグ 「子供から見れば十分オッサンだ」

そう言って、ドクロさんはグググッと笑う。
そっか…ドクロさんはもう25歳になるのか。
ちなみに、この年齢は人間と同じ計算での年齢。
私たちは、元々種族によって寿命はまちまちなので、同じ数字でも意味合いは違う。

ムクホーク 「考えても見れば、私たちはそれなりの年月を生きているな
ムクホーク 「ドクロが一番長いとして、私が丁度20年…マニュは、18年か」

マニューラ 「ああ、一番下はレンだからな」

レントラー 「…俺はまだ8年だ、一番最後に加わったからな」

ムクホーク 「ふ…その割には未だにチェリ以外は呼び捨てか?」

ムクちゃんは笑ってそう言う。
別に咎めているわけじゃない。
それでも、レン君はやや複雑そうに。

レントラー 「別に…俺が誰をどう呼ぼうが、勝手だろ」

ミカルゲ 「ふふ…そうかもね、レン君はチェリちゃんには優しいから」

チェリム 「………」

マニューラ 「けっ…仲のいいこって」

マニュ君はつまらなさそうに横になる。
もう食べ終わったようで、ゆっくり昼寝でもする気なのだろう。

ドクロッグ 「…ミカは、ミカゲと同じだから今年で17年か」
ドクロッグ 「ん? 来年だったか…?」

ミカルゲ 「私たちの誕生日は2月28日だよ…だからまだ16年」

ドクロッグ 「おっと…そう言えばそうか、すまなかったな」

ミカルゲ 「うん…いいよ、別に」

ドクロさんは申し訳なさそうに謝る。
だけど、別に私は気にしてない。
今は…皆がいるから、寂しくはないもの…。

ミカルゲ (そっか…次はもう17年目か)

そう、私たちは次で17歳になる。
私とミカゲは、同じ日に産まれ、同じ日にパートナーになった。
私は産まれた頃からミカゲの側にいて、ミカゲも私の側にいた。
いつからか、バトルをするようになって、私はミカゲのために勝ち続けた。
私たちが、4歳になった頃、まだニューラだったマニュ君と出会う。
当時のマニュ君は、とても気性が荒く、周りに迷惑ばかりをかけていた。
マニュ君は、元々トレーナーの持っていたタマゴから孵化したポケモンで、産まれた頃から戦うための技を覚えていた。
トレーナーとはウマが合わなく、自力で逃げ出して私たちと出会った。





………………………。





ミカゲ 「あなたが、この辺りを騒がせているニューラ?」

ニューラ 「…ニュラ!?」

ミカルゲ 「……」

ミカゲ 「うふふ…随分強いらしいけど、本当かしら?」

ニューラ 「ニュラ…ニューーラ!!」

ミカゲ 「ミカルゲ『あくのはどう』!」

ミカルゲ 「ミカッ!」



………。



ニューラ 「ニュ…ニュラ」

ミカゲ 「ふふふ…やっぱりこの程度なのね」
ミカゲ 「でも、いいわよ…あなたのことは気に入ったわ」
ミカゲ 「私のポケモンになりなさい…悪いようには、しないから」





………………………。





それが、マニュ君との出会いだった。
私は、マニュ君を力で倒し、マニュ君はミカゲにゲットされたのだ。
そして、それからほとんどすぐの頃、私たちはチェリちゃんと出会う。
チェリちゃんは、実の所私たちの中では2番目にレベルが高い。
この当時でも、チェリちゃんは相性の悪いマニュ君(当時ニューラ)を圧倒したほどだった。





………………………。





ニューラ 「…ニュ、ニュ〜」

チェリム 「チェリチェリ〜♪」

ミカゲ 「…! 戻りなさいニューラ! 行くのよミカルゲ!!」

ミカルゲ 「ミカッ!」

ミカゲ 「ミカルゲ『ぎんいろのかぜ』!」

ミカルゲ 「ミカ〜!」

ビュウゥゥゥゥッ!!

チェリム 「チェ…チェリ〜!! リーー!!」

ブォバァァァァッ!!

ミカルゲ 「ミ、ミカ〜!!」

ミカゲ 「『はっぱカッター』を覚えているの!? やっぱり…あなたは私がゲットするわ!!」





………………………。





そして、互いに力尽きるまで私とチェリちゃんは戦った。
結局、互いにダウンすることはなく、チェリちゃんは私の『プレッシャー』に全てのPP使い切り、ミカゲにゲットされたのだ。
後から聞いたことだけど、チェリちゃんもマニュ君と同じ様に、トレーナーのタマゴから産まれたポケモンだった。
チェリちゃんは、あまりにも強すぎたがゆえにトレーナーから手放され、そのまま野生のポケモンとして放浪していた。
彼女はフォルムチェンジによって、本当の顔を出す。
彼女が、普段からネガフォルムでい続けるのは、バトルをできる限り避けるため。
ポジフォルムに一度変身すると、彼女はキラーマシンとも思えるほどの残虐性と冷酷性を表に出す。
ゆえに、通常はバトルに出ることなくコンテストで活躍することが多い。
コンテストバトルでなら、さほどやり過ぎる…と言うこともないだろうから。
ちなみに、チェリちゃんはマニュ君と同い年で、18歳だ。

ミカルゲ (次に出会ったのは…ムクちゃん)

私たちが5歳になった時、私たちは当時『ムクバード』だったムクちゃんに出会う。
ムクちゃんは、その性格ゆえか、トレーナーの命令をあまり聞かず、いつも突進して怪我ばかりをしていた。
いつしか、彼女のトレーナーは彼女を捨ててどこかへ行ってしまった…





………………………。





ムクバード 「バーーーッドッ!!」
ムクバード 「バーーーーーーーーーーーーッドッ!!!」

ミカゲ 「…随分、悲しそうな声で鳴くのね」

ムクバード 「バドッ!?」

ミカゲ 「警戒することはないわ…私はあなたをゲットしに来ただけ」
ミカゲ 「だから、あなたは戦いなさい…私と私のポケモンに!」





………………………。





そして、ムクちゃんは私と正面からぶつかり合い、敗北した。
ムクちゃんはどれだけ傷ついても戦うことを止めず、全てが尽きるまで戦った。
ミカゲも、ギリギリまでゲットはせず、ムクちゃんが全てを出し切った時、初めてモンスターボールを投げた。

ミカルゲ (それから、1年…私たちはバトルタワーで戦いを繰り返し、マニュ君やムクちゃんは進化をした)

そして、私たちが6歳の頃、私たちは『シロガネやま』で、ジョウト地方のポケモンチャンピオンを倒した。
相手は、それほど大した実力ではなかった…私だけでも、勝つことはできた。
それから、私たちはシンオウ地方に戻り…ドクロさんと出会った。





………………………。





ドクロッグ 「…ググッ」

ミカルゲ 「…どうしたの、あなた?」

ドクロッグ 「…ググッ、こいつは可愛いお嬢ちゃんだ」
ドクロッグ 「何…そろそろお迎えが来る頃だと思ってたのさ」

ミカルゲ 「…お迎え? あなたのトレーナー?」

ドクロッグ 「グッグッグ! 俺にトレーナーはいない…大湿原で産まれたからな」
ドクロッグ 「…誰も、俺をゲットしようとはしなかった」
ドクロッグ 「誰も…俺を捕まえられないと、知っているからな」

ミカルゲ 「…あなた、強いの?」

ドクロッグ 「ググ? そう見えるか? だったら…そうなのかもな」

ミカルゲ 「………」





………………………。





ドクロさんは、私とずっと話し続けた。
まるで、初めて見つけた友達と話すかのように、ドクロさんは嬉しそうに、そして楽しそうに私と会話をした。
ドクロさんは…普通に仕事をしていただけだった。
『ノモセのだいしつげん』で、トレーナーと出会い、ゲットされる。
その仕事をしていただけ…でも、ドクロさんは誰にも捕まらなかった。
初めは…見つからない場所で隠れ続けた。
何年か経って…誰も見つけてくれないから、人前に出てみた。
そしたら、ボールを投げてきた…でも、捕まらなかった。
ドクロさんは、人にわざと見つかって、逃げることを繰り返した。
何年も…何年も続ける内…いつしか、誰も追わなくなった。
もう、誰もドクロさんを捕まえることはできないと悟ったからだ。
スタッフは、そんなドクロさんに辛く当たった。
何故もっと当たってやらない? 何故そこまで抵抗する?
ドクロさんは、何故怒られるのかかがわからなかった。
ドクロさんは、ただ仕事をしていただけだ。
だけど、スタッフにはその言葉は届くわけもなかった…
ドクロさんは、スタッフの手を離れ、草むらに放された。
元々、ドクロさんは大湿原でスタッフによりタマゴを孵された。
他の場所は何もわからない…いつも大湿原で一番いい環境で育ったから。
食べ物も、スタッフがいつも持ってきてくれた…でもそれももうない。
ドクロさんは、自分が『かんそうはだ』と言うことも知らず、さんさんと降り注ぐ日光の下で、永遠の眠りに着こうとしていたのだ。
私は、ドクロさんと話し、ドクロさんはミカゲにゲットされた。
もちろん、タダでゲットされたわけじゃない、戦って…負けてゲットされたのだ。





………………………。





レントラー 「…ミカ以外は皆、ちゃんとバトルでゲットされたんだよな」
レントラー 「俺だけは、タマゴから孵された」

ミカルゲ 「…そうだね。でも、レン君はミカゲが孵したポケモンの中で数少ない候補生だから」

そう、レン君はあくまでミカゲが選んだ候補生。
他の仲間とは違い、ミカゲが望んでゲットしたポケモンではない。
レン君は、あくまで『でんき』タイプの『物理攻撃』を主体としたポケモン…と言うコンセプトの元に選ばれただけ。
それなら、エレキブルでも使えばいい…と言われたそうだけれど、ミカゲはそれをかたくなに拒んだのだ。
理由はわかる…けど、ミカゲにとっては苦難の道でもあった。
ミカゲはそれまでにも、いくつものタマゴを孵してきた。
その内、ミカゲの目に留まったポケモンはほんの少し。
1000個のタマゴがあれば、その内の1個でも当たりがあればいい…という程度。
レン君も…そんな数え切れないほどのタマゴの中から産まれた…優良種。
ミカゲが自分でタマゴを孵し、初めて自分のポケモンのメンバーとして選んだポケモン。
レン君は、そのことをあまりよく思っていないのかもしれないけれど…ミカゲにとってレン君はとっても思い出深いポケモンのはず。
あの頃は、ミカゲは8歳か…





………………………。





ミカゲ 「…これもダメ、まだ私の理想に届かない」

カミヤ 「ミカゲ…まだ続けるのかい?」

ミカゲ 「親のサンプルはまだいるでしょ? だったら続けて」



………。



ミカゲ 「ダメ、性格が気に入らない」

カミヤ 「それ位…大目に見たら?」

ミカゲ 「嫌よ…『おとなしい』性格なんて、バトル向きじゃないもの」
ミカゲ 「私が望むのは『ゆうかん』な子…今はそれが欲しい」

カミヤ 「…はぁ、いつまでかかるのやら」

ミカルゲ 「ミカ…」





………………………。





ミカルゲ (どの位孵化しただろう? 少なくとも1万じゃきかなかったと思う)

少なくとも、ミカゲがコリンクのタマゴを孵化させ続けて、5年は経っていた。
何度も何度も親は代わり、少しづつミカゲの理想に近づけていく。
ミカゲは一度たりとも理想に届かなかったものを許しはしなかった。
選ばれなかったポケモンは野に返されたり、どこかへ譲られたり。
ミカゲが3歳から8歳になるまで、それは続けられた。
そして、レン君が産まれた。

レントラー 「…優良種、ねぇ」
レントラー 「正直、実感はないね…俺はマニュやムクほどバトルに出てねぇし」
レントラー 「多分、出てもロクな結果は出ない…いつもそうだしな」

ミカルゲ 「そんなこと…」

レン君は、マイナス思考なことを言って、うつ伏せに寝転ぶ。
確かにレン君はよくミカゲにダメ出しされるけど…

マニューラ 「ガキが、イッパシのこと言ってんじゃねぇ」
マニューラ 「俺らはお前の倍以上は生きてるし、バトルもこなしてる」
マニューラ 「テメェの尺度で考えんな、現実を見ろ」
マニューラ 「お前には、お前の役目ってのがあるんだ…経験の無さをボヤいてんじゃねぇ」

レントラー 「……」

マニュ君は鬱陶しそうながらも、そう言ってレン君を説教する。
あれはあれでレン君のことを考えている…だからレン君も何も言い返さなかった。

ムクホーク 「…マニュの言うことも尤もだ、お前はまだ私たちに比べれば若い」
ムクホーク 「急ぐことは無いさ…もっと長い目でミカゲもきっとお前を見ているよ」
ムクホーク 「とはいえ、他のトレーナーではお前よりも若いやつはゴマンといる。そいつらに遅れを取るようでは、その先の保障は無いと思え」

ムクちゃんは、最初に優しげに言うも、最後はきつく締める。
あれは、あれでレン君のことを考えてのことだ。

レントラー 「…へっ、格下の相手に負けるほど落ちぶれちゃいねぇよ」

ドクロッグ 「ググッ…そんな口がきけるなら大丈夫だろう。よし、そろそろ片付けるぞ」

そう言って、ドクロさんはお皿を集めて袋に入れる。
お皿は後で洗ってまた使う、袋は使い捨て。
鍋も同様に大き目の袋に入れてドクロさんが背負う。
私たちは、水タイプの技が使えないのでどこかで水場を見つけなければならない。

ドクロッグ 「…ググ、水道はありそうにないな」

マニューラ 「この辺の水道で、洗ったらどうだ?」

そう言って、マニュ君は足元の溝を流れている水道を指差す。

ミカルゲ 「それはマズイと思うけど…この辺の水道は直接海とか川に繋がっているとは限らないし」

ドクロッグ 「何…ポケモンセンターに戻ってからでも洗うことはできる」
ドクロッグ 「今すぐ洗わなくても、まぁ大丈夫だ」

ムクホーク 「ふむ、ならそろそろ戻るか。ミカゲも散歩を終えて帰ってくる頃だろう」

レントラー 「もうちょっと、ゆっくりした方が良くねぇか? 食後に動くのは体によくねぇ」

レン君は寝そべったまま、そう言う。
皆も、別に反対するわけじゃないのか、反論はしなかった。

ムクホーク 「なら、休む者はここで待機だ、私はミカゲの所へ戻る」
ムクホーク 「レン以外に、ここで休みたいと言う者は?」

マニューラ 「俺ぁ、休む…戻るのも行くのも一緒だ、どの道合流はするんだしな」

ドクロッグ 「ググ…俺は戻る、荷物もあるしな」

ミカルゲ 「私も戻るわ…チェリちゃんは?」

チェリム 「………」コクリ

ムクホーク 「…よし、なら残るのはマニュとレンだけだ」
ムクホーク 「行くぞ、ミカ」

ミカルゲ 「うん」

ムクちゃんは、チェリちゃんの僅かなジェスチャーだけで戻ると判断する。
長い付き合いだと、こう言うコミュニケーションも取れるのが不思議だ。
チェリちゃんは僅かに頷いたので、それは『戻る』と言うサインだったのだ。

ドクロッグ 「ググ…遅れるなよチェリ?」

チェリム 「………」

タタタッ!

ドクロさんとチェリちゃんは走って追いかけてくる。
ムクちゃんは低速で羽ばたき、ゆったりと空を泳いだ。



………。



マニューラ 「……」

レントラー 「……」

俺たちは、とりあえず木の影で昼寝をする。
うるさい奴らいなくなったことだし、しばらくはゆっくりできるだろう。

ガササッ!!

マニューラ 「と、その時…ってか」

レントラー 「メンドクセェ…」

俺たちは何やら不穏な空気を察し、起き上がる。
少なくとも、野生のポケモンのようだが、明らかな敵意を向けてきやがる…

マニューラ 「ちっ、8から10か」

レントラー 「何で、囲まれてんだよ…」

それは俺が聞きたい…少なくともこれは統率の取れた動きだ。
野生のグループか…? 大したことはないと踏むが。

ガササササッ!!

リングマ 「テメェらか!? ヨソ者ってのは?」

マニューラ 「あん? 誰のことやら…」

俺は耳の穴を右手のツメでほじくってトボける。
その様子が気に食わなかったのか、リングマ(多分大将)は怒りを露にする。

リングマ 「トボけてんじゃねぇ! どう見たって余所者だろうが! 今まで見たことねぇぞ!!」

レントラー 「うっせぇなぁ…何なんだよ、テメェらは?」

レンが啖呵を切る。
見ると、俺たちの周りにはギャロップやら、サイドンやら…何か鬱陶しい奴らが囲んでいた。
ざっと、10体か…数えるのも面倒だな。

リングマ 「俺たちは、この辺りを仕切ってるグループだ!!」
リングマ 「テメェラ、こともあろうに、ここで木の実を取りやがったな!? ここは俺たちの餌場だぞ!?」

マニューラ 「知るかバカ…だったら名前でも書いてろ」

俺は適当にあしらう。
こう言うのは逆上させていなすに限る。

リングマ 「この野郎…! 開き直る気か!?」
リングマ 「野郎共! 痛めつけてやれ!!」

と、単純明快な行動に出てくれる。
まぁ、食後の運動だな。

レントラー 「…おい、まとめて来るぞ?」

マニューラ 「面倒だ、Cパターンで行くぞ!」

レントラー 「了解!」

敵は円状に俺たちを囲み、ほぼ同速で全員が突っ込んでくる。
単なる馬鹿なのか、訓練されてるのかは知らないが、格好の的だ。

マニューラ 「フッ!!」

俺はジャンプでその場から垂直に飛び上がり、タイミング見計らう。
レンはその場で待機、これがCパターンの出だしだ。

マニューラ 「レン! 3.5のタイミングだ!!」

レントラー 「おう!!」

ここから俺は空中で逆さまになり、顔を地面側に向ける。
そして、俺はその場で回転を始め、『ふぶき』を放った。

ビュゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオオオオォォォォッ!!!

サイドン 「ギャー!!」

ギャロップ 「ひぇ〜!!」

リングマ 「なっ、全員まとめて!?」

俺の『ふぶき』は竜巻状になり、中心のレンを避けて円状に巻き起こる。
敵は見事に全員が巻き込まれ、動きを止める。
そして、3秒半後。

レントラー 「おおおっ!!」

バチバチバチバチバチィッ!!!

敵全員 「ギャーーーッスッ!!」

レントラーの『ほうでん』で『ふぶき』の竜巻を襲う。
『ふぶき』の風に乗り、電撃が激しく巻き起こる。
電気の聞かないサイドンは『ふぶき』で十分、逆に氷の効かないギャロップには『ほうでん』だ。
完璧なタイミングでマッチしたこの合体技に相手は成す術なくダウンした。

ズズンッ!!×10

マニューラ 「ヘッ」

タンッ!!

俺は逆さまのままレンの頭に右手を置き、逆立ち状態で着地する。
そして俺は呆気に取られて見ているリングマに逆さまのまま礼をした。

レントラー 「…別にアピールする必要はないだろ、大体俺の頭にいちいち着地すんな」

マニューラ 「…何、癖だ」
マニューラ 「お前こそ、ちゃっかり定位置にいるじゃねぇか…かわしゃいいのに、よ」

俺はそう言って笑いながら今度は地面に足から着地する。
レンは複雑そうな表情だった。

レントラー 「くっそ…染み付いてるぜ、絶対」
レントラー 「ダブルのアピールなんて、滅多にやらねぇのに…」

マニューラ 「お前は元々、一次審査向きじゃないからな、技のバリエーションが少ないから」
マニューラ 「まっ、このCパターンは元々一次二次、どちらでも有効なアピールとしてミカゲが考えたからな」

リングマ 「テ、テメェら一体何モンだ!?」

マニューラ 「ポケモン」
レントラー 「ポケモン」



………。



心なしか、寒い風が吹く。
別にギャグでも何でもないんだが…同時なのは逆に寒いな。

マニューラ 「やれやれ…まぁ、別にどうでもいい」
マニューラ 「続けるか、ぶちのめされるかは、好きな方を選べ」

レントラー (無理やり、うやむやにしたな…まぁその方が俺もいいが)

リングマ 「ええい黙れ! まだこちらには切り札がある!!」

マニューラ 「ほう…大将、腕に自身ありか? おもしれぇ…」

俺は笑って、構えるがリングマの大将は突然後ろを向き。

リングマ 「先生ーー!! 出番です!!」

ドスンッ!! ドスンッ!!

マニューラ 「…あんだ?」

レントラー 「で、でかそうなのが…」

地響きに似た足音がリングマの向こう側から聞こえる。
さすがの重量感に俺たちは少々驚きを隠せなかった。
まさか、巨大系のポケモンでも用意してやがったのか?

ケッキング 「……」

ズシィィンッ!!

マニューラ 「…オイ」

レントラー 「デカッ! ちょっと待て!!」

俺たちの前に聳え立つのは、何故か3〜4メートルはあろうかと言う『ケッキング』だった。
普通、ケッキングは2メートル位のはずだが…?
見た目は何故か、違和感を感じる…何か、横に太い様な…気のせいか?

リングマ 「せ、先生お願いします!!」

ケッキング 「ふぁ〜、全くカスどもが…たったふたり相手にビクつきおって」

マニューラ 「何だ、ブタだったのか…ブタは屠殺場へ行け」

ケッキング 「ふっふっふ…久しぶりにイキのいい獲物だな、やり甲斐がある」

そう言って、ケッキングは腕をブンブンと振り回す。
威力はありそうだ…威力は。

レントラー 「ちっ、面倒そうだな…!?」


前に出ようとするレンを俺は腕を出して制する。

マニューラ 「さがってろ」

俺が言うと、レンは無言で数歩後ろにさがる。
すると、ケッキングは笑って、足元近くの俺に拳を振るう。

ドガァッ!!

マニューラ 「……」

俺は軽く横にステップし、拳をかわす。
さしずめ『メガトンパンチ』って所か、だがこいつの特性は…

ケッキング 「ふぅ〜」

ケッキングは攻撃を終えると、力を抜いて休む。
そう、これがこいつの弱点『なまけ』だ。
こいつは攻撃する度に、休むから連続で攻撃することができない。
つまり、攻撃をかわせさえすれば、ただのザコだ。

マニューラ 「そらよ!!」

俺は奴が怠けている間に『かわらわり』を叩き込む。
だが、その瞬間俺は驚愕する。

ズボボボボッ!!

マニューラ 「こ、これは!?」

リングマ 「馬鹿め! 先生はただ巨大なだけではない! その体はブヨブヨのゴムのように相手の攻撃を柔らかく包み込んでしまうのだ!!」
リングマ 「よって、格闘技は無意味! つまり弱点はなぁい!!」

そう言って、リングマの大将は偉そうに吼える。
ちっ、どんだけフザケた食生活なんだよ…道理で横に太っていると思った!
全部脂肪かよ…

ケッキング 「ふっふっふ…俺は今までこの体でいくつもの格闘タイプを倒してきたのだ〜」

ブンッ! ドガァッ!!

マニューラ 「ぐっ!?」

ドガシャッ!!

レントラー 「マニュ!?」

マニューラ 「ぐっ…」

俺はケッキングの『アームハンマー』で大ダメージを受ける。
咄嗟に『みがわり』を使ったおかげで耐え切れた…危ねぇ。

マニューラ (ちっ、『みがわり』を盾にしたものの…近すぎて少しもらっちまった)
マニューラ 「しゃあねぇな…オイ、お前どんな料理が好きだ?」

ケッキング 「は?」

マニューラ 「刺身がいいか、それともすり身が好きか? 好きな調理法で料理してやるぜ?」

俺はそう言って、ケッキングを『ちょうはつ』する。
一応、これも技だ、ちゃんと相手に攻撃をさせるようにしてる。

ケッキング 「ふっふっふ! 口だけは達者のようだな! なめとったらいかんぜよ!?」

何故か、言葉使いを変えてケッキングは正面から突っ込んでくる。
しかし、それが馬鹿だ。

ピキィィンッ!!

ケッキング 「むぅ!?」

俺は『まもる』を使い、奴の攻撃を防ぐ。
かわすより確実だ、こいつはどうせ連続で攻撃できねぇ。

マニューラ 「やっぱり、刺身になるのはテメェだ!!」

ザシュゥッ!!

ケッキング 「アバ…?」

俺はケッキングの顔面を斜めに切り裂く。
一応『つじぎり』だ、クリティカルヒットって所か…ケッキングはこればかりは柔らかさで吸収できず、顔面から大量に出血して後ろに倒れた。
ついでに…

リングマ 「どぇぇぇぇぇぇっ!?」

ズウゥゥゥゥゥゥゥゥ…ゥンッ!!!

リングマの大将も下敷きになってお陀仏。
まぁ、こんなもんだろ。

マニューラ 「ちっ…一発もらっちまったじゃねぇか」

レントラー 「案外、見掛け倒しだったな…」

俺は少しクラクラする頭を抱え、この場を離れる。
レンは何もできなかったのがヒマだったのか、少しダレていた。

マニューラ 「まぁ、二度と会うことも無いだろうが、レン最後に何か言ってやれ」

レントラー 「奴らのために…祈る言葉は無い」

ザッザッザッ!

俺たちは…それだけを言い残して去って行った。
全く…何のために休んでたのか。



………。
……。
…。



ミカゲ 「…?」

アリス 「うん? どうかしたの…?」

ミカゲ 「いや、別に…」

何だか、今妙な胸騒ぎがしたのだけれど…まさか、問題起こしてるんじゃないでしょうね?
直感的に、何かを感じた。
嫌な予感がするわね…

バサッバサッバサッ!!

ムクホーク 「ホーック!」

アリス 「あら…あれはあなたのムクホークじゃない?」

ミカゲ 「…のようね」

ムクホークはミカルゲを持ちながら地上へと降りてくる。
それに遅れ、後ろからドクロッグとチェリムが走ってきた。

ミカゲ 「…マニューラとレントラーはどうしたの?」

ドクロッグ 「ググ…グロッ」

ドクロッグは後ろを一度指差し、何かジェスチャーをする。
要するに向こうで休んでいる…とでも言いたいのでしょうね。

ミカゲ 「…まぁいいわ、とりあえずボールに戻りなさい」

シュボンッ! ボボンッ!!

私はミカルゲ以外をボールに戻す。
ボールは腰のベルトに装着し、ミカルゲだけは『かなめいし』をバッグに仕舞う。
これで、後はマニューラとレントラーだけだ。

アリス 「…重くないの?」

ミカゲ 「…何が?」

私は言ってて気づく。
ミカルゲの重量は仮にも108kg…アリスはどう考えても疑問に思っている。
ついいつもの癖ね…さて、どういい逃れましょうか。

ミカゲ 「…私のミカルゲは軽いのよ」

我ながら苦しい。
しかし、アリスは納得せざるを得ないからか、苦笑して納得した。

アリス 「ま、まぁ…ポケモンも色々ある物ね」

ヒコザル 「ヒッコ! ヒッコ!!」

苦笑するアリスの後ろから、突然ヒコザルがやってきた。
確か、この辺を動き回っていたようだけど…。

アリス 「? どうしたのヒコザル?」

ヒコザル 「ヒココッ!!」

ヒコザルは何やらドクロッグたちがやってきた方向を指差して叫ぶ。
嫌な予感がするわね。

ミカゲ 「(ミカルゲ…あなたたち、余計なことはしてないでしょうね?)」

ミカルゲ 「ミカ〜…? ミカカ〜」

ミカルゲは何事も無かった…と言いたげに首(?)を振る。
とりあえず、嘘を吐いているようには見えない。
と、なると…あいつらね。

ミカゲ 「やれやれ、ね…」

ミカルゲ 「…ミカ〜」

ミカルゲは、何やら脱力した声をあげる。
予想していたのか、してなかったのか…

アリス 「何かあったみたいね…ミカゲさん」

ミカゲ 「構わないわ…どの道、行くつもりよ」

私はそう言って、走るアリスに着いて行く。
目的地に近づくに連れ、何だか気温が低くなっていくように感じる。
元々、季節が季節だけに、気温は低いのだけれど、ね。



………。



アリス 「な、何これ!?」

ヒコザル 「ヒコ〜…」

ミカゲ 「…最悪」

ミカルゲ 「ミ、ミカ…」

見ると、死屍累々…って死んではいないのだけれど。
十数体のポケモンが倒れていた。
しかも、所々地面や草が凍っていたり、焦げていたり…間違いないわね。

ミカゲ (BパートのCパターン…間違いないわね)

この特徴的なサークル…見事に氷と電気による混合技の跡。
肝心の、当事者がいないのは気になるけれど…。

アリス 「酷い…一体、誰がこんなことを」

ミカゲ (…黙っていた方が良さそうね)

悪いけれど、面倒ごとはゴメンよ。
黙っていれば、多分わからないでしょ。

ミカルゲ 「…ミカ〜」

ミカルゲがため息に近い鳴き声をあげる。
気に入らないわね…名乗り出ろとでも言いたそうじゃない。
だけど、言うつもりはない…面倒ごとはゴメンだからよ。

アリス 「全員気絶してるだけだけど…」

? 「ダークライの仕業だ!」

ミカゲ 「…はぁ?」

アリス 「あなたは…!」

突然、声がする。
すると、木々の間からひとりの人間が現れた。
見た目は…まぁ男爵と言えばわかりよいのか…赤い髪に角が一本。
まぁ、フィーリングで感じてくれると幸いね。
とりあえず、偉そうな風貌で、ゆっくりと歩いてきた。

男爵 「こんなことをするのは、ダークライの奴に決まってる!」

アリス 「アルベルト男爵! それは言いがかりではありませんか?」

アリスは、そう言って男爵を否定する。
何を根拠に言ってるのかは知らないけれど、どうにも解せない。

ミカゲ (ダークライですって…そんな幻とも言われるポケモンがこんな所にいるというの?)

ダークライ…『あんこくポケモン』と呼ばれる、幻のポケモン。
目撃例も少なく、一般的には名前すら知られていないかもしれない。
そんなポケモンが…ねぇ。

アルベルト 「ふんっ! 何故あいつを庇うかは知らんが、他にこんなことをする奴がいるのか?」

ミカゲ 「…ダークライが、氷と電撃を同時に使えるのかしらね?」

と、つい私は言ってしまう。
言わなくても問題は無かったはずなのに、つい言ってしまったのだ。
わざわざ面倒ごとを弁護するなんて…私らしくないわね。

アルベルト 「何だね君は? そんなボロボロのドレスを着て…ダンスパーティならもっと綺麗な物を着込みたまえ!」

ミカゲ 「鬱陶しいわね…物の道理もわからないお坊ちゃまにお似合いのセリフだわ」

私がそう言って、挑発してあげると、男爵はプルプルと震えながら。

アルベルト 「君は少々、口の聞き方がなっていないようだな!」

アリス 「止めて男爵! 今のはあなたが悪いわ!」

歩み寄ってくる男爵をアリスが体ごと割って止める。
私は何も言わなかった。

アルベルト 「ふっ…アリス君、君は私の未来の妻になる女性だ」
アルベルト 「だから私の考えていることはわかるはず、この娘には少しお灸が必要なんだ!!」
アルベルト 「出ろ『ベロベルト』!!」

ボンッ!

ベロベルト 「ベロ〜ン」

男爵は意味不明な言い回しをして、ポケモンを繰り出してくる。
わざわざ、ポケモンを出してくるなんて…何のつもりなのか。

アリス 「何をする気なの男爵!?」

アルベルト 「知れたこと! 彼女はポケモントレーナーだろう!? 腰のボールがその証拠だ!」
アルベルト 「ならば、ポケモンバトルで打ち負かしてこそ、彼女は自分の愚かさに気づくというもの!!」
アルベルト 「さぁ、君のポケモンを出したまえ! この私が打ち負かしてあげよう!!」

ベロベルト 「ベロンベロ〜ン」

男爵は笑いながら、そう言ってバトルを要求する。
鬱陶しいわね…やっぱり黙っていれば良かったわ。

ミカゲ 「手っ取り早く、倒した方が楽ね『ドクロッグ』…」

マニューラ 「マニュッ!!」

レントラー 「レンッ!!」

ズザザザァッ!!

アルベルト 「ほう…それが君のポケモンかね? 結構! 何なら2体同時でも構わんよ!!」

ミカゲ 「…あなたたち、面倒は起こさないで、と言ったわよね?」

マニューラ 「…マ、マニュ」
レントラー 「……」

マニューラとレントラーは私の前に立ち、ベロベルトと対峙する。
しかしながら、私は事の状況を考えた上で、マニューラたちにそう言った。
すると、予想通りマニューラとレントラーは言葉を詰まらせる。
はぁ…鬱陶しいわ。

ミカゲ 「…まぁ、いいわ。終わったことを考えても仕方ないもの」
ミカゲ 「その代わり、あれをどうにかしてもらうわ…」

私はやる気満々のベロベルトを指差して言う。
するとマニューラとレントラーは互いを見て。

マニューラ 「…マニュ」

レントラー 「……レン」

何やら確認し合い、マニューラがさがってレントラーが前に出る。
どうやら、レントラーがやるとのことらしい。
私はさがったマニューラをボールに戻そうとする。

ミカゲ (ん? マニューラ額に傷…ダメージを負ったの?)

シュボンッ!

私はマニューラの傷を見て、少々驚く。
少なくとも、野生のポケモンごときに傷を負わせられるような育て方はしてないのだけれど。
特に、マニューラが傷を追うのは珍しい…気になるわね。

アルベルト 「ふっ、さぁどこからでも来い!」

ミカゲ 「…鬱陶しいわ、レントラー『スパーク』」

レントラー 「レーーンッ!!」

ダダダダダッ!!

アリス 「は、速い!」

レントラーは一気にベロベルトへと近づき、特攻する。
元々素早さの低いベロベルトは落ち着いた様子でそれを見ていた。
かわすつもりは…無さそうね。

アルベルト 「迎え撃て! 『ジャイロボール』!!」

ミカゲ 「…はぁ?」

思わず、口にしてしまった。
『ジャイロボール』は鋼タイプの技、電気タイプには今ひとつ…
しかも、ベロベルトがいくら遅いと言っても…ダメージはそれほどには。

ベロベルト 「ベロローー!!」

ギュルルルルルッ!!

ベロベルトは高速で横回転しながら、レントラーの『スパーク』を止めに行く。
タイプの性質上、弾けるかもしれないけれど、ダメージは確実に入るはず。

レントラー 「レーーンッ!!」

ベロベルト 「ベロローー!!」

ドッガァァンッ!! バチバチバチィッ!!

レントラー 「…!」

レントラーはベロベルトにぶつかって、多少弾かれる。
横回転に対して正面から向かったから、こうなるのは予想できた。
しかし、まともに『スパーク』とぶつかったベロベルトは…?

ギュルルルルルッ!

ミカゲ (まだ回ってる…ダメージは思ったよりなかったのかしら)

予想外にベロベルトはまだ回っていた。
普通なら回転は止まると思ったのだけれど、勢いはさほど弱くならずにまだ回っている。

アルベルト 「はははははっ!! 見たかベロベルトの力を!! そのままもう一度『ジャイロボール』だ!!」

レントラー 「!!」

ミカゲ 「レントラー『ほうでん』!!」

バチバチバリバリィッ!!

レントラーはベロベルトが向かってくる前に電撃を放つ。
ベロベルトは回転しながらそれを食らい、さすがに回転が弱まった。

ギュルル…

ベロベルト 「ベロロ〜…」

ズデンッ!!

アルベルト 「は?」

ミカゲ 「………」

アリス 「あ…」

何と、ベロベルトは反撃せずに倒れた。
さっきの『ほうでん』が予想以上に効いたのだろうか?
とはいえ、『スパーク』を耐えられたのなら、まだまだ体力はあると思ったのだけれど…
と、ここまで思ってから気づく。
なるほど…つまり、最初の『スパーク』でダウンしてた、と。

ミカゲ 「…見掛け倒しね」

シュボンッ!

私はレントラーをボールに戻して呟く。
すると、男爵はベロベルトの状態に気づき、駆け寄った。

アルベルト 「ベ、ベロベルトーー!?」

ベロベルト 「ベロ〜」

ベロベルトは完全に目を回していた。
そんな情けない姿を見てか、男爵は。

アルベルト 「この馬鹿者! せめてまともに攻撃してから倒れんか!!」

アリス 「あ、あはは…はぁ」

アリスはこれまでにない位のため息を放つ。
私は、とんだ道草を食ったと実感する。
まぁ…マニューラとレントラーを回収できたのだから、あながち無駄でもないのか。
だけど…何でこんなことになったのか。

? 「デテイケ…」

ミカゲ 「!?」

ミカルゲ 「ミカッ!?」

私とミカルゲは同時に、声の方を向く。
しかし、そこには何もいなかった。
ただ、声だけが鳴り響いたのだ。

アリス 「…ダークライ?」

ミカゲ 「!?」

今、アリスは『ダークライ』と言った。
つまり、この声の主は…

ゴゴゴゴゴッ!!

ミカゲ 「…!」

突然、影が動き、そこから黒いポケモンが表れる。
間違いない…資料で見たことがある、あれは『ダークライ』だ!

ミカゲ 「…まさか、本当に出会えるとはね」
ミカゲ 「一体何の用かしらぁ?」

私は不適に笑ってみせる。
すると、ダークライはそれが気に入らなかったのか。

ダークライ 「デテイケ…!」

やや強めにそう言った。
どうやら、私のことが気に入らないようね。

ミカゲ 「…所詮、ポケモンはポケモン、倒せない相手ではないわ」
ミカゲ 「ミカルゲ…『ぎんいろのかぜ』!」

ミカルゲ 「ミカ〜!!」

ビュゴゴゴォォォォッ!!

ダークライ 「!!」

私は悪タイプに効果の高い虫タイプで攻める。
攻撃力はさほどではないにしろ、ダメージはあるはず。

ダークライ 「!! デテイケ!!」

ブォンッ!!

ミカゲ (即座に反撃!? 速いわね!)
ミカゲ 「ミカルゲ、『ま……!?」

ギュゥゥンッ!!

私は、いきなり黒い球体に取り込まれる。
そして、一瞬にして視界が黒に染まる。
どうやら、ミカルゲと一緒に何かしらの技を受けたらしい。
混乱系の技!?

ミカゲ 「くっ…一体?」

視界が元に戻った…と思えば、何やら雰囲気がおかしい。
私は、正直困惑していた。
何故なら、今見えている世界が死んでいるように感じたからだ。
人類が絶滅したら…こんな感じなのだろうか?
人の気配はおろか、生き物の存在を感じなかった。

ミカゲ 「な、何なのよこれは…これがダークライの技?」

ミカルゲ 「ミカ〜…」

ミカゲ 「ミカルゲ…いつのまに地上に?」

見ると、バッグに入れていたはずの『かなめいし』が数メートル離れた地面に落ちていた。
さっきの技の影響で、落ちたのだろうか?
私はゆっくりと、歩み寄ろうとすると。

ギュオオオォォォォッ!!

ミカルゲ 「ミ、ミカ!? ミカーー!!」

ミカゲ 「ミ、ミカルゲ!?」

突然、地面がうねり、ミカルゲを飲み込みだす。
私はこの瞬間、何も見えなくなった。
自分で何を考えているのかもわからない。
ただ、私は…何も考えずにミカルゲを飲み込む地面に向かって飛び込んでいた。

ミカゲ 「ミカルゲ!!」

ミカルゲ 「ミカーー!!」

私は『かなめいし』を抱きしめ、地面に飲み込まれるのを待つことしかできなかった。
多分…私は死ぬんだろう。
そんな気がした…何故、自分が飛び込んだのかはわからない。
見捨てればよかったのに…自分だけ生き残れば良かったのに。
ナニモワカラナイ…ナニモカンガエラレナイ。

ミカゲ (ダケド…シヌノハイヤァ!!)

ドクンッ!!





………………………。





ミカゲ 「ああああぁぁぁぁぁぁっ!!??」

アリス 「!?」
マキ 「!!」
カツミ 「!?」
ダイ 「わわっ!!」

私は、叫び声をあげる。
瞬間、私は呼吸が想像以上に荒れていることに気づく。
息を少しづつ整え、私は今ベッドの上にいることを理解する。
そして、私は…静かに周りを見る。

アリス 「き、気がついた?」

マキ 「ねぇ…大丈夫?」

アリスがいる…何故かマキも。
更に部屋を見渡すと、ダイやカツミの姿も見えた。

カツミ 「…汗、びっしょりだけど、大丈夫かい?」

ダイ 「驚いたぜ…いきなり大声で叫ぶんだからな」

ミカゲ 「…ここ、は?」

私は枯れた喉で声を出す。
今の叫びで、喉がやられたのかもしれない。
私は喉に痛烈な痛みを感じ、喉を押さえた。

? 「君は、悪夢を見ていたんだよ…」

ミカゲ 「? あ…ありがとう」

何やら、細身の男性が何かを喋って水を持ってきてくれた。
私はそれを受け取り、一気に飲み干した。
そして、ようやく頭が働き始める。

ミカゲ 「…ここは、どこ?」

アリス 「ポケモンセンターの病室よ、あなた…一日中眠っていたのよ」

ミカゲ 「一日中!?」

私は思い出すように頭を抱える。
そんなに眠っていたとは思えなかった。

? 「君は、ダークライに悪夢を見せられたんだ」

ミカゲ 「…あなたは?」

私が聞くと、男性は忘れてた…と言う風に笑う。
そして、自己紹介を始める。

? 「僕はトニオ、科学者さ」
トニオ 「近頃、アラモスタウンで妙なことが起きててね」
トニオ 「それを調べてる」

トニオと名乗った男性は、眼鏡に灰色の髪。
緑のセーターに白いカッターシャツを着込んでいる。
なるほど…科学者、か。

ミカゲ (…っ、体が)

私は自身の体に何か危険を感じた。
そして、私は周りの人間に見られないように、そっと左腕の袖を捲り上げる。

ミカゲ 「!?」

私は数センチ巻くった時点で、すぐに戻す。
まさか…ここまで侵食しているなんて。
私はぞっとする…悪夢の中、無意識にGCの力を解放してしまったのだ。
このまま侵食が進めば、恐らく私は死ぬ…止めることはできない。

マキ 「…ねぇ、本当に大丈夫? 顔…蒼いよ?」

ダイ 「確かに…よほど悪い夢を見たのか」

カツミ 「…かもしれないね、ダークライか…このまま放ってはおけないね」

アリス 「…でも、ダークライは」

マキ 「悪いけれど、これが現実」
マキ 「あなたも見たんでしょ? 目の前で彼女が被害を受けるのを!」
マキ 「だったら、もう迷わない! 私は討伐隊に参加するわ!!」

ダイ 「悪いが俺も行く、こればかりは見過ごせん」

カツミ 「同感だ、現に人が苦しめられた…それだけでも十分な理由がある」

そう言って、三人は病室を出て行く。
討伐…ダークライを?

アリス 「そんな…討伐だなんて」

トニオ 「…仕方ないよ、今は弁護する材料もない」
トニオ 「現に、彼女が眠らされた…それに、他にも被害例はある」
トニオ 「ダークライが無実と証明することはできない」

ふたりはそう言って俯く。
ダークライのこと…ふたりは何か知っているのだろうか?

ミカゲ (関係ないわね…これ以上は)

私は街を出ることに決めた。
このままここにいることは、危険と私は判断した。
悪夢とはいえ、侵食率がここまで上がっては命の危険がある。
これ以上は付き合っていられない。

ミカゲ 「…くっ」

アリス 「ダメよミカゲ! まだ体は完全には」

ミカゲ 「うるさいわね…構わないで」

ドンッ!

私は抱きとめてくるアリスを突き放して荷物を取る。
そして、私はそのまま病室を出て行った。

ガチャッ! バタンッ!!

アリス 「ミカゲ…」

トニオ 「大丈夫かい、アリス?」

アリス 「…私は大丈夫よ、でもミカゲは」

トニオ 「だったら、後を追った方がいい、僕は研究室に戻ってもうちょっと調べてみるから」

アリス 「わかったわ、何かあったら知らせて」

トニオ 「ああ!」



………。
……。
…。



『12月24日 時刻10:00 アラモスタウン・入り口』


ミカゲ 「…どういうことなのよ」

私は、出入り口を繋ぐ橋の所で立ち往生していた。
さっさと街を出ようかと思った矢先、それが不可能だということを知ったのだ。
何やら霧が立ちこめ、いくら歩いても街の中に戻ってしまう。
タチの悪い嫌がらせね。

ミカゲ 「…『きりばらい』でもダメ、一体どうなっているのよ」

街を出ることはできない…か。
私は諦めて、広場の方に戻る。
すると、どうやらひと問題ありそうだった。

アルベルト 「出たなダークライ! ここで引導を渡してやる!!」
アルベルト 「全員! 総攻撃だーー!!」

ダークライ 「!!」

ゴオオオオオォォォッ!! バチバチバチィッ!! バシュウゥゥゥッ!!

炎、電気、水、様々な技がダークライを襲う。
ダークライは四方八方から来る技を巧みに回避し、技を放つ。

ダークライ 「デテイケ!!」

ドギュギュギュンッ!!

ゴウカザル 「ガッ!? …ZZZ〜」

マキ 「ああっ! ゴウカザル起きて!!」

ダイ 「エンペルト!!」

カツミ 「ドダイトス、起きるんだ!!」

10数体はいるポケモンがあっという間に眠らされる。
なるほど…あれが『ダークホール』ね。
複数のポケモンを一気に眠らせるとは聞いていたけど…厄介な技ね。

アルベルト 「おのれ! ベロベルト『はかいこうせん』!!」

ダークライ 「ハァッ!」

ドギュンッ!!

ベロベルト 「ベロロ〜!?」

アルベルト 「はぶらっ…!?」

何と、アルベルト男爵まで巻き添えで眠らされてしまう。
これで、討伐隊の大半は眠らされたようだ。
だけど、見た所手当たり次第にポケモンを眠らせているようだ。
所々でポケモンたちが唸っている…特性の『ナイトメア』ね。
あれのおかげで、私も多大な犠牲をもらったわ。

ミカゲ 「…鬱陶しいわね」

私は、ひとり前に出てダークライと相対する。
もしかしたら、こいつが街を封鎖しているのかもしれない。
なら、倒せば済むわ…試してみる価値はある。

ミカゲ 「出なさい『マニューラ』!」

ボンッ!

マニューラ 「マニュ!」

私はあえてマニューラを繰り出す。
相性ならドクロッグの方がいいけれど、これは相手のスピードを考えた上でのチョイス。
ダークライは相当速い…しかも技を受けたらその場でダウン同然。
なら、一撃ももらわない覚悟で戦うしかない。
マニューラは私のポケモンでは最速。
当たらなければ問題は無いわ。

ダークライ 「…デテイケ」

ミカゲ 「だったら、街から出してほしいものね…『れいとうパンチ』!」

マニューラ 「ニュラー!!」

ギュンッ!

マニューラは一気に飛び込み、ダークライの懐を取ろうとする。
だけど、ダークライはそれに反応してすぐに地面へと消えた。

ギュゥゥンッ!

ミカゲ (!? 地面を移動…いや影になって動いているに過ぎないわ!)

どうやら、ダークライは影となって地面を這うように移動できるらしい。
厄介といえば厄介だけど、対抗できないわけじゃないわ。

ミカゲ 「マニューラ『こおりのつぶて』!」

マニューラ 「マニュ!」

ヒュヒュヒュッ!! ガガガッ!!

マニューラは的確に3つ、ダークライの影に氷を突き立てる。
それが効いたのか、ダークライは再び姿を現した。

ミカゲ 「マニューラ『かわらわり』!」

マニューラ 「マニュ!」

ダークライ 「デテイケ!!」

ギュオオオオオオオォォォッ!!

マニューラ 「ニュラッ!?」

ダークライはいきなり『あくのはどう』を放つ。
マニューラは間一髪回避し、事なきを得た。
とはいえ、次の動作が遅れてしまい、ダークライはすぐ逃げてしまう。

ミカゲ 「追うわよマニューラ!」

マニューラ 「マニュ!」

タタタタタッ!!



………。
……。
…。



『時刻10:10 アラモスタウン・路地裏』


ミカゲ 「く…逃げられた」

マニューラ 「ニュ…」

路地裏に逃げ込まれ、私はダークライを見失う。
さすがにこんな薄暗い所で探すのは難しい。
とはいえ、少々拍子抜けだった。
ここまで手当たり次第に眠らせていたにも関わらず、あっさり逃げるとはね。

ミカゲ (思ったよりも計算高いのか…それとも、臆病なのか)
ミカゲ 「…でも、思ったよりおかしな状況のようね」

私は空を見上げて呟く。
空は分厚い黒い雲が覆い、太陽の光は遮られている。
薄暗い街の光景…誰もが不安を抱えている。
この状況は…普通ではない。
私は、一旦戻ることにした。



………。
……。
…。



アリス 「あ、ミカゲ! 無事だったのね」

ミカゲ 「アリス…構わないで、と言ったはずだけど?」

マキ 「そんなこと言っちゃダメよ! アリスちゃんは心配で来てくれたんだから!」

何故かマキまでいるし…はぁ。
私はとりあえず観念して捕まることにした。



………。



ミカゲ 「…どうなっているのよ?」

マキ 「私が聞きたいわよ…」

ビーダル 「ビダ〜」

ゴウカザル 「ゴウ!?」

ドダイトス 「ドダ〜…」

エンペルト 「エンッ!」

ダイ 「皆、この状況だ…眠らされた奴らは、どうやら魂が抜け出ているらしい」

カツミ 「これも…ダークライの影響なのか」

そう…今、ここではまるで幽霊のようなポケモンの意識体が宙を漂っていたのだ。
ダークライの仕業かどうかはわからないけど、段々と悪い方向に向かっている気がするわね。

マキ 「とはいえ…一番素っ頓狂なのはアレ」

ミカゲ 「?」

ベロベルト 「だから、私は『アルベルト』男爵だーーー!!」

鬱陶しいわね…あのベロベルト。
喋るとは思わなかったわ…侮っていたわね。

ミカゲ 「…とりあえず鬱陶しいから黙らせなさいよ」

マキ 「できるなら、そうしたいけどね…」

アリス 「あれ、本当に男爵みたいなのよ…」

ミカゲ 「…はぁ?」

私は、改めてベロベルトを見る。
確かに、何故か男爵のタスキ(?)をしているし、喋り方もそっくり。
あれが男爵と言われれば、確かにそうと答えられる気がした。

ミカゲ 「…鬱陶しいことに変わりないわね」

アリス 「…どうして、こんなことに」

アリスは肩を落として、眠っているポケモンたちを見る。
眠らされたポケモンは悪夢にうなされ、意識は宙を漂う。
異様な光景に違いない…こんな光景は、本物の悪夢だ。

ミカゲ 「…ダークライを倒すしか無さそうね」
ミカゲ 「街が封鎖されている以上、できる限り高い可能性に賭けた方がいいわ」

私はそう言って立ち上がる。
やるしかない…今はそれしかわからない。

アリス 「待ってミカゲ! お願い…ダークライはきっと何かを伝えようとしているのよ!」
アリス 「きっと、ダークライは…」

アリスは懇願するように、私に言う。
だけど、それが何なのかわからない以上、どちらにしても接触した方がいいでしょうね。

ミカゲ 「……」

私は、無言でこの場を去る。
さっきから、嫌な予感が頭を離れない。
何故だろう…何か不思議な呼び声を感じる。
まるで、叫びのような…。

ゴゴゴォォォンッ!!

ミカゲ 「!? な、何よ…今のは?」

突然、地震が起こる。
だが、それは自然ではなく、空間の歪みによる物だと言う事がわかった。
空が弾ける…それも何かが衝突するかのような力で。
もうすぐ、何かが…来る?

ドッグオォォォォンッ!!

? 「ギャアオオオオォォォッ!!」

ミカゲ 「!? ディアルガですって!?」

何と、空を破って現れたポケモンは『ディアルガ』だった。
『じくうポケモン』と呼ばれ、シンオウでは神と呼ばれるポケモン。
それが…何故ここに!?

ディアルガ 「ギャァオッ!?」

ドォォンッ!!

ミカゲ 「!?」

突然、『あくのはどう』がディアルガを襲う。
あの威力…間違いない!

ミカゲ 「ダークライの攻撃…? ディアルガを…」

何が起こっているのかはわからない。
ただ、ダークライはディアルガを攻撃した。
最悪のパターンを予想できた。
そして、次の瞬間。

ディアルガ 「ギャアアォオオオオオオオッ!!!」

ドガガガガガガァァァァンッ!!

ディアルガは口から『りゅうせいぐん』を放ってダークライを攻撃した。
ここからでは状況が良くわからない、私は現場に急行した。



………。



ミカゲ 「あれは…時空の塔」

ダークライとディアルガが戦っている場所は『時空の塔』だった。
ゴーディの残した、巨大な建築物。
その前で、神と呼ばれるポケモンが暴れているのだ。

ディアルガ 「ギャオオオオオオッ!!」

ダークライ 「…! デテイケ!!」

ドギュオオオオオオオォォォォッ!!

ディアルガ 「!!」

ダークライが地上から『あくのはどう』を放つ。
ディアルガはそれを受け、怯んだ。
とはいえ、効いているとは思えない…

ミカゲ (鋼タイプ相手には、辛いでしょうね…ましてやディアルガが相手となれば)

私のポケモンでさえ、歯が立たないかもしれない。
どれほどのレベルがあるかは知らないけれど、危険なのは確かね。

ディアルガ 「!? ギャオオオオオオオオオオォォォォッ!!」

ドギュゥゥンッ!! ドゴアアアァァァァァッ!!

ミカゲ 「!?」

突然、ディアルガは時空の塔の頂上付近を攻撃しだす。
すると、そこからいきなり空間が歪み、ポケモンの姿が現れる。

パルキア 「ガアアァァァァァッ!!」

ミカゲ (パルキア!? 『くうかんポケモン』まで…!)

最悪にも程がある。
何故、この街にこの2体が…いやそれよりも。

アリス 「ミカゲ! わかったわよ、怪現象の秘密が!!」

トニオ 「全部、あのパルキアのせいだったんだ!! パルキアが、空間ごとこの街を隔離しているんだ!!」

ミカゲ (でしょうね…)

私はすでに気づいていた。
異常な空間…異常な空…出られない街。
何を考えているのか知らないけれど、パルキアは確実にこの街を隔離していた。
理由はわからない、ただ…

ミカゲ (あの2体がいるのは最悪…!)

時間と空間…それぞれを司ると言われるポケモン。
それらがぶつかり合ったら、間違いなくこんな街は消し飛ぶ。
そうなったら…私たちも一緒に消えることになるだろう。

ミカゲ 「くっ…やるしかないわね!!」

ミカルゲ 「ミカッ!?」

私はミカルゲを見る。
だけど、ミカルゲは戦うのを拒否するかのように、首を振る。
臆病風に吹かれるような娘じゃない…それ以上のことを案じてこの娘は拒否している。
そう…私のことを案じているのでしょうね。
この戦い…やるからには、私は多分死ぬわ。
ディアルガだけなら…どうにかできるかもしれなかった。
だけど、パルキアまでいるとなれば、私は全てを捨てなければならない。

ミカゲ (ただ死を待つくらいなら…戦って死ぬわ)

もちろん、負けるつもりはない。
負けて死ぬのは…恥だ。

アリス 「ミ、ミカゲ…?」

ミカゲ 「ミカルゲ、言うことを聞き……」

ダークライ 「デテイケ!!」
ダークライ 「コノマチカラ…デテイケ!!」

ドギュゥゥンッ!!

パルキア 「ガアァッ!?」
ディアルガ 「ギャアオッ!!」

ダークライはディアルガとパルキアに技を仕掛ける。
何故…何故ダークライは?

アリス 「止めてダークライ! お願いだから止めて!!」

ダークライ 「デテイケ!!」

ディアルガ 「ギャオゥッ!!」

ドギャアアアアアアァァァァンッ!!

パルキア 「ガアアアアッ!!」

ドギュアアアアァァァァッ!!

ダークライ 「!?」

ズッドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォンッ!!

大爆発…ディアルガの『りゅうせいぐん』とパルキアの『はかいこうせん』がダークライを沈める。
ダークライは地面へと落ち、まだ戦う気の様だった。

アリス 「ダークライ!!」

トニオ 「アリス!!」

アリスとトニオがダークライに駆け寄る。
私もそれを追った。



………。



ダークライ 「…グ」

アリス 「ダークライ、もう止めて! あなたがこれ以上傷つくのは!!」

トニオ 「アリス…」

アリスはダークライを抱きしめ、止める。
だが、ダークライはじっ…と、上空を見据え戦う意思を消さない。

アリス 「ダークライ…」

ダークライ 「!! …!」

パルキア 「ガアアアッ!!」

ディアルガ 「ギャオオオオゥッ!!」

ミカゲ 「!? 『ときのほうこう』と『あくうせつだん』!!」

両者は、互いの必殺とも言える技を同時に放つ。
そして、それがぶつかり合うと…。

チュドオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォンッ!! ギュアアアアアアアアアアァァァァァァッ!!!

ミカゲ 「!?」

トニオ 「アリス!!」

アリス 「トニオ!?」

ドッグォォォンッ!!

街が、一気に崩れ始める。
それも…普通の崩れ方ではない、まるで粒子の様に亜空間へ消えていく感じ。
絶望的な力を感じた。
あと一回…あれが起こったら?

トニオ 「アリス…大丈夫かい!?」

アリス 「うん…ありがとう、トニオ」

ふたりは何とか無事のようだ、トニオが身を挺してアリスを庇ったからだろう。
だが、状況は何も良くならない。
このままでは…!

ダークライ 『ヤメロオォォォ!!』

ギュンッ!!

ディアルガ 「ギャオオオオオォッ!!」
パルキア 「ガアアアアアアアアアァァァッ!!」

キュィィィン…!!

再び、互いの必殺技が交錯しようかと言う矢先、ダークライは自ら間に割って入った。
そして、ダークライは『ダークホール』を発生させ、その力を受け止める。

ダークライ 『ヌウウゥゥッ!!』

アリス 「ダークライ!?」

トニオ 「このままじゃ…マズイ! アリス、時空の塔に行こう!!」

アリス 「トニオ!?」

どうやら、何か考えがあるらしい。
だけど、時間はもうあまりない。

トニオ 「やっと見つけたんだ! 後は僕たちがやるしかない!!」
トニオ 「街を、ダークライを助けるんだ!!」

アリス 「! わかったわトニオ! ミカゲ…あなたは?」

ミカゲ 「…行きなさいよ、私はアレを何とかするわ」
ミカゲ 「時間稼ぎ位はやってあげる…その代わり、失敗したら許さないわ」

私は背中越しにそう言う。
すると、ふたりは納得したように時空の塔へと走り出した。

ミカゲ 「…全員出なさい」

ボンッ!!×5

マニューラ 「マニュ」
ドクロッグ 「ググッ」
ムクホーク 「ホークッ!」
チェリム 「………」
レントラー 「レンッ!」

ミカゲ 「…あなたたちは、あのふたりをフォローしなさい」
ミカゲ 「ミカルゲ…あなたもよ」

ミカルゲ 「ミカッ!? ミカカッ!!」

ミカルゲは私のことを案じて、行こうとしない。
だけど、今は一刻を争う、無駄口は聞けない。

ミカゲ 「行きなさいと行っているのよ! 命令を聞きなさい!!」

ミカルゲ 「ミ、ミカ…」

ミカルゲは自分から動こうとはしない。
だけど、その瞬間。

ムクホーク 「ホーーック!!」

ガシッ!! バササッ!!!

ミカルゲ 「ミカッ!? ミカーーーーーーー!!」

ムクホークがミカルゲを捕まえて飛び去った。
そう…それでいいのよ。

マニューラ 「…マニュ! ニュニュッ!!」

ドクロッグ 「ググッ!」

ダダダッ!!

レントラー 「レンッ!」

チェリム 「!」

ストッ! ダダダダダッ!!

これで、全員が時空の塔へ向かった。
残ったのは…私だけ。

ダークライ 『ここは…皆の庭だぁ!!』

ディアルガ 「ギャアオオオオオオオオォォッ!!」
パルキア 「ガアアアアアアアアアァァァァァッ!!」

ダークライ 「!?」

ドグオオオオアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァンッ!!!!

ダークライの力は及ばず、ダークライは両者の技をまともに受ける。
ダークライは…そのまま、光となって…消えた。



………。



アリス 「!? ダークライ!! そんな…!!」

トニオ 「まずい! 今ので時空の塔も崩れ始めている!! アリス急ぐんだ!!」

アリス 「ダークライ…ううっ!!」

アリスは唇をかみ締めて塔を登る。
だけど、この塔は先が長すぎる。
果たして、これで間に合うのか!?

フワライド 「フワーーー!!」
フワンテ 「フワワッ!!」

トニオ 「フワライド! フワンテ!!」

良かった、これなら空中から上がれる!!
僕はアリスの手を引き、外のフワライドへ飛ぶ。

アリス 「きゃぁっ!?]

トニオ 「大丈夫!」

ガシッ!!

僕はしっかりとフワライドに捕まえられる。
これで、空を移動できる…何とか間に合ってくれ!!



………。



ミカゲ 「…やはり、こうなるのね」

私はディアルガとパルキアを見て、呟く。
いつかは…こんな日が来るのだろうと、予想はしていた。
力を行使し、力に滅ぶ日。
私は…死を覚悟していた…死ぬことは怖い。
でも…避けて通れない道なら、通るしかない。

ディアルガ 「ギャァオッ!?」

パルキア 「ガアッ!?」

ミカゲ 「見るがいいわ…私の滅ぶ姿を! その目に焼き付けなさい!! 『はんこつポケモン』、『ギラティナ』の力を!!」

ギュゥゥゥンッ!! ドクンッ!!

私は体を侵食するGCを一気に行使する。
これにより、私の体は完全にGCへと乗っ取られ、私の体は異常変貌し始める。

ゴバッッ!! ビシャァッ!!

私の背中から二枚の翼が出る。、
黒く、禍々しき翼。
そして、私の体は骨のような外骨格が表面化し、全身を強化する。
意識だけは、僅かに残しておく。
暴走しては元も子もない、あくまで私の意志で戦わなければ、それは真の勝利ではないのだから。

ミカゲ 「さぁ、パーティの始まりよ!!」

私は翼をはためかせ、ディアルガとパルキアの元へ飛び立った。



………。



ディアルガ 「ギャアオッ!!」

ギュバァッ!!

ミカゲ 「!!」

ドォンッ!!

ディアルガの口から放たれた『りゅうのはどう』を私は右手一本で弾き飛ばす。
直撃はマズイ…ドラゴンタイプの技は、私も致命傷を負うからだ。

パルキア 「ガアァッ!!」

ギュオオオォォォッ!!

ミカゲ 「…!」

ドギュゥゥゥンッ!!

パルキア 「!?」

パルキアの口から放たれた『はかいこうせん』は私の体をすり抜ける。
ノーマルタイプの技は通用しない、今の私の体はすでに9割以上がGCへと侵食されている。
体内の細胞は変異をし、ゴーストタイプとしての能力を発揮しているのだ。

ミカゲ 「あああっ!!」

ドバァッ!! ドォォンッ!!

パルキア 「ガアッ!?」

私は右手から『りゅうのはどう』を放ち、パルキアを吹き飛ばす。
効果は抜群…とはいえ、肉体の大きさから言っても、それほどのダメージにはなっていない。
私の体は、所詮不完全な物だ。
神の力…とは言っても、人間の体を使って一時的に発動しているに過ぎない。
いずれは限界が来るし、こいつらを倒せるわけでもない。
ただ…私は戦うだけよ。



………。



ドォォンッ!!

アリス 「キャァッ!!」

トニオ 「しっかりしろアリス! 僕に掴まっているんだ!」

空中では、未だにディアルガとパルキアが戦いを繰り広げている。
そして、もう一体…まるで人間の様な姿をした黒い『何か』が戦いに加わっている。
その姿には、どこか彼女の面影がある…だけど、僕はその考えを捨て去った。
それは、最悪の予感…僕はそんな最悪の結果を、予測したくはなかった。
今は…ただ、出来ることをしよう。

アリス 「トニオ…ごめんなさい、私怖がってばかりで」

トニオ 「何を言ってるんだ! 僕だって怖い…本当は逃げ出したい」
トニオ 「でも…君を置いて逃げるなんて、僕には出来ない」
トニオ 「僕は…きっとひとりじゃ何も出来ないよ」
トニオ 「だから、君と一緒にこうやって、僕はできることをする」
トニオ 「もう少しだから、頑張ろう」

アリス 「…うん、ありがとうトニオ」

トニオ 「……!」

僕はアリスの優しい微笑みを見て、一瞬赤面する。
こんな時に、ダメだな。
僕は、段々と近づく時空の塔の最上階を見つめる。
あと少し…あと少しで。

ドォンッ!!

フワライド 「フワーー!!」

トニオ 「!? フワライド!?」

アリス 「危ない!!」

フワライドは流れ弾を喰らったのか、軌道を変えられる。
時空の塔から離れ、流されていく。
しかも、こちらに向かってまだ流れ弾が飛んできている、このままじゃ…!!

ギュオオォォォッ!! ドバァァァンッ!!

トニオ 「!? 今のは『あくのはどう』!!」

アリス 「まさか…ダークライ?」

トニオ 「いや、違う!!」

ムクホーク 「ホォォーーック!!」

ミカルゲ 「ミカッ!!」

何と、ムクホークがミカルゲを掴んだまま、ここまで上がってきていた。
僕たちを守るように流れ弾を迎撃し、盾となってくれている。

アリス 「ミカゲのポケモン…!」

トニオ 「! 今だフワライド! 一気に上昇するんだ!!」

フワライド 「フワーーー!!」

フワンテ 「フワー!」

ギュンッ!!

フワライドは一気にスピードを上げ、上昇していく。
もう最上階は目の前だ…後少しで!!



………。



マニューラ 「つぇい!!」

ドクロッグ 「グッ!!」

ドォンッ! ドドンッ!!

俺達は、時空の塔の螺旋階段から、流れ弾を迎撃する。
しかし、このままじゃラチがあかねぇ。

マニューラ 「ちっ、これじゃ登り切れねぇぞ!?」

ドクロッグ 「仕方あるまい、ここは迎撃に力を注ぐぞ!」
ドクロッグ 「もうここも危ない!」

レントラー 「くっそー! 段々崩れ始めてきやがった!!」

チェリム 「………」

レンたちが遅れて登ってくる、くそったれ…

マニューラ 「おいレン! お前はそのまま上まで行け!!」
マニューラ 「ここは俺とドクロでフォローする! お前はチェリを連れて最上階まで行け!」

レントラー 「何でだよ!? 足の速いお前が行けば!」

ドクロッグ 「いいから行け! 足が遅いからこそここでは足手まといだ!!」

反論するレンをドクロが一喝する。
あいつが、叫ぶなんてことは余程の事だ。
レンもそれがわかっているのか、顔つきを変えて登っていく。

レントラー 「くそっ! チェリさんしっかり掴まってろよ!!」

チェリ 「………」コクリ

ダダダダダッ!!



マニューラ 「…よし、俺らは外に出るぞ!」

ドクロッグ 「ググッ、そうだな」

俺達は、階段近くの窓から外に出る。
そこから壁を伝って、上を目指す。

ガキィッ! コキィッ!

マニューラ 「ったく! 面倒な造りだぜ!」

俺は壁に『れいとうパンチ』を叩きつけ、氷の足場を作る。
それを足場にし、俺とドクロは段々上へと登っていく。



………。



ディアルガ 「ギャァォッ!!」

ドォンッ!!

ミカゲ 「あああっ!!」

私は右手でディアルガの顔面を殴りつける。
ディアルガは怯み、動きを一瞬止めた。

パルキア 「ガアッ!!」

ミカゲ 「ぐぅっ!!」

ドバァンッ!!

パルキアの『みずのはどう』が私を捉える。
ダメージはほとんどない、ただこの技は精神に異常を与える!

ディアルガ 「ギャアォッ!!」

ドギュアァァッ!!

ディアルガが私に向かって『りゅうのはどう』を放つ。
私はこの瞬間、一瞬にして姿を消した。

ドビュンッ!!

パルキア 「ガアアッ!?」

ドバァァンッ!!

私という目標が消え去り、『りゅうのはどう』は軌道上にいたパルキアへと直撃する。
さすがの一撃にパルキアも怯んだようだ。
私はその瞬間を逃さない。

ビュワッ!!

ミカゲ 「うおおっ!!」

バジュウゥッ!!

パルキア 「ガアアアァァァァッ!!」

私はパルキアの背後に突然出現し、右手で一撃を加えた。
これが『シャドーダイブ』…切り札よ。
しかし、使えるのはせいぜい2〜3回ね…こいつらの『プレッシャー』の中で、この技を使うのは限界があるわ。

ミカゲ (アリス…トニオ、早くしなさいよ!!)

私は心の中でふたりを頼っていた。
この私が誰かを頼るなんて…フヌケた物ね。
だけど、それ以外の方法で解決策はない…私ではあいつらを倒せない。
もう…私の意識も限界に近かった。



………。



『11:00 アラモスタウン・時空の塔最上階』


アリス 「つ、着いたわ!」

トニオ 「よしっ! 急いで音盤のセットを!!」

僕たちは、最後の望みである『オラシオン』の音盤をセットしようとする。
だけど、その音盤は通常のものとは違うようだった。

アリス 「そんな! 入らない!?」

トニオ 「そんな馬鹿な! 大きさが違うなんて…いや、まさか!!」

僕は上を見上げてりかいする。
そうだ、この音盤は…初めからあそこに!

トニオ 「貸してアリス! あれはあそこに着けるんだ!!」

僕は正面の壁にある、ひとつの窪みを指差して言った。
今まで、あの窪みは何もないものだと思っていた…だけど違うんだ!
あの窪みは…この音盤を読み込ませる物。
やはり…これで!!

ガコンッ!!

僕はぴったり合う音盤をセットする。
音盤はしっかりと窪みに入り込み、セットされた。
後は…これを鳴らせば!

トニオ (待っててミカゲちゃん! 今、助ける!!)

アリス 「トニオ! ダメだわ!! 電力が…!!」

トニオ 「何だって!?」

僕はすぐにアリスの元へと向かい、スイッチを調べる。
すると、確かに電力が伝わっていないようだった。

トニオ 「そんな…こんな時に!!」

僕は例えようのない怒りを感じた。
折角…折角ここまで来たのに!!

ドォンッ!!

アリス 「きゃあっ!!」

トニオ 「アリス!!」

ガシッ!

また時空の塔に衝撃が走り、崩れが大きくなる。
僕は衝撃で吹き飛んだアリスの手を取り、しっかりと胸に抱きとめた。

トニオ 「大丈夫!?」

アリス 「ええっ…でも、このままじゃ、いずれ…」

僕たちは…もう、ダメだと思い始めていた。
ここまで頑張ってきたけど、もう…どうしようも。

レントラー 「レーーンッ!!」

ズザザァッ!!

アリス 「レントラー!? まさか、ミカゲの…」

トニオ 「そうだ! 頼むレントラー!! 僕たちに力を貸してくれ!!」

レントラー 「レンッ!?」

僕はここまで上がってきたレントラーに頼む。
電力が足りないなら、供給すればいい。
レントラーなら、その電力を出せる!

アリス 「お願い! 今は、強力な電力が必要なの!!」

レントラー 「…レンッ! レーーーンッ!!」

バチバチバチバチバチィッ!!

トニオ 「くっ! 頼む…これで!!」

アリス 「ダメだわ! まだ足りない! もっと…パワーを!!」

レントラー (くそっ…やっぱり、俺の力じゃダメなのか!?)
レントラー (俺に…もっと電力を出せれば!!)

パァァァッ…!

レントラー 「!?」

バリバチバリィッ!!

突然、レントラーの力が大きくなる。
電力はいっきに増幅され、凄まじい電力が流れ始めた。

トニオ 「やった! これなら…行ける!!」

アリス 「トニオ!!」

僕たちは頷きあう。
そして、ふたりでレバーを握り、一気にスイッチを入れた。

ガシィンッ!!



………。



ミカゲ 「…ぐっ」

ディアルガ 「ギャオォッ!!」

パルキア 「ガアアッ!!」

私の体は…すでに限界を迎えていた。
ここまでで10分以上、もう意識を保っていられなくなる。
だけど、暴走することもないだろう…もう、私の体は崩壊していく。

ボロッ…

私の肩が崩れる。
もう、形を維持することも出来ない。

ディアルガ 「ギャオオオォッ!!」

ギュゥゥゥッ!!

パルキア 「ガアアア…!」

ゴォォォォッ!!

ディアルガとパルキアが最後の力を溜め始める。
これらが衝突すれば、もう何も残らなくなるだろう。
結局…間に合わなかったのか。
私は、どんどん崩れていく体を抑えきれず…そのまま力なく落下していった。

ヒュゥゥゥゥ…



………。



マニューラ 「ミカゲ!!」

ドクロッグ 「無理だマニュ! もう…ダメだ」

飛び降りようとする俺をドクロが止める。
俺だってわかっている…あいつは、もうダメだと。
だが…それでも、行かなきゃならないんじゃないのか!?



………。



ミカルゲ 「そんな…こんなのって!」

ムクホーク 「…これが、ミカゲの選んだ道だ」
ムクホーク 「お前は…いつかはこうなることを知っていたはずだ」

ミカルゲ 「…!!」

ムクちゃんに言われ、私は何も言えなくなる。
そうだ…いつかは、こうなるって思ってた。
ミカゲは…元々、こうなることを予感していた。
だけど…それでも、こんな結末だなんて!

ムクホーク 「…私たちに出来ることは終わった」
ムクホーク 「もう…終わったんだ」

ミカルゲ 「……!!」

私は泣きたくても涙の出ない自分の体を恨む。
どうして…! どうして……



ゴォォォンッ!! ゴォォォォンッ!!!

ミカルゲ 「!?」

ムクホーク 「時空の塔が…!」



ゴゴゴゴゴゴッ!! ゴガッ! ガガガッ!!



マニューラ 「ウオッ! やべぇ!!」

ドクロッグ 「グッ! 飛ぶぞ!!」

俺達は突然変形を始めた時空の塔から離れ、地上に向かってまっ逆さまに落ちた。
当然、俺達は飛べるわけもない。

マニューラ 「チックショウーーー!!」

ドクロッグ 「ググッ!」

ドササッ!!

ムクホーク 「グッ!!」

ミカルゲ 「ふたりとも、大丈夫!?」

マニューラ 「つぅ…助かったのはいいが!!」

ドクロッグ 「無茶をする! お前は大丈夫なのか!?」

ムクホーク 「少し黙れ! いくら私でも支えきれるか!! このまま地上へ落ちるぞ!!」

ヒュゥゥゥ…!!

ムクちゃんは何とか速度を落として地上へと落下していく。
地上に近づいたところで、一気にマニュ君とドクロさんは地上へ飛び降りた。

ドササッ!!

マニューラ 「ちっ…」

ドクロッグ 「グッ…助かったな」

ドォォォォォンッ!!

ミカルゲ 「うう…酷いよ、落とすなんて」

ムクホーク 「我慢しろ! お前は多少の衝撃なら耐えられるだろう…」

そう言ってムクちゃんはゆっくりと地上に降りる。
かなりヘバっているのか、地上に降りても息を切らしていた。

マニューラ 「それより、あれは!?」



ゴォォォンッ!! ゴォォォォンッ!!



ドクロッグ 「この音色は…」

ムクホーク 「何だろう…何故か、心が安らぐ」

そう…時空の塔は最上階部分が変形し、巨大な楽器へと変わっていた。
そして、そこから流れる、壮大なメロディーは…聞く者全ての心に響き渡るようだった。



………。



ディアルガ 「ギャ…」

パルキア 「ガ…」



アリス 「ディアルガとパルキアが…」

トニオ 「止まった!!」

レントラー (やったのか…だが)

チェリム (ミカゲ、さん)

僕たちは、『オラシオン』の曲に聞き惚れる。
アリスが祖母アリシアより受け継いだメロディー。
争いを沈め、安らぎを与える…壮大な曲。



………。



ディアルガ 「………」

パルキア 「………」



………。



ミカゲ 「………」

聞こえる。
私の耳にも…メロディーが。
何て…心地、いい……

ミカゲ 「……」

私の肉体は…すでに朽ち果て、もはや人間としての原型を留めていないようだった。
何も見えないし…何も感じない。
でも…音は聞こえる、安らかになれる…メロディーだけが。



………。



パルキア 『…ふ、どうやら、ここまでのようだ』

ディアルガ 『どこか懐かしい…以前にも聞いたことがあるようだ』

パルキア 『…どうやら、俺達はとんでもないことをしでかしたようだ』

ディアルガ 『…かもしれん』

我々は、崩壊した街を見る。
人々は怯え、ポケモンはすくむ。
我々の戦いに、生きとし生ける物が、震え上がったのだ。
そもそもは…我々の起こした戦いだ。

パルキア 『ふ…悪いが、後のことは任せる』
パルキア 『やることだけはやっておくがな』

ディアルガ 『逃げるのか? 貴様はいつもそうだ…自分だけ逃げようとする』

パルキア 『耳が痛い…だが、互いに望んだ道のはずだ』
パルキア 『今回の戦いは、そもそもお前が仕掛けた物だ。俺は迎え撃ったに過ぎん』
パルキア 『それに…意識を失うほどまで暴れることになるとは…な』

パルキアは、そう言って虚空を見つめる。
その表情は…ある事を示していた。

ディアルガ 『…なるほど、そういうことか、気に食わんな』

パルキア 『というわけで、俺は逃げる』



ギュゥゥンッ!! グオオオオオオオォォォォッ!!

パルキアはさっさと別の空間を切り開き、逃げる。
だが、その際…崩れた街を元に戻していく。
パルキアの作り出した空間で消えたものだ…ゆえにあいつが空間を元に戻せば、全てが元に戻る。

ディアルガ 『ふん…自分勝手な奴だ』

私は、地上に降りていく。
私には…まだやることがある。



………。



マニューラ 「な、何だ!? ディアルガが降りてくるぞ!!」

ミカルゲ 「どうして? もう何もないでしょう!?」

ムクホーク 「…とにかく行くぞ! これ以上、好きにさせてはおけん!!」

マニューラ 「ちっ…まだ面倒ごとかよ!!」

ドクロッグ 「レンとチェリは…上か」

マニューラ 「今は放っておけ! あそこじゃどうにもならん」

私たちは、4体でディアルガが降りていく方向へ向かう。
ここからは、少し離れている…あの位置は、多分。





………………………。





『某時刻 ????????』


ミカゲ 「………」

ディアルガ 『…哀れな、人間が分不相応の力を得ようとするからそうなる』

ディアルガが私に対して、そう言う。
何故だか、ここでは今の私でもディアルガがいると認識できた。

ディアルガ 『ここは…私が一時的に作り出した空間だ』
ディアルガ 『すでに滅びを迎えつつある人間よ…今は、生きるがいい』

ミカゲ 「……?」

私は自分の体を見てみる。
この空間では、私は体が動く。
見ることができるし、聞くことも出来る。
そして、私は自分の体を見て驚く。

ミカゲ 「!?」

私の体は…真っ黒…皮も肉もない…まるで紐人間の様な体をしていた。
髪の毛だけは何故か無事なのか、千切れ千切れながらも確認できた。

ディアルガ 『それが…今のお前の姿だ』
ディアルガ 『過ぎたる力を行使した物の末路だ』

ミカゲ 「………」

ディアルガ 『だが…今回のことは我々に非がある』
ディアルガ 『だから…今回だけは、お前を生かしてやろう』

パァァァァァァァッ…

ミカゲ 「!?」

ディアルガの体が光ったかと思うと、私の体はたちまち光に包まれ、少しづつ人の形を取り戻していく。
見る見る内に、私の体は元通りとなった。

ミカゲ (…ディアルガ)

ディアルガ 『忘れるな人間よ…その力は決して人間が持っていていい力ではない』
ディアルガ 『いずれ、その力に滅ぶ日が来るだろう…今回は、ほんの少しそれを伸ばしたに過ぎない』
ディアルガ 『さらばだ…恐らくは、もう会うこともないだろう』
ディアルガ 『例え少しの間でも…好きに生きるがいい』

キュィィィ…

ディアルガは再び光に包まれる。
そして、今度は眩いほどの光を発し、私は視界が真っ白に染められた。





………………………。





? 「…ゲッ!」

声が聞こえる。
何だろう?

マキ 「ミカゲ! 起きて!!」

ミカゲ 「!?」

ガバッ!!

私は、突然のことに勢いよく起き上がった。
私は…すぐに周りを見る。

マキ 「ああ…よかったぁ」

ダイ 「どうやら、無事だったようだな!」

カツミ 「僕たち、助かったみたいだよ! 街が元に戻ったんだ!!」

ミカゲ 「……」

ミカルゲ 「…ミカ」
ムクホーク 「ホーク」
ドクロッグ 「ググッ」
マニューラ 「ニュラ…」

私はポケモンを見る。
全員が全員、ボロボロになっていた。
そうか…夢なわけ、ないものね。

シュボンッ!×3

私はミカルゲ意外をボールに戻す。
そして、ゆっくりと立ち上がった。

マキ 「あ、まだ起き上がるのは!」

ミカゲ 「構わないで…」

私はマキの言葉を無視して歩き始める。
『かなめいし』をバッグに入れ、私はミカルゲと共に歩く。
すると、私の前方から駆ける人影がふたつ。

アリス 「ミカゲーーー!!」

トニオ 「やったよ! 全部終わったんだ!!」

レントラー 「レーーンッ!」

チェリム 「…チェリ」

ミカゲ 「……全く、鬱陶しかったわ」

私は、レントラーとチェリムが無事なのを確認すると、その場で膝から地面に落ちる。

ドサッ!

アリス 「ミカゲ!?」

マキ 「ああっ! だから言ったのに!!」

私の体はアリスとマキに抱えられる。
情けないわ…この程度で。

トニオ 「ありがとう…ミカゲちゃん」
トニオ 「君のおかげで、間に合ったんだ」

ミカゲ 「…礼なんていらないわ、私は自分のためにやったことよ」
ミカゲ 「それより、いつまで私に触れているのよ…離して」

マキ 「もう…どうしてそんなに突っ張るかなぁ」

アリス 「うふふ…あなた、相当な強がりなのね」

ミカゲ 「…鬱陶しいわ、とにかく私はポケモンセンターに行くわ」

カツミ 「そうだね! 皆で一緒に行こう!!」

ダイ 「ああ! 眠っていたポケモンも起きたしな!!」

アリス 「…あ」

トニオ 「アリス…」

ミカゲ 「……」

私は、何も言わずに歩き出す。
そう…ダークライだけは、消えたまま。
それだけは…元には戻らなかったのね。
私は…生きているのに。





………………………。





『12月25日 時刻:14:00 アラモスタウン・コンテスト会場』


司会 「さぁ、ついに決勝も大詰め! 果たして優勝を手にするのはどっちだぁ!?」

マキ 「ゴウカザル! 『かえんほうしゃ』!!」

ゴウカザル 「ゴウ!!」

ミカゲ 「マニューラ…『れいとうビーム』から『つばめがえし』」

マニューラ 「マニュッ!」

ゴオオオオォォッ! コオオオオオォォォッ! バッジュウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥッ!!!

ゴウカザルが炎を吐き、マニューラが『れいとうビーム』を放つ。
それらは接触すると一気に水蒸気を巻き上げ、視界を奪った。

マキ 「くっ! 攻撃が来る…ゴウカザル『インファイト』!」

ミカゲ 「遅いわ」

ザシュウゥッ!!

ゴウカザル 「ゴ…」

ドシャァッ!!

司会 「あーっとぉ!? ゴウカザル、ダウン! 続行できるか〜!?」

ブブーーーーーーー!!

審判の3人が、続行不可能を宣言。
これで、結果は出た。

司会 「あーー! ゴウカザル・バトルオフ!! よって優勝は!! ミカゲさんだーーーーーーー!!」

ワアアアアアアアアァァァァァァァァッ!!

マキ 「ま、負けた…それもこんな完璧に」

シュボンッ!

マキはゴウカザルをボールに戻し、うな垂れる。
さすがに、実力の違いに絶望したところかしら。
でも、実際にはこんな物でしょうね。

ミカゲ (まぁ…退屈しのぎにはなったかしら)

シュボンッ!

私もマニューラをボールへ戻し、表彰式を待つ。
まぁ、グランドフェスティバルの馴らしとしては上出来かしらね。



………。
……。
…。



『時刻14:30 アラモスタウン・出入り口』


マキ 「ミカゲ…もう行っちゃうんだね」

ミカゲ 「そうね、元々コンテストが目的で来たもの、これ以上用はないわ」

ダイ 「そうか…しかし、バトルもコンテストも凄い実力だった!」

カツミ 「うん! 君を見てたら僕たちももっと頑張ろうって思えたよ!」

3人はそう言って、笑う。
何と言うか…馬鹿が3人集まれば、とでも言うのかしら?
向上心と言えば聞こえがいいけれど、私に対してこうも明るく振舞えるのが馬鹿馬鹿しく思えるわ。

アリス 「ミカゲ…本当に、ありがとう」

トニオ 「気をつけてね、君の活躍をここから応援してる」

ミカゲ 「必要ないわ…私は自分のために戦っているもの、誰かの応援なんていらないわ」

マキ 「もう! ミカゲってどうして素直じゃないのか…」

全員が笑う。
私はいい加減鬱陶しくなり、背を向けた。

ミカゲ 「…まぁ、覚えておいてあげるわ」
ミカゲ 「あんまりにしつこいから、今回のことは特別に覚えておいてあげる」
ミカゲ 「それじゃあね」

私は軽く手を振って、別れる。
全く…お人好しの集団だわ。
私のみたいなのにあんな明るく振舞うなんて、どうかしてるわ。

ミカゲ (でも…)

不思議と、そこまで嫌じゃなかった。
こんな気持ちになったのは久し振りかもしれない。
でも…今の私にそんな気持ちは必要ない。
仲間意識なんて御免だわ。

ミカゲ 「…どうせ見てるんでしょ、カミヤ」
ミカゲ 「余計なことは報告するんじゃないわよ」



………。
……。
…。



『同時刻 HP団アジト』


カミヤ 「やれやれ…しょうがない娘だ」
カミヤ (それにしても…突然通信が途切れて、急に元に戻った)
カミヤ (計器類は何も変わりなし…何も、無かったのか?)



………。
……。
…。



ミカゲ 「……!?」

ビュオォォォォォッ!!

私は、突然吹いた強い風に驚く。
そして、そこから先に見える、ある光景に私は目を奪われた。

ビュゴォォォォッ!!

ダークライ 「………」

ミカゲ (…そう、あなたも)

ダークライ (ギラティナ…今回は、例を言う)

私たちは、目だけを合わせ言葉は交わさなかった。
だけど、互いの考えていることは、不思議とわかった気がした。
ふん…鬱陶しいわ、本当に。

ミカゲ 「………」

ダークライ 「………」

私は再びホウエン地方に向けて移動を始める。
グランドフェスティバル…次の目的はそれだ。
面白そうなコーディネイターも見た、今回は楽しめるといいわね…



…To be continued




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