Menu

<<ボクにはおねえさんがいた>>

「ただいま…」

「お帰りなさい。学校は楽しかった?」

「おねえさん…」

「元気がなさそうね。なにがあった?」

「うん…」

「…まさか、またいじめられた?」

「うん…殴られたかも」

「…ケガがない?」

「う、うん。へーき」

「先生に告げた?」

「告げたの。でも信じもらわなかったの」

「その前に、誰かがはるみに殴られたって、先生に伝えた?」

「うん…そうみたい」

「あの連中も、あの担任も…まったく…」

「で、でも、先生だってなにも知らなかったよ。もしボクが先生だったら、ボクもきっと…」

「あーあ、こんな時まで先生をかばいたい? …優しすぎるよ、はるみは」

「ヤサシスギ?」

「はるみ、あの先生が好き?」

「…きらいじゃない」

「好きでもない…でしょう?」

「…好きでもないみたい」

「じゃあ、どうして先生をかばった?」

「先生、悪いことしなかったから。ただ、本当のことを知らなかった」

「それは優しすぎというのよ」

「ボク、やさしすぎ…?」

「そう、優しすぎよ。あの連中をギタギタのパーにしてもいいのに」

「で、でも、あの人達、…」

「悪いことしなかったって、じゃないでしょう?」

「…わるいことしても、わるいひとじゃない」

「どうしてそう決めた?」

「生れの悪い人、いないよ。わるいひとでもなかったら、殴るのもかわいそう」

「はーぁ、やっぱり、優しすぎるな」

「ボクはやさしいじゃなくて、ただ…」

「もういい。…しかたないね。姉さんは転校する」

「え、ええ!? おねえさんは、ボクの学校に…!?」

「そう」

「で、でも、おねえさんの学校に、お友達がたくさんいるじゃない?」

「はるみだって、クラスメイトの子達を友達にしたんでしょう?」

「う、うん」

「そう? だったら、姉さんが転校しなくちゃ」

「そ、そんな…」

「はるみ」

「…おねえさん?」

「はるみは、わるい子?」

「い、いい子だもん」

「姉さんもいい子と思うよ。だから、姉さんの言う事を聞くのは、いい子の仕事」

「…おねえさん」

「ね?」

「…うん」

「いい子、はるみ」


ありがとう、おねえさん…。


*****************************************


「おぃーやおぃや、はるみじゃないか。随分とヘンピなとこまで来たな。何のようぜ?」

「…花さん」

「はぁ?」

「花を見に来たようだ。こいつ」

「なーに、花を見たかったら姉貴を…」

「何も出さないわよ」

「ちぇっ」

「…おまえ、ボーっとしてるか? 花はいったいどこに?」

「…ここ」

「おぉ、そこに花か…一本しかないぜ」

「一本の花を見るためにここまで行った…なかなか根性出したわね、はるみくん」

「…この花さん、ボクが植えたから…綺麗…と思わない?」

「だから、姉貴…」

「なにも出さないって、言ったんじゃない!」

「ちぇっ」

「おまえ…俺、あの花を踏み潰したら、どうする?」

「え…」

「質問よりも実験のほうがはやいんだ。よし、俺様のグラフィティーステップ!」

「い、いや!」

「もう踏んだわよ」

「い、いや…どうして花さんを…」

「そんな花より、花を踏み潰した、この新品の靴の方がずっと綺麗だ。…もっとも、おまえのせいじゃなかったらもっと綺麗なのをもらえたけど」

「花さん…ひっく」

「臆病者め。おまえは何をわかる!? おまえのせいで俺はどんな酷い目に合われたと思う!? 一位を落ちた!?って! なのに、おまえは野花一本のせいでぴいぴい泣いてる!? 笑止!」

「そんなん怒らなくてもええわ、てんと様。ここで折檻を返してやろう。ちょうど今朝、おいらはおやじに叱られたぜ?」

「なんだ、そんなことか。はやく言ったらいい…一暴する」

「あ、あ…」

「ホント、乱暴だわ。ちょっと紳士に精進したらどう?」

「へへ、おいらはじゅうぶん紳士的だ。おんなを殴った事無いぞ」

「もうどうでもいい。気分だけ任せろ!」

「そうよね。スカートの下に隠れ込まれたのも返礼しなくちゃ」

「い、いやー!」

「そう言われてもねぇ…」

「待ちなさい」

「おぉ?」

「お、おねえさん」

「こっちにおいで、はるみ」

「うん…」

「おぃーやおぃや、おねーちゃんの初舞台かー」

「面倒くせぇ…誰でもいい! 一暴しないと気ぃ済まん!」

「あなた、本当に女か? 女の敵をかばってるのよ、あなたは」

「じゃあ、そっちこそ女か? イヤ男とバカ男と一緒、一人の子を殴るなんて、女だったら生理的嫌悪というもの、感じないか?」

「お、おい! 誰と誰よ!」

「てめえ…死にたいのか」

「この女…あんたたち、この兄弟を殴れ!」

「言わなくてもそうするさ…」

「でも、いいかい? 紳士は女を…」

「もういい! バカ男!」

「くっ…姉貴まで…まぁいいか。おねーちゃんはおねーちゃんだから女じゃないぜ。姉貴も姉貴だからなぁ…」

「なに屁理屈を…さあ、いくわよ!」

「はるみ、姉さんのうしろに!」

「う、うん」

「えいーーー!!!」

………。
……。
…。

「おねえさん、つよい」

「はるみ、ケガがない?」

「うん。おねえさんのおかげで。でも、花さんは…

「姉さんと一緒に、新しい花を植えない?」

「えっ?」

「植えない?」

「うん! ありがとうおねえさん」

「…ここに転校するとよかった」

「え?」

「そうでないと、はるみを守ることができないじゃない? かわいい弟を守るために戦うなんて…なんだか『かっこいい』よね」

「も、もう…からかわないでよぉ」

「それにしても…さっき、スカートの下に隠れ込まれたって、いわれない?」

「う、うん」

「…ホント?」

「…ホント」

「…なんのために?」

「だ、だって、面白いもん…大きな傘みたく、涼しくて気持ちよさそう。ついでに引き降ろしたくなった」

「…ズボンの方は?」

「ズボンの方も引き降ろしてみたけど、失敗しちゃった」

「…先生たちのスカート、引き降ろした事、ある?」

「あるよ。机の下を通して先生のトコまで行って、それで…」

「…はぁ…はるみ、たしかに一番うしろの席に座ってる?」

「うん。だから、大変だったよ。でも、授業は易しすぎて退屈だもん。それに、ボク、スカートを引き降ろすのが上手」

「じょ、上手って…先生達がいつもあの人達を信じる事、なんとなくわかる気がする…」


おねえさんの勇姿…一生忘れられないほど、かっこいい…。


*****************************************


(うぅ…トイレトイレ…急がなくきゃ…)

パンッ!

「がっ!!!」

「あぃーやあ、いーたーいー!」

「が、が…!!! ぐ、ぐ…!!!」

「ひっどーいーよー、ふーらーふーらーしてるよー」

「が、が…!!!」

「おお、これは大変だ! おでこに歯印が出てる!」

「さあ、保健室まで運びましょう! 私とふたりで」

「ああ、あとで先生にも告げるか」

「はーやーくーよー」

「はいはい。さあ、いくわよ」

「が、が…!!! ぐ、ぐ…」


「ひでぇよぉ、てんと様。そんなことさせるなんて」

「これはわるい。でもな、いい奇襲だ。あいつもそこそこ仕打ちを受けただろう」

「とーぜんよぉ、歯印だけじゃなくて高い山も血も出てるよぉ。ぶつぶつ」

「しかたないでしょう。そんな機会、もう二度こないかもしれないから。あの姉は休むなんて…これでスカートのことも復讐したわね。うふふ」

「姉貴、こわーい」

「なにをいった?」

「いーえ、なんでもないでござる」

「しっかりしろよ、これくらい。あの女と格闘するよりマシだろ?」

「そう言われても…」

「まっ、『姉貴』がおまえの介抱をするだけで、やる価値はじゅうぶんあるだろ」

「…そ?」

パン!

「うぅ…病人にそんなことするかよぉ! …せめて『なにも出さないわよ』っていったらええのにぃ…」

「余計なお世話よ」

「うぅ…あ、てんと様、どこにいく?」

「愚問だ。第二回の作戦はまだまだだろ」

「てんと様、残酷ぅ」

「ふんっ…くだらんこと言うな。残酷こそ世の本質だ」


「一体、何をしてた? ここは学校だ!」

「………」

「はるみ!」

「……」

「無言では済まないぞ、それは! 学校は遊園地じゃないって、おまえならもうとっくにわかってるだろう!?」

「………」

「ふっ、いいか。以前からおまえに関する苦情は多かった。おまえの誹謗中傷を聞かなくてよかったぞ。何度も言ったが、成績だけで何のことでもない! 他の人はどんなにおまえをほめても、致命な弱点を覆うことができまい! たしか校長先生がおまえのことが好きだ。でも、風紀担当の私にとって、品行なしはゴミ同然!」

「……」

「わかったか。いまの私はすごく怒ってる。今度だけは見逃させない。生徒手帳を出せ」

「……」

「よし。そうでないとおまえも反省するように見えない。もっとも、おまえのような憎まれっ子には、『反省』という語彙さえもわかんないかもしれん。もし今度があったら、退学だぞ。うちへ帰ってかべに向いて自分の過ちを存分に思え!」


おねえさん…
おねえさん……
おねえさん………


「あら、はるみ。お帰りなさい」

「うぅ…ひっく」

「…はるみ?」

「うぅ…うぅ…うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ…!!!」

「は、はるみ!?」

「うえぇぇぇぇぇぇぇぇ、ひっく、うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ…!!!」

「何、はるみ!? …あっ、口に血が…!?」

「うえぇぇぇぇぇ、おええあん、おええあん! ひっく」

「は、はるみ? 声が…」

「ごご、ごご…ひっく」

「手のひら…? あっ、は、歯!? 三本も!?」

こく。

「ね、はるみ…ここにおいで」

「ひっく…ひっく…おええああん!!!」

「ごめんなさい、ただちょっと風邪ではるみを守らなくて…だめ姉さんだね」

「おええあん、おええさん!!!」

「でも、姉さんは今ここにいるよ。もう脅かさなくてもいいよ。姉さんはいつでもはるみのそばにいるから。もう離れないから…」

「うえぇぇぇ…ひっく…おええあん」

「いい子、はるみ。今はいいから後で姉さんに教えてくれる? さっきの出来事」

「ひっく…うん…おええあん」

「…私はいなくてもはるみを守れる方法を探さなくちゃ」

「ひっく…うん?」

「ううん。独り言よ。今は何も考えないで泣いて」

「うん…ひっく、おええあん…ひっく、うえぇぇぇ…!」


おねえさんの両腕の、胸の中のぬくもり、今までも体中に、刻んでいる…


*****************************************



「おい姉貴、てんと様の成績、知ってる?」

「知らないわよ」

「知りたいなぁ…てんと様に聞いたら?」

「知ってても知ってなくても、あの顔は一位じゃないってことを主張してるじゃない。これでも聞きたいなら、どうぞごゆっくり」

「ちぇっ、つまんないこというな。でもこれで…連続第八回じゃねえか? いい加減にしてほしいよ。それに…てんと様の言葉によって、今回の試験、ずいぶんと順調じゃなかったか? やっぱし、気になるべ」

「お、おい、マジかよ、バカ!」

「なーに、ちょっと覗きに行くだけさ。心配ねぇぜ」

「うわー、君、アベレージ、98.7なの? すっごーい! これで一位でしょう? えっ、に、二位って…?」

「…あの転校生だわ」

「…あいつ、何を…」

「転校生…死んだことある?」

「えっ、え?」

「…バカ女だわ…」

「…もうなにも知らねぇ…」

………。
……。
…。

「おめでとう、はるみ。一位でしょう?」

「うん、ありがとうおねえさん。でもね、隣のクラス、大騒ぎ。あのいつも二位の人、クラスの女の子を殴りたくて、そしてクラスメイト達はふたりを引き離そうとして…とにかく大騒ぎだったよ」

「そう。じゃあ、今日は気を付けた方がいいよ」

「だいじょうぶ。おねえさんと一緒だから。…ねえ、おねえさん。ボクときどき考えるよ。『成績』というのは、どんな価値があるかなあって。どうして一位なんかのために、人間は自分まで見失ったかなあって…ボク、そんなのより、おねえさんのそばにいて欲しいよ」

「うふふ…お上手ね、この子は」

「うぅー、ホントだもん…」

「偉そうに…」

「え?」

「この世間知らず…今ここで、世間の残酷さを教えてやろう」

「ま、またおめえか!」

「お、おいら達もいる…ぞ」

「なにを呑気している。さあ、ここは無人だ。ちょうどよかった」

「で、でも、あのおねーちゃんが…」

「友だろう、二人」

「そ、そうだけど…」

「では、今日は俺のタマタマのわがままを聞いてくれ」

「姉貴ぃ…」

「行くしかないわね…」

「えい、行け、野郎共!」

「あっ、はるみ!」

「うえっ!」

パン!
ピシャ!

「はっはははは、はるみ、下水道に落ちたか。楽しかったー?」

「はっ…はくしゅう! き、汚い…」

「……」

「おい…早く離れる方がいいよ。おねーちゃんは…」

「……」

「そ、そうよね。敵討ちもすんだでしょう?」

「……」

「ふむ。これで大分、すっきりしたんだ。帰る!」

「ただでは済まん」

「お、おねえさん」

「バイバイ、お二人さん。下水道風呂にも入る気か?」

「ただでは済まん、と言っただろう!」

「そうだ。これは確か、ただでは済まないな」

「えっ? 誰の声?」

「せ、せんせい…」

「!」

「この三人…こっちに来なさい。教員室に、少し話がある。君達、はるみ君を保健室に運んで。後で…はるみ君、お姉さんと一緒に、教員室に行きなさい」

「はい…」

「…君達は?」

「姉さんの友達だよ」

「あ、そうだ。みなさん、さっきのことを見て先生を連れ来たか! あ、ありがとうございます!」

「ありがとを言うなら君の姉さんにな。君の姉さんに『はるみ守護』という依頼を受けたからな」

「おねえさん…」

「まっ、早く保健室に行く方が良いな。下水道の汚水は人間界の地獄血河(プレゲトン)と言うからな。早くいかないと肉は血化するぞ」

「…そう?」

「いいからな!」

………。
……。
…。

「本当にすみません。私の間違いだった。学校側の代表として、あなたたちに陳謝する」

「これだけですか?」

「え?」

「先生の間違いのせいでこの子が受けた痛み、一言で償えますか?」

「これは…仕方なかっただろう」

「おねえさん、もういいよ…」

「仕方なかったんですか? この子、もう何度も先生に真実を告げたと聞きましたけど。あのとき、先生も私の言う事を信じもらえなかったです。ところで、今になったら、あの記録を消してもらう方が良いんじゃないですか?」

「学校の制度にはちょっと…」

「おねえさん、帰ろ…」

「あの日のことはまだ覚えていますか、先生? 少なくても歯が三本も落として口からバラバラと血が流れる生徒には、少し介抱する方がよかったんじゃありませんか? それに、実際に何を言われたって知っていないですが、この子の様子によると、随分とひどいことに間違いないでしょう! 偏見を抱いてるこそ、先生失格と言います!」

「ちょっと…これは教師に対する態度?」

「おねえさん…」

「先生失格の先生には、そういう態度ですから。いい? 先生達には変わった子かも知れないですけど、はるみはあの連中を憎むことも出来ない天使のような子です! 先生とはまったく違う、まだ純粋な人間なんです!」

「くっ…おまえ、いい加減にして!」

「おねえさん、言い過ぎ…」


ボクなんかのために、おねえさんはそこまで…ごめんなさい、おねえさん…。


*****************************************



「ただいま、はるみ」

「あ、おかえり、おねえさん」

「姉さんね、いい子のはるみに、プレゼントを買って来たよ。くすくす…ワンピースのスカートだよ」

「わい、スカートだ! …え…えーーー、すかーとぉ!?」


「そうよ。ほら見て。かわいいでしょう?」

「かわいい…けど、ボク、スカートなんて…」

「きっと似合ってるよ、はるみだったら。ほら、着てみて」

「あ、で、でも…」

「はるみ、嬉しい?」

「…すごく嬉しいけど、ボク…」

「男の子だから?」

「…うん」

「バカね、はるみ。女の人だって、ズボンをはいてるでしょう?」

「うん」

「じゃあ、答えて。男の子は、スカートをはいていけない理由を」

「…わかんない」

「だったら、教えてあげる。…文化だからよ」

「ぶんか?」

「そう。はるみは知ってると思うけど、スコットランドの男の子、みんなスカートをはいてるよ」

「これ、知ってる」

「じゃあ、これも知ってる? 医者の間違いが原因で、ある四人の男の子の兄弟、二十年近い、姉妹として生きてたよ。そしてある時期、彼らは自分達が『男』だということに気づいて、みんな男に戻ったよ」

「それも知ってるよ。実、もとより男だからなにもかわらないけどね」

「そうよね。スコットランドの男の子も『男』に戻る前の男の子も、ほかの男の子と一緒、ごく普通な男の子だよ。なのに彼らはスカートをはいても大丈夫で、ほかの男の子はいけなくて、変じゃない?」

「変」

「これは文化というのよ。もしあの四人は気づかないまま大人になったら、スカートをはいてるまま、男の人と恋愛し、結婚するでしょう? 誰も『彼らは男』って事実を知ってない以上、誰も彼らを変だと思わないよ。でも、『男』に戻ってから、もうスカートがはけない。とても理不尽だね」

「なんだか、ゲームみたい」

「…はるみ、鋭い。そうよ、あれはゲームだよ。このゲームのルールは、文化というの。でも、つまらないゲームだから、はるみは遊ばなくてもいいよ」

「ホント?」

「ホント。あ、はるみ、スカートがカサみたいって、言ったんじゃない?」

「うん。ボク的感想だけど」

「実はカサとスカート、おんなじなのよ」

「え?」

「古代のヨーロッパ、カサは女性の特権品だと、知ってる?」

「知らない」

「うふふ、よかった。そんな弟に勝てるなんて、嬉しいな」

「もー、つづきよ、知りたいよ」

「あの時、もし男はカサをさしたら、みんな、あの人のことを『変態』とか『女々しい』とか見たよ。だから、大雨か大雪のとき、男の人はみんなぶしょぶしょになった。かわいそうだったね」

「うー、不公平」

「でしょう? そして、ある男性は、他人の目を無視して、カサをさして町中を歩いた。そうしてね…数十年後、あの方も死んでたあのとき、カサはみんなの日用品になった。めでたしめでたし」

「勇気があるお方だね」

「今更になってステキな男性だけど、彼の生きる間に、ただの変態よ。今の人達に、彼を変態だと指摘した人達こそ変態かもしれないけどね」

「それは、文化?」

「そう、文化」

「不思議」

「うん?」

「おねえさん、そんなにたくさんなことをわかってる…それに、おねえさんの言葉ってだけで、妙に説得力がある。ボク、一日間十年も大きくなった気がする。すごい、おねえさん」

「…不思議な弟がいるから、姉さんも不思議になってるよ」

「おねえさん、遠い目をしているぅ」

「気のせい気のせい。さあ、姉さんのいうことをわかったら、早くスカートを着て」

「うん。…ホント、綺麗…スカートというより、小さなドレス…高い?」

「ううん、はるみの愛着になる可能性があるだけで、ちっとも高くないよ」

「おねえさあん…」

「はるみ、本当に甘えん坊だよね」

「だって…おねえさん、いつも自分のことより、ボクのことを大事にしてる。この前もうちの学校に辞められた…」

「姉さんの目的は、はるみを保護するだけ。あの人達を懲らしめたら、あの学校に辞められてもいいよ。それに、イザというとき、姉さんの友達もいる。だから、姉さんはちっともつらくない」

「おねえさん、大好き…」

「姉さんが好きだったら姉さんの買ったスカートを着てね。それから、ちょっと外を散歩するっか。はるみと一緒に」

「えぇ?」

「姉妹ごっこ。うーん、そうね、今からはるみは晴美になる。「晴れ」の「晴」と、「美人」の「美」。晴美」

「…おもしろそう」

「おもしろいよ。さあ、はやくね」

「う、うん…はい!」

………。
……。
…。

「お待たせ…」

「あら、とっても綺麗じゃない?」

「き、きれいって…女の人に対する賛辞って、先生に言われた…」

「忘れた? 今のはるみは、姉さんの妹、晴美だよ。それに、本当に綺麗だから、仕方ないでしょう」

「だったら、おねえさんもかっこいい」

「あら、いつの間にか兄妹ごっこになってきた? 姉さんは姉さんのままだよ」

「あ、そうだ。でも、本当のことだから…」

「うん? なに?」

「ううん、なんでもない」

………。
……。
…。

「おばちゃん、こんにちわ」

「こんにちわ、今日のニンジンはとても新鮮だよ…あら、いつの間に妹さんができたのかい?」

「くすくす…さあ、おばちゃんにあいさつして」

「…えっと…あの…こ、こんにちわ…」

「あらあら、内気でかわいい子ね。名前はなんだい、小美人」

「…(っぽ)」

「照れてる? ホンットにかわいいな、この子。ちょっと抱かせあげない?」

「ええ、どうぞ」

「でもなぁ、ホントになんなのよ、こりゃあ。いきなり妹ができたはずないな。親戚の子? …どれどれ…あらまあ、あのはるみじゃないか!?」

「くすくす…さあ、おばちゃん次第よ」

「あいや、はるみ、スカートを着たら女の子にピッタリや! おばちゃん、びっくりしたよ」

「やーっぱり、おばちゃんには隠し通せないね」

「とーぜんとーぜん。そう見てもこの辺の人達の御用新聞社だからよ。…でもなぁ、ホントにかわいいよなぁ、はるみ」

「…(あっ)」

「この照れ顔もそそるね」

「…(うっ)」

「おばちゃん、からかわないでよ。この子、そういうのがよわいから」

「あはは、わりぃわりぃ」

「おばはーん、ニンジンやニンジン。待っとるわ」

「あぃや、わりぃな、にいちゃん。どのニンジン?」

「じゃあ、私達も行くよ」

「ああ、またな、小美人」

「またね、おばちゃん」

「…バイバイ、おばちゃん」

………。
……。
…。

「おぃーやおぃや、はるみじゃないか…おっ!? …こりゃ、ス、スカートっすか?」

「…やっぱりこいつ、スケベだけじゃなく、変態だわ」

「へ、変態じゃないもん」

「しーっかし、ホントによく似合ってるな…もしかして本当に女なのかい?」

「いや。昔に確定した。確かに男だ」

「そうでやんすか。うん…じゃあ、はるみちゃん、なんで女装してるかい?」

「…おねえさんのプレゼント」

「なーに、ホントに変態なのはあの男女か。盲点だったな」

「あーら、私は昔から疑ってたがね。変態おんなはみんなそうだから」

「さすがに姉貴でござる。おいらの場合、とっくに男だと思ってたぜ」

「お、おねえさんの悪口を言わないで!」

「おお、めずらしいな、こいつもそんな顔できるか」

「で、肝心のおねーちゃんは?」

「ト、トイレ」

「バカな姉ね。そんなかっこしたら女便所に入っても何の問題もないじゃない」

「ちがうよ…一人でも大丈夫だって、おねえさんにお願いした」

「…まあ、今日はタマタマここに行ったと本当によかったな。前回のせいで俺は親に一週間連続折檻されたからな…」

「どれどれ、このスカート。綺麗だけど生地が丈夫かどうか、わからないからな。おいらはテストするよ。スペシャルサービスだぜ。感謝してやんな」

「ひょっとしたら下のも女のやつかもしれないわね…覗きの仇もあって、あの男女はどれぐらい変態なのも気になるね」

「い、いや! 近寄らないで!」

「ヒッヒー、まるで女を犯してるみたいな。グッドフィーリングだぜ」

「下品な…まっ、こいつならいいけど」

「さっ!」

ピシーッ!

「なんじゃ、高そうなのにちっとも丈夫なんかじゃねえべ」

「あ、あ…!」

「あーあ、男のやつわね。まっ、まだ小学生とはいえ、これくらいってことよね。後は知らないけどね」

「あ…」

「なんだ、泣きたいか。だったら泣けよ。泣顔は似合うからよ。女っぽい」

「………」

「やーい、泣いてる泣いてる! 女っぽいは泣いてるんだー!」
「泣顔に破られたスカート…いやあ、実はいいんだぜ! カメラでも持って来たらええのに…」

「下品。さあ、そろそろ帰るよ」

「ははは、そうよな。今日は…ぐば!」

「!?」

「スカートを返して」

「は…おまえ、上等…!」

「おねえさんのプレゼントを返して!」

「おい、普通じゃないぞ…」

「…やはり、帰りましょう」

「どうしてそんなことしたよ!? どうしてそんな大切な物まで破壊したよ!? ボク、君達を傷むこと、してないのに!? おねえさんまで傷むこと、ぜったいに許させない!」

「おい、逃げろ…」

「そうね…」

「俺様が殴られたのに逃げる…相手はただこいつだ!」

「き、気を付けろ!」

「どうして!?」

「ぐ…」

「スカートを返してー!」

「おっ…」

「許せない!」

「あぅっ…」

……。
…。

「はぁ、はぁ、はぁ…おねえさん」

「知っていたの?」

「うん。ずっとそこにいるって」

「…かっこよかったね、はるみ」

「おねえさん、ごめんなさい…スカートが…」

「ううん…はるみ、よくがんばった。姉さんは嬉しいよ」

「おねえさん…おねえさん…ひっく」

「本当、甘えん坊ね。姉さん、はるみの笑顔を見るためにスカートを買ったよ。だから、ね?」

「ひっく…う、うん、おねえさん」

「いい子」

「…おねえさん、ボク、もう他人のスカートを引き降ろさない」

「そう。いい子」

「ねえ、おねえさん。どうしてさっき、いつものように出なかった?」

「姉さんとして、弟の勇姿を見たかった。ダメ?」

「ううん…おねえさんこそ、かっこいいんだよ」


そう…ボクのおねえさんは、いつもいつもボクをかばって凛々しくてかっこいい女の子だった…。


*****************************************


「おねえーさん」

「うん?」

「おねえーさん、おねえーさん」

「どうしたの?」

「ううん、なんでもない。おねえーさん、おねえーさん」

「変なはるみ」

「えへ…」

「…はるみ」

「うん? おねえーさん」

「あれ以来、いじめられたこと、ある?」

「ううん、ないよ。おねえさんのおかげで」

「よかった…」

「今日のおねえさんね…」

「なに?」

「なんだかすっごく綺麗…思わず『おねえーさん』って、呼びたくなるよ」

「そう?」

「うん。美しいおねえーさん」

「うふふ…普段、みんな『男の子みたい』って言われてた分、『綺麗』とか『美しい』とか、なんだかくすぐったいな」

「あの人達、わかってないだけだよ」

「うれしい、姉さんは」

「もー、そんなさびしそうな顔しないでよ。おねえさんらしくない」

「…どんな姉さんでも、姉さんだよ。だから、どんなはるみでも、はるみ自身。わかる?」

「いきなりそんなむずかしい話題、出さないでよ。変な気分になるぅ」

「…はるみ」

「うん?」

「これからも強くなって」

「え?」

「外見のことではなく、心のこと」

「ココロ?」

「そう。はるみはつよい。姉さん、よくわかってる」

「ボク、つよい…?」

「はるみは根がつよいのよ。甘えん坊でも泣き虫でも、根がつよい。でも、いまのままじゃまだまだだよ。自分一人でも立派に生きられる…こうならなくちゃ駄目」

「一人で生きられる…」

「そう。たとえば…姉さんがいなくても、自分でいきられる。できる?」

「ん…想像できないもん」

「そうよね。だって、はるみはまだそんなに強くないよ。でも、いつかね…これ、はるみにあげる。日記ノートとして書き込んでね。そうして、大きくなったとき、これを読むと、どのぐらい強くなったのを確定して。姉さんと約束」

「うん、約束」

「いい子」

「えへ…ねえ、おねえさんの膝で寝ていい? おねえさん、制服以外、スカートをはく事、めずらしい。この上で寝るのは、なんだか気持ちよさそう」

「いいよ。おいで」

「…おねえさん、あたたかいよ。すっごく気持ちいい」

「はるみ…」

「あは…髪をなでられると、心が安らかそう…」

「はるみ…」

「おねえさんの両腕も、あたたかい」

「はるみ…」

「おねえさん、綺麗。おねえさん、大好き…」

「はるみ…!」

「おねえさん、どうして泣いてるの? 何か悲しいことでもあったの?」

「……」

「ボク、わるいことした? いまからいい子にしてるから泣かないで」

「……」

「ねえ、おねえさん、どうしたの? ボク、どうやっておねえさんを助けるの?」

「……」

「ねえ、どうして? ねえ…おねえさん? おねえさん? おねえさん、どこ? 一人にしないで…おねえさん、どこにいるの? ねえ、ねえ! おねえさん、おねえさぁーん!」


ドルルルルルルル、ドルルルルルルル…。

…夢か。くそ…どうしてそんな夢を見たよ。もう十三年も過ぎたのに…
心が締まってる。胸が裂きそうほど痛い。そう…これは切なくなるというのだ。
…おねえさん…本当に、どこにいる? どうしていきなり消えた?
…おねえさん、どうして、ボクをひとりにした? 会いたいよ、おねえさん…。
…もう一度、おねえさんに髪をなでられたい…おねえさんのぬくもりを感じたい…おねえさんにいい子と言ってもらったとき、おねえさんの胸の中にいたとき、気持ちが一番安らかだから…。

ドルルルルルルル、ドルルルルルルル…。

…ボク、くるしいよ。つらいよ。ボク、どうしてそんなボクになったさえ、わからないよ。ボク、駄目人間なの。
…おねえさんのそばにいたい…おねえさんを見つめていたい…。
…おねえさんのそばにいられたら、もうなにもいらない。
…ねえ、おねえさん…一体、何があった?あれ以来、ボクはずっと、自分の無力さを呪っていたよ。
…想い出ばかりを残して、気持ちを引きずったままでいたら、辛いだけって分かっているけど、想い出を乗り越えるっていうのは、言うほど簡単じゃないよ。
…おねえさん、本当、どこにいる? おねえさんに抱かれたい…おねえさん、どこにいる?

ドルルルルルルル、ドルルルルルル…。

「お姉ちゃん、電話、出なくてもいー?」

締めてある戸の向こうから近所のガキの声が聞こえる。

ったく、なぜボクは「お姉ちゃん」なのさ。三年前初めてあったとき、ずっとそう呼んでた…あのとき、あいつはじーっとこっちを見つめて、神妙な顔をしながら「お姉ちゃん」って呼んだ。そしてほかのガキ共も「お姉ちゃん」「お姉ちゃん」って…一刻、からかわれてるだとおもったけど、あいつらは純真無垢な真顔で…ヒゲまで出たのに…。
ま、「お姉ちゃん」のことより、いまこの場に別な気になることがあるのだがな。

「なぜボクがいるのを知ってるかい?」

「お姉ちゃんの声が聞こえるんだ。ひとりで喋る? 気持ちわるぅ」

あっそ。貧乏人のために我が家がとても狭くて、ベッドが戸のすぐそばにおいてある。それに、考える事を口走るのもくせになった。

「ああ、そうかい。耳がいいな、君」

「エッヘン。でも、やっぱりはやく電話に出る方がいいよ。まだ鳴いてるし」

ドルルルルルルル、ドルルルルルルル…。

うるさい電話だ…いまは電話に出る気がないのに…。

「ごはんよー、早く帰りなさーい」

「あっ、かあさんだ。あたし、もううちへ帰る。バイバイ、お姉ちゃん」

「あ、バイバイ」

ドルルルルルルル、ドルルルルルルル…。
…この電話、いつまで鳴くんだよ…。
それにしても妙だな。起きてからもう五分も経過したが、まだ鳴いてる。普通ならもうとっくに諦めたや。執念が異常深いというか、なんというか…やっぱり、出る方がいいかもな。

カラ

「は…」

「おっそーい! 寝坊したー?」

この元気(過ぎるかもしれない)な声は…黄さんだ。

「ああ、そうかもな」

「なによ、この返事。さあ、はやく来てよ。この遅刻常習犯」

おいおい、話が見えないぞ。

「来るって、なんのこと?」

「はぁ…? はるみ、今日はどんな日、わかってる?」

「あーー、あいつ、まさか!」

第三者の声だ。近づいている。

「ふっ、私の勝ちだ。さあさあ、20ドル20ドル」

「うっうっう…はるみの甲斐性なし!」

「悔しくねーよ。はるみに、我が損失の10倍を返してやらせる!」

「そうだろうそうだろう」

騒音も聞こえる。いつもの連中だ。あいつらはいったい…。

「おい、はるみ! やっぱり、わすれたぁ?」

「ち、陳さん…忘れたって、な…」

「テメエ…本当のつもりかよ…」

ボギボギ…ボギボギ…

な、なんだか険悪な雰囲気に…。

「カラオケ料、全部!」

劉さんの声だ…。

「作詩作詩、一人に一首ずつー!」

今度は林さん…。

「マンゴジュースビルミルクミックス、三杯だ!」

李さんもいるか…。
や、やべ…ちょっと調べる方がいい…日記ノート、日記ノート…2000年6月8日…11:00AM、陳さんの家で陳さんの二十歳のバースデーパーティーー!?

「た、誕生日おめでとう…」

「…むっ」

「ご、ごめん。ボクは悪かったよ」

「…むっ」

「べ、別に陳さんの誕生日を忘れたわけじゃないさ…ただ、今日は6月8日って知ってないんだ」

「…むっ」

「ほ、ほら、大学生だったら今、休み中だろう? 時間感覚が曖昧になって、それで…」

「…くっくっくっ、お仕置きしなくちゃ…おーい、みんな、提案あるー?」

ゲ、ゲームオーバー…。

「だからな、カラオケ料、全部!」

「いやいや、貧乏古風大学生は作詩に似合うんだ。一人に一首ずつー!」

「つまんないな、こりゃあ。あたい特製のマンゴジュースビルミルクミックス三杯、いかが?」

…おいおい、勘弁してくれよ。

「は・る・み、どれがいー?」


戦略の分析:

黄さん…ハイテンションな女。楽しかったらどうでもいいタイプだ。恐いもんは死んだ(?)ゴキブリだけ。

劉さん…ある大企業の準社長。とても太い。金持ちなのに他人から金を吸い取るのが趣味?

林さん…あるアニメを見て以来、ずっとボクを「詩人」と呼んでいた。校内有名なピアノの達者だ。気が向いたら、学校の音楽室を横取りし、ボクがうたを書くと詩うのをピアノ演奏の条件にして、みんなのプレッシャーを利用してボクを半強引に「うた」(らしき文)を書かせられた。こっちは「月島雫」でもないのに…。

李さん…変わった飲料オタク。母校の高校の近くにあった恐ろしい自動飲料販売機の唯一の宿敵だった。

陳さん…黄さんの大親友。性格も黄さんのそっくり。なのに黄さんの唯一の弱点であるゴキブリが怖がらない!?


結論:

あいつらが相手なら、自首の方がらくだ…。

「…カラオケ料、全部」

「皆の衆、よーく聞け! カラオケ料、みーんなはるみちゃんのおごりだよ!」

「おー」

「じゃ、はやく来てねー。じゃーな」

カラ

ったく、あいかわらず騒々しい連中だぜ…いつものように…。
いつものように…?
そうね、そうだったよね…。
ねえ、おねえさん。ボク、友達がいっぱいできたよ。男の子も女の子も、中国人から日本人まで…みんな、ボクを親切に扱うよ。ボク、彼らと一緒にいたとき、とても幸せだよ。
おねえさんもいたら、もっと幸せだけど…ほら、ボク、そんな贅沢なやつだよ。おねえさん、そんなボクを叱って。はるみ、そんなこと言わないで、これからもがんばってって…。


着替えを済んだボクは、ドアを開けた。
一面広がる青空とともに、あたたかな初夏の陽射しと、心地良い涼風がボクの頬をなでる。
ねえ、おねえさん。おねえさんもきっと、この青空の下、がんばってるでしょう? どこかわからないけど、ボク達は確実に、おなじ青空の下で暮らしてるよ。一緒に暮らしてるよ。これだけわかれば、ボク、大きな幸せを感じてるよ。そんなステキなおねえさんと同じ世界で生きてるって…。
そして、そんなステキな友達とおなじ世界で生きてるって…。


ある時期、えいえんがこの世のどこでも存在しないって、思ってた。でも、やっぱり違ったね。なぜなら、今ここで、ボクはえいえんを強く感じている。
あるゲームは言っていた。人は決して、その人ひとりの人生を生きているわけじゃない。他の人の人生も、一緒に生きているんだ。知らないうちに託された、たくさんの想い。それを果たしていくのも、生きる者の務めなんだ。

「花は枯れても、種を残す。」

だから、想いは、きっと永遠。ね、おねえさん?


靴を履いて、ボクは外へ歩き出す。
すずめのチューチューの鳴き声と一緒に、ジッジッジッとかチュッチュッチュッとかの高音が聞こえる。つばめたちは陽射しと風の中に飛んでいるんだ。
奏鳴曲(ソナタ)のように…。
ボクは、一歩を踏み出した。全身が陽射しと柔らかな風に浴びながら、ボクは深呼吸した。


そして、今ここから、ボクの新しい時代(とき)が、はじまる。

ありがとう、おねえさん…。

fin


Menu

inserted by FC2 system