ポケットモンスター サファイア編




Menu

Back Next



ルビーにBack ルビーにNext





第2話 「進むべき道」






『9月27日 時刻14:14 102番道路』


ユウキ 「いけ! ミズ! 『たいあたり』だ!」

ミズゴロウ 「ミズミズー!」

ドカァ!

野生のラルトス 「!?」

野生のラルトスはミズゴロウの『たいあたり』を受けて怯んでしまう。
これ以上ラルトスに反撃はできそうにないので俺は。

ユウキ 「いけ! モンスターボール!」

俺は野性のラルトスに向かってモンスターボールを投げつける。
いわゆるゲットという作業だ。

ラルトス 「!!?」

ボールはラルトスに当たると開き、赤い光がラルトスを包み、ボールの中に閉じ込めてしまう。
しかし、閉じ込めただけではゲットにはならない。
閉じ込めた後もラルトスはボールの中で暴れ出ようとする。
これで出られてしまったらゲット失敗だ。
伸るか反るかってことだな。

ボフゥン!

ボールはしばらくすると動きが止まりさっきのような機械音が鳴る。
ゲット成功だ。

ユウキ 「よっしゃ!」

俺はその場でガッツポーズをとる。
俺はラルトスの入ったモンスターボールを手に取り、そして。

ユウキ 「ラルトス! ゲット!」

さて、いきなり野生のポケモンと戦って、しかもゲットして何がどうなっていると思うかもしれないがこれはちゃんと第2話だ。
ことは数時間前、研究所に着いた俺はハルカちゃんとのバトルの経緯を伝えるとオダマキ博士に俺の才能を認められ、ポケモン図鑑というものを渡されたのだった。
これでミズゴロウと共に世界中を歩き回ってみるといいという事だった。
ついでにモンスターボールもハルカちゃんが5つもくれたし。

さて…で、俺が今どこにいるかというと102番道路というところにいる。
このことをパパに伝えるため、トウカシティに向かっているのだ。
ちなみにママの承諾は得ている。
しかし、なんかポケモンを見て世界を回るだけっていうのも芸がないよな。
なんか目標とするものはないかな〜?

なんて考えつつ俺はモンスターボールを確認する。
3つ。

ユウキ 「これで三匹目か」

三匹目ということで疑問に思った人もいるだろうから種明かしをしよう。
答えは簡単、102番道路に入る前101番道路で既にポチエナをゲットしていたのだ。

ユウキ 「よし、出てこいポチエナ、ラルトス」

俺はふたつのボールを取り出し、宙に投げるとボールは開き、中から二匹のポケモンが出てくる。

ポチエナ 「ワ、ワウ〜?」

ラルトス 「………」

ポチエナは出てきて何が起こったかわからないといった顔をしていた。
ゲットされたことを理解していないのか?

ミズゴロウ 「ミズ、ミズミズ」

ポチエナ 「ワン? ワウ〜…」

ミズゴロウが入り、ポチエナに何か説明をしたようだがさっぱりわからん。
ただ、ポチエナは何か納得したような顔をしている。

ラルトス 「………」(ジーー)

ユウキ 「………?」

視線を感じた。
俺は視線のする方を向くとそこにはラルトスがいた。

ラルトス 「………」(ジーー)

ユウキ 「…な、何だ…?」

俺は思わず聞いてしまう。
しかしラルトスは何も答えてくれずただ俺の目を見ていた。
興味津々といった感じにも見えるがなんともいえない。
ただ、こうジーーっと見つめられると照れるというより怖かった。

ラルトス 「………」(ジーー)

ユウキ 「………」(汗)

俺、なんかしたか?
いや、したと言えばしたか…ゲット…。
もしかしてゲットされて恨まれてる?

ラルトス 「………」(ジーー)

ユウキ 「………」(汗)

なおもラルトスは俺を見る。
目を…目を合わせられない…。

俺は思わず後ろを向いてしまう。
視線に耐えられなかった。
しかしラルトスは俺の正面にでて、やはり俺の目を見る。

ミズゴロウ 「ミズミズ♪」

ポチエナ 「ワン♪」

ミズゴロウとポチエナはこっちの気も知れず呑気に談話をしていた。

ラルトス 「………!」

やがてラルトスは俺の様子に気づき、目を大きく見開き、そして。

ラルトス 「ご、ごめんなさい! ぼ、私ったらマスターの目をずっと…!」

ラルトスはそう言って頭を命一杯さげてごめんなさいと謝る。
て、え…?

ユウキ 「………今…」

ラルトス 「あの…ホントすいません…私ったら…」

ユウキ 「て、ええっー!?」

ミズゴロウ 「ミズ!?」

ポチエナ 「ワンッ!?」

ラルトス 「わわっ!? な、なんですか!?」

今…ラルトスが喋った…。

ユウキ 「ラルトスが喋った〜!?」

俺は思わずオーバーリアクションで驚いてしまう。

ラルトス 「え、あ、はい?」

ラルトスは何がなんだかよくわからないといった顔だった。
だが、ことはそんな簡単な顔で済ませられる問題じゃない。

ユウキ 「な、何でラルトスが…ポケモンが喋れるんだ…?」

ラルトス 「え…なぜと言われても…」

ラルトスは当たり前という顔をしているがこれは決して当たり前のことではない。
ポケモンはどういうわけか確認されている全ての種は人の言葉を話すことができない。
だが、その代わりポケモン達はわれわれ人間には全く理解のできないポケモン達の言葉がある。
俺にはただ鳴いているようにしか聞こえないが…。
ちなみにポケモン達は人の言葉は話せなくても理解はできるらしく実際ミズゴロウはわかっていたようだ。
人間はポケモン達の言葉を理解すらできないのにな…。
ともかくこいつは激レアだな…。
今まで人間の言葉を喋るポケモンなんてアニメの世界だけの話とおもっていたがまさかこんな形で出会ってしまうとは…。
ある意味伝説のポケモンよりレアか…。

ユウキ 「えーと、ラルトスだよな?」

俺は思わずそんな当たり前の事を聞いてしまう。

ラルトス 「え? はい、そうですけど」

そして、ラルトスからは当然の答えが帰ってくる。
いかんな…少々頭が混乱している。

ラルトス 「あの…大丈夫ですか?」

ユウキ 「おまえこそ大丈夫か…」

ラルトス 「え…?」

ユウキ 「…いや、なんでもない、もう戻れ…」

俺はそう言って三匹をモンスターボールの中に戻す。
考えてみれば人の言葉が話せるだけで後は普通のラルトスなんだよな…。

ユウキ (多分…)

まぁ、そう考えればちょっと得したって感じだな…。
俺はそう思うと気を取り直してトウカシティを目指した。



『同日 某時刻 トウカシティ』


ユウキ 「さて、無事に着いたはトウカシティっと、ジムはっと…」

俺はトウカシティにつくとまずジムを探した。
理由はパパに会うためだ。

ユウキ 「あっと、ここか」

俺はしばらくジムを探しているとすぐにその建物を見つける。
この前テレビで見た建物と同じ道場のような建物だ。
他にこの町にはそのような建物はないし、何より看板にトウカジムって書いてあるから間違いないな。
俺は看板を確認するとそのままトウカジムに入っていった。


ガララ…。


ドアは引き戸になっており独特の音を立てながら開く。
玄関には家の中なのに地面に石が詰めてあり、靴がちらほら散らばっていた。
そして、玄関を上がって中に入るとそこは木の板が張ってある広いフロアーだった。
まさに道場のよう、一見練習するところのように見えたがどうも違っているようだ。
練習生の姿は見当たらないし、さらにその奥に部屋が続いているようだった。
そしてそこにはひとりの男がいた。

ユウキ 「パパ!」

そう、その人は俺のパパ『センリ』だった。
二年ぶりということもあって随分懐かしく感じたが、その姿は昔と何も変わらなかった。

センリ 「…! ユウキじゃないか!」

パパ、センリは俺を見ると驚いた顔をするがやがて優しい笑みを浮かべ、俺を迎えてくれる。

センリ 「本当によく来たな…ところでママはどうしたんだ?」

俺は事情をパパに話すとパパは驚いたような顔をして。

センリ 「そうか、ユウキもポケモンを…オダマキが…」

ガララ…。

パパが親離れする子供を見る親のような顔をして俺を見ていると突然後ろの引き戸が開く音がする。

? 「あの…」

俺は後ろを向くとそこにはなにやらおどおどとした美少年が立っていた。

身長は俺より下の140位か。
目は女の子のようにくりっとしている。
顔はどこぞのアイドルのようだ。
体は細く、華奢なようだ。
緑色の目と髪が特徴だな。
俺より年下かな?

センリ 「君は?」

パパは俺の前に出てそう言う。

美少年 「あの…僕、ミツルっていいます…」

少年はそう自己紹介をするとぺこりとお辞儀をする。
なかなか礼儀正しい少年だ。

ミツル 「僕、これから別の町に行かないといけないんだけどひとりで行くのが寂しくて…」
ミツル 「だから僕、ポケモンが欲しくって…」

少年はそう説明するとすぐ俯いてしまう。

センリ 「成る程、よし、ならば君にこのポケモンを貸してあげよう」
センリ 「そのポケモンを使ってこのモンスターボールでゲットするんだ」

そう言ってパパは少年に2つのモンスターボールを渡す。

ミツル 「わぁ、ポケモンだぁ…」

少年はそれを受け取ると顔を綻(ほころ)ばせて喜ぶ。

センリ 「それとユウキ、彼がポケモンを捕まえるのを見守ってあげなさい」

ユウキ 「え…?」

パパは突然そんなことを言い出す。
随分いきなりだな。

ミツル 「ユウキさん、行こ!」

ユウキ 「え、あ、ああ…」

まだ、行くと決めたわけではないのだが、もう決定したようだ。
俺って流されている?
たぶん正解だろう。
そしてそんな俺はミツル君のポケモンゲットを見守るため一緒に家を出ることになるのだった。



…………。



ミツル 「ええと、ポケモンってどこにいるのかな…?」

ユウキ 「ここからなら102番道路が一番近い」

俺はさくっとそう言って102番道路に出る方の町の出口に向かう。

ミツル 「え、あ…待ってください!」

ミツル君は俺の後を少し早歩きで着いてくる。



『同日 某時刻 102番道路』


ミツル 「えと、こういう草むらに野生のポケモンっているんだよね?」

ユウキ 「ああ」

俺とミツル君はトウカシティを出てすぐの少し丈の長い草むらに入った。
俺たちはそこでポケモンを探すことにした。



…………。


ミツル 「………」(ポケモンを探している)

ユウキ 「………」(ポケモンを探している)

草むらでポケモンを探してから10数分経過…。
野性のポケモンは一向に見つからない…。

ユウキ (かしーな…これだけ探していないってのも…)

俺はこの辺りにポケモンはいないと判断してミツル君にポイントを変えようを提言することにする。
しかし、その時。

ユウキ 「! ミツル君! 後ろ!」

ミツル 「え? あっ!」

俺がミツル君の方を見た時、ミツル君の背後にポケモン『ラルトス』がいた。


ポケモン図鑑 『ラルトス 気持ちポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ0,4m 重さ6,6Kg タイプ エスパー』
ポケモン図鑑 『人の感情を察知する力を持ちトレーナーが明るい気分のときは一緒になって喜ぶポケモンだ』


ポケモンを察知することによってポケモン図鑑が反応し、鳴り出す。
このポケモン図鑑はオダマキ博士に貰ったのだがなかなか便利だった。

ミツル 「え、えと、ポケモンで弱らせるんだよね!?」

ユウキ 「そうだ! さぁ、ボールを!」

ミツル 「う、うん! 行けモンスターボール!」

ミツル君がモンスターボールを投げると中から『ジグザグマ』が現れる。


ポケモン図鑑 『ジグザグマ まめだぬきポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ0,4m 重さ17,5Kg タイプ ノーマル』
ポケモン図鑑 『背中の硬い毛を樹木に擦りつけ自分の縄張りである印をつける』
ポケモン図鑑 『死んだふりをして敵の目をごまかすぞ』

ジグザグマ 「ジグザグー!」

ジグザグマは名前のとおり狸(たぬき)のようなポケモンだ。
ただ通常の狸と違いその茶色い毛は針のように尖っていた。

対して、ラルトス。
ラルトスはなんとも説明しがたいが白い肌をしており、本当に小さな子供のようで頭がまるで緑色の帽子を被っているようだった。
足はスカート状になっていて一応二本だ、頭にはなにやら赤い突起のようなものが二本付いていた。

ラルトス 「………」

ラルトスはただ様子を見ていた。
対してミツル君は。

ミツル 「え、えと…」

おどおど戸惑っていた。

ユウキ 「ミツル君! 攻撃だ! 攻撃をするんだ!」

ミツル 「はい! え、えと!」

ユウキ 「『たいあたり』だ!」

ミツル 「ジグザグマ! ラルトスに『たいあたり』!」

ジグザグマ 「ジグザグー!」

ジグザグマは高速でジグザグしながらラルトスに近づき『たいあたり』をする。

ドカァ!

ラルトス 「ラァ!?」

ラルトスは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして驚くがやがて真剣な面持ちに変わる。

ラルトス 「ラ〜」

ラルトスは『なきごえ』で応戦する。
攻撃技じゃないし今は無意味だな。

ユウキ 「もう一発だミツル君!」

ミツル 「はい! もう一度だ! ジグザグマ!」

ジグザグマ 「ジグザグー!」

ジグザグマはやはりさっきと同じようにジグザグに距離を詰めながら『たいあたり』をする。

ラルトス 「ラ、ラァ〜…」

ユウキ 「今だ! モンスターボールを!」

ミツル 「戻れジグザグマ!」

ミツル君はジグザグマをモンスターボールに戻すと空のモンスターボールを取り出してラルトスに投げつける。

ラルトス 「ラァ!?」

ボールはラルトスに当たり、ラルトスはボールの中に閉じ込められてしまう。
ゲット開始だ。
後は伸るか反るかだな。

ボフゥン!

今日3度めの機械的音が聞こえる。
それが聞こえるとさっきまで暴れていたモンスターボールもおとなしくなる。
ゲット成功だ。

俺はそれを見てアイコンタクトでミツル君にゲット成功を伝えるとミツル君は恐る恐るボールに近づき、震える手でそれを持った。
そして…。

ミツル 「やった…僕のポケモン…」

そう口にするとミツル君は満円の笑みを浮かべる。

ミツル 「ありがとう! ユウキさん!」

ユウキ 「よし、それじゃジムに帰ろうか」



…………。



センリ 「そうか! 無事ゲットできたか!」

ミツル 「はい! ユウキさんのおかげです!」

ユウキ 「俺は直接は何もしていない、感謝するならあのジグザグマにしてくれ」

ミツル君はゲットが出来たことをパパに話すとジグザグマをパパに返し、嬉しそうにジムを出て行った。

センリ 「さて…ユウキ、おまえはこれからどうするつもりなんだ?」

ユウキ 「え?」

いきなり今後の指向性を聞かれてしまう。
俺も考えてはみていたが結局答えは出なかった。
要するに目的もなしに旅に出てしまった状態。

センリ 「もしかして考えていないのか…?」

…さすがに考えていないじゃ格好悪いな。
しかし、一体どうしたら良いものか。
と、その時俺はあることを思いつく、そして…。

ユウキ 「ジム戦にきたんだ!」

思わずそんなことを言ってしまう。
咄嗟に考えたことだからもちろん本心ではない。
第一絶対パパに勝てるわけがないからな…。
しかし、そうするとパパは。

センリ 「そうだったのか! しかしまだユウキがパパと戦うには早いな…」
センリ 「よし、だったらまずカナズミシティに行くんだ」
センリ 「そこには『ツツジ』というジムリーダーがいる、その人を倒し、そうだな…ジムバッジを4つ集めるんだ!」
センリ 「そうしたらパパが相手をしてあげる!」

ユウキ 「え、えと…ま、いいか」

パパのアドバイスで今後のやることが決まった。
まぁ、それも良いだろう。
目的もなしに旅をするよりは。
そのままポケモンリーグを目指してリーグチャンピオンになるのも一興だな。
俺はそう思うと善は急げといわんばかりにジムを出るのだった。

…でも、無茶だったかも…。



…………。
………。
……。



ユウキ 「…はぁ」

俺は104番道路に出てまず思ったことがあった。
カナズミシティってどこだ?。
よくよく考えてみれば俺は今日このホウエン地方に引っ越してきたばかり、ホウエンの地理なぞわかるわけもなかった。
町を出る前に一応ポケモンセンターに寄って行ったがその時カナズミの場所を聞いておくべきだったな…。
まったく無鉄砲な話だな…。

ユウキ 「まぁ、何とかなるだろ…って、ん?」

俺は歩いていると海が見えてきて、そこにいたあるものに気づく。

キャモメ 「キャモキャモ」

ぺリッパー 「ペッリッパー!」

キャモメとペリッパーだ。
夕暮れ時、静かな浜辺でけたましく鳴いて羽を休める海鳥ポケモンたちの姿があった。


ポケモン図鑑 『キャモメ うみねこポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ0,6m 重さ9,5Kg タイプ 水・飛行』
ポケモン図鑑 『海を吹く上昇気流に乗り細長い翼を伸ばして滑空する』
ポケモン図鑑 『長いくちばしは餌を取るときに便利』

ポケモン図鑑 『ペリッパー 水鳥ポケモン キャモメの進化系』
ポケモン図鑑 『高さ1,2m 重さ28,0Kg タイプ 水・飛行』
ポケモン図鑑 『海面すれすれを飛び、餌を探す』
ポケモン図鑑 『大きな嘴(くちばし)を海の中に入れて餌を掬い取り一飲みで食べるぞ』

ポケモン図鑑が勝手に反応して鳴り出すが気にしない。

ユウキ 「鳥ポケモンがいたら道には迷いそうにないよな…」
ユウキ 「旅もきっともっと楽しくなるんだろうな…」

俺はふとそう思う。
この先俺は道に迷うような気がして他ならないからだ。
非常にかったるいことに俺は方向音痴だからな。
一度通った道は間違えないんだけどな〜?

? 「スバ!」

ユウキ 「スバ?」

いきなり後ろからそういう声が聞こえる。
俺はとっさに後ろを振り向くがそこに誰もいなかった。
幻聴か?

? 「スバスバ!」

ユウキ 「下?」

その声はどうやら足元から聞こえていた。
俺は足元を見るとそこにはあるポケモンがいた。

ポケモン図鑑 『スバメ 子燕ポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ0,3m 重さ2,3Kg タイプ ノーマル・飛行』
ポケモン図鑑 『巣立ちを終えたばかりなので夜になると寂しくなって泣いてしまうこともある』
ポケモン図鑑 『森に住むケムッソを捕まえて食べる』

スバメだ、スバメが足元にいた。

ユウキ 「どうしたんだ?」

スバメ 「スバ」

ユウキ 「? スバ?」

スバメ 「スバ?」

ユウキ 「………」

スバメ 「スバ〜?」

…全然わからん。
そもそもどうしたって聞く俺も俺だが。
スバメが何を言っているのか全然わからなかった。

ユウキ 「そうだ!」

俺は頭の中でピコーンという音がしたと思うとあることを思いつく。
あ、ピコーンは擬音だから実際に鳴っているわけじゃないんで。

ユウキ 「でてこい、ラルトス」

俺はボールを取り出し、ラルトスを出す。

ラルトス 「何か私に御用ですかマスター?」

ユウキ 「スバメの言っていることを訳してくれ」

俺がラルトスを出したのは通訳のためだ。
ラルトスならポケモン語も日本語も完璧だろうからな。

ラルトス 「わかりました…」

ラルトスは一瞬スバメを見るとそう言って受けてくれる。

ユウキ 「スバメ、俺に何か用があるのか?」

スバメ 「スバスバ!」

ラルトス 「『旅って楽しいか』だそうです」

ユウキ 「まぁ、楽しいと思うぞ、俺的には」

まぁ、楽しさ以上に辛さがあるだろうが…。

スバメ 「スバー、スバスバ!」

ラルトス 「『僕も連れて行って欲しい、だめだろうか?』だそうです」

ユウキ 「ああ、別にいいぜ、旅は道連れ世は情けっていうしな」

スバメ 「スバー!」

ラルトス 「『ありがとう』だそうです」

そうと決まればモンスターボールが必要だな。
確かまだあったはずだな…。

ユウキ 「あ、あったあった、それじゃスバ…あ」

ボフゥン!

ユウキ 「…自分から入った?」

スバメは俺がボールを取り出すと自分からボールに体当たりしてボールの中に入った。
しかも、直後ゲットの音が鳴った。
こういうゲットもありなのか…。

気が付くとキャモメ達の姿は浜辺から消えていた。
そして、俺はまたある問題に直面する。

ユウキ 「だからカナズミってどこだよ?」

この重大な問題が未解決のままだった。
今更戻るのもなんだしな…。

? 「トウカの森を抜けたらすぐさ…」

ユウキ 「え?」

突然謎の少年が浜辺の方から現れてそう教えてくれる。
しかし、その少年はどう見てもただの親切な少年には見えなかった。
目が怖い…。
まぁ、人を見た目で判断するのは良くないが…。

さて、その少年だが、見た目は俺とほぼ同じ位の身長。
て、いうか体型は俺とほぼ(まったく?)同じだった。
ただ服は真っ黒なジャンパーに真っ黒なズボンと暗いイメージを受ける。
しかし、この少年そんな服装とはまったく正反対な髪をしていた。
白髪、完璧な白髪だった。
容姿と顔だけを見れば14,5歳の少年のようだった。
しかしあまりに特徴的なその髪の色は実際年齢より上げられてしまうだろう。
それくらい真っ白だった。
なんか俺に似ている感じもしたがやはり違うのは目か。
その少年は俺と違って凄い釣り目だった。
後は俺と違って手袋とバンダナをつけていないことか。

ユウキ 「ありがとう…君は?」

? 「…そんなことはどうでもいい、それより俺とポケモンバトルをしてもらおうか…」

ユウキ 「!」

? 「いけ! 『アブソル』!」

ポケモン図鑑 『アブソル 災いポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ1,2m 重さ47,0Kg タイプ 悪』
ポケモン図鑑 『自然災害をキャッチする力を持つ』
ポケモン図鑑 『険しい山岳地帯に生息し滅多に山の麓(ふもと)に下りてこない』

その少年は有無いわずにアブソルを繰り出してくる。
是が非も無しか…。

ユウキ (アブソルか…初めて見たな、でもこのトレーナー、一体?)

? 「そっちからこないならこっちからいくぞ!」

ユウキ 「! ちぃ! やるぞラルトス!」

ラルトス 「はい! マスター!」

? 「アブソル! 『かまいたち』だ!」

かまいたち…読んで字のごとく鎌鼬、真空波である。
真空波だけあって避けづらく殺傷力も高い強力な技だが真空波を生み出すためにしばらく時間を要し、その間何もできず隙だらけになるのが弱点だ。
つまり、かまいたちが使われる前にアブソルを倒せば問題ない。

ユウキ 「ラルトス! 『ねんりき』だ!」

ねんりきは念力。
自分のイメージした念を相手の精神に直接あたえる技だ。
肉体的ダメージはないが精神的ダメージは大きい。
また、稀に相手を混乱状態にすることもある技だ。
エスパータイプにとっては初歩の初歩だな。

ラルトス 「はぁ…!」

ラルトスは『ねんりき』をアブソルに放つが…。

アブソル 「………」

アブソルは眉1つ動かさなかった。
効果が…ない?

? 「馬鹿め! 悪タイプにエスパー技が効くものか!」

ユウキ 「!?」

しまった! 俺としたことが忘れていた!
だが、そのミスはあまりに痛かった。

アブソル 「………!」

アブソルは溜め終わった『かまいたち』を一斉にラルトスに放ってくる。

ラルトス 「ああっ!?」

ラルトスはそれを回避できずあえなく直撃を受けてしまう。

ユウキ 「ラルトス!」

? 「ふ…その程度か、期待はずれだな…」

ユウキ 「おまえは一体…!?」

? 「ふ…『シャドウ』とでも名乗っておこうか…」
シャドウ 「いくぞ、アブソル!」

アブソル 「………」

シャドウと名乗る少年は名乗り終わるとアブソルをつれ、この先にある森の中へと姿を消してしまう。

ユウキ 「シャドウ…一体何者なんだ?」

ラルトス 「つ……」

ユウキ 「…すまなかったなラルトス、もう戻れ…」

傷つきながら立ち上がったラルトスを俺はモンスターボールに戻す。
シャドウ、今度は負けねぇ! 必ずリベンジしてやる!
俺は心の中でシャドウにリベンジを宣言しシャドウの消えた森の方へと歩き出した。
おそらくあそこがトウカの森。
シャドウの話によればその森を抜けた先にカナズミはあるそうだ。
もしかしたらカナズミシティで会えるかもしれない。

時刻はもう太陽も完璧に沈みかけ、真っ暗になろうとしている。
俺はそんな時間にもかかわらず歩を進めた。
ただ、心の中で何か嫌な感じがした。
負けるっていうことを実感してしまったせいだろうか…。
俺はただ歩を進めた。




ポケットモンスター第2話 「進むべき道」 完






今回のレポート


移動


ミシロタウン→102番道路→トウカシティ→102番道路→トウカシティ→104番道路→トウカの森


9月27日(ポケモンリーグ開催まであと6ヶ月)


現在パーティ


ミズゴロウ

ポチエナ

ラルトス

スバメ


見つけたポケモン 9匹



おまけ



その2 「治療中」




ユウキ 「ごめんなラルトス…俺の浅はかさのせいで…」

ラルトス 「いえ、気にしないでください、それに悪いのは私の方ですから」

ユウキ 「なんで? 何でラルトスが悪いんだ?」

ラルトス 「…自分にもっと実力があったら…痛ッ!」

ラルトスはそう言いながら傷を痛み出す。
ラルトスが受けたのは『かまいたち』、スパッと鋭利な刃物で切られたような傷跡だ。
こういった傷は意外に早く直るというが。

ユウキ 「今『きずぐすり』を塗ってやるからな」

ラルトス 「すいません…」

ユウキ 「謝る事はないって」

俺はそう言いながら傷口に傷薬を塗る。
傷薬が染みるのかラルトスは『きずぐすり』に塗られるごとに涙目になって痛みを堪えていた。
そんな姿がちょっといとおしかった。

ユウキ 「あ、よく見るとこんなところにも傷があるな…」

ラルトス 「え?」

そこは頬の部分だった。
大きくはないがはっきりと切り傷があった。

ユウキ 「今塗ってやるからな」

ラルトス 「あ、別にいいですよ、これくらいの傷だったら」

ユウキ 「怪我としては大丈夫かも知れないが顔は女の子の命だろ?」

ラルトス 「へ?」

ユウキ 「おまえも女の子ならもうちょっと顔は気にしろよ」

ラルトス 「あの…」

ユウキ 「ん? どうした?」

ラルトス 「私、♂なんですけど…」

ユウキ 「………」

…何だこの騙された気分は?
…♂だったのか、俺はてっきり顔は可愛いし、すらっとした美しい体型してるし(でも胸は洗濯板)。
何より、声が女の子だった。
俺はさっきの初めて負けた気分をもう一度味わう羽目になるのだった…。




おまけその2 「治療中」 完


ルビーにBack ルビーにNext

Back Next

Menu

inserted by FC2 system