ポケットモンスター サファイア編




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第6話 「海、危機、覚悟、そして影…」






『10月1日 時刻5:45 ポケモンセンター:仮宿泊施設107号室』


チュン…チュン
チチチチ…

5時45分…小鳥がさえずる頃。

ユウキ 「ん…」

小鳥達の囀(さえず)る声で俺は目を覚ます。
もう…朝か。

俺はゆっくり体を起こし、窓から庭の方を見た。

ユウキ 「な〜にも無いな…」

庭には本当に何も無かった。
ん? 何もない?

ユウキ 「ちょ、ちょと待て!?」

俺は飛び上がり、外の様子を見た。

ユウキ 「いない…皆いない!?」

昨日放しておいたポケモン達は見事に消えていた。
もしかして全員逃走!?

ユウキ 「どうする!? どうしよう!?」

俺はあたふめいている間にあることに気付く。

俺はボールラックのボールを取り出し、投げる。

ヌマクロー 「ヌマ〜…」(眠)

ユウキ 「………」

ヌマクローはボールの中で眠っていた。
もしかして全員戻っている?
一体いつの間に…あと、どうやって?
あと、それよりも気になっていたが何でヌマのやつ傷だらけなんだ?

ユウキ 「…はぁ、かったる」

俺はヌマをまたボールに戻すと旅の身支度をして部屋をでた。



…………。



ユイ 「ふぁ…あ」

カウンターの所に行くとユイさんが眠そうにあくびをしていた。
徹夜の夜勤は大変だなと思いつつも手当てはいいだろうな…と思う俺だった。
あ、でも、ポケモンセンターって金取る所無いけどどうしてんだろ?
病院みたいにある程度国から金が出ているのか?

ユウキ 「おはようございます」

ユイ 「え!? あ! おはようございます! …て、ユウキ君か」

一体誰だと思ったのか目を擦りながらこっちを見てまたあくびをする。

ユイ 「随分早いわね…まだ6時にもなっていないのに…」

ユウキ 「まぁ、いつも通りってところですかね」

ユイさんはそれを聞いて、「はぁ?」といった顔をしながら。

ユイ 「君っていつもはどれ位に起きているわけ?」

ユウキ 「まぁ、5時から5時半くらいには」

ユイ 「…早すぎでしょ…」

ユイさんは呆れた顔をしてそう言う。
俺的には普通なのだがな…。

ユウキ 「鍵、お返しします、あとすいませんがポケモンの回復を…」

ユイ 「え? 昨日回復したでしょ?」

ユウキ 「いや…その…」

ユイ 「? まぁ、いいわ、ではお預かりします」

ユイさんは鍵とモンスターボールを受け取るとまず鍵を鍵掛けに掛け、そしてボールを回復マシンに乗せた。
俺はどうせすぐに終わるのでその場で待っていた。

ユイ 「…そういえば、ユウキ君ムロタウンに行くんでしょ?」

ユウキ 「ええ、そうですけど?」

ユイ 「ムロのポケモンセンターにさ『ネイ』っていう妹がいるのよ」
ユイ 「それでさ、その娘働き者でよく無理するのよ、んで姉さんが無理するなって言ってたって言っといて」

ユウキ 「はい、わかりました」

また仕事が増えてしまったがこれなら簡単だ。
また、断る理由も無いので俺はその場で了承した。

ユウキ 「その妹さんもポケモンナースなんですか?」

ユイ 「ええ…ていうか、うちの家系がポケモンナースなのよね」

ユウキ 「え?」

ユイ 「うちの家系なんでか女性しか生まれないのよね〜…んで何でか皆ポケモンナースになるのよね」
ユイ 「もしかしたら呪われてるのかしらね?」

ユイさんは笑いながらそう言う。
たしかに親子三代○○一家とかいうのは聞いたことあるけど、今のユイさんの話し方からするとそんなレベルじゃなさそうだ。

ユウキ 「ユイさんの一家ってどういう家族なんですか?」

ユイ 「どうって…普通の11人姉妹よ」

ユウキ 「11人!?」

ユイさんは今普通に11人と言った。
それは普通ではないと思うが…。

ユイ 「まぁ、私も一族の全てを知っているわけじゃないし、でも、血縁は多いのよね」

ユウキ 「…何人くらい?」

俺は怖いと思いながらも聞いてみた。

ユイ 「さぁ? 万は硬いんじゃない?」

ユウキ 「………」

もしかしてポケモンナースってみんな似たような顔しているのはこれが原因?

ユイ 「でも、私の一族って凄いご先祖様がいるのよ」

ユウキ 「それって?」

ユイ 「ポケモンナースを確立し、ポケモンセンターの原型を作った『キスイ』っていう女性よ」

ユイ 「たぶん普通の人は知らないと思うけどね、でもポケモンナースを目指す人なら皆知っていると思うわ!」
ユイ 「ま、偉そうに言っているけど実は私の一家は分家なんだけどね」

ユウキ 「分家?」

ユイ 「うん、本家はキスイの一族で私はケイの一族なの」
ユイ 「まあ、大本は同じだけどね」

ユイさんはそうやって淡々と説明をしてくれる。
正直よくはわからないがきっと凄いのだろう。

ユイ 「あ、もういいみたいね、はい、あなたのポケモンは皆元気になったはずよ」

ユイさんは回復マシンから俺のボールを取り出すと俺にそれを渡す。

ユウキ 「あ、じゃあ俺はもう行きますね」

ユイ 「ネイによろしく言っといてねー」



…………。



ユウキ 「ふぅ…なんか凄いことを知ってしまった気分だ」

俺はポケモンセンターを出るとすぐにトウカの森のへと足を向けた。
そして俺はカナズミシティを出るのだった…。





ザ…。

ユウキがカナズミを出た後、カナズミシティの前にある少年が姿を現す。

シャドウ 「………」

それはシャドウだった。
シャドウはユウキの歩く姿を普通の人には全くわからないようなところから見ていた。
その時のシャドウの目はまるで鷹のようだった。

シャドウ 「やはり…あいつは…」

シャドウは独り言のようにそう呟くとユウキの後を追うように歩き出した。



…………。



『10月1日 時刻12:49 104番道路』


ユウキ 「やっぱ逆走すると全然違うなぁ…」

時刻はちょうど正午…俺はトウカの森を抜け104番道路の海岸沿いにいた。
行きはあんなにかかったのに帰りはまさか近道があったとはな。
ま、帰り専用のようだったが。

ユウキ 「さてと…」

俺は手っ取り早くハギ老人の家を探した。
そして、それらしき家はあまりにもあっさり見つかった。
家の前には海の方にはしごが立ってあり、その先には古臭いが確かに船があった。

俺はその家の前に行った。
その家はドアが無く風網が掛けてあった。
俺はそれを潜ると中には…。

ハギ 「待てー、ピーコちゃん!」

ピーコ 「キャモー♪」

ハギ老人とピーコちゃんは追いかけっこをしていた。
俺が入ってきてもまるで気付かない。
だから、ピーコちゃんが攫われるんだろうな…。

しかしこのままでは永遠に気が付かれそうに無いので俺はその間に割って入った。

ユウキ 「どうも、お久しぶりです…」

ハギ 「おお、君はいつぞやのユウキ君!」

ピーコ 「キャモー♪」

良かった…覚えていてくれた。
この手の老人はボケている可能性があったから不安だったのだが。

ハギ 「で、どうしたんじゃ?」

ユウキ 「実は相談が…」



…………。
………。
……。



ハギ 「成る程、その手紙をムロのダイゴに渡してカイナに行くのか」
ハギ 「なかなか、忙しいやつじゃのー」
ハギ 「だが、安心せい! このわしがちゃんと運んでやるぞ!」
ハギ 「行くぞピーコちゃん!」

ピーコ 「キャモー!」

そう言ってハギ老人とピーコちゃんは表に出る。
交渉成立…無条件でカイナまで運んでもらえる。
俺もハギ老人の後を追い家の外にでた。



…………。



ハギ 「それじゃ行くぞー!」

ピーコ 「キャモー!」

ユウキ 「はい」

俺たちは船に乗るとハギ老人は船を動かし始めた。
船はがたがたと揺れながらも徐々に加速していく。

ユウキ 「…ていうか!?」

しばらくするとついに俺は船のあまりの振動に耐えられなくなり、一旦船を止めてもらうのだった。

ユウキ 「はぁ…はぁ…」

ハギ 「大丈夫か?」

ユウキ 「は、はい…」

ハギ 「まぁ、旧式じゃからいくらスピードが出ても揺れが出ちまうからな…」

ハギ老人はそれに慣れているから普通だろうが俺には洒落にもならなかった。

ハギ 「うむ、仕方が無い…じゃあゆっくり行こうか」

そう言ってハギ老人は再び船を動かしだす。
今度は揺れも小さくスピードをある程度落とした状態で海を走った。

ユウキ 「ムロには何時位に着くんですか?」

ハギ 「急げば半日で着くが、そうじゃな…この速度なら二日もあれば着くじゃろうな」

ユウキ 「………」

二日か…。



…………。



…景色はゆっくりとまるでスローモーションのように動いていた。
今進んでいる辺りは105番水道。
明日には106番水道に入りムロに着く。

この辺りは小島が多かった。
他にも海面に姿を現している岩など。
恐らくここら辺りは海面が浅いのだろう。

ユウキ 「…平和なものですね…」

ハギ 「…そうでもないようじゃな…」

俺がぼんやりそう言うとハギ老人はそうでもないと言う。

ハギ 「後ろを見てみるんじゃな…」

ユウキ 「………!」

ハギ老人の言う通り後ろを見るとそこには…。


ポケモン図鑑 『サメハダー 凶暴ポケモン キバニアの進化系』
ポケモン図鑑 『高さ1,8m 重さ88,8Kg タイプ 水・悪』
ポケモン図鑑 『海水をお尻の穴から噴き出して時速120キロで泳ぐことができる』
ポケモン図鑑 『長い距離を泳げないのが弱点だ』


サメハダーだ。
サメハダーがこの船をつけていた。
それも一匹だけでなく何十匹も…だ。

ユウキ (…お友達になりたいって顔じゃない無いな)

サメハダー達はこの船を明らかにつけていた。
その証拠にハギ老人がわざと道を蛇行してもサメハダー達はぴたりとこの船の後尾につけていた。
しかし疑問なのは何故これほどの大群でこの船を追うか。
はっきりいって今はあまり速度を出しておらず、時速60キロ程度にもかかわらず襲おうともせずただこっちを追っていた。

ハギ 「………」

ハギ老人はなんとも言えず無言のままバックミラーを時折見ていた。

ユウキ (サメハダーはキバニアの進化系その執念深さはキバニアゆずりだからな…)



…………。



午後8時頃…。

ユウキ 「…いつまで追う気だ?」

もう暗くなって直接は姿は見えないが明らかに複数の波を切る音が聞こえていた。
サメハダーはまだ後ろにいる。

ハギ 「…駄目じゃな、今日はここまでじゃ。どこかちょうど良い島で夜を過ごそう…」

ハギ老人は何を諦めたのかそう言って適当な島に船をつけた。



見つけた島は結構大きいようで生活の光が見えないところを見ると無人島のようだった。

ユウキ 「………」

俺は海の方を見た。
何も見えない暗闇の海の向こうでは確かな殺気にも似た気配が確かに感じた。
が、何故か不思議にも殺気であるはずなのについに今まで船を襲わなかったのか?
どうも殺気は俺にのみ向けられている気がする…。
が、どこか躊躇するような感じ…サメハダーがためらう理由はなんだ?

俺たちは適当な場所を選び、そこで寝ることにする。
今日は何も口にしていないので腹はたまらなく減っているが今日は我慢するしかなさそうだ。



…………。
………。
……。



そして朝はやってくる。
俺はいつも通り5時頃に目を覚ます。

ぐぅぅぅぅぅぅ…。

ユウキ 「腹減った…」

俺の腹が激しく鳴り出す。
もうすぐ丸一日何も口にしていないことになる…。

俺は明るくなった周りを見渡す。
よく見るとそこはかなり大きな島のようで島の中心部は未開拓の森になっていた。

俺は何か食えるものはないかと森の中に入っていく。

ユウキ 「…出てこい、みんな!」

俺はボールから皆を出す。
こういう時はポケモン達の力を借りる方が無難だからな。

ヌマクロー 「ヌマ?」

ラルトス 「?」

グラエナ 「………」

ユウキ 「………」

なーんか見慣れないポケモンが一匹…。


ポケモン図鑑 『グラエナ 噛みつきポケモン ポチエナの進化系』
ポケモン図鑑 『高さ1,0m 重さ37,0Kg タイプ 悪』
ポケモン図鑑 『グループで行動していた野性の血が残っているので優れたトレーナーだけをリーダーと認めて命令に従う』

ユウキ 「…お前はポチエナか?」

グラエナ 「ガウ!」

縦に一回頷いて一鳴き。
それっぽいな。

ユウキ (つまり…進化したって訳か)

ツチニン 「ニンニン!」

ラルトス 「一体どうしたんですか?」

ユウキ 「あ、いや、皆腹が減っているだろうから皆で探そうかと思ってな」

スバメ 「スバ〜」

キノココ 「キノ! キノー!」

突然キノココが走り出した。
俺たちもそれを追いかけると…。

キノココ 「キノキノ! キノー♪」

キノココが向かった先には果実や木の実が山のようにあった。
キノココはこれに真っ先に気付いたようだ。

ユウキ (そういや真っ暗闇の中であいつは真っ先に俺の非常食を見つけてたな…)

しかし非常食は無臭…しかも窒素の詰まったパックに入っている…。
よって鼻が異常に良い訳ではない。
あの時非常食はバッグの中だから目で見つけることも出来ない。
じゃあどうやって見つけたんだ?

ユウキ (キノココって…一体?)

キノココのある意味最強の才能に疑問を抱きながらそれらの果物や木の実を取るのだった。

ユウキ 「ハギ老人の分も持っていかないとな…」

俺はハギ老人の分をバックに入れてハギ老人のいるところに戻るのだった。







ユウキ 「………」

サメハダー 「………」

サメハダーは依然船の近くにいた。
別に船には興味など全く示さずただこちらを見ていた。
いや、もしかしたら俺だけを見ているのかもしれない…。

ヌマクロー 「ヌ、ヌマ…」

ラルトス 「どうして…あんな敵意を…」

ラルトスはサメハダー達を見た途端顔色を変え、ただ震えていた。
そういやラルトス達は気持ちポケモンと言われる位感情を察知しやすいんだったな…。

この場からサメハダー達のいる場所まで50メートル以上はある。
それでいてこれだけ感じているということはそれだけ強い敵意を持っているのか…。

ユウキ 「何故…それほどの敵意をこちらに示すんだ?」

今までこんな体験はしたことがなかった。
確かにギャラドスのようなポケモンに襲われたことはあったがこんな敵意は見せなかった。
いや、敵意とかそんなの昨日まで感じたことがなかった…。

ユウキ 「………」

ピーコちゃんとハギ老人は依然眠っていた。
俺だったらこんな刺々しい空気の中で寝るなんてとても出来そうにないが…。

ただ…あの敵意はどこか人為的な感じがする。

ユウキ 「…シャドウ?」

ラルトス 「え!?」

スバメ 「スバ?」

さすがにラルトスは敏感に反応する。
さすが敗北を喫した相手を忘れはしないか…。

ラルトス 「ど…どうしてその名が?」

ユウキ 「いや…何となく」

突然…頭の中にやつの顔が浮かんだ。
さすがの俺もあいつがかんでいるとは思えないが。

グラエナ 「ガウガウ!!」

ツチニン 「ツチ、ニン!」

ラルトス 「やる気…満々みたいです…」

ユウキ 「そうだな…どうせこのままじゃ動けないんだ…やるか!」

俺はサメハダー達のいる海岸にゆっくり近づく。
多分、シャドウを思い出せなかったら挑む気になれなかっただろう。

シャドウは強い…。
実力があるとかないとかそういう以前の問題であいつは覚悟がある。
あいつはポケモントレーナーといっていいのかは定かじゃない。
殺し合いをためらい無くやれるやつだ…。
俺にはそんなこと出来ないし、覚悟も無かった。

だが、それじゃシャドウには勝てない。
今、その覚悟が求められている。
俺はあいつに勝ってポケモンリーグのチャンピオンになるんだ!
サメハダーなんかに気圧されてたまるか。
俺は覚悟を決める!

ただ、疑問はある。
何故シャドウは覚悟を決める必要がある?
負けたくないからか?
いや、負けたくないだけであの覚悟は異常だ。
あいつの覚悟は…『死』だ!

なぜかはわからないが…いや、わかりたくもないがな。

ユウキ 「………」

なんであいつのことを何もかもわかり尽くしたように言っているんだろうな…。
あいつのことは何にも知らない筈なのに何でも知っている気がする。
そんな筈は無いのにな…。

ユウキ 「ふ…」

俺はふと、笑いが立ち込めた。
何か面白いことがあったという訳では無いが何故かそう思えた。
俺は船の近く…即ちサメハダー達の数メートル位の所まで来ていた。

そして…。

ユウキ 「第7話に続く!」

ラルトス 「はいぃっ!?」




ポケットモンスター第6話 「海、危機、覚悟、そして影…」 完






今回のレポート


移動


カナズミシティ→104番道路(カナズミ側)→トウカの森→104番道路(トウカ側)→105番水道


10月2日(ポケモンリーグ開催まであと150日)


現在パーティ


ヌマクロー

グラエナ

ラルトス

スバメ

キノココ

ツチニン


見つけたポケモン 15匹

NEWグラエナ サメハダー



おまけ



その6 「シタッパとミツル」




さて…今回はあのシタッパの物語。
多少本編と時間差があるが気にしないでくれ!






シタッパ 「…前回のあらすじ!」
シタッパ 「シタッパは美少年ミツルと共にカイナへ向かっていたのだった!」
シタッパ 「そして今、ムロに着こうとしていた! 」
シタッパ 「詳しいことは本編第4話のおまけ4を参照にしてくれ!」







ミツル 「よいしょ…と、わわ!?」

シタッパ「ミツル!?」

ミツルはムロの船着場に船を着け、揺れる船から降りようとしてバランスを崩す。
俺は咄嗟にミツルの腕を掴んで辛くも海にミツルが落ちるのを防ぐ。

シタッパ 「大丈夫か?」

ミツル 「はい、ありがとうシタッパさん!」

俺はミツルの腕を掴んだままムロの土を踏み、そのままミツルを降ろす。

シタッパ 「さて、これからどうするんだ?」

ミツル 「とりあえず今日はここに留まって明日カイナを目指します」

シタッパ 「そうか」

俺はそれを聞くとミツルとは別れて町の外の方へと歩いていった。



…………。



シタッパ 「…ふう」

正直人の多いところは苦手だ。
団服だから仕方ないが、このコスチュームは俺には少し恥ずかしかった。
別に警察に捕まったりはしないのだがやはり人の目を引く。
注目されるのはイヤだ。
加えてミツルまでいるとミツルがなまじどこぞのアイドルより美少年なだけに余計目を引く。

ミツル 「シタッパさーん!」

シタッパ 「ん?」

町の外で海を眺めていると突然遠くからミツルの声が聞こえた。
ミツルの声が聞こえた方を振り向くとミツルがこっちに走ってきていた。

ミツル 「はぁ…はぁ…シ、シタッパさん…」

ミツルは俺の前まで来るとひどく息を切らしていた。
ミツルって体弱いのか?

シタッパ 「大丈夫か? ミツル…」

ミツル 「は…はひ…」

明らかに大丈夫じゃなさそうだ。
そういやシダケに行くとか言っていたな。
わざわざ親と離れてまでシダケに行くとなると体を治すためか。
シダケはホウエン一空気の綺麗なところだ。
療養するには適している。

シタッパ 「無理はするな、ミツル」

俺はミツルの肩をポンと叩いてそう言った。

ミツル 「ふう…すいません」

シタッパ 「それでどうしたんだ?」

ミツル 「ポケモンセンターに宿泊するんですけど一緒じゃないとチェックイン出来ないんですよ」

シタッパ 「ああ、そうか、すまない」

俺はそう言いながらあることに気が付く。
そうか、ポケモンセンターにずっといればいいのか。

シタッパ「それじゃ、行くか」

ミツル 「はい…あ、でもちょっと待ってください…」

ミツルはそう言って軽く胸を抑えていた。
辛いのは胸か…?

シタッパ 「背負おうか?」

ミツル 「いえ、もう大丈夫です、行きましょう」



…………。



『ポケモンセンター』


俺たちはポケモンセンターに来るとモンスターボールを預け、宿泊施設に来た。

シタッパ 「どうする? これから…」

ミツル 「シタッパさんと一緒にいます♪」

シタッパ 「…俺といたらずっとここにいることになるぞ?」

ミツル 「それでも構いませんよ」
ミツル 「だってシタッパさんってなんだかほっといたらひとりっぼっちになりそうですから」

シタッパ 「…まさか、お前みたいなガキンチョに同情されるとはな…」

ミツル 「ガキンチョですか…まぁ仕方が無いですかね」

ミツルは優しいやつだ。
それをむげには出来ないか…。

シタッパ 「ちょっと出かけるか」
シタッパ 「一緒に来るか? ミツル…」

ミツル 「…はい!」

ミツルは嬉しそうに首を縦に振る。
正直、どこに行こうかなど考えていなかった。
ただ…ミツルと一緒に歩きたかっただけだった。




おまけその6 「シタッパとミツル」 完



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