ポケットモンスター サファイア編




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第77話 『激闘を制するのは』






『3月5日 午前10時20分 ホテル』


ユウキ 「んは…、あれ…?」

俺は気がつくと薄暗いホテルのベットに横たわっていた。
いつ眠った? 今何時だ…?

ユウキ 「…10時20分? はぁ!?」

俺は近くのデジタル時計の時間を見ると間違いなくAM10:20と表示されている。

ユウキ 「や、やばい!? 一回戦が始まる10分前じゃないか!?」

俺ってやつは一体なんで今日に限って寝坊しているんだよ!
てか、昨日いつ寝た!?
覚えてねぇ! 昨日何してたんだ俺!?

ユウキ 「まず着替え…て、着替えられてる…てか、普段着のまま寝たのか…て、落ち着いている場合じゃねぇー!」

俺はモンスターボールを確認し、ホテルの鍵を持って急いで部屋を出る。
部屋の鍵を閉めると、フロントを通り、俺は急いでリーグ本戦会場に向かうのだった。



…………。



ケン 「遅いのぅ…このままやったら不戦敗やぞ、あいつ…」

イヴ 「…来たようだが」

ユウキ 「はぁ…はぁ…ん!?」

俺は会場の入り口を前にするとなぜか本戦出場のメンバー(いつものみんな)が入り口で待っていた。
いや、正確にはシズクちゃんとリュウトさんだけはいないのだが。

ケン 「よ! 昨日はお楽しみかい!」

ユウキ 「!?!?!?!?!? ば、馬っ鹿やろうー!!!!!」

ヨー 「おお…すごい赤面」

サティ 「あの、噂は本当だったかしら?」

アスカ 「欲情魔…」

ペル 「…ぽ」

ユウキ 「ふざけんな! 全部誤解だっつーの! てか、どきやがれ!!」

思い出したよ…昨日の惨劇。
どういうわけだか、すっぽり頭から抜けていたが忘れるはずがない。
だが…あの思い出は永遠に忘れたかったのも事実…詳しくはおまけ76…。

ユウキ 「ところで、シズクちゃんはともかくリュウトさんは?」

俺たちは一般観客とは別の出場選手の入り口から中に入らないといけない。
試合を見るときは花道から見ることもできるが、一応一般観客の席と同じところから見ることもできる。
ここに敗退者がいないのはすでに先に一般客として入ったか。

ヨー 「リュウトさんならまだ着てない」

ケン 「大方寝坊やろう…」

イヴ 「そんなことより急ごう、もう5分ないぞ?」

ユウキ 「や、やべ!」

俺は急いで会場へと入り、控え室を通り、フィールドの方へと向かうのだった。



…………。



シャベリヤ 『え〜、現在時刻10:28…ユウキ選手まだ現われません』
シャベリヤ 『シズク選手、すでにトレーナーサイドで静かに待っています』
シャベリヤ 『ん? あっと! 今情報が入りました! ユウキ選手来ました!』
シャベリヤ 『ユウキ選手フィールドへと入ってきます! なんとか間に合ったようです!』

ユウキ 「はぁ…はぁ…! ま、間に合った!」

ワァァァァァァァッ!!

俺はなんとかトレーナーサイドに入る。
すでにシズクちゃんはトレーナーサイドからこちらを見ている。
時折、俺の更に後ろを見ているようで怖いが…。

シャベリヤ 『昨日の新聞ではユウキ選手は9位選手、シズク選手は2位選手、これにユウキ選手が勝てば一気に優勝候補だ!』
シャベリヤ 『しかし、このバトルは数字では決して表せない! いきなり大注目の試合だー!!』

ユウキ (ハイテンション…)

俺は息を整えながらシズクちゃんを見る。
会場も実況も素晴らしくハイテンションだが…。

シズク 「……」

シズクちゃん…超ローテンション。
て、俺もテンション低いか。

ユウキ (注目の試合でもなんとも盛り下がる二人で始めなきゃならないんだよな…)

まぁ、そこはバトルで盛り上げる物だからな…。

シャベリヤ 『さぁ、今回のフィールドは岩と砂のフィールド!』
シャベリヤ 『大小さまざまないびつな岩の柱がフィールドに突き立っています!』

ユウキ (? なんか…カナズミジムに似ているな…)

まぁ、別に今回はフィールドに左右されるようなポケモンは少ないし問題ないが。
前回のミツル戦はこちらは追いつかれないための逃げ切りバトルだったが、今回は逆に追い抜きバトルだからな…。

ユウキ (さぁって、それじゃ今回から俺の全国版バトルといきますか!)

審判 「両者、不正のないようポケモンをフィールドへ!」

ユウキ 「でろ、ボスゴドラ!」
シズク 「出てきて、プテラ!」

ボスゴドラ 「ゴドー!」
プテラ 「ギャー!!」

シャベリヤ 『さぁ、バトルスタート! ユウキ選手が出したのはボスゴドラ、シズク選手はプテラです!』

シズク (ボスゴドラ…防御力は極めて高い…特殊攻撃で攻めるのがベターだけど…これほど攻撃をしたくない相手は珍しいのかも…)

ユウキ (さぁってと、どうやって覚えたかは知らないが、俺らしく戦いましょうか)

シズク 「プテラ! 『ちょうおんぱ』!」
ユウキ 「ボスゴドラ、『ステルスロック』!」

シャベリヤ 『両者同時に命令を出した! しかしこれは!?』

ボスゴドラ 「ゴドー!!」

ボスゴドラはフィールドに『ステルスロック』を張るが『ちょうおんぱ』を受けてしまう。

ボスゴドラ 「ゴド〜?」

ユウキ (ボスゴドラ…?)

ボスゴドラ (大丈夫♪ かかったふり♪)

ユウキ 「ち…そういうことか」

ボスゴドラは頭を抱えてぐるぐるするが、向こうに背を向けた瞬間、ウインクをしてきた。
混乱してないのにしたふりかよ…こいつも狸だな。

シズク (『ステルスロック』…たしか、シンオウ地方にある技…見えない岩をフィールドに漂わせ、ポケモンがボールから出るとそれを一斉に攻撃する)
シズク (やはりシンオウ系の技も習得している…覚えられる分は私も覚えさせたけど、やはり間に合わせ…どこまでやれるか?)
シズク (いや…私は私の経験で戦おう、無理に戦いの幅を広げるよりむしろ縮める方が有効だ…小手先の手はユウキさんには通用しない)

シャベリヤ 『『ステルスロック』が張られてシズク選手、大人しくなったか!? しかし、ボスゴドラは混乱している!』

シズク 「プテラ、『じしん』! 2発で仕留めるわ!」

プテラ 「プーテー!!」

ユウキ 「へ…生憎…2発目はないんだよな」

ズドォン!!

プテラの強烈な『じしん』がフィールドを襲い、ボスゴドラを追い詰める。
ボスゴドラは地面タイプが大の苦手だからな…だが、こいつの硬さは一発くらいなら耐える!

ユウキ 「返り討ちだ! ボスゴドラ、『メタルバースト』!」

ボスゴドラ 「ボースー!!」

ズッドォォン!!

プテラー 「ギャーッ!!?」

ズッサァァ!!

シャベリヤ 『決まったーっ!! 窮地に立たされたボスゴドラ、上手くトレーナーの命令を聞き取り『メタルバースト』で反撃! プテラ、耐えられずダウンです!』

シズク 「戻ってプテラ…」
シズク (やせ我慢ですね…ですが、読み間違えがあったのも事実…まさか、すでに『メタルバースト』を習得しているとは…)
シズク (あれは本来シンオウ地方のボスゴドラでなくては覚えない、ホウエンのボスゴドラが習得した例は聞いたことがない…ということはあれはトレーナーのなせる技)
シズク (やはり凄いトレーナーです、ユウキさん…ポケモンをそこまで育てたことも凄いですが、そのスピードも凄い)
シズク 「出てきて、ナッシー!」

ナッシー 「ナッシ〜」

ズドォン!!

ナッシー 「ナッシー!?」

ナッシーは見えない謎の攻撃、『ステルスロック』の洗礼を受ける。
まぁ、些細なものなんだがな。

シャベリヤ 『シズク選手、2匹目のポケモンはナッシーだ! 開幕1匹倒されたシズク選手、ここから本気になるか!?』

シズク (私は最初から本気ですよ、本気で潰しにかかってます…ですが、ユウキさんはその上で私の上をいっているだけです)
シズク 「ナッシー、『にほんばれ』!」

ナッシー 「ナッシー!」

ナッシーはその場で赤い熱量を持った球体を作り出し、空へと打ち上げの準備に入る。
この瞬間が唯一の攻撃の瞬間、だが俺の場合は。

ユウキ 「悪いなシズクちゃん、一発の決定打より俺はこっち選ぶわ…調子に乗られると怖いし、『ほえる』!」

ボスゴドラ 「ボ…ボ…ボォォォォス!!」

ナッシー 「!?」

シュポォン!
ボフゥン!

ウインディ 「ウォォン!」

シャベリヤ 『おーと! なんとシズク選手のポケモン無理矢理交換させられ、出てきたのはウインディ!』

ズドォン!

ウインディ 「ウオーン!?」

シャベリヤ 『ウインディ、『ステルスロック』で大ダメージ! しかし、日は照っており、ウインディの炎技は威力を上げている!』
シャベリヤ 『しかし、ボスゴドラも残り体力は少ない! シズク選手一気に攻めたいところだ!』

シズク (天候は日照…そしてウインディ…ボスゴドラは体力が少ないけど…それに…あおのボスゴドラ)

ボスゴドラ 「ボス〜?」

シズク (多分、混乱してない…しているふりね)
シズク 「混乱しているふりならしなくて結構です」

ボスゴドラ 「! ボス…」

シャベリヤ 『おおっと! なんだ!? 急にボスゴドラの動きが止まったぞ!?』

ユウキ 「あ〜らら、さっすがシズクちゃ〜ん…やっぱり騙せないか〜」

なら、それでいいですかね。
どの道、確率で勝負にでる娘じゃないからなぁ…。

シズク 「ウインディ、『ねっぷう』!」

ボスゴドラ 「ちょ!」

ユウキ 「隣の岩に隠れろ!」

ウインディ 「ウォォン!!」

シャベリヤ 『ウインディ辺り構わず『ねっぷう』を放つ!』

ボスゴドラ (くぅ…あっつ〜…岩の陰に隠れた…つっても防ぎきれるもんじゃないわねぇ…)

ユウキ (たく…フィールドを理解した技が来たか…『ねっぷう』は風だからな…完全には防げん)

シズク 「ウインディ、『こうそくいどう』!」

ウインディ 「ウイン!」

ボスゴドラ 「!? ユウキ指示!」

ユウキ 「右だ! 隠れる角度を変えろ!」

ボスゴドラ 「!」

ボスゴドラは岩の反対側に動き、背を岩につける。
ウインディはスピードを上げて、フィールドを動き回る。
万が一もなくしてくるな…どうする俺!?

シズク 「ウインディ、『いわくだき』!」

ウインディ 「ウォォッ!」

ボスゴドラ 「!? ウソッ!?」

ズガァン!!

シャベリヤ 『おおっと! ボスゴドラの隠れる岩がウインディに叩き壊された!!』
シャベリヤ 『ウインディ、パワフルに! そして素早くフィールドを支配する!』

ユウキ (たく! フィールドを壊して攻撃か! だが)
ユウキ 「ボスゴドラ、自分に『がんせきふうじ』!」

ボスゴドラ 「はぁ!? たく、この!」

シャベリヤ 『なんだー!? ボスゴドラ、自分の体が岩に覆われ、身動きが取れなくなる!』

シズク (作戦は読めるけど…他の手の出し方が無い…)
シズク (恐ろしい手をこんなに早く思いつきますね…その考え方に恐怖を覚えますよ…)
シズク 「ウインディ! ボスゴドラを覆う岩ごと、『いわくだき』で砕いて!」

ウインディ 「ウォーン!」

ズッガァァン!

ユウキ 「ボスゴドラ! 押さえつけろ!」

ボスゴドラ 「くぅ!!? はぁ!!」

ドカァッ!!

ウインディ 「!?」

シズク (やはり接点を求めてきた! このまま返り討ちはある! だけど!)

ユウキ 「『ストーンエッジ』!」
シズク 「『オーバーヒート』!」

ボスゴドラ 「はぁ!」
ウインディ 「ウォォン!!」

ズガァァァン!!!

シャベリヤ 『両ポケモンの攻撃が同時に出る! 互い大ダメージ! どうなるんだ!?』

ボスゴドラ 「…もう、げんか〜い…」

ウインディ 「ウォォン…」

ドッサァァァ!

審判 「両ポケモン戦闘不能!」

シャベリヤ 『おおっと、やはり相打ちだ! ユウキ選手まだリードをキープしているぞ!』

ユウキ 「おっけおっけ、働きとしては100点満点、戻れボスゴドラ」

シズク 「頑張ったね…戻って、ウインディ」

シャベリヤ 『さぁ、ここで日照も終わり、再び運試しの状態に、両者どんなポケモンを出すことになるのか!?』

俺たちはポケモンをボールに戻す。
ここまで想定どおり、すっげー怖いことやってるわけだが、これまで綱渡りのような冒険に比べればまだましか。
だが、どっこい向こうも恐ろしいほど肝が据わってやがる…。
よほど、シズクちゃんも修羅場を通ってきたんだろうな…。

ユウキ 「さて、でてこいコータス!」
シズク 「フシギバナ、ゴー!」

コータス 「コー!」

フシギバナ 「バナー!」

ズドォン!

フシギバナ 「バ、バナー!?」

シャベリヤ 『フシギバナに『ステルスロック』が襲い掛かる! この技は徐々に効果を発揮していく!』

シズク 「……」

ユウキ (読めん…シズクちゃんが何を考えているのか全く読めん…)

あれが悟りを開いた目だ。
つーか、ただの無心?
でも、目を開けたまま無心ってのは…?

ユウキ 「たく、『かえんほうしゃ』だ、コータス!」

コータス 「コォォォ!」

シズク 「フシギバナ、『ヘドロばくだん』!」

フシギバナ 「バナー!」

ゴォォォォ!
バシャアアッ!

シャベリヤ 『両者の攻撃がヒット! フシギバナなんとか持ちこたえたぞ!』

ユウキ (ち…防ぐぐらいなら相打ち狙いかよ!)

コータス 「コ、コー!」

ユウキ (ダメージが大きい、コータスは物理攻撃には強いが特殊攻撃にはそう強いわけではないしな…)

ユウキ 「ち、だが確実に仕留める! 『ねっぷう』!」

コータス 「コォォォ! コォォォォッ!」

シズク 「フシギバナ、周りの石柱を叩き折って!」

フシギバナ 「バーナー!!」

ズガァン! ズガァンズガァン!!

ユウキ 「ヲイ…それはありか?」

フシギバナは『つるのムチ』で周りの石柱を次々とフシギバナの前に倒す。
すると、どうだ?
なんと、石柱が積み重なって壁になりやがった…これでは真っ青ではないか。

シズク 「フシギバナ、『ねむりごな』!」

フシギバナ 「バァナ!」

パサァ!

コータス 「コッ!? コ〜…」

シャベリヤ 「ああっと、コータス眠ってしまったぞ!」

ユウキ 「マイガット…」

コータスはちゃっかりやりくるまれてしまう。
こうなると惨めだな…。

シズク 「フシギバナ、『にほんばれ』」

フシギバナ 「バァナ!」

カァァァァ!

シャベリヤ 『フシギバナの『にほんばれ』で会場は再び日照状態だ! コータス、以前眠ったまま!』
シャベリヤ 『このままだと危険だぞ!? どうするウユウキ選手!?』

シズク 「フシギバナ、『こうごうせい』」

フシギバナ 「バーナァァァ!」

フシギバナは更にここで体力を回復する。
日照状態だからいつもより回復が早い。
まずいな…こっちにやれることがあるとしたら交換くらい。
だが、交換際にいらんことされると更に悪循環。

シズク 「…いい日差し、草タイプにとっては自らを苦しめる炎に変えるかもしれないほど…狂おしい…光」

ユウキ (やべぇ…気温は3度以上は上がったが…体温は2度は下がった気分だ…)

シズクちゃんが果てしなく危ない生き物に見える。
たしかにシズクちゃんの言うとおり、草タイプの天敵、炎タイプの技の威力を上げる日照状態…しかし、それを覆してみせると言わんばかりの顔…。

シズク 「フシギバナ、『ヘドロばくだん』」

フシギバナ 「バナー!」

バッシャァァ!

コータス 「コッ!? コ…コォ…」

審判 「コータス、戦闘不能!」

シャベリヤ 『決まったー! フシギバナ、相性差を覆し、コータスを撃破!』

ユウキ 「おいおい…そんなのありかよ…て嘆く暇はねぇよな…」

現実、シズクちゃんにコータス負けているし。
やっぱり今回の戦いはタイプ相性よりむしろフィールドの使い方で勝負が決まるな。
このカナズミジムに似たフィールド、案外奥が深い。
この無駄に邪魔に見える石柱たちは攻撃にも、防御にも利用はできるか。

ユウキ 「2発目! サーナイト、ゴー!」

サーナイト 「……」

俺はコータスを戻し、サーナイトを繰り出す。
さて、今度はコータスのようにはいかないぜ?

ユウキ 「サーナイト…!」
シズク 「フシギバナ、『ソーラービーム』!」

フシギバナ 「バナー!」

ギュオオオ! ズドォォン!

サーナイト 「うわー!?」

ユウキ 「…て、早!? いきなりかい!」

シャベリヤ 『なんと、いきなりサーナイト、大ダメージを被ってしまったぞ! シズク選手速攻です!』

ユウキ 「くそ、サーナイト、『サイコキネシス』!」

サーナイト 「はぁ!」

フシギバナ 「バ、バナ〜…!」

フシギバナはサーナイトの『サイコキネシス』の呪縛囚われる。
しかし、これ一撃で仕留めるのは無理らしい。
なかなか強敵だな…このフシギバナ。

ユウキ (恐らく、シズクちゃんの大将だな! 前半戦で投入してくるくらいだ、一気に攻め落とす気だろう!)
ユウキ (だが、簡単にやらせないつーの!)

シズク 「フシギバナ、『ねむりごな』!」

ユウキ 「サーナイト、『テレポート』だ!」

フシギバナはまたもや、『ねむりごな』を散布してくる。
しかし、さすがに今度はこっちも引っかかるつもりはない。
サーナイトはすかさず、散布地点から『テレポート』する。

シャベリヤ 『サーナイトの『テレポート』、一体どこに出現するのか!?』

ユウキ 「サーナイト、『れいとうパンチ』!」

サーナイト 「はぁ!」

サーナイトはフシギバナの正面にでる。
まさかの正面突破ってやつだな。

シズク 「フシギバナ! 『まもる』!」

フシギバナ 「バナー!」

キィン!

ユウキ 「そうだろうな! だが、んなことは読んでるんだよ! 『サイコキネシス』!」

シズク 「フシギバナ、『はっぱカッター』!」

サーナイト 「はぁ!」

フシギバナ 「バナ!? バーナー!!」

フシギバナはサーナイトの『れいとうパンチ』を極めて絶妙なタイミングで読み、『まもる』。
だが、俺はそれを読み、あえてタイプ一致の『サイコキネシス』ではなく『れいとうパンチ』を使った。
この一撃を成立させるためだ!

スパァン! ガコォン!
ドカァ!

サーナイト 「はいっ!?」

シャベリヤ 『な、なんとー!? こぶし大の岩がサーナイトの頭を直撃! これはたまらない! サーナイト頭を抑えてます!』

シズク 「相手の動きを読むより、バトル場を理解した方が早いですよユウキさん! フシギバナ、『ソーラービーム』!」

フシギバナ 「バナー!」

サーナイト 「!? うわぁぁっ!?」

ズガァァン!!

シャベリヤ 『決まったー! フシギバナの『ソーラービーム』が怯んでいるサーナイトを飲み込んだ! これで逆転! 有利になったのはシズク選手だ!』

審判 「サーナイト、戦闘不能!」

ユウキ 「んな、馬鹿な…」

俺は呆然としながらサーナイトをボールに戻した。
読みは問題なかった、こちらの想定どおり『サイコキネシス』が2度もフシギバナを捕らえたんだ。
だが、まさか咄嗟に放った『はっぱカッター』が岩を切り裂き、それを跳ね上げてサーナイトの頭に直撃…あれは痛い。
俺が読んだ先まで考慮しての行為だというのなら…こりゃ完敗だ。

ユウキ 「運がいいのか悪いのか! チルタリス、いけ!」

チルタリス 「チルっと参上〜♪」

俺はさらにチルタリスを出す。
いい加減、ここらでストップかけないと本格的に追いつかなくなるよ…。

ユウキ 「チルタリス、『れいとうビーム』!」

チルタリス 「チールチルー!」

キィン!

シズク 「戻ってフシギバナ!」

シャベリヤ 「おおっと! 抜群のタイミング! ここでフシギバナをボールに戻した!」

なんと、すでにこっちが『れいとうビーム』を放ったというのにシズクちゃんはボールにポケモンを戻す。
てことは、でてくんのは!?

シズク 「でてきて、ラプラス!」
ユウキ 「チルタリス、『りゅうのまい』!」

ラプラス 「ラップー!」

ズドォン!

ラプラス 「ラップー!?」

チルタリス 「チルチル〜♪」

ラプラスは例によって『ステルスロック』のダメージを受ける。
ラプラスには効果抜群だぜ!?

シズク 「ラプラス、『ふぶき』!」

ユウキ 「チルタリス! 回避してもう一発『りゅうのまい』!」

チルタリス 「チルチルチルチルチルー!」

チルタリスは既に一段階速度を上げている。
そろそろ終わるとはいえ、日照はまだ続いている。
上空を飛べば、『ふぶき』は届かない!

シズク 「…ラプラス、『なみのり』」

ラプラス 「ラップー!」

ユウキ 「!? そこから!?」

なんとシズクちゃんはチルタリスは上空にいるというのにラプラスに『なみのり』を命令する。
『なみのり』ではフィールドが水浸しになるだけで、上空のチルタリスにダメージは与えられない。

シズク 「もう一度、『ふぶき』よ!」

ラプラス 「ラプー!」

ユウキ 「ち…よくわからないが、チルタリス、『りゅうのいぶき』!」

チルタリス 「ブッハァァ!」

シズク 「回避するのよラプラス!」

ラプラス 「ラプ!」

ユウキ 「げっ!?」

なんと、ラプラスは突然地面をすべるようにして高速に動いて回避する。
まさか!? 水浸しにして凍らす…日照が終わったのをいいことに簡易的にスケートリンクを作りやがったのか!?

ユウキ 「くそ! チルタリス、『ドラゴンクロー』だ!」

チルタリス 「このぉーっす!」

シズク 「ラプラス、岩場を使って『のしかかり』!」

ラプラス 「ラップー!」

チルタリスはスピードを上げ、『ドラゴンクロー』で切りかかるが、ラプラスは素早くフィールドをすべり、手ごろな坂を利用して、跳びはね、チルタリスを押しつぶそうとする。
しかし、そこはチルタリスもただでは受けない、とっさに身を翻しラプラスの『のしかかり』を回避する。

シズク 「ラプラス、『サイコキネシス』!」

ラプラス 「ラープー!」

チルタリス 「!? しま…!」

ユウキ (囚われた! やばい、状態変化を狙う余裕はないか!)
ユウキ 「チルタリス、『りゅうのはどう』!」

チルタリス 「く…ああ!」

ドォォン!!

ラプラス 「!!?」

シズク 「これで終わり! ラプラス、『れいとうビーム』よ!」

ラプラス 「ラープー!」

キィン!

チルタリス 「うわぁっ!?」

チルタリスは『サイコキネシス』に囚われながら『りゅうのはどう』でラプラスを攻撃する。
しかし、ラプラスも怯まず、そのまま『れいとうビーム』を放ち、それがチルタリスに直撃した。

審判 「チルタリス、戦闘不能!」

シャベリヤ 『決まったー! チルタリスダウン、これで合計6匹がダウンだが、なんとユウキ選手残り2匹!』
シャベリヤ 『やはり、シズク選手は強い! これが実力の差なのか!? ともかくこれで休憩だ! 後半戦で逆転はあるのか!?』

ユウキ 「洒落になんねぇな…もどれ、チルタリス」

俺はチルタリスをボールに戻し、その場を後にする。
ここから残り2匹で4匹撃破…一匹で2匹計算か…あのシズクちゃん相手に。
ああ…怖い怖い。



…………。



アカネ 「あの子、滅茶強いなぁ〜」

ハルカ 「うん、ユウキ君大ピンチだよ…」

アカネ 「あれが相手じゃまだ、ユウキじゃ勝てへんのは無理ないかもな…あれは強すぎるわ」

ハルカ 「でも、応援するんだよね…」

アカネ 「せやな…、あいつの勝利を願って、て、勝ったら勝ったで大馬鹿やけどな」

ハルカ 「頑張って欲しいね」

アカネ 「せやな」



…………。



ケン 「かぁ〜、やっぱつっよ〜…」

ヨー 「さすがは予選2位だな…下馬評で2位ってのも頷けるよ…」

リュウト 「……」

チカ 「ユウキに勝ってほしい…て、顔ね」

リュウト 「まだ、リベンジは果たせてないからな」

イヴ 「ここからが彼の力の見せ所だな、逆にシズクちゃんはどうやって押さえ込むか…追い詰められた鼠は猫を噛むというからな」

チカ 「だけど、彼は鼠じゃないわよ…」

アスカ 「さしずめ、狼…」

サティ 「あの噂が本当なら、まさに狼かしら…」

リフィーネ 「もう、その話題はやめたほうがいいと思いま〜す…」



…………。



シャベリヤ 『さぁ、10分の休憩も終わり、いよいよ後半戦が始まろうとしています!』
シャベリヤ 『前半戦で大分荒れたフィールドも綺麗に直され、天候も元通り、『ステルスロック』も無くてなしまってまさに心機一転!』
シャベリヤ 『現在シズク選手残り4匹、ユウキ選手は残り2匹と、ユウキ選手にとって大変厳しい状態が続きます!』
シャベリヤ 『果たして状況を覆すことはできるのか!? それでは後半戦スタート!』

シズク 「でてきて、ラプラス」

ラプラス 「ラプー!」

ユウキ (さて、こっちは否応無く2択)
ユウキ (ラプラスにはやはりダメージがあるが、使っているトレーナーが問題だよな、だが、まぁ…やるしかないか!)
ユウキ 「でてこい、ユレイドル!」

ユレイドル 「……」

シャベリヤ 『前半の遅れを取り戻すべくユウキ選手が出したのはユレイドル! 太古の海を生きた、化石より蘇りしポケモンだ!』

シズク (ユレイドル…ラプラスの苦手な岩タイプではあるけど、草タイプは氷が天敵…ここで出してくるというのは?)

ユウキ 「さぁ、さっさとやろうか! ユレイドル、『すなあらし』!」

ユレイドル 「…!」

ヒュオオオオオオッ!

シャベリヤ 『おおっと! 会場は突然砂嵐だ! 砂塵が飛び回り、荒野のようなフィールドに大変マッチしているようだ!』

シズク 「く! ラプラス、『れいとうビーム』!」

ラプラス 「ラプー!」

キィン!

ユレイドル 「!!」

シャベリヤ 『おお!? ラプラスユレイドルの頭を狙うがユレイドルは頭を素早く動かし『れいとうビーム』を回避する、これは意外と当てにくい的だ!』

シズク 「く、だったら、ラプラス、『なみのり』!」

ユウキ 「ユレイドル、『ドわすれ』!」

ユレイドル 「…」

ザッパァァン!!

シャベリヤ 『ラプラスの荒波がユレイドルを襲う! しかし、ユレイドルびくともしない! まるでダメージはなさそうだぞ!?』

ユウキ 「そのまま、『ねをはる』だ」

ユレイドル 「……」

ユレイドルは地面に根を張り、体力を回復させる。
この技を使うとその場から移動できないのが難点だが、そんなことこっちは気にしない、はなから固定砲台だ!

シズク 「だったら! ラプラス、『ふぶき』!」

ユウキ 「ユレイドル、『ギガドレイン』!」

ラプラス 「ラプー!」
ユレイドル 「…!」

シャベリヤ 『ラプラスの『ふぶき』がユレイドルに炸裂! しかし既に『ドわすれ』を積み、砂嵐の中のユレイドルには『ギガドレイン』と『ねをはる』の回復量に追いつけない!』
シャベリヤ 『このままではラプラスが根負けだ! どうするシズク選手!?』

シズク (…交代したところでどうにかなるとは思えない、むしろこちらの状況が悪化を辿るでしょうね…ユレイドルは本来状態異常などが主流)
シズク 「ラプラス、力を振り絞って! 『ふぶき』!」

ユウキ 「ユレイドル、『げんしのちから』!」

ユレイドル「…!」

ドッカァァァ!!

ラプラス 「ラプー!?」

シャベリヤ 『ユレイドルの周りに岩が集まり、それが弾けラプラスを襲う! すでにダメージもたまりラプラスついにダウンです!』
シャベリヤ 『しかし、ユレイドルも2度の『ふぶき』で若干ダメージが感じられる!』

シズク 「戻ってラプラス」

ユウキ (結局、2回とも『ふぶき』は直撃か…ユレイドルじゃラプラスより先に攻撃できなかったな…)

唯一の救いはユレイドルが2度に渡る『ふぶき』で凍らなかったことか。
ユレイドルは砂嵐状態では相当の防御力を発揮する。
そうそう攻め落とすことはいかにシズクちゃんでも容易ではない。

ユウキ (だが、怖いのは…また、いつユレイドルの時が止まるか…)

バトルをする度にその頻度は増え、そして止まる時間は長くなっている。
あと、何戦持つのか…いつか、完全にユレイドルの時は止まってしまうのか…。
正直、ユレイドルは時限爆弾だ…実力はあるがいつ爆発するかわからない。
一体、どうしてユレイドルはこんな不思議な現象が起こるのか…。

ユウキ (考えても、今は答えは出ないか!)

シズク 「でてきて、ナッシー!」

ナッシー 「ナッシ〜」

シズクちゃんはナッシーを出してくる。
ユレイドルと同じ草タイプだが、あっちはエスパータイプ。
とはいえ、効果抜群のラプラスの攻撃で突破できなかったユレイドルをナッシーで突破できるとは思えないが。

シズク 「ナッシー、『ねむりごな』!」

ユウキ 「ま、そうなるよな! ユレイドル、『あやしいひかり』!」

ナッシー 「ナッシ〜」

ユレイドル 「!」

ユレイドルは動くことができない、それゆえ散布系の『ねむりごな』は回避不能。
シズクちゃんは当然気付いているわけで、やっぱり状態異常を狙ってきますか!
だが、こっちも甘んじる気は無い!

ユレイドル 「……」

ナッシー 「シッシ〜?」

シャベリヤ 『ユレイドル、眠ってしまったー! しかし、ナッシーも混乱状態!』

シズク 「眠らすだけで十分です、戻ってナッシー、そしてライチュウ、出てきて」

ライチュウ 「チュウー!」

シャベリヤ 『シズク選手、ここでポケモンをボールに戻します! そして出てきたのはライチュウ!』

ユウキ (さて、こっちは自ら交換という手を封じちまったからな…)

あとは目覚めるの待つしかない…つっても。

シズク 「ライチュウ、『あまごい』!」

ライチュウ 「チュー!」

ポツン…ポツン…ザァァァァァ…。

シャベリヤ 『ライチュウの『あまごい』で砂嵐は一変して大雨だ!』

ユウキ (やっぱ、そうなるよな…)

まずは、これでユレイドルの特殊防御面は防御力半減だ。
『ドわすれ』は積んでいるものの、こっちは動けないからな…。

シズク 「ライチュウ、『かわらわり』」

ライチュウ 「チューウー!」

バッキィィ!

シャベリヤ 『ユレイドルにライチュウの『かわらわり』がヒットォ! 効果は抜群だー!』

ユウキ 「ちぃ! ユレイドル、起きろ!」

ユレイドル 「ZZZ」

シャベリヤ 『ユレイドル、トレーナーの叫びも虚しく、起きる様子は無い! このままの状態が続くと危険だぞ!?』

シズク 「これは貰いましたね…ライチュウ、もう一度!」

ライチュウ 「ラ−イ!」

バッキィィ!

ユウキ 「ユレイドルー!!」

ユレイドル 「!! ユー!!」

シャベリヤ 『おーっと! ここでユレイドル目覚める! 咄嗟に出たのは『エナジーボール』だ!』

ユレイドルは俺の声に反応したのか、ライチュウの攻撃がヒットした直後目覚め、『エナジーボール』をライチュウに放つ。
ライチュウは攻撃直後だったこともあり、そのまま直撃を受けてしまう。

シズク 「く! ライチュウ、『かみなり』!」

ライチュウ 「ラーイーチュー!!」

ユウキ 「ユレイドル、まも…!?」

俺はユレイドルに命令を下そうとする、しかし、それはすぐに不可能なことだと気付いた。

ピッシャァァン!!

ユレイドル 「……」

ユレイドルはピクリとも動かず、『かみなり』の直撃を受ける。
そうか…もう、限界か…さっきの動きは風前の灯火だったんだな…。

審判 「ユ、ユレイドル戦闘不能!」

シャベリヤ 『どうしたのでしょう!? ユレイドルピクリとも動きません! 気を失ったか!?』

ユウキ 「…もどれ、ユレイドル、さぁ…絶望から脱出狙おうか、ラグラージ!」

ラグラージ 「ラージ!」

シャベリヤ 『さぁ、ついにユウキ選手最後のポケモンが出てきました! すでにシズク選手全てのポケモンを見せているとはいえ、あと3匹!』
シャベリヤ 『ユウキ選手、勝利の壁はあまりに厚すぎる! シズク選手、詰めを誤らずやれるか!?』

シズク (ラグラージ…ライチュウはあまりに不利…だけど対抗できる技が無いわけじゃない…下手に交換際に効果抜群の技をくらいたくはないし…)
シズク 「ライチュウ、『くさむすび』!」

ユウキ 「ラグ! 岩によじ登って『いわなだれ』!」

ラグラージ 「ラーグ!」

シャベリヤ 『おーと! ラグラージ素早い! 『くさむすび』に足をとられる前に岩をよじ登り、射程範囲外に逃れる!』
シャベリヤ 『そして、ライチュウの上に大量の岩が降ってくる! ラグラージの『いわなだれ』だ!』

シズク 「! ライチュウ、『こうそくいどう』!」

ユウキ 「ちょこまか動いても無駄だ! 『じしん』!」

俺はシズクちゃんの命令を予測し、ラグが次の行動を開始できる最速タイムで次の攻撃を命令する。

ラグラージ 「ラーグ!」

ズドォン!

ライチュウ 「チュー!?」

ズッサァァァ!!

審判 「ライチュウ、戦闘不能!」

ライチュウはちょこまかと動き、スピードを上げるも、フィールド全体を覆う『じしん』には無意味だ。
そのまま押しつぶされて、ジ・エンド。

シャベリヤ 『決まったー! ラグラージ、ライチュウはノーダメージで攻略、これで残り2匹! とはいえシズク選手のポケモンは2匹とも草!』
シャベリヤ 『ラグラージにとってはなんとも苦行の道か!?』

ユウキ (そうかな? フシギバナはダメージは結構あるぜ? ナッシーだってダメージがないわけじゃない、それに疲れもあるはずだ)

とはいえ、こちらが不利なのに変わりは無い。
だが、もしかしたらここでシズクちゃんの無理のツケが回ってきたかもしれない。
このまま突破されるか、それとも逆転か!

シズク 「出てきて、ナッシー」

ナッシー 「ナッシ〜」

シズク 「ユウキさん、私はこのナッシーを捨石にします、本当の決着は、1対1でのバトルとなるでしょう」

ユウキ 「!」

シャベリヤ 『な、なんと! シズク選手衝撃発言! ナッシーを捨石にすると言っています! それはつまりフシギバナで決着をつけると!』

ユウキ 「BIT! 乗った!」

あの、発言つまりナッシーは全てフシギバナのために全力をつくすということ。
非常に怖いが…やってやるよ!

シズク 「ナッシー、『にほんばれ』!」

ユウキ 「ラグラージ、『れいとうビーム』!」

ナッシー 「ナッシー!」
ラグラージ 「ラージ!」

シャベリヤ 『会場はまたもや、天候変化! 今度は日照状態になった! しかし無防備にもナッシーはラグラージの『れいとうビーム』を受けてしまう!』

ユウキ 「もう一発だ!」

シズク 「ナッシー、『ひかりのかべ』!」

ラグは再び、ナッシーに向かって『れいとうビーム』を放った。
それはナッシーの『ひかりのかべ』に威力を軽減されつつも残り少ないナッシーの体力を完全にもっていく。

審判 「ナッシー、戦闘不能!」

シャベリヤ 『さぁ、ラグラージ遂にあとフシギバナ一匹まで追い詰めました!』
シャベリヤ 『しかし、シズク選手の策略により、フシギバナは万全の状態で挑めるでしょう!』

シズク 「でてきて、フシギバナ」

フシギバナ 「バーナー!」

ユウキ (フシギバナは前半戦で相当体力が削られているはず、だから最初にやることは…)

『こうごうせい』…そう考えるべきだろう…だが、彼女ならそんな消極策はとらねぇよな。

シズク 「フシギバナ、『ソーラービーム』!」

ユウキ 「ラグ! 『まもる』だ!」

フシギバナ 「バーナー!」

ラグラージ 「ラグッ!」

ギュォォォォ! ピキィン!
ズガァァン!

ユウキ (ち! なんて威力だ! 深緑が発動中か!)

『ソーラービーム』はラグラージの『まもる』に防がれるが、その威力は凄まじく、爆発が起きて、凄まじい砂煙が舞う。

シズク 「フシギバナ、『こうごうせい』!」

フシギバナ 「バーナー!」

ユウキ 「ラグラージ、『れいとうビーム』!」

ラグラージ 「ラージ!」

キィン!

フシギバナは隙を見て、体力を一瞬で回復させてくる。
だが、俺もただで回復させる気は無い。
『れいとうビーム』がフシギバナを捕らえた。
だが…。

フシギバナ 「バナ! バーナー!!」

シャベリヤ 『フシギバナ、平然としている! いくら『ひかりのかべ』に守られているとはいえ、こうまで弱点攻撃を耐えられるものなのか!?』

シズク 「さぁ、お返しです! フシギバナ、『はっぱカッター』!」

フシギバナの『はっぱカッター』は2枚、ブーメランのように楕円を描き、石の柱の隙間を通りながら、ラグの死角を通って、ラグラージを襲う。

ユウキ 「ラグ!石の柱を蹴り倒せ!」

ラグラージ 「! ラージ!」

バッキィ! ズッシィン!

シャベリヤ 『おお、ラグラージ、なんという剛脚! 石の柱を蹴り一発で叩き折った!』

そして、それは片方からくる、『はっぱカッター』を防ぐ、そしてもうひとつの『はっぱカッター』は。

ユウキ 「ラグ! 前進!」

ラグラージ 「ラァグ!」

楕円を描くということは前に進めば攻撃判定から外れる!
意表をついた攻撃だが、数が出せないのが難点だな!

シズク 「! フシギバナ、『ソーラービーム』!」

ユウキ 「ラグ! 転んでもいい! 前進しながら『まもる』!」

ラグラージ 「ラァーグ!!」

シャベリヤ 『ラグラージ、両腕をクロスさせてとにかく進む! 『ソーラービーム』でも止まらない!』

シズク 「『まもる』はもう使えない! これで最後です! フシギバナ! 『ハードプラント』!」

フシギバナ 「バァァァナァァァァァッ!!!!」

ユウキ 「分の悪い賭けか! オールチップだ! ラグ、『震貫』!」

ラグラージ 「ラーグ! ラージー!!」

ズガァァン! ズガァァン!!

シャベリヤ 『凄まじい! フシギバナの『ハードプラント』がフィールドを滅茶苦茶にします!!』
シャベリヤ 『その様子はさながら地中を這う竜のようだ! しかし、ラグラージまるで恐れず、フシギバナへと距離を詰める!!』

ズッガァァァン!!

ラグラージ 「!? ラグーッ!!?」

シズク 「やった!」

シャベリヤ 『ラグラージ、フシギバナとの距離後1メートルのところで地中よりとびだす、巨大なツタに弾き飛ばされたー!』
シャベリヤ 『これで、この勝負は決まりかーっ!?』

ユウキ 「まだだ…いっけー!!!」

ラグラージ 「ラ、ラージ!!!」

!!!!

フシギバナ 「!!!!!?」

シャベリヤ 『な、なんとラグラージ、跳ね飛ばされなお前進! フシギバナの真上から拳を突きたてた!』
シャベリヤ 『そのまま体をフシギバナの上に落とし、地面に転げ落ちたぞ!』

ラグラージ 「ラ…ラァ…ジ…」

シャベリヤ 『ラグラージ、立ち上がるも、腰が落ちる! 駄目か!?』

フシギバナ 「…バナァ」

ユウキ 「賭けは…俺の勝ちだ!」

ズッシィィン!!

フシギバナは『震貫』のダメージに耐え切れず、その巨体を地面に落とした。
ラグラージは今だ気迫をもって立ち続ける、しかし、それももう限界のはずだ。

審判 「フシギバナ、戦闘不能! よって勝者ユウキ選手!」

シャベリヤ 『決まったー!! ラグラージの『震貫』、音も無くまるでダメージのなさそうな技だが、その威力は絶大! シズク選手のフシギバナもついに倒れた!』
シャベリヤ 『しかし、ラグラージもつらい! あっと、ここでラグラージも前のめりに倒れたー!』
シャベリヤ 『 この戦いどれだけの死闘だったかはこの両者の結果、そしてフィールドの壊滅を見れば一目瞭然でしょう!』
シャベリヤ 『かつて、これほどの名バトルはあったでしょうか!? 両者第2回戦で当たったのはあまりに惜しいと思える名勝負!』
シャベリヤ 『ともあれこれでユウキ選手第3回戦への切符を一番乗りでゲットだ!』
シャベリヤ 『負けたシズク選手、その実力は決して低いものではない! どうか両者に惜しみない拍手を!!』

パチパチパチパチパチ!

シズク 「…戻って、フシギバナ」

ユウキ 「ラグ、サンキュ」

俺たちはボロボロになっているポケモンたちをボールに戻す。
俺が勝てたのは運がよかっただけかもしれないな。
ハードプラントの当たり方が浅く、たまたま前へと跳ねられた。
『震貫』は強力だが、ゼロ距離から『じしん』のベクトルを敵体内へと放つ。
しかし、これは相手と接触したまま『じしん』を放つものだから自分の力が反動として自分に帰ってくる。
『ハードプラント』の一撃…そして、『震貫』の反動…立っていられたのは奇跡かな。

ユウキ (もし、『ハードプラント』が深くラグラージに突き刺さっていたら攻撃すらできなかったろうな…すげぇ威力だ)

シズク 「ユウキさん…」

ユウキ 「よ、お疲れさん、シズクちゃん」

シズクちゃんはバトルが終わると俺に寄ってきた。
全力でぶつかれた、ここは労おうか、互いをな。

シズク 「賭けは私の負けです…ですが、次会う時は私が勝ちます」

ユウキ 「……」

シズク 「それでは、準々決勝、頑張ってください」

シズクちゃんはそう言うと、自分の入ってきたサイドから帰るのだった。
俺はしばらくその場に突っ立って、そして頭をかきながら。

ユウキ 「怖い怖い…やっぱりあの娘は怖いわ…」

できれば2度と戦いたくないね…。
俺はそう思いながら、帰るのだった。




ポケットモンスター第77話 『激闘を制するのは』 完






今回のレポート


移動


サイユウシティ


3月5日(ポケモンリーグ本戦2日目)


現在パーティ


ラグラージ

サーナイト

チルタリス

ユレイドル

ボスゴドラ

コータス


見つけたポケモン 66匹






おまけ



その77 「また休み〜」





あ、今回は特別長くなってしまいましたのでまたもや予告だけです。


激闘は終わった…しかし、戦いは終わったわけではない。
次なるカードはAブロック第2回戦第2試合アスカVSツカサ。
女同士の戦いが、今始まる!

ユウキ 「はぁ…疲れた、今回は突っ込み無しね…」





おまけその77 「また休み〜」 完


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