ポケットモンスター サファイア編




Menu

Back Next



ルビーにBack ルビーにNext





第46話 『バトルロイヤル!?』





フウ 「うわー! すごいすごい!」

ラン 「ずっと遠くまで見える…」

ユウキ 「大丈夫かチルタリス?」

チルタリス 「ちょっと重いっすが…まぁ、なんとか」

俺はフウとランをチルタリスに乗せてトクサネの上空を飛んでいた。
本来俺のチルタリスは一人乗りだからかなりチルタリスには無茶させてしまっているな…。

フウ 「あ、ホエルオーだ!」

ラン 「あ、本当だ、野生かな?」

ユウキ 「でかいな…」

トクサネから少し離れた沖合いにホエルオーが跳ねていた。
そのサイズたるや圧巻。
100人乗って大丈夫を地でいっている。
実際本当に大丈夫だろう。
高さ14.5メートルは伊達ではない。
ちなみ体長ではないのであしからず。
体長で表したら100メートル近くの化け物サイズだからな。
まさに移動要塞だな。

ユウキ (しかし、ジム戦どうしたものか…)

物凄く今回は不安だ。
不安度をランク付けするなら初めてのジム戦の次くらいかな?
なんたってダブルバトルのジム戦だ。
ウチのパーティはハルカと違ってチームワークもへったくれもない。
はたしてにわか仕込みのタッグでジムリーダーのこの子たちに勝てるのだろうか?
それとも、やはり個人プレーでいかせるか?
いや、下手したら何も出来ないまま負ける。
いくら一匹一匹のレベルは上でも二人がかり相手に勝てるほど甘くない。
一対一に誘い込めれば戦えなくも無いだろうがそう上手くいくとは思えない。
第一こっちは命令先がひとりに対してジムリーダーはフウとランの二人だ。
命令伝達のスピードが向こうはこっちの2倍だ。
加えて、コンビネーションも完璧と思われる。
盤面この一手…かなりヤバイな。
やっぱパパの推薦するジムか…状況は芳しくなさそうだ。
ルネもこんな感じになっちまうのか?

フウ 「ねぇ、お兄ちゃん?」

ユウキ 「ん? 降りたくなったか?」

フウ 「ううん、そうじゃなくて…」

ラン 「お兄ちゃん、大丈夫?」

気がつくと二人はとても心配そうな顔で俺を見ていた。
どうやらことの深刻さが顔に出ていたらしい。

ユウキ 「…大丈夫だ、年下に心配されるほど駄目駄目じゃない」

ラン 「…言い難いことだってあると思うけど」
フウ 「僕たちに相談してよ…?」

この二人は相変わらず息ぴったりに繋げて言う。
この息ぴったりさが俺のジム戦を不安にさせるんだがな…。
だが、今は兄貴分として心配をかけないようにしないとな…。

ユウキ (っても、この姉弟凄い勘しているからな…)

本当は心が読めているんじゃないかって思うくらいだ。
さすがにそれはないと思うが隠し事は難しい。

ユウキ 「なぁ、あれはなんなんだ?」

俺は嫌な雰囲気を払拭するようにトクサネシティより北側にある洞窟を指した。

ラン 「あれは浅瀬の洞穴だよ」

フウ 「12時間おきに満潮、干潮と繰り返すんだ」

ラン 「あそこはいい塩が取れるし、珍しいポケモンもいるらしいよ」

ユウキ 「ふ〜ん」

そんなところもあるんだな。
時間があれば探索したいが生憎そんな時間もない。
どうにかしてこの子たちを倒して、アオギリを追わなければならないからな…。

ユウキ (やべぇよな…まじでどうするか)

弱点の露呈か…いや、弱点というよりは不得手。
よくプロレスとかで言われたりもするけど、息の合ったタッグチームは1+1のちからを3にも4にもするって言うからな。

ユウキ 「……」(じ〜)

ラン&フウ 「?」

俺はこの姉弟を観察する目で見る。

フウ…3。
ラン…3。

フウ+ラン=6+α=15。

対してダブルバトルの俺。

ユウキ=1。
ラグラージ…1
サーナイト…2
ボスゴドラ…1
コータス…2
チルタリス…1
ユレイドル…1

結果…最高数値4。
全部足しても9…。

ユウキ (だめだぁ〜…)

15:9…。
=5:3。

分が悪い…。
現状のまま喜んでBITするわけにはいかない。
指揮官とはいかに少ない被害で高い戦果上げるかが必要な能力だ。
分の悪い賭けをするのは単なる馬鹿だ。
勝ったらそれは大馬鹿。
それはそれで誉め言葉にもなるんだが…。
だが、俺一人の戦いならそれでもいいが残念ながら俺は一人で戦っているわけじゃない。
ポケモンたちも一緒だからな、一連托生の自爆、特攻は勘弁だ。
ましてや、俺の旅はまだ終わりじゃない。
アオギリや、ジムリーダー、そのほか強力なポケモントレーナーたちとの戦いがある。
少しでも上に立つ者ならば下の管理もある。
トレーナーだからな…ポケモン達の身が第一だ。

ユウキ (俺ってもしかしたらブリーダー的気質かも)

もしかしたらあまりトレーナーとしては向いてないのかもしれない。
甘いこと言ってポケモンリーグを目指すなんて馬鹿げているのかもしれない。
蹴って蹴落とされて、這い上がるしかないの世界なのかもしれない。
そんな中メンツよりもポケモンの身の安全を第一にするのは馬鹿か?
ポケモン達が強くなるためこれといって特別なことは滅多にしていない。
基本と後は自由な心それだけで十分。
それじゃ駄目か…?

ユウキ (まだ人の汚い部分を直視できる程大人じゃないか…)

自分を大人と見たことはないが、改めて思う。
わかっているけど納得できないっていうのが。
世界がわからないほど馬鹿なら気にすることさえなかったろう。
しかし、わかっていても革新をもたらそうとか、そんな思想がかかったことや自分の才能を使おうとか思う気にもなれない。
もともとかったるい性格に加え、傍観者気質のせいだろうかね?

ユウキ (まぁ、ポケモン次第か)

俺がどういう道を進むかはポケモン次第だし。
一蓮托生の大切な仲間であり家族だからな。
あいつらがこの戦いを望まないならさっさとやめる。
望むなら何もしてやれないかもしれないが後ろを押してやる。
倒れても、側にいてやる。
それだけか…。

ユウキ 「! そうか…」

俺はその時、あるふとしたことに気付く。
というよりも思い出す。
最近、心も余裕がなくなっていたんだな…。

ユウキ (自由気まま…『気楽にいこうぜ、一緒にいてやるからさ』)

自分でトレーナーアイに書いた台詞を思い出す。
そうだな、気楽にいこうか…。
何とかなるさ…少なくとも俺のポケモンたちは頑張っている。
誰のために…?
俺のためか、そして俺はそんなポケモン達が頑張れるように見守ってやる。

ユウキ (今回も見守りますか)

まぁ、結局の所指示は出さないといけないんだが。

ユウキ 「…とりあえず、そろそろ降りようか?」

フウ&ラン 「うん!」

俺はチルタリスに命令してトクサネシティに降りる。



…………。



ユウキ 「んじゃ、明日ジム戦をよろしくな」

フウ 「うん! いいバトルをしようね!」

ラン 「また明日!」

俺はポケモンセンターの前に降りるとフウとランに別れを告げる。
フウとランはそのままジムの方に向かうようだ。
俺はどうしようか?

ユウキ 「海岸行って一応トレーニングでもしておくか」

今日はトレーニングで過ごすことにする。
まだ、夕方には時間があるし、ノンビリやるか?

ユウキ 「一応…ダブルバトルの特訓はしておくか」



…………。

ユウキ 「というわけで、ダブルバトルの特訓をする」

チルタリス 「何がというわけなのかさっぱりでやんす」

ユウキ 「やかましい、今回はお前達自由にパーティを組め」
ユウキ 「『ルール』は決まった後に説明する」

コータス 「コ?」

ボスゴドラ 「ルール?」

ラグラージ 「ラググ〜?」

ユウキ 「ほら、早く決めろ!」

俺は多少急かす。
時間があるかといけばあるわけでもないというか下手したら今回は一日かかるかもしれない。
というわけで、俺はある物を作ることに専念することにする。



サーナイト 「えと、だれと一緒になろうかな?」

僕の場合は誰でもいい、グラエナさんがいなくなってからはあまりこのポケモンとっていうのはなくなった。
やっぱりラグラージさんかな?

サーナイト 「ねぇ、ラグラージさん一緒に組みませんか?」

ラグラージ 「俺でいいのか? 絶対足手まといだぞ?」

ラグラージさんは極めて悲観的。
でも、僕は笑って。

サーナイト 「大丈夫です、僕がサポートしますから♪」

ラグラージ 「…まぁ、俺でいいんなら」

サーナイト 「はいっ♪」



チルタリス 「う〜む、サーナイトさんはラグラージさんと、だったら」

ボスゴドラ 「私と組む?」

チルタリス 「…そうっすね、そうしましょう」



コータス 「頑張りましょうね〜」

ユレイドル 「…ん」



サーナイト 「マスター、決まりましたー!」

ユウキ 「ん? そうか」

どうやら組みは決まったらしい。
俺はその組を見る。

ユウキ (サーナイトとラグのタッグ、チルタリスとボスゴドラのタッグ、そしてコータスとユレイドルか)

まぁ、問題はないな。
だったらというわけで俺はニ対三色の風船をポケモン達に渡す。

ボスゴドラ 「これは…?」

俺はラグサーチームには赤。
チルボスチームには青。
そしてコーユレチームには緑の風船を2つづつ渡す。

ユウキ 「お前らこれからこの街を使ってバトルロイヤルを行ってもらう」
ユウキ 「ルールは簡単! お前達に渡した風船が割れたら負けだ」
ユウキ 「風船が割れたポケモンはその場でダウン扱いゲームに参加は許されない」
ユウキ 「そして、二人とも割られたらそのチームは失格だ」
ユウキ 「技の使用はOKだが、人様に迷惑にならないようにやれよ!?」
ユウキ 「つーわけでサーナイトにテレポートで所定の場所に送られたらゲームスタートだ」

サーナイト 「えと、僕…?」

ユウキ 「じゃ、ラグはこの海岸に留まってほか2チームは移動」



…………。



…こうして、仁義なきバトルは始まることになるのだった。


サーナイト 「さて、どうやって戦います?」

僕たちはトクサネシティの北側の海岸にいた。
他の皆の場所はわかるけど、なんたって守らないといけないのは風船。
迂闊な戦いはとても出来ない。

ラグラージ 「ここで待っているのも手じゃないのか?」

サーナイト 「そうですね、それも手ですか」

ということでこの場にとどまることで決定。
迎撃するだけでいいか。



チルタリス 「この風船、気圧耐えられるんすかね〜?」

ボスゴドラ 「間違いなく割れるでしょうね!」

チルタリス 「すよね〜」

どうみても市販の風船。
これじゃあ空を飛ぶのも躊躇われるっす。
自然に割れられるのは勘弁っすからね。

ボスゴドラ 「とりあえず、可能なくらいは飛んでみたら?」

チルタリス 「うぃっす」

オイラはその場から浮上する。
ちなみにおいら達は街の中央にいるっす。
他のみんなはどこにいるっすかね?

チルタリス 「ん〜様子は…!?」

ゴォォォォォ!!

ボスゴドラ 「!? チルタリス!?」

突然対空砲火…いや、対空放火。
どっから『かえんほうしゃ』が!?

チルタリス 「右っ!? いや、正面か!?」

間違いないくコータスさんに狙撃されいる。
空中は危険すぎるっす!

ボスゴドラ 「やれやれ、ね!!」

ボスゴドラさんは宇宙センターのある高台の方に向かう。
オイラは狙い撃ちされる危険を避けるため低空飛行してボスゴドラさんの後を追った。



コータス 「あちゃ〜、はずれちゃいましたー」
コータス 「まぁ、首尾よく行っているということで〜よろしいですかね〜?」

後はユレイドルさんに任せましょうか〜?

ボスゴドラ 「見つけた! コータス!」

コータス 「あらぁ? もうですか?」

思ったより早かったですね。
しょうがないですか。

ボスゴドラ 「はぁ!」

コータス 「火力はこっちが上です〜」

ゴォォォ!

ボスゴドラ 「くぅ!?」

さすがに『かえんほうしゃ』では勝てない。
向こうはさしずめ本家本元、俄仕込みじゃ…!?

チルタリス 「援護するっす!」

ボスゴドラ 「チルタリス!?」

チルタリスが低空飛行して援護に来てくれる。
よっしゃ! 2対1なら!!

ボスゴドラ (え? 2対1…? ゆ、ユレイドルは…?)

私はユレイドルがいないことに気付く。
いない…まさか!?

コータス 「首尾よく上々」

ザパァァァァ!!

チルタリス 「え!?」

ボスゴドラ 「なっ!?」

ユレイドル 「!!」

突然池の中からユレイドルが姿を現す。
ほとほと奇襲の好きな奴!!

チルタリス 「しまっ!?」

低空飛行したことが災いしてユレイドルに一気に懐に飛び込まれてしまう。
このままじゃ!!

ボスゴドラ 「チルタリス!!」

ドカァ!! パァン!!

私はチルタリスをユレイドルの『げんしのちから』から庇う。
ダメージはあまりないけど衝撃で風船が割れた…。

チルタリス 「ボスゴドラー!!」

ボスゴドラ 「言ったろ? 守ってやるって…」

チルタリス 「言ってないっす〜!!」

ボスゴドラ 「ああ…ユウキ、時が見える…」

どさぁぁ!

ボスゴドラはその巨体を前のめりに倒れる。

コータス (え〜と、打ち所が悪かったのかな?)

チルタリス (ボスゴドラさん…あなたは私の最大の強敵だった…)

ユレイドル (馬鹿ばっか…)

チルタリス 「オイラは怒ったぞ!! フリーザー!!」

コータス 「フリーザーって誰!?」

ユレイドル 「伝説の鳥ポケモン…あとお前が言っているのはフ○ーザ?」

チルタリス 「ボスゴドラは一度死んでいるんだぞ! もう蘇らないんだぞ!!」

ユレイドル 「お前もその仲間にしてやるってんだよ!!」

コータス 「え〜と? え〜と!?」

コータスは意味不明になっている。
状況が理解できていなかった。

チルタリス 「チルタリスがただの白兵戦用のポケモンではないことを見せてやる!!」

ユレイドル 「みせてもらおうか! 連邦軍のポケモンの性能とやらを!!」

チルタリス 「このぉ! ドラゴンダ〜ンス!」

ようするに『りゅうのまい』。
攻撃と素早さを上げる技だ。
なお、ドラゴンダンスといってもストUのあれではない。

コータス 「少佐! 相手は見たことのない技を使ってきます!」

ユレイドル 「当たらなければどうということはない!」

チルタリス 「攻撃技じゃねぇっつーの!!」

というわけでチルタリスはユレイドルに襲い掛かる。

チルタリス 「は!? 貴様、ふ、風船は…!?」

よく見てみるとユレイドルは風船を持っているようには見えない。

ユレイドル 「…知ったところで貴様に何が出来る?」

チルタリス 「何ができるって? 貴様の頭にでっかい風穴を空けてやるのさ」

コータス 「正解は口の中です〜♪」

そう、ユレイドルは口の中に忍ばせていた。
口というのは後ろのあれである。
前は目しかないので後ろはカモフラージュされてわかりにくい。

チルタリス 「んな、非常識な!?」

ユレイドル 「ここなら耐圧もかけられるから○レン並みに安全」

まさに完璧なシェルターだった。

チルタリス 「こうなったら『れいとうビーム』で凍らして…」

ユレイドル 「……」

チルタリス (2対1…分悪〜…)

コータスとユレイドル対チルタリス。
状況は芳しくなかった。

チルタリス 「こうなったら玉砕覚悟ー!!」

ユレイドル 「!?」

チルタリスはユレイドルに組み付く。

チルタリス 「オイラと一緒に! 地獄へ行こうぜー!!」

ドッカァンン!!

コータス (何故爆発!?)

そう、なぜかユレイドルとチルタリスは爆発した。

チルタリス 「まさかあそこでアッパーとはな…」

ユレイドル 「……」

コータス (アッパー? なぜにアッパー? アグリッパー?)

それはトップスタンドエー…。

チルタリス 「燃えた…燃え尽きた…真っ白によ…」

チルタリス、ボスゴドラ…リタイア。



…………。



サーナイト 「ザザァ…ススゥ…」

ザザァ…ススゥ…。

海は穏やかに動く。
ああ、平和だ〜。

サーナイト 「ザザァ…ススゥ…」

思わず波になってしまっている僕。

ラグラージ 「…楽しいか?」

サーナイト 「全然」

当然楽しいわけがない。
でも暇なんだもん〜…。

ラグラージ 「はぁ…何ていうかさ〜」
ラグラージ 「○ルモット隊とホワ○トベース隊、どっちがマシと思うよ?」

サーナイト 「はぁ!? いきなり何言っているんですか、あなたはっ!?」

ラグラージ 「う〜む、どうもチルタリスと出会ってから地球の引力の井戸から抜け出せなくてな…」

サーナイト (そうなんだろうか?)

チルタリスさんがおかしいことは重々承知していたけど…。
…この陽気は脳に影響を与えるのかあ?

ラグラージ 「ん!? 重力震!?」

サーナイト 「…は?」

ようするに○ォールド?
て、相手は○ントラーディ!?
は!? ○ルトランディかも!?

サーナイト (て、僕まで精神汚染されている!?)

どうやら精神汚染度レベルEぐらいまでいっていそうだ。

ザパァァァァ!!

ラグラージ 「敵機襲来!?」

サーナイト 「てか、冗談はここまでにしましょうよ!!」

さすがにまずい!
野生のポケモンがこんな時に現れるなんて!

サーナイト 「て、え…?」

僕は驚愕する。
その『大きさ』に。

ラグラージ 「いくらなんでも…そりゃないっしょ」

サーナイト 「………」(ポカーン)

ホエルオー 「ボエー!!」

ホエルコ 「ホエ〜」

ラグラージ 「兄弟でしょうか?」

サーナイト 「親子だと思います」

どっちでもいいんだけど、こちらとしては。
どうやら、向こうは問答無用の雰囲気を持っていた。

ホエルオー 「ここであったが百年目!!」

ラグラージ 「はい?」

サーナイト 「ラグラージさん知り合いですか?」

ラグラージ 「いや、単なる通り文句だろう」

そうですよね、こんなすごいお友達いないだろうし。
ちなみにすぐ側に臆病なのかホエルオーの影に隠れているホエルコがいた。
いや、でかすぎて隠れているだけか。

サーナイト (ぼくより大きいけど…)

ホエルオー 「貴様らがトレーナーのポケモンだということは知っている!」
ホエルオー 「私はこの海の王者、ホエルオー!!」
ホエルオー 「そこで貴様にポケモンバトルを申し込む!」

ラグラージ 「断る!」

即決…早…。
でも仕方ないか…。
だって、ラグラージさんは…。

ホエルオー 「ナヌッ!? 断るの!?」

ラグラージ 「めんどくさい」

ホエルオー 「ぬぬぬ…ならばっ!」

グォォォォ!

サーナイト 「え? はいぃ!?」

ズドォンン!!

突然、ホエルオーが圧し掛かってくる。
僕は何とかそれを回避する。

サーナイト 「い、いきなりなにをするんですか!?」

ホエルオー 「いいか!? 貴様が戦わないならば貴様の仲間が傷つくことになる!」
ホエルオー 「貴様はトレーナーのポケモンだろう!? 仲間を見捨てられるか!?」

ラグラージ 「別にいいよ」

ホエルオー 「ええっ!? 別にいいって…ええ!?」

ラグラージ 「大体お前何考えているんだ?」
ラグラージ 「いくらなんでも、そいつのために戦うわけないだろうが」

ホエルオー 「ならば私はお前を試す!」
ホエルオー 「もしこいつを見捨てるのならばお前を追いはせん!」
ホエルオー 「しかし、もし向かってくるようならばそれはお前の性格を現す!」
ホエルオー 「よって、全力で立ち向かわせてもらう!」

サーナイト (なにか矛盾がないか!? これは!?)

どうにもなにかおかしい気がする。
なんでこんなにバトルに拘るんだ?

ホエルオー 「五秒後にこの女を殺す! 逃げるか立ち向かうか決めろ!」

サーナイト 「え!? えええっ!?」

今回はダブルショック!!
死ぬのは勘弁、でもそれ以上に!!
僕男なのにーっ!!

ラグラージ 「で〜っ!! 愛し合った恋人ならともかくよォ!」
ラグラージ 「この俺がブスのために戦えるかバーカ!!」

ホエルオー 「殺し方は顎から口を引き裂く!!」
ホエルオー 「そのまま引きおろし、喉の肉と胸の肉を抉り取る!!」

サーナイト (ひえええええええっ!!?)

想像すると怖い…。
でも、どうやってやるんだろうか…。
てか絶対やだ〜〜〜〜っ!!

ラグラージ 「へへへへ、海の王者ホエルオーともあろうお方がそんな女の子にむごいことするもんかい」

ホエルオー 「……」

サーナイト 「はぐっ!!」

容赦なくやられてしまう。
でも、僕顎ないんですけど…。
でも、それを見てラグラージさんは。

ラグラージ 「ゆるさねぇっ!! てめぇ性根までポケモンじゃあねぇっ!!」

ホエルオー 「とぼけた男だがやはり激情の性格であったな」
ホエルオー 「このホエルオー容赦せん!!」

サーナイト (はわわ〜っ!?)

結局、ホエルオーとラグラージさんの一騎打ちが始まってしまう。
どうやって戦うの!? ラグラージさん!!



ホエルオー 「いくぞ!!」

バァァァ!! ドカァン!!

ラグラージ 「何っ!?」

俺は間一髪ホエルオーの『みずのはどう』を回避する。
しかし、『みずのはどう』は岩を削り、大きく爆発する。
なんて威力の『みずのはどう』だ!?
トレーナーに鍛えられたポケモンでもこうまでも威力はそうないぞ!?

ラグラージ (こいつ…攻撃力だけならジムリーダーのポケモン以上だ!!)

どうやら、こいつは絶体絶命のようだった。
こっちはまさに空元気。
なんせ、こっちはまともに技が使えないんだ。
しかし、世の中やっぱ広いよな…こんなやつがいるなんて。

ラグラージ (怖いのに…怖いのに…)

やっぱり楽しくなってくる!!
最近はまっきり強い奴めぐり合えなかった。
いや、バトルそのものにも出られなかった。
こいつは俺を歓喜させるものがある!!


サーナイト (わ、笑っている…?)

ラグラージさんは笑っていた。
あの顔前にも見たことがある。
あの人は心の奥には修羅みたいなのがいる…。
時々、本当に強い相手と対峙するとあんな風に気を変える。

サーナイト (でも、それだけあのホエルオーは強いってこと!?)

だったらなおさらまずい。
ラグラージさんは本来持っている力を満足に使えないんだ!!



ラグラージ 「いくぜ!?」

ホエルオー 「こい!!」

ホエルオーは海を背にする。
さすがにでかいからな!
俺の一撃回避できないだろう!!

ラグラージ 「くらえっ!!」

ドカァ!!

俺はホエルオーに『たいあたり』する。
しかし、ホエルオーは。

ホエルオー 「ふん! 貧弱貧弱!!」

ホエルオーは『じたばた』して俺を跳ね飛ばす。
どうやら、レベルが違うらしい。
本当に力があっても俺より上か…?
だったら俺は…。

ラグラージ 「俺は…自分を越えるまでだーーっ!!」

俺はホエルオーを蹴る。
今度はさっきよりダメージがある。
30センチほどだがずれた。
だが、こんなんじゃ駄目だよな!!

ラグラージ 「ふん!!」

ホエルオー 「うおぉぉっ!?」

バシャアアアアン!!

俺はホエルオーを海に投げ飛ばす。
これで10メートルほど間合いが出来たか。

ホエルオー 「高さ14.5メートル、体重398キロのこの俺が投げ飛ばされるとは!?」

俺もビックリだよ…。
まさかこんだけの底力を出せるとはな。

ラグラージ 「だが、まだ終わりじゃねぇぜ!!」

俺はホエルオーに向かう。

ホエルオー 「く! なめるなーっ!!」

ズガァン!! ザッパァン!!

サーナイト 「うわっ!?」

ホエルコ 「わわわっ!?」

ラグラージ 「くぅ!?」

ホエルオーの『じしん』で俺のみならず向こうのポケモンである筈のホエルコやサーナイトまで巻き込む。
しかし、浅瀬にも関わらずあの強烈な縦揺れの地震によって3メートル大の津波が俺を襲った。
たく! 野生のポケモンの癖に『じしん』を使うのかよ!?

ラグラージ (『じしん』か…だったら!!)

ズドォン!! ザァパァン!!

サーナイト 「てわぁ!!?」

ホエルコ 「ひえぇぇっ!?」

ホエルオー 「なにっ!?」

俺はお返しとばかりに『じしん』を使う。
どうやらレベルは足りていたようだな。
こっちのは倍の6メートルくらいの津波が起きた。

ホエルオー 「貴様もかっ!?」

ラグラージ 「こっちはレベルで覚えるんでな…その分タイプも合って威力が違うぜ」

ホエルオー 「だが! 俺は地に体をつけてはいない! 海の揺れだけで倒せると思うな!!」

ラグラージ 「ちぃ…」

問題はそれか…。
この技は強力だが相手が地面に接していないとダメージを与えられない。

ラグラージ (どうする? ダメージを与えられるとはいえ海ではまとも使えないじゃないか…)

陸地の相手以外にはまともダメージを与えられないじゃ洒落にならない。
今なら、他の技も何とかなるだろうが有効な攻撃が全くない。
大体、どうやったらあの巨体を外部から破壊できるんだ?

ラグラージ (外部…?)

俺はピンとくる。
つまり勝機が見えたってことだ。
だが、今俺が考えているのは無茶苦茶だ。
だが、やれなければ勝てない。

ラグラージ (ユウキのやつ…まさかこの時のために? いや、それはないか)

さすがに、アレは単なる気紛れだろう。
まさか、このためとはまったく思えない。

ラグラージ 「だが、やるっきゃない!!」

ホエルオー 「くらえ!!」

ホエルオーは再び『みずのはどう』をこちらに向けてくる。
喰らったらやばいが…!

ラグラージ 「こう見えても! 素早さには自信あってね!!」

俺は巨大なみずのはどうを回避する。

ホエルオー 「うおおおお!!」

ドォン! ドォン!!

ホエルオーの口から大砲のような音とともに強大なみずのはどうを含んだ大玉を連発してくる。

ラグラージ 「たくっ! 『みずのはどう』ってラピット式なのかよっ!?」

単にホエルオーのがそうなのか、それとも元々そう言う技なのか連続で撃ってくる。

ズバァン!!

サーナイト 「ああっ! ラグラージさん!?」

ラグラージ 「チィ…」

『みずのはどう』をあやまって直撃してしまい、2メートルほど宙に浮き吹っ飛んでしまう。
効いた…。

ホエルオー 「とどめだ!!」

ラグラージ 「!?」

ホエルオーはまた『じしん』の動作をする。
アレが縦に暴れたら地震の発生だ。

ラグラージ 「こうなったらぁ!!」

ズドォン!!

俺とホエルオーは同時に『じしん』を使う。
俺とホエルオーの周り以外は強烈な『じしん』により一部隆起する。
だが、俺とホエルオーには全くダメージはない。

ホエルオー 「まさか共震!?」

ラグラージ 「うおおお!!」

俺は隆起した地面を飛び石のように使ってホエルオーに近づく。

ホエルオー 「ぬぅ!!」

ホエルオーは『みずのはどう』を空中の俺に放ってくる。
俺は『だくりゅう』で押し返しながらついにホエルオーの懐に入った。

ホエルオー 「!? 何を!?」

ラグラージ 「伸るか反るか!!」

ドカァ!!

俺は地面をしっかり踏みしめ貫くように拳をホエルオーの懐に叩き込む。

ホエルオー 「なかなか鋭い拳打をしているな…だが!」

ラグラージ 「『じしん』は下だけに使う技じゃない…」
ラグラージ 「ベクトルを持たせればこんな使い方だってできるんだ!!」

ホエルオー 「!!!?」

音はない。
むしろ闇夜のような静かさがただの一瞬を支配した。
ただし、一瞬だが。

ホエルオー 「馬鹿な…なぜ、逃げない…!?」

ホエルオーが言う『逃げない』の意味。
それは『じしん』の力だ。
本来『じしん』は地面に流す力すなわち下へのベクトル。
俺はそれを拳から相手の体内に叩き込む下以外のベクトルに変えた。
ただし、流すだけなら地面にまた帰ってしまう。
だから俺は拳を相手に突きつけたままスピードだけで打ち抜くと同時に相手の体内に叩き込んだ。
自分の体にも若干影響が出るが、成功した。
打ち抜くことで地面に逃げる前に芯に100%の衝撃を叩き込んだのだ。
ただしこれは相手に近づかないといけない、そして単体にしか使えないというのが欠点か。

ホエルオー 「くう…わ、私の負けか…」

ラグラージ 「はぁ…はぁ…」

勝った…か?

ドサァ!

ラグラージ 「はぁ…はぁ…つかれた」

俺は倒れる。
マジで疲れた。

ホエルオー 「やはり、私では勝てなんだか…」

ラグラージ 「いや、俺の運がよかっただけかもしれない」

ホエルオー 「いや、実力だろう、トレーナーとの付き合いから裏づけされた実力だろう」

ラグラージ 「じゃ、そういうことにしておくわ」

もうとにかく疲れた…。
考えるのもしんどい。

ホエルオー 「…実はあんたたちに頼みたいことがあるんだが…」

ラグラージ 「…面倒事じゃなければ」

これでも俺はユウキ並みに面倒なことは嫌だ。
さっさと済ませたいのが本音だ。
けっこうせっかちなところあるかもな…。

ホエルオー 「うむ、じつはあの俺の息子を貰ってくれないか?」

ホエルオーはそう言ってサーナイトのすぐ側にいるホエルコに目を向ける。
ああ、あのおくびょうそうなのね。
息子だったのか…また親に似ずだな…。

ラグラージ 「貰ってって、嫁? 養子?」

少なくとも女の子じゃないみたいだが?

ホエルオー 「いや、そうではなくあの子を君たちと一緒に旅させて欲しいんだ」
ホエルオー 「あの子は見ての通り臆病でな、私のような勇猛果敢な子にはなれなんだ」
ホエルオー 「だから、私は私のように強いポケモンとそのトレーナーを探していた」
ホエルオー 「あんた、まさしくそれだ、是非息子を頼みたい」

ラグラージ 「仲介人くらいにはなってやってもいいが…あんたはそれでいいのか?」
ラグラージ 「俺達と来たらあんたの息子とは二度と会えないかもしれない」
ラグラージ 「それでもいいのか?」

ホエルオー 「あの子の世界は狭い…トレーナーについていけばもっといろんな世界を見れると思う」
ホエルオー 「それに君のような立派なポケモンに育てたトレーナーだ、あの息子ももっと前向きなれるだろう?」

ラグラージ 「…しゃあない」

俺は一度起き上がる。
ちょっと足がグラっとする。
いきなり気を抜いたから感じるが想像以上にダメージは大きいらしい。
『じしん』1発、『あばれる』1発、『みずのはどう』1発。
予想以上のダメージだ。

ラグラージ 「あ〜、その、なんだ?」

俺はホエルコの前に立つ。
なんて言い始めたらいいか?

ホエルコ 「わ、わかっているっす! じ、自分は…あなたと一緒に行きたいです!!」

あんじょう緊張しとるな。
まぁいい…。

ラグラージ 「じゃあ、決定したようなものだな」

来る者拒まずなユウキだ。
内定決定は確実だな。

サーナイト 「いやぁ〜、一時はどうなるかと」

コータス 「あ! やっと見つけました!!」

ラグラージ 「て…」

サーナイト 「え?」

ホエルコ 「?」

コータスが街の方から顔を覗かせる。
そういや…なにか忘れていたような…。

ラグラージ 「あ!?」

サーナイト 「あーっ!?」

忘れていた!!
俺たちはゲーム中だった。

ラグラージ 「風船…あ〜あ…」

当然ながらやわな風船などとうに割れている。

ラグラージ 「サーナイト、お前は?」

サーナイト 「駄目です…てか、かばっている余裕ありませんでした…」

ラグラージ 「だよな…」

庇っていたら死んでいる。

ラグラージ 「と、いうわけで」

俺たちは両手を上げる。

ラグラージ 「降参」
サーナイト 「降参」

というか、自滅。
結局優勝者はコータスとユレイドルになるのだった。
なお、優勝商品としてトレーナーにはホエルコ進呈。
なめんな…。




ポケットモンスター第46話 『バトルロイヤル!?』 完






今回のレポート


移動


トクサネシティ


1月1日(ポケモンリーグ開催まであと59日)


現在パーティ


ラグラージ

サーナイト

ボスゴドラ

コータス

チルタリス

ユレイドル


見つけたポケモン 50匹




おまけ



その46 「正月だっていうのに…」




チルタリス 「ちくしょ〜…見事にやられてしまったっす」

ボスゴドラ 「ポケモンバトルなら負けないわよ…」

チルタリス 「いや、今回は完璧に裏かかれたっす」
チルタリス 「ユレイドル、ゲリラ戦に慣れているようっすし、真っ向から勝負しかけてくる相手じゃないっすからね」
チルタリス 「戦いは非情っす」

ボスゴドラ 「非情よね〜…」

コテンパンにやられているんだからぐぅの音もでないとはこのことか。

ボスゴドラ 「てか、あんたももうちょっと頭使いなさいよ」
ボスゴドラ 「あんたがしっかりしていたらこうはならなかったはずよ?」

チルタリス 「う〜…面目ないっす」

ボスゴドラ 「まったく、今年はろくなことがなさそうね」

チルタリス 「まったくっす〜」

結局、だめだめな二匹でした…。




おまけその46 「正月だっていうのに…」 完



ルビーにBack ルビーにNext

Back Next

Menu

inserted by FC2 system