ポケットモンスター サファイア編




Menu

Back Next



ルビーにBack ルビーにNext





第25話 『陰』





『11月10日 午後8時10分 キンセツシティ:北出入り口』


ユウキ 「ここだ、ここがキンセツシティ…」

アスナ 「ふぃ〜、何とか今日中に着いたね〜」

俺たちはもうとっくに日の沈んだ時間帯に、アスナの目的地であるキンセツシティに到着した。
キンセツシティは街灯や立ち並ぶ飲食店などの光で明るく輝き、仕事帰りのおっさんや、夜遊びする若者たちで一杯だった。
この街にアスナが受験する大学がある。

アスナ 「うひゃ〜、やっぱ都会は違うな〜、夜なのにこんなに多くの人が外を歩き回ってるなんて…」

まぁ、フエンタウンでは見れない光景だな…。
アスナはまるで田舎者のように目を輝かせていた。

ユウキ 「受験場所はわかっているな?」

アスナ 「うん、大丈夫だよ! それよりさ! どっか寄ってみようよ!」

アスナはまるで子供のようにそう言った。
もう、見たことのない物ばかり、驚きの連続…といった感じか。

アスナ 「よーし! あそこ行くよあそこ!」

ユウキ 「あ! おい!」

アスナはひとりで走っていく。
俺はその後を追うのだった。



…………。



アスナ 「おお〜、大きいゲーセンだなぁ」

ユウキ 「未成年がこんな時間に来てんじゃねぇよ…」

アスナはまず真っ先にこの街一番のアミューズメントパークに入った。
中にはビデオゲームや体感ゲーム。
スロット等もある。
どうやら、スロットなどはコインを使って、それで換金できるようだ。

アスナ 「未成年って、先生もそうじゃんか」

ユウキ 「だったら帰るぞ、俺は出来れば早くトウカシティに向かいたいんだ…」

アスナ 「あ! 音ゲーの新作! やっぱり都会は置いてあるんだ!」

アスナはいきなり某DJシュミレーションゲームの新作に飛び掛る。
フエンには無かったのか…。

アスナ 「よーし! 早速エントリーカードを作ってプレイね!」

ユウキ 「…エントリーカードがいるのか?」

アスナ 「あれ? 先生知らないの?」

ユウキ 「…知らん」

アスナ 「あはは! らしいっちゃらしい気がするね!」
アスナ 「無くても出来るけど、あったら個人データがセーブできるんだ!」

ユウキ 「…ふむ」

アスナは終始苦笑しながら説明をした。
俺はそれを終始聞いているのだった。

その後、アスナはこの店のゲームをいろいろ見て周り、プレイをするのだった。
結局、店を出たのは10時過ぎだった…。
その間、俺はひたすらにアスナの付き添いだった。



………。
……。
…。



アスナ 「ハァ〜♪ 遊んだ遊んだ♪」

ユウキ 「…かったる」

アスナ 「先生、ずっと見てるだけだったね」

ユウキ 「別に興味ないし…」

アスナ 「あはは、まぁ、それもいいっか! それよりお腹すいたね、今日はどこかで外食しようか?」

ユウキ 「それだったらあそこのラーメンがお得だ」

俺はそう言って、あるラーメン店を指す。
以前テッセンさんにラーメンを奢ってもらったおどろきラーメンだ。
塩ラーメン一杯190円という破格の値段出している。

アスナ 「んじゃ、あそこで食べようか」

ユウキ 「ん」

そうして、俺たちはやや遅い夕食をラーメンで終わらすのだった。



『同日 午後11時49分 ポケモンセンター 214号室』


ユウキ 「……」

アスナ 「……」

ユウキ 「……」

アスナ 「…先生、寝てる?」

ユウキ 「いや…」

よる、例によってポケモンセンターで眠っていると二段ベットの下の段で眠っているアスナがそう話しかけてくる。
俺は特に姿勢は変えず、目を瞑ったまま耳を傾ける。

アスナ 「明日、本当にあたし達お別れなんだね…」
アスナ 「あたしは受験で、先生はジム巡り…」

ユウキ 「……」

アスナ 「もう、会えないのかな…」

ユウキ 「さっさと寝ろ…」

俺はそう言って半ば無理やり会話を終わらせる。

アスナ 「……」

それっきりアスナは押し黙った。
たった1週間程の短い時間だったが、アスナには思うところあるのだろう…。
俺自身にだって無いわけじゃない。
情が移った…といったら間違いでもないだろう。
ある種、一緒にいる期間が数字以上に長く感じたためだろうか?
まるで家族のようにも思えた…。
しかし、それもこれも明日の朝には全て終わる…。
俺が人知れずこの街を出たら終わりだ。

ユウキ (後はひとりでも問題ないだろ…アスナ)

俺はその後、少し時間をかけながらゆっくり眠りに就くのだった。



…………。
………。
……。





『11月11日 午前4時51分 キンセツシティ、ポケモンセンター:ロビー』


ユウキ 「……」

マイ 「…おはようございます」

二階を降りて一階のロビーに出ると、落ち着いた声でそう挨拶される。
俺は特に言葉では返さず、軽く礼をする。

マイ 「以前も相当早かったけど、今日は更に早いわね…昨日は相当遅かったのに…」

ユウキ 「…そういう気分でしたから」

マイさんは相変わらず冷たい口調でそう言った。
そう言えば、キノガッサは大丈夫だろうか?
マイさんが面倒を見てくれているはずだ。

ユウキ 「あの、キノガッサは…」

マイ 「…元気よ、依然回復の兆候は見られないけどね」

ユウキ 「…そうですか」

マイさんは特に飾らずそう言い切る。
相変わらず、きっぱり言う人だ。
他の皆さん色々見てきたが、この人ほど顔が一致しない人はいないな…。
根はねっからポケモンナースのようだが…。
恐るべし一族だ…。

マイ 「…鍵は?」

ユウキ 「連れがまだ部屋で眠っているんで、起きたらそっちの方が渡すと思います」

マイ 「そう、じゃあもう行くのね?」

ユウキ 「ええ、キノガッサのことよろしくお願いしますね」

俺はそれだけ言うと、まだ真っ暗な外に出た。
マイさんは何も言わず、頭だけ下げた。



ユウキ 「…トウカシティに向かうには以下の二つ…」
ユウキ 「ひとつはカイナに降りてその後船で直接トウカ方面へ向かう」
ユウキ 「もうひとつは、一旦シダケタウンに向かい、そこからカナシダトンネルを通ってカナズミシティからトウカを目指す」

俺的にはどっちでもいいが、普通海路より陸路の方が安定するだろう。
カイナにはハギ老人いるかもしれないが、あまり期待できない。
それならば、一度行った事のあるカナズミ側からのほうがいいだろう。
…ただし、カナシダトンネルが問題なのだが…。

ユウキ (あそこの岩、撤去されてるかな…?)

それだけが不安だった。
しかし、ここで悩んでいてもしょうがないので俺は歩き出すのだった。
とりあえずまずはシダケタウンだ。



…………。



『同日 午前8時30分 キンセツシティ街道』


ユウキ 「…ふぅ、迷った…」

あれから3時間、まずは北出口にでた。
ミスったと思って今度こそと思ったら今度は南出口…。
…挙句の果てに今、自分がどこにいるのかわからなくなってしまった…。
恐るべし、キンセツシティ…いや、俺の性か…。

ユウキ 「せめて現在地がわかれば…」

この街、大きいわけではないが、やたらにゴミゴミしている。
俺などはあっという間に迷子状態だ。
わやや…。

ユウキ 「ん…サイクルショップ『カゼノ』?」

見ると、一軒の自転車専門店を見つけた。
ふと、自転車があればと思ってしまう。
まぁ、買う金無いけど、見てみるだけ見るか…。


男 「いらっしゃい、おや? 見ない顔だな」

中に入ると、いきなりエプロン姿の従業員に迎えられる。
店長だろうか?

ユウキ 「…どうも」

男 「君のランニングシューズ、随分ボロボロだな…一体どこから来たんだい?」

男は俺の足元を見て物珍しそうにそう言った。
そう言えば確かにボロボロだ、よくまぁ2ヶ月満たずでここまでボロボロにしたものだ。

ユウキ 「えと、ミシロタウンです」

男 「え!? ミシロタウン!?」

男はそう聞くと随分と驚く。
そんなに驚くことか?

男 「随分遠くから来たんだな、そうか君はポケモントレーナーか」
男 「よし! そんな君に特別にここの自転車を貸してあげよう!」

ユウキ 「は…?」

男 「ここにはマッハ自転車とダート自転車がある! どっちにする?」

ユウキ 「…じゃ、マッハ…」

男 「よし! もっていきたまえ!」

ユウキ 「…て、そうじゃなくて!」

俺はそこで突っ込みを入れる。
普通売り物を見ず知らずの人間に貸すかぁ!?

男 「ハッハ、気にしないでくれ! 人に優しくするのも店長の務めだよ!」

どこかで聞いたことのあるようなフレーズだな…。
てか、店長って、やっぱりか。

店長 「この自転車はモンスターボールの原理を利用しているからバックにも簡単に入るぞ」

そう言って店長はマッハ自転車のあるボタンを押すと、ボール上になってしまった。
もう一度押すとマッハ自転車に戻る。
珍しいものだな…。

ユウキ 「でも、そんな高価なものいいんですか?」

店長 「気にするな! 君がこれで走ってくれれば宣伝になるからな!」

ユウキ (宣伝?)

俺はそう聞いてマッハ自転車を良く見ると、所狭しとカゼノカゼノカゼノカゼノカゼ…と店名が書いてあった。
…成る程な。
素直にかったるいと思える仕様だ…。

ユウキ 「それじゃありがたくお借りします」

店長 「ダート自転車に替えたければいつでも来たまえ!」

店長は気前良くそう言った。
気前良すぎだがな…。

ユウキ 「あ、そうだ、あの西出入り口ってどこですか?」

店長 「え? ここ出て右にまっすぐ行ったら出られるよ?」

ユウキ 「そうですか、ありがとうございます」

店長はこの質問に不思議そうな顔をしていたが、俺は気にしない。
どうせ、方向音痴だもん! 当たり前のことだってわからないさ!

ユウキ (て、心の中で愚痴っても仕方ないな…)

俺はマッハ自転車を押して、外に出るとそのまま自転車に跨り、こぎ始めた。

ユウキ 「おお、早い早い!」

マッハ自転車はものすごいスピードを出して、一直線に走った。
少々ブレーキング性能とカーブ性能が低いが、スピードが凄い。
これなら遥かに時間短縮できる!




…………。
………。
……。



『同日 午後5時01分 シダケタウン』


ユウキ 「ふぅ…ここがシダケタウンか」

アレからノンストップで気合でシダケタウンに着いた。
どうやら、キンセツからそんなに遠いわけでは(それでも徒歩なら1日以上はかかる)みたいだった。

ユウキ 「ふうぅ…てか、寒い…」

シダケタウンについて第一印象はそれだった。
キンセツからずっと上りだったためかシダケタウンは高原地帯のためかなり気温は低い。
変わりにかなり空気は良く、療養地としては最適だ。
民家と売店がいくつか、あとはポケモンセンターとコンテスト会場があるくらいだからな。
太陽はもう沈みかけており、さすがにこれ以上は、といった感じだった。

ユウキ 「ポケモンセンターで今日は休むか」

俺はそう思うと、ここいらでは人際目立つでかい建物、すなわちポケモンセンターを目指す。
こっからはマッハ自転車は必要ないので小さくしてバックにしまうのだった。



…………。
………。
……。



『ポケモンセンター』


お姉さん 「こんばんわ! ようこそポケモンセンターシダケ支店へ!」

ユウキ 「……」

お姉さん 「? どうしたんですか?」

ユウキ 「いや、ギャップが…」

お姉さん 「??」

ユウキ 「なんでもありません…」

どうも、キンセツシティのマイさんを朝見たせいかものすごく変(普通?)に見えてしまった。
例によって顔や体型が一緒のため、血縁者だろう。

お姉さん 「…あれ? その白髪…良く見たらもしかして…」
お姉さん 「あなた、アイお姉さんの言っていたユウキさん!?」

ユウキ 「だれ…アイって…」

お姉さん 「えと、口癖が蛇の道の蛇って言う人です」

ユウキ 「…フエンタウンのね…」

一発でわかってしまう。
それ以外考えられない。

お姉さん 「うわぁ、本当に頭真っ白だ…すご〜い」

ユウキ 「……」

ガキの癖に真っ白じゃ悪いか…。
地毛なんだから仕方ないだろ…。

お姉さん 「あ、ちなみに私カイって言います」
カイ 「お姉ちゃんから話は聞いていました」

ユウキ 「ああ、カイさん? 話の途中で悪いんだけどチェックインお願いします」

カイ 「ああ、すいません! ここってコンテストのある時でもない限り暇なもので…!」

ユウキ 「…だから、チェックインを」

この人、随分おしゃべりな人のようだ。
正直この手のは疲れる。
早く終わらせたい…。

カイ 「ああ、はい! どうぞこの鍵を!」

カイさんはあわてた様子で鍵を渡してくる。
鍵には101と書いてあった。
誰もいないのか…このポケモンセンターには。

カイ 「最近はカナシダトンネルも通れず、コンテストも無いから、凄く寂しいんですよね〜」
カイ 「あ、ちなみに、外にある庭はポケモンたちを自由に放しておけますので、どうぞご利用ください、ポケモンたちも喜ぶと思いますよ!」

ユウキ 「ん、ありがとうございます…」

カイ 「もし、お暇になったらロビーに来てくださいね! 話し相手になりますから!」

俺はそこは聞き流して部屋に向かう。
恐らく向こうの方が話し相手になってほしいのだろう。
あの手のタイプは話始めると永遠に終わらないからな…。



………。



ユウキ 「ここか…て、広いな」

部屋に入って最初の感想はそれ。
中はただのポケモンセンターの部屋とは違った。
通常ダブルベットが二つあって、窓がひとつあるだけの非常に狭いものだが、ここは少し違う。
まず、ベットはノーマルのベットが2つある。
居間の部分には机もあり、トイレと洗面台もあった。
今の奥が寝室で、カーテンの後ろはベランダになっている。
その外は短い草の生えた庭になっていた。
1メートルほどの柵も一応ある。
まぁ、鳥ポケモンなどにはあまり関係ないか。

ユウキ 「でろ、お前たち」

俺はボールを取り出すと、順々に投げて外に出す。

ラグラージ 「ラーグ」

グラエナ 「ガウ」

チルット 「チル〜っと」

コータス 「コー!」

サーナイト 「……」

コドラ 「……」

中からはポケモンたちが元気良く(一部除く)飛び出す。
…て、サーナイトはいつもそうだとして、コドラは妙に静かだな…。

ラグラージ 「ラグラ?」

ユウキ 「ああっと、すまない」

ラグは何故呼び出したのかというような顔で声を上げた。

ユウキ 「今日はこの庭貸切みたいだからお前らで自由にしていいぞ」
ユウキ 「ただし、極力柵の向こうには行くな」

ラグラージ 「ラーグ!」

コータス 「コー!」

チルット 「ご主人様、質問あるっす」

ユウキ 「あんだ?」

チルット 「グループ演奏はOKすか?」

ユウキ 「…好きにしろ」

俺はそれだけ言うと部屋のベットに寝転がった。
まだまだ時間は早いが少し休もう。
今日は朝早かったからな…。



…………。



チルット 「と、言うわけで三奏集合っす」

サーナイト 「…また練習ですか〜?」

コドラ 「……」

ラグラージ 「お前ら、本当に好きだな〜」

コータス 「私も歌は好きですよ〜」

グラエナ 「俺は寝てるぞ…休める時に休むべきだからな」

グラエナさんはそう言うと柵の方に歩いていき、寝転がった。

ラグラージ 「俺らは適当に聞いといてやるよ」

コータス 「はい〜♪」

チルット 「それじゃ、いつものように練習するっす〜♪」
チルット 「あ、ワンツースリーフォー♪」
チルット 「♪〜♪♪〜」

サーナイト 「♪♪〜♪♪♪♪〜♪」

コドラ 「……」

おいら達はリズムを合わせて歌いだす。
客が二人なのは寂しいっすが仕方が無いっす。

チルット 「…て、コドラさんどうしたんっすか?」

コドラ 「…え? あ、え?」

見るとコドラさんだけ歌っていなかった。
なんか今日はずっとぼーっとしているでやんすね…。

サーナイト 「どうしたんです? どこか体調が悪いんですか?」

サーナイトさんは心配そうにコドラさんに言った。
確かに、コドラさんどこか悪いんだっしょうか?

コドラ 「大丈夫よ…でも、今日は休ませて…」

コドラさんはそう言うと、適当に寝転がってしまった。

チルット 「困ったでやんすね〜、でも、コドラさんの様子もおかしいし、今日は休みにしますか」

サーナイト 「そうですね…」

チルット 「おいらは適当に歌っとくすから、今日は自由にしていいっすよ」

サーナイト 「…うーん、そういわれても…」

実のところ、僕は趣味なんて無いんだよね。
最近チルットさんと一緒に歌ってはいるけど、正直歌が趣味って程じゃないし…。

ラグラージ 「サーナイト、お前字は読めるか?」

サーナイト 「え? はい、読めますけど…」

ラグラージ 「なら、ほら!」

サーナイト 「わっ!」

ラグラージさんは突然一冊の本を投げてくる。
一体どこから持ってきたんだ…。

サーナイト 「えっと、『ポケモントレーナーの旅』?」

それはそう言う名前の本だった。
中身を開いてみると、どうもポケモントレーナーの旅を描いた小説みたいだ。
そうだな…暇つぶしにはいいかも…。

サーナイト 「でも、こんな本どこにあったんですか?」

ラグラージ 「そこんとこの丸机にあったんだよ」

ラグラージさんはそう言うと、庭の片隅にあった木製の白い机をさす。
どうやら人間用であそこでポケモンたちとくつろぐのだろう。

サーナイト 「ちょうど良いや、使わせてもらおう」

僕は一緒にあった椅子に腰掛けて、その本を読み始めた。

始まりの舞台はカントー地方のマサラタウンという場所らしい。
主人公はマサラタウンに住むあるポケモン好きの少年で、とあることがきっかけで相棒のピカチュウと一緒に旅に出るそうだ。



サーナイト 「………」

ラグラージ 「おうおう…熟読し始めたぞ」

コータス 「うらやましいです〜私、字は読めませんから」

ラグラージ 「まぁ、俺は別に本なんか興味ないし…それよか、コドラのやつ本当に大丈夫か?」

コドラ 「……」

見るとはコドラは頭を抱えるように寝転がっていた。
さすがに心配だな…いつもはうるさい位なのに。



コドラ 「……」

どうも、何かがおかしい…。
フエンを出てからだ。
正確には変な夢(詳しくはルビサファ合作ね)を見てから…なんだかおかしい…。
まるで私が私じゃないみたい…。

『ハカイシナサイ』

…この言葉が頭の中から離れない。
なんか、私の中にどす黒い何かが渦巻いてるみたい…。

『ハカイシナイサイ』

コドラ (うるさい…)

『ハカイシナサイ』

コドラ (うるさい…)

『ハカイシナイサイ』

コドラ (うるさいったら…)

『ハカイシナイサイ』

コドラ (うるさいわよ…)

『ハカ…』
ラグラージ 「おい、コド…」

コドラ 「うるさい!!」

ラグラージ 「うおっ!?」

チルット 「ッルル!?」

グラエナ 「あん…?」

コドラ「え? あ? ラ、ラグ?」

見ると、何やら驚いている皆がいる。
皆静まり返って私を見ていた。
いや、サーナイトだけは何か本の虫になってるけど…。

ラグラージ 「だ、大丈夫か…?」

ラグラージは心臓を押さえながらそう言った。
どうやら私の大声に驚いたようだ。

コドラ 「ごめんなさい…大丈夫よ、いや、本当に」

チルット 「そうはとても思えないっす〜…」

コータス 「そうですね…何か悩みでも?」

コドラ 「だからみんな大丈夫だって! ちょっとボーっとしただけだから!」

本当は全然そんなことじゃないんだけど一応そう言っておく。
どうせ話しても何にもならないだろうし、下手な心配はかけたくなかった。

グラエナ 「お前がそう言うなら、俺は特に気にしないが、何かあるなら話せよ?」
グラエナ 「もしかしたら力になれるかもしれないんだから」

コドラ 「ありがと…グラエナ、でも本当に大丈夫よ」

心配してくれるのは嬉しい。
でも、できれば自分で解決したい。
と、いうより自分にしか解決は出来ないと思う。
…なぜだか、そんな気がした。

コドラ 「…はぁ、もう寝よ」

私はそう思うと、静かに眠りに就いた。
これ以上起きていたら、皆の心配に押しつぶされそうだわ…。



『ハカイシナサイ』

また?
いい加減にしてくれないかしら?

『アナタハソウアルベキデハナイ』

どうあろうと私の勝手でしょうが。
何者かは知らないけど指図は受けないわ。
私に命令できるのはユウキだけ!

『ユウキ…イムベキキボウ…』

忌むべき希望?
何ふざけたこと言ってるのよ。

『ハカイシナサイ』

だから、いい加減にしろって言ってるでしょうが!

『ナゼ…サカラウ?』

何故って…当たり前でしょうが!
私には意味が無いわ!

『イミハアル…ナゼナラアナタハコチラガワナノダカラ…』

ちょっと…それ、どういうことよ!

『ザンジーク…ソレガ…』

ザンジーク!?
何よそれは…!

『…コレイジョウノカンショウハ…フカノウ…』

あ、ちょっと!
…消えたわけね。
なんなのよ、一体、人の夢で…。

…そういえば、以前にもこんな風に夢の中で好き勝手言いやがった奴がいたっけ。
あのボスコドラ…一体どうしているかしら?

コドラ (でも、段々私がおかしくなっていくのがわかる…)

私の中のあの存在は確実に私に迫ってきている。
一体なんだって言うのかしら。
もしかしたら、なにかとんでもないことなのかもしれない…。




ポケットモンスター第25話 『陰』 完






今回のレポート


移動


キンセツシティ→117番道路→シダケタウン


11月11日(ポケモンリーグ開催まであと110日)


現在パーティ


ラグラージ

グラエナ

サーナイト

コドラ

コータス

チルット


見つけたポケモン 39匹




おまけ



その25 「本の虫」




サーナイト 「……」

ラグラージ 「サーナイトのやつ見事に読みふけっているな」

コータス 「そんなに面白い本なんでしょうか…?」


…………。


サーナイト 「……」

ラグラージ 「…まだ読んでいるな」

コータス 「もう、暗くなりつつありますね…」


…………。


サーナイト 「……」

ラグラージ 「もう、普通字なんて読めないぞ」

コータス 「でも、フラッシュ使ってまで読んでいますね〜」



…………。


サーナイト 「………」

ラグラージ 「ふぁあ、いい加減読みやめよな…」

コータス 「眠たいです〜」

ラグラージ 「本の虫だ…完璧に…」

サーナイト 「……」

結局ずっと熱心に読みふけるのでした。


おまけその25 「本の虫」 完



ルビーにBack ルビーにNext

Back Next

Menu

inserted by FC2 system