ポケットモンスター サファイア編




Menu

Back Next



ルビーにBack ルビーにNext





第53話 『海底洞窟』





『2月3日 某時刻 128番水道 海底』


ユウキ 「……」

ずっとずっと、海を流れていた…。
どこに向かっているのかもわからない。
深すぎてシルクの触角から放たれる光以外は灯りを持ったものはない。
流れは穏やかだ…。

シルク 「…! ユウキ君あれ!」

ユウキ 「……」

前方に大きく口を開けた大穴…。
海底洞窟…。

ユウキ (戦いは…ここからか)



…………。



『同日 某時刻 海底洞窟』


ユウキ 「…かいえん一号…間違いないな」

海底洞窟の中は陸地があった。
そして、そこにあったのはアクア団に盗まれたかいえん一号。
どうやら、ここにアクア団がいるらしい。

ユウキ 「シルクは帰ってくれ、ここからは俺一人で十分だ」

シルク 「何言ってるの! ここまで来たら退けないわよ!」
シルク 「ユウキ君が何を言おうと私はついていくよ!?」

ユウキ 「…何が待ってるか知らんぞ?」

なんせ、カイオーガの眠っている洞窟だ。
一体何が待っているかわかった物じゃない。
それに…。

ユウキ (シャドウがいる…)

あいつは必ず現れる。
ここまで来たんだ、やられるわけにもいかないだろう。

ユウキ (一泡ふかせに行くか)

俺はそう思うと歩き出す。
それに連れられて後ろをシルクが歩いた。



…………。



シャドウ 「…きた」

ラティオス 「なにがです? シャドウさん…」

シャドウ 「……」

ラティオス 「何を考えているかは知りませんけど、カイオーガを目覚めさせる必要なんてないと思うんですが?」

シャドウ 「守るだけではこの先生き残れん…あいつには力がある、それを引き出せるならなおいい」

ラティオス 「…危険すぎます」

シャドウ 「……」

俺は海底洞窟の奥地へと進んでいく。
カイオーガの波動は脈々と感じる。
そして、遥か後方にはユウキの気配がする。

シャドウ (…時間はない、時は満ちているんだ…)



…………。



ユウキ 「サーナイト! 『10まんボルト』!」

サーナイト 「はぁっ!」

バチィン!

ヘイガニ 「ヘイィ!!?」

アクア団A 「ああっ! ヘイガニ!?」

海底洞窟を進むと早速アクア団のお出迎えがあった。
とりあえず一蹴しておく。
ついでに、アクア団の団員を捕まえるのだった。

ユウキ 「おい、アオギリはどこだ?」

アクア団A 「し、知らねぇ!」

ゴキィ!

シルク 「おお、今凄い音したわね〜」

とりあえず、顎をはずしておく。
そんなに力がない俺でもこれ位は出来る。

ユウキ 「顎が外れたか、次はどこがいい?」

アクア団A 「い、言わせていただきます!」

とりあえず、アクア団にゲロさせる。
アクア団の話によるとアオギリはこの先らしい。
海底洞窟はかなり入り組んでおり、そう簡単には先に進めない。
そのせいか、アクア団員も行ったり来たりで入り口付近をうろちょろしていた。
先に進んめたのは幹部格の者だけのようだ。

シルク 「早く進もうよ! ガーヴ様目覚めたらまずいんでしょ!?」

ユウキ 「…そのガーヴってのわかりにくいから素直にカイオーガって言えよ」

シルク 「いや、どうも抵抗があるのよね…それ」
シルク 「やっぱり、私にとってはガーヴ様なわけで…」

ユウキ 「……」

もう、なんでもいいか。
カイオーガを目覚めさせなければ俺の勝ち。
目覚めたら俺の負け。
アオギリを倒せばそれで終わり…。
終わりのはずだ…。

シルク 「あ、あれ!」

ユウキ 「どうした?」

シルクは何かを見つけて指を指す。
俺には何かとその方向を見た。

ユウキ 「流れ…?」

見ると、また海があった。
しかも、今度は相当流れが速い。
海に入った瞬間流されるだろう。
さらに奥には通路が続いている。
どうやらこれを超えなければ先に進めなさそうだ。

ユウキ 「でろ、チルタリス」

チルタリス 「タリ〜っす」

俺はチルタリスをボールから出す。

ユウキ 「チルタリス、シルクを乗せて向こう岸まで飛んでくれ」

チルタリス 「了解っす」

シルク 「私はいいけど、それじゃあユウキ君はどうするの?」

ユウキ 「俺には、こいつがいる」

俺はそう言うとまたボールを投げる。
今度出てきたのは。

サメハダー 「サメッハー!」

バッシャァン!!

俺が出したのはサメハダー。
ただし、ただのサメハダーではない。

シルク 「そっか、たしかにそのサメハダーならこの流れも大丈夫かも」

俺の出したサメハダーは特別でかかった。
ホエルオー比べればかなり小さいが、それでも並のポケモンより遥かにでかい。
特にサメハダー種としては異常だ。
まさに○ョーズ。

シルク 「じゃ、それなら向こうで」

ユウキ 「アクア団が出てきたら素直に逃げろよ?」

シルク 「大丈夫だって、その時は私の『スパーク』で痺れさせちゃうから♪」

チルタリス 「まぁ、仮にやばくなってもオイラがいるから大丈夫っすよ」

ユウキ (それが一番心配なんだよ…)

チルタリスの行動は予測不能。
それゆえに恐ろしい物だ。

サメハダー 「サメッ! サメッ!」

ユウキ 「…俺たちも行くか」

シルクたちを先に行かせた俺は次に自分がサメハダーに乗る。
これだけ大きいと乗り場所に困らないから助かる。

ユウキ 「サメハダー、出発進行」

サメハダー 「サメッ!」

サメハダーに乗るとサメハダーは流れの速い向かい岸に向かう。

ザザザザ…!

サメハダー 「サ、サメハ!?」

ユウキ 「て、うおっ!?」

流れの速い部分に入るとサメハダー横に流れる。
どうやら、抗えないらしい。

ユウキ 「まいったな…」

どうやら馬力だけじゃ突破できないか。
しかし、そうすると飛行ポケモンを基本的に持たないアオギリたちも進めないはず。
この流れを上手く読めば向こうに行けるはず。

ユウキ 「サメハダー、ジャンプできるか?」

サメハダー 「サメメー!」

サメハダーは頷く。
どうやら出来るらしい。

ユウキ 「次の曲がり角で正面左にジャンプだ」

サメハダー 「サメ!」

バッシャァァァンンッ!!

サメハダーはホエルコびっくりの豪快なジャンプをする。
こっちとしては勢いがありすぎてしっかり背ビレを持っていないと振り落とされてしまう。

ザザザザァ!

そして、また流される。
しかし、この程度なら全く問題ない。
もう、動かなくても向こう岸まで流されのみだ。



…………。
………。
……。



イズミ 「くっ! サメハダー! 『みずのはどう』!」

サメハダー 「ハッダー!」

ユウキ 「ユレイドル! 『げんしのちから』!」

ユレイドル 「…ユ」

バシャアア!!

イズミのサメハダーは口から大きな水の塊を飛ばしてくる。
ユレイドルはそれをジャンプして回避して、それと同時に『げんしのちから』でサメハダーを攻撃した。

ドカァ!

サメハダー 「サメーッ!?」

ユレイドルの『げんしのちから』はクリーンヒットする。

ユウキ 「よし! トドメの『ギガドレイン』!」

俺はサメハダーが怯んだ隙を見逃さず、『ギガドレイン』を命令する。
しかし、ユレイドルは…。

ユレイドル 「……」

サメハダー 「サメ…?」

イズミ 「なに? 止まった?」

シルク 「またぁ!?」

ユウキ 「ちぃ!」

ユレイドルは最大のチャンスの時に『動かなく』なってしまう。
トクサネジムでのジム戦が終わった頃からだった。
ユレイドルは時々動かなくってしまう。
しかし、それはそんな生易しい物ではない。
サーナイトはその間を死んでいると言っていた。
たしかに動かなくなっている間はまるで生気を感じられない。
しかも、ユレイドルのこの『死んでいる』時間は日に日に長く、そして頻度が上がってきている。
まるでユレイドルの体はもう限界かのように。

イズミ 「サメハダー! 『かみくだく』

サメハダー 「サメー!」

サメハダーは意識不明のユレイドルに噛み付こうとする。

ユウキ 「ユレイドルッ!!」

ユレイドル 「!? ユ…!?」

ユレイドルのブレーカーが入る。
何が起こったかさっぱりわからないといった顔だ。
だが、ちょっと戸惑うのは後にして欲しい。

サメハダー 「サメッハ!!」

ユレイドル 「!? ユ!」

ドカァ!!

サメハダーがまさにユレイドルのどでかい頭に噛み付こうとした瞬間、ユレイドルは危険を察知して『げんしのちから』で迎撃する。

サメハダー 「サメメーッ!!?」

サメハダーは2バウンドしてダウンした。

イズミ 「オーホッホ! 本当に憎たらしいくらいに強いわね!」
イズミ 「でも、その程度じゃボスやシャドウに勝てなくてよ!」
イズミ 「行ってやられるといいわ! オーホッホ!」

と、負け犬の遠吠えを吐いてイズミは逃げてしまう。

シルク 「その、シャドウって人、そんなに強いの?」

ユウキ 「…強いな、ポケモンもそうだが、なによりも本人自身がな」

シルク 「…よーし! それじゃこっちも気合入れて行こっか!」

ユウキ 「戦うのは俺だけどな」

ユレイドル 「……」

ユウキ 「とりあえず、戻れユレイドル」

俺はユレイドルをボールに戻す。
この先にシャドウがいるのか…。

ユウキ (ふ、面白くなってきた)

伸るか反るかは微妙だ。
ただ、勝てなきゃ終わりだ。
カイオーガを目覚めさせるわけにはいかない。
阻止を邪魔するならシャドウでも容赦しない。
もっとも、向こうも容赦する気はないだろうが。



…………。



『同日 某時刻 海底洞窟:最深部』


シルク 「なんだか、霧が濃くなってない?」

ユウキ 「間違いないな、霧だな…」

もう、随分と歩いている。
イズミを皮切りにアクア団の姿は完全になくなった。
奥地へ進めば進むほど、人はおろかポケモンの気配さえない。
しまいには霧も出始め、そろそろ…といった感じだった。

ラティオス 「…来ましたよ」

シャドウ 「……」

シルク 「ユ、ユウキ君…?」

ユウキ 「さがってて」

シルク 「う、うん…」

俺はシルクを後ろに下げさせる。
目の前に俺の最大の敵がいる。

ユウキ 「シャドウ…久し振りだな」

シャドウ 「会いたかった? それとも…?」

ユウキ 「微妙だな、会いたくもあったし、会いたくなくもあった」

シャドウと会うと色々と不思議な感覚が襲ってくる。
知らないことが勝手に記憶に紛れ込んできたり、不思議な感情が起きたり。
シャドウって、何者なんだろうな?

ユウキ 「やっぱり邪魔するか?」

シャドウ 「当然、アクア団だからな」

ユウキ 「…カイオーガが目覚めるってことがどういうことを意味するか、お前ならわかるだろうに…」

シャドウ 「それでも、俺には価値がある」

カイオーガ…あいつと直接会ったことは無い。
だが、間接的に会ったことはある。
この、『藍色の玉』が俺に見せてくれた。
あいつの…シャドウの姿と、カイオーガの姿も…。

ユウキ 「まぁ、謎解きするしかないわな」

シャドウ 「……」

シャドウの謎はおいおいってことで、今はこいつをどうやって追い払うかに専念すべきだな。

ユウキ 「でろ! チルタリス!」

チルタリス 「タリ〜っす」

俺はチルタリスを出す。
どうせ、ポケモンバトルになるのは目に見えている。
まさか、あのおっかなびっくりな槍で襲い掛かってくるとは思いたくない。

シャドウ 「……」

ユウキ 「おい、ポケモン出せよ…始まらないぞ?」

シャドウ 「頼めるか?」

ラティオス 「まじでユウキさんと戦わないといけないのか?」

シャドウ 「必要悪だ」

ラティオス 「……」

ユウキ 「?」

シャドウと一緒にいた少年は前に出てくる。
まさか、あの少年がチルタリスと戦うのか?

ユウキ 「おい! シャドウ、ふざけ…!」

キィィィィィ…!

突然、少年の体霧のようになって姿が変わり始めていた。
おいおい…まさか。

ラティオス 「まぁ、こういうことですよ」

ユウキ 「えと…ポケモン図鑑は…」

ポケモン図鑑 『ラティオス:夢幻ポケモン』
ポケモン図鑑 『高さ:2.0m 重さ:60.0Kg タイプ:ドラゴン エスパー』
ポケモン図鑑 『優しい心の持ち主にしか懐かない』
ポケモン図鑑 『腕を折畳むと空気抵抗が減ってジェット機よりも速く空を飛べるぞ』

ユウキ 「まじかよ…あの夢幻ポケモンの片割れかよ…」

なんと対峙している相手は青い体が特徴的なラティオスだった。
シャドウ…なんてポケモンを連れてやがる…。

チルタリス 「ありえない話じゃなかったすけど、あんたまで邪魔するっすか、『守護者』?」

ラティオス 「『三奏』か、元敵のあんたがそっち側にいるっていうのは因果だな」

チルタリス 「因果っすね〜」

シャドウ 「……」

ユウキ 「チルタリス、あいつと知り合い?」

チルタリス 「いんや、初対面っす」

ラティオス 「初対面だ」

ユウキ 「……」

チルタリスもシャドウ並みに謎が多いな。
ただ、こいつらの共通点はやはりザンジークか。
ザンジーク、それが全ての鍵…か。

ユウキ 「まぁいい! いけ! チルタリス!」

チルタリス 「今回は本気で行くっすよー!」

シャドウ 「頼むぞ、ラティオス」

ラティオス 「出来れば戦いたくないんですけどね…」

向こうはなんだかいやいやだ。
バトル嫌いなのだろうか?

ラティオス 「バトルは嫌いじゃないけど、あんた戦うことに拒絶反応が起きてるだけ!」

ユウキ 「……」

さすがはエスパータイプ。
心読みやがった…。

ユウキ 「チルタリス! 『りゅうのいぶき』!」

チルタリス 「タリー!!」

シャドウ 「かわして『サイコキネシス』」

ラティオス 「はぁっ!」

ラティオスは凄いスピードでチルタリスの後ろをとって『サイコキネシス』を放つ。
チルタリスとはスピードの次元が一回り違うか!

ユウキ 「ち! 左に『れいとうビーム』!」

シャドウ 「左だと!?」

チルタリス 「冷凍ビーム!!」

キィン!

チルタリスは全くの見当違いの方向である左に冷凍ビームを放つ。
冷凍ビームは壁にぶつかって壁が当然凍る。

ラティオス 「? 一体何の意味が…?」

見事にシャドウとラティオスの視線が泳ぐ。
俺はその隙を見逃さない。

ユウキ 「チルタリス! 『りゅうのまい』!」

チルタリス 「タリ〜リ〜♪」

シャドウ 「…あ!」

ラティオス 「しまった!? 単なるひっかけか!?」

今更気付いて遅い。
すでにチルタリスは『りゅうのまい』を成功させた。
全く関係のない攻撃でも意味深やれば十分注意を引ける。
その隙に積むっと。

ユウキ 「よし! 『れいとうビーム』だ! チルタリス!」

チルタリス 「アトォォ!!」

シャドウ 「かわせ!」

ラティオス 「ちっ!」

ラティオスは高速に動いて回避する。

ユウキ 「逃がすな!」

チルタリス 「赤いザ○は三倍のスピード!!」

チルタリスはラティオス以上のスピードで動いてラティオスの逃げた先に先回りする。

チルタリス 「あーたたたたたたたたっ!!」

ラティオス 「くぅっ!?」

チルタリスは先回りするとラティオスに『みだれづき』をする。

ラティオス 「しかたないな!」

ヒュウウン!

シルク 「嘘!? 消えた!?」

突然、ラティオスは姿を消す。
透明にまでなるのか!?

ユウキ (どこだ!? どこにいる!?)

シャドウ 「ラティオス! 『りゅうのいぶき』!」

ゴォォォォ!

チルタリス 「下!? コノォ!」

『りゅうのいぶき』は真下からチルタリスを襲う。
チルタリスはそれを受けながらも下に『れいとうビーム』を放つ。

キィン!

ユウキ 「ちぃ! はずした!?」

しかし、凍ったのは地面だけだった。
透明な上、あれだけのスピードで動かれたら厄介極まりない。

ユウキ (どうする!? 見えなくてはまともに戦えない!)
ユウキ (なにか! なにか打開策はないか!?)

キラン!

ユウキ 「!?」

突然、最初に放った『れいとうビーム』で凍った壁が光った。
と、いうよりぶれた。

ユウキ (見えた! 攻略法!)

俺はそれで閃いた。
ラティオスの透明化は本当に透明になっているわけじゃない。
光の屈折によってその姿を視覚に写らないようにしているんだ。
だが、同じ光の屈折の中でも氷の中は湾曲率が違う。
氷の中にはラティオスの姿は写る!

ユウキ 「! 左上に『れいとうビーム』!」

チルタリス 「フリーザーストーム!!」

キィン!

ラティオス 「なにっ!?」

シャドウ 「!?」

チルタリスの『れいとうビーム』は姿を消しているラティオスに直撃し、ラティオスは姿を現した。

ユウキ 「姿を消してももう無駄だぜ!」

チルタリス 「何でか知らないっすけど無駄っす!」

シャドウ 「ちぃ! 『ラスターパージ』!」

ラティオス 「このぉ! 『ラスターパージ』!!」

ラティオスは強く光り輝くと、ラティオスの体から一筋の閃光がチルタリスを襲った。

チルタリス 「!? 早まったすね!」

ラティオス 「かわされた!?」

チルタリスは『ラスターパージ』を回避し、ラティオスに接近する。
『りゅうのまい』を積んだチルタリスにその攻撃は迂闊だったな!

ユウキ (それにしてもチルタリスのやつ、何をする気だ!?)

チルタリス 「せぇのっ!」

ラティオス 「!?」

ザシュウ!

チルタリスはラティオスに近づくと、翼が光り、ラティオスを切り裂くように攻撃する。

ユウキ 「まさか、『ドラゴンクロー』!?」

チルタリスの放った技はドラゴンクロー。
これがもうひとつのチルタリスの隠し技か!

ラティオス 「く、うぅ…!」

シャドウ 「ラティオス! 無茶するな!」

ラティオス 「……」

ラティオスは立ち上がろうとするが、シャドウに止められて大人しくなる。

ユウキ 「俺たちの勝ちだな?」

シャドウ 「…ああ」

シャドウは負けを認める。
俺はそれを聞くとチルタリスをボールに戻した。

ユウキ 「…シャドウ、お前は何者なんだ?」

シャドウ 「……」

俺はそう聞くと、シャドウは無言のままだった。
やはり、答えられないか?

シャドウ 「俺は、この世界をザンジークから護るためにかれこ何千年と生きている…」

ユウキ 「ほう、ザンジークから…て、1000年以上!? お前何歳なんだよ!?」

ラティオス 「6000歳以上だって聞くが…」

シルク 「ろ、6000…黙示録6回は起きるかも…」

俺たちはさすがに驚かずにはいられない。
だって、見た目はどう見ても20以下だぞ…?

シャドウ 「俺にはやることがある…お前にもあるように」

ユウキ 「それは、俺に関係あるのか?」

シャドウ 「…ある。しかし、今は大丈夫だ」

ユウキ 「……」

あるのか…。
やはり、この奇天烈な旅はシャドウが大きく関わっていたようだな。

ユウキ 「もう、敵として戦わなくてもいいよな?」

シャドウ 「…ふ、そうだな」

ユウキ 「と、悪いが俺はカイオーガを目覚めさせるわけにはいかないんだ! もう行くぜ!」

シャドウ 「ユウキ!」

ユウキ 「…なんだ?」

俺が行こうとすると、シャドウはそれを止める。
俺は何かと振り返るのだった。

シャドウ 「ユウキ、お前のキメナの力はある意味最強だ」
シャドウ 「お前なら、カイオーガにも勝てる…」

ユウキ 「やっぱり、知ってるのか俺のフォルム…」

シャドウ 「俺にもあるからな…」

ユウキ 「! …そいつは驚きだ」

シャドウのフォルムか…一体どんなのだろうな…。

シルク 「ユウキ君! そろそろ行こ!」

ユウキ 「ああ! じゃあな!」



…………。



ラティオス 「痛て…」

シャドウ 「…大丈夫か、ラティオス?」

ラティオス 「俺は大丈夫ですけど…」

シャドウ 「何が言いたい…?」

ラティオス 「…本当にいいんですか? あれで…」

シャドウ 「もう、運命の車輪は回っているんだ…あとは流れに従うしかないだろう…」

ラティオス 「それを打ち破るのが…『混沌』でしょう?」

シャドウ 「……」

俺は 何も言わなかった。
負けた以上はもうここにいる必要はないか。
あとは、天のみぞ知る…か。




ポケットモンスター第53話 『海底洞窟』 完






今回のレポート


移動


127番水道→海底洞窟


2月3日(ポケモンリーグ開催まであと26日)


現在パーティ


サーナイト

ボスゴドラ

コータス

チルタリス

ユレイドル

サメハダー


見つけたポケモン 54匹






おまけ



その53 「対決! リュウトVSアダン(中編)」




前回のあらすじ!

ユウキたちと別れてルネにいたリュウトだが、いつもどおりルネジムは閉じていた。
しかし、ある日、今日もルネジムへと行くと、あいていたのだった!
中にいたのは『アダン』、その日臨時としてジムリーダーとなった男だった。
早速ジム戦をするリュウト。
開幕キングドラを対ラブカス戦で失い、ラブカスもコモルーで倒すリュウト。
そして、バトルは互い一匹づづ失った中盤戦…コモルーVSトドクラーの一戦を行おうとしていた。



コモルー 「コモ…コモ…」

リュウト 「大丈夫か、コモルー?」

コモルー 「コモー!」

コモルーは大丈夫といわんばかりに返事をするが、息は肩でしていた。
疲れている証拠だ。
この状態でトドクラーと戦うのか?

リュウト (コモルーは泳げない…このフィールドはコモルーには過酷だ)

キングドラをいきなりミスか…。
どうやら、状況は芳しくない。

リュウト 「だが、負けるわけにはいかないよな! コモルー!?」

コモルー 「コモー!」

アダン 「ふ、いい気迫ですな…」
アダン 「ならば! 私もそれに敬意を払って戦いましょう!」
アダン 「トドクラー! 『オーロラビーム』!」

トドクラー 「トドッ!」
リュウト 「コモルー! 『まもる』!」

コモルー 「コモッ!」

トドクラーは『オーロラビーム』を口からコモルーに放ち、攻撃するがコモルーは『まもる』でノーダメージに抑える。

アダン 「『れいとうビーム』!」

リュウト (! やはり、また氷技! 今度はまもれる保障はない!)
リュウト 「コモルー! 跳べ!」

コモルー 「コモ!」

コモルーはその場でジャンプし、『れいとうビーム』を回避した。

アダン 「適切ですね! しかし、適切すぎる!」
アダン 「トドクラー! 『ダイビング』!」

トドクラー 「ドックラ!」

ザァッパァァン!!

トドクラーはアダンさんの命令で水中へと潜った。
さすがに水中の敵にコモルーは攻撃できない。
しかし、これはチャンスでもある。
『ダイビング』は接近して攻撃する技。
トドクラーの攻撃の瞬間なら何とかなるかもしれない。

リュウト (適切すぎる? 何がだ?)

俺にはどうにもアダンさんのあの言葉が頭に残った。

(ユウキ 「ま、予想通りって所だな」)
(アダン 「適切ですね! しかし、適切すぎる!」)

リュウト 「!!」

二つの言葉が頭の中で響いた。
そして、その瞬間!

ザザザァッ!!

コモルー 「コ、コモッ!?」

リュウト 「!? コモルー!?」

突然。コモルーの立っている足場が大きく揺れる。
そして、それと同時に足場は跳ね上がった。

アダン 「覚えておきなさい! コモルーにダメージを与える方法は、直接攻撃だけではない!」

リュウト (足場を攻撃してきたのか!?)

アダンさんのトドクラーはコモルーの足場を崩した。
当然、コモルーは水中に引きずり込まれる。

リュウト (くそ! どうする!?)

コモルーは水中に引きずり込まれた。
もうこうなったらコモルーに今まで経験は役に立たない。
俺にとっても…。

リュウト (…セオリーが通用しない?)

…それが、頭の中に響いた。
セオリー…それはある意味最強であり、最弱だ。
それが通用しない…これでは勝てない…。

アダン 「『れいとうビーム』だ! トドクラー!」

トドクラー 「トドック!」

キィン!

トドクラーの『れいとうビーム』は水中を凍らせながらコモルーに直進する。
コモルーは水中で身動きできない。

リュウト 「『りゅうのいぶき』だ! コモルー!」

コモルー 「! モルー!」

ゴォォォォ!
ドォォォォン!!

俺は咄嗟にそう命令していた。
その時は何かを考えていたわけではない。
精神的には一瞬敗北してた。
しかし、その時俺は無意識のうちにコモルーに命令を下していたのだった。

『りゅうのいぶき』と『れいとうビーム』がぶつかり相手、周りには大量の水蒸気が立ちこもった。
その水蒸気で状況は全くわからない。
気温も3℃ほど下がった気がした。

アダン 「! トドクラー! もう一度『れいとうビーム』だ!」

トドクラー 「トド!」

リュウト 「状況はどうなっている!? 何が起きている!」

水蒸気で何が起こっているかわからない。

リュウト 「ええいままよ! 真上に『りゅうのいぶき』!」

ゴォォォォォ! バキィン!!

突然、何かを砕く音と同時に水蒸気が払われた。

ザァッパァァン!!

それと同時にコモルーは自力で水中から脱出した。

ザシャア!

そして、コモルーは『水面』に立つのだった。

アダン 「…水面が、凍っている…」

『れいとうビーム』が『りゅうのいぶき』とぶつかった時、異常に周囲の気温は下がった。
その時一瞬にして、水面まで凍ったのだろう。
そして、さっきの『りゅうのいぶき』で水面を割り、脱出したのだ。

リュウト 「…状況が一瞬にして一変した」

まるで想定不可能な状態が目の前に広がっている。
水面が凍り、水面のフィールドは一瞬にして氷のフィールドへと変化したのだ。

アダン 「トドクラー! 『ダイビング』!」

トドクラー 「!」

アダンさんは水中のトドクラーにそう命令する。

リュウト 「コモルー! ひきつけてかわせ!」

コモルー 「コモッ!」

コモルーは凍った水面で身構える。
ただ、精神を集中してトドクラーの出現を待った。

リュウト 「! 左だ!」

コモルー 「コモッル!」

コモルーは咄嗟に左に飛ぶ。
それと同時に、コモルーのいた場所の水面は割れ、トドクラーが出現したのだった。

リュウト 「今だ! コモルー『ずつき』!」

コモルー 「コモッ!」

ドカァ!

トドクラー 「トドー!!?」

コモルーはトドクラーが勢いよくジャンプして、動けない状態の所に下から突き上げるように『ずつき』した。

トドクラー 「トド〜…」

トドクラーは目を回して、氷の地面に横たわった。

審判 「トドクラー、戦闘不能!」

アダン 「…よくやりました、お疲れ様ですトドクラー」

アダンさんはボールにトドクラーを戻す。
これで、アダンさんは後が無い。

アダン 「私の最後のポケモンは…これです!」

キングドラ 「キンーッ!!」

リュウト 「キングドラ…!」

アダンさんが最後に出したのはキングドラだった。
最初に、俺がラブカスに出して、やられたポケモン…。

コモルー 「コモ…コモ…」

リュウト (コモルーももう限界か…)

コモルーもダメージもあり、疲労の蓄積もある。
もう、守りながら戦うのは不可能か…。

リュウト 「コモルー! 『りゅうのいぶき』!」

キングドラはドラゴンタイプ、当れば大ダメージだ!

アダン 「ふ、キングドラ、『たつまき』」

キングドラ 「ドラアアッ!!」

キングドラのホースのような口からは想像で出来ないような大きな竜巻がコモルーを襲う。
それこそ、コモルーの『りゅうのいぶき』なぞ飲み込んで…。

コモルー 「コモーッ!!?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!

リュウト 「コモルー!?」

コモルーは『りゅうのいぶき』を打ち破られ竜巻で空高く舞い上がった。
そして、自由落下で水面へと落ちる。

バッシャアアアアアン!!

コモルーの体重と衝撃で凍りは割れ、コモルーはしばらくすると浮かび上がってきた。

コモルー 「コ〜…」

審判 「コモルー、戦闘不能!」

リュウト 「…よくやってくれた、コモルー」

俺はコモルーをボールに戻す。
正直、よくここまで戦ってくれた。
これで俺も残り一匹。

リュウト 「俺の最後は…このポケモンだ!」

ハクリュー 「リュー!!」

俺が最後に出したポケモンはハクリューだった。
俺はこのハクリューで…勝つ!

…To be continued




おまけその53 「対決! リュウトVSアダン(中編)」 完



ルビーにBack ルビーにNext

Back Next

Menu

inserted by FC2 system