ポケットモンスター サファイア編




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第90話 『落胆』






シャベリヤ 『――さぁ、先ほどはペル選手の不在によりヨー選手不戦勝となり、スケジュールを若干繰り上げることとなりましたが……』
シャベリヤ 『ですが、ポケモンリーグは続いております!! さぁ次の試合はアンナ選手VSイヴ選手!』
シャベリヤ 『Bブロック準決勝……ヨー選手とBブロックの覇者を決める戦いに挑む者を今、決めようとしております!!』

ワァァァァァァッ!!!

観客たちはさっきまでの戸惑いは嘘かと言うように騒ぎ出す。
……いや、シャベリヤが乗せるが上手いと言うべきか。
俺はバトルフィールドには姿を現さず、シャベリヤの言葉を待つ。

俺にとっての5度目のポケモンリーグ挑戦……。
俺はかつてカントー地方において、ポケモンリーグチャンピオンとなった。
チャンピオンとなった俺には数多くの挑戦者たちが、最強の座を求めて俺に戦いを挑んできた。
ただ防衛戦を繰り返す日々……3回のポケモンリーグチャンピオンの座に君臨した時、俺は疑問を覚えた。


『いつまで、こんな不毛な戦いを繰り広げればいいのか……?』


俺と同期だったポケモントレーナーたちは皆引退した。
ポケモントレーナーはコーディネーターと違い、生活を支える仕事には成り得ない。
ジムリーダーや、四天王といったポケモンリーグ運営委員会所属の者達だけがトレーナーとしての仕事が許される。
そう、一握りの優秀なトレーナーのみしかこの世界は生き残れないのだ。

ポケモンバトルに意味を見失った俺は……チャンピオンの座を返上し、表舞台から姿を消した。
それから4年後……俺は表舞台へと帰る事をした。
あの『少年少女たち』に出会ったからだ……。

マサラタウンから旅立ち、オーキド博士よりポケモン図鑑を託された4人の少年少女。
それぞれ、性格も戦い方も違うが皆新人として、そしてポケモントレーナーとしての輝きを持っていた。
その姿は、俺がまだチャンピオンを目指していた……『チャレンジャー』だった時代の輝きだった。

俺はチャレンジャーでいたい。
チャンピオンでいるには、俺はまだ若すぎる。

シャベリヤ 『さぁ、それでは入場してもらいましょう! まずはレッドサイドより入場するのはアンナ選手!』
シャベリヤ 『アンノーンのみを使い、アンノーンに魅入られた不思議な少女! 果たして勝利の栄光を勝ち取ることが出来るか!?』

アンナ 「……」

ワァァァァァァッ!!

アンナ選手は周りに軽く会釈をしながら、トレーナーサイドまで歩いてくる。
なんでもポケトピア所属のトレーナーらしく、こういったスタジアムでのバトルは慣れているようだ。
場慣れしているっていうのは一つの強さだな、不意の弱さを見せにくい。

シャベリヤ 『対してブルーサイドから入場するのはイヴ選手!』
シャベリヤ 『経歴不明、しかし予選第1位の謎の凄腕トレーナー、果たしてアンナ選手を打ち破れるかっ!?』

謎……か。
シャベリヤ……俺の親友であり、俺と同期のポケモントレーナー。
ポケモントレーナーを引退し、職に着いた一人だ。
奴はトレーナーとしては優秀ではなかったが、喋るのは上手かったからな。
この実況という職業は奴にとって転職と言えような。

イヴ (アンナ選手……楽には勝たせてくれないだろうな)

俺はゆっくりとブルーサイドのトレーナーサイドへと足を運ぶ。
観客たちの歓声が、俺の耳を突き抜ける。

俺はそれまで使っていたポケモンを全て今のメンバーと入れ替え、一から育てることで俺は自分自身への挑戦とした。
ジムを巡り、そしてポケモンリーグに一挑戦者として参加する。

イヴ (そろそろ……本気を出させてもらいたいな!)

俺はトレーナーサイドに立ち、アンナ選手を見定める。
俺は強くなるためには手は抜かなかったつもりだ。
戦う上で、こちらをギリギリにする戦い方。
限界を超えるための実戦トレーニング。
強くなるために出し惜しみはしない。
強くなるため…トレーナーとしても、あえて野生から、あるいは卵から1シーズンという短い期間を設けてのリーグ挑戦。
苦戦を繰り返す……そして限界を超える。
無茶もあったが、たった1年でリーグに到達できるほどに俺のポケモンたちは成長できた。
後は……勝つだけだ!

シャベリヤ 『さぁ、それではBブロック準決勝第2試合、アンナ選手VSイヴ選手、いよいよ始まります!!』

審判 「それでは、両者不正のないようポケモンをフィールドへ!!」

アンナ 「でてきて、アンノーン」
イヴ 「でてこい、エーフィ!」

アンノーンB 「アンノーン」
エーフィ 「フィ」

互いのポケモンがフィールドに姿を現す。
俺が出したのはエーフィ、アンノーンと同じくエスパータイプのポケモン。
対してアンナ選手が出したのはアンノーン……その内でも英語のBを模したポケモン。

シャベリヤ 『イヴ選手、開幕はなんとエーフィ! まさかの同タイプ対決だ!』
シャベリヤ 『この準決勝は全試合まっさらな遮蔽物のない平地がバトルフィールド、実力差が単純に出るぞ!?』

アンナ (ブラッキーじゃない? やられた……)

イヴ (セオリーをイメージしたかアンナ選手!?)
イヴ 「エーフィ、『シャドーボール』!」

アンナ 「戻ってアンノーン」

俺は当然のごとく、エスパータイプの弱点の技。
ゴーストタイプの技の『シャドーボール』を放つが、それを嫌ってアンナ選手はいきなりポケモンを戻した。

アンナ 「でてきて、アンノーン」

アンノーンN 「アンノー……ノォッ!?」

エーフィの口から作られた黒い球体『シャドーボール』が変わりに出てきたアンノーンに直撃する。

アンナ 「アンノーン、『めざめるパワー』!」

アンノーンN 「! ノーン!」

キィィィィィィン!!

エーフィ 「!? フィーッ!?」

イヴ 「くぅっ!?」

こいつは確か前試合でサティ選手との戦いで使っていた。
確かムウマージには効果抜群でプクリンには効果なし……つまりゴーストタイプ!

イヴ (小さい分、小回りは向こうの方が効くか……とすると撹乱は不可能)
イヴ (『めいそう』をするだけの体力も残されていまい……だったら!)
イヴ 「エーフィ、もう一度『シャドーボール』!」

アンナ 「『めざめるパワー』!」

エーフィ 「フィ……フィッ!」
アンノーンN 「アンノー!」

ギィィィイ!! ザザザザッ!!

激しいノイズが鼓膜を破らんがごとく襲い掛かる。
だが、基礎速度はエーフィの方が速い。
『シャドーボール』をコンパクトに作り出し、先にアンノーンに放つ。

ギュオオオッ! ドカァン!!

アンノーンN 「ノーンッ!?」
エーフィ 「フィッ!?」

互いに直撃。
土台、両ポケモン耐久力には優れないポケモンだ。
ここまでか。

エーフィ 「フィ〜…」

アンノーンN 「ノ〜ン…」

審判 「両ポケモン戦闘不能!」

シャベリヤ 『なんといきなりダブルノックアウト!! 始まりは早々に場は戦慄を持ったかっ!?』

イヴ 「戻れエーフィ、よくやった」

アンナ 「ご苦労様、アンノーン」

俺はエーフィをボールに戻す。
正直、予定ではエーフィで2〜3匹は倒す予定だった。
元々アンノーンは戦闘に優れる種族じゃない。
『シャドーボール』を持つエーフィなら十分押せると思っていた。
だが、現実的には『シャドーボール』を1発耐えられ、その後相討ちだ。
やはり、強いな……アンノーンだけでここまで突き詰めるとは恐れ入る。

審判 「両者、次のポケモンを!」

イヴ 「でてこい、ブースター!」

ブースター 「ブーッ!」

アンナ 「でてきて、アンノーン」

アンノーンD 「アンノーン」

俺は2匹目は誰にしようか悩んだが、ブースターを選ぶ。
相性で言えばどう考えてもブラッキーがいい。
だが、ここでトレーナーの心理戦が始まる。
アンノーンのタイプは確かにエスパーだが、『めざめるパワー』のタイプは個体ごとに不明。
ということはアンナ選手としては悪タイプに有効な『めざめるパワー』を持ったアンノーンを使う確率は高い。
あくまで賭けだが、俺はブースターを選択した。

イヴ 「ブースター、『かみつく』!」

ブースター 「ブゥーッ!!」

ブースターはフェイントなしに一直線にアンノーンへと突っ込む。
乗るか反るか全くわからんが……これしか選択肢もなさそうだ。

アンナ 「アンノーン、『めざめるパワー』」

アンノーンD 「アンノー」

アンノーンの『めざめるパワー』は個体ごとにエフェクトが違う。
故に回避など、初見では不可能だ。
多少、己の運にかけて突っ込むしかない。

ゴゴゴ……。

イヴ 「!?」

地面が多少揺れた気がした。
だが、その時点で俺の冷や汗がその技のタイプを俺に教えていた。

イヴ 「ブースター! 大きく跳び上がれ!」

ブースター 「! ブゥッ!!」

ブースターが飛び上がった瞬間だった。
ブースターの足元がヘコんだ。
『ガコン』という音を立てて。

ズドォン!!

直後小規模な反動でその場に地震が起きた。
地面タイプの『めざめるパワー』かっ!?

シャベリヤ 『おおっと! イヴ選手咄嗟の判断でブースター難を逃れたっ!』

イヴ (やられたな! 裏の裏を読まれたかっ!?)

アンナ (2番手にブラッキーはないと思った…とするとそれ以外のポケモンとなる)
アンナ (後は……こっちも運だったけど)

ブースターはアンノーンの攻撃を回避するも、その性でアンノーンに距離を離される。
ダメージ覚悟で突っ込むか……それとも、焦らして向うのカウンターを狙うか?

アンナ 「アンノーン、もう一度『めざめるパワー』」

イヴ 「ブースター、避けながら『かえんほうしゃ』!」

ブースター 「ブゥッ!!」
アンノーンD 「アンノーン」

アンノーンの技のエフェクトはわかった。
あのアンノーンの攻撃は、若干タイムラグが生まれる。
避けて、攻撃を入れるには宙を浮くアンノーンにはブースターでは難しいが、最悪ある方法で勝つことも出来る。

ブースター 「ブウッ!」

ゴォォォォッ!!

アンノーンD 「アンノー」

ズドォン!!

互いが中〜遠距離で戦うが、両ポケモン当たらない。
こちらとしては当たらなくても、喰らわなければ問題ない。

アンナ (11発目……まずい)

イヴ (悲しいかな、そろそろアンノーンの負けが宣告される)

近代化されたポケモンの定義とされる物。
1つ、ポケモンの技には一定のPPという物が存在する。
1つ、ポケモンが技を使うには、1ターンに1度という括りが存在する。

イヴ (もし、この2つのうちどちらかが存在しなければこの戦いは変わっただろうな……)

『めざめるパワー』のPPは15。
すでに11発放っている。
アンノーンの弱点だな……これしかできないというのは。

まだせめて、地形が一定でなければ向うにとって状況は良かったかもしれんが。

アンナ (準決勝は制限時間無制限……時間切れで対処は無理……だったら!)

イヴ (! くるかっ!?)

アンナ選手から攻撃する気が感じる。
長年トレーナーをやっていると、どんな無表情なトレーナーでも攻撃する時なんらかのエフェクトがわかる。
大体は表情でわかるんだが、稀にアンナ選手みたいに攻撃の瞬間にも表情を出さない奴がいる。
だが、それはそれで長いことトレーナーをやると別の方角からわかるようになった。

アンナ 「アンノーン! 『めざめるパワー』!」

イヴ (本気の一撃が来るか!)
イヴ 「ブースター、『かえんほうしゃ』!」

アンノーンD 「アンノー!!」

アンノーンが動きを止めた。
タイミングを変えてきた。
対応は可能だし、PP切れまで戦うことも可能だろう。
だが、こちらもダラダラとやりあう気もない。
ここらで確実に終わらせる!

ゴオオオッ!!
ズドォン!!

アンノーンD 「アンノーッ!?」
ブースター 「ブゥッ!?」

シャベリヤ 『同時に炸裂っ! これは大丈夫なのか!?』

アンノーンD 「アンノ〜……」

ブースター 「ブゥ……ブゥ……!」

審判 「アンノーン戦闘不能!」

シャベリヤ 『決まったーッ!! アンノーンの渾身の一撃、しかしブースター耐え切った!』

アンナ 「戻って、アンノーン」

アンナ選手は無表情にアンノーンを戻す。
ある程度理解できていた、そんな顔だった。

シャベリヤ 『さぁ、これでイヴ選手が一歩リード! しかしブースターの体力も芳しくない!』
シャベリヤ 『まだまだ予断の許されないバトルが続きそうです!』

アンナ 「出てきて、アンノーン」

アンノーンM 「アンノー」

アンナ選手の3匹目はMの形を模したアンノーンだった。
初めて見るタイプだな……何をしてくるか読めん。

イヴ (ブースターはどうだ?)

続いて俺はブースターの方を見てみる。

ブースター 「ブゥ……ブゥ……!」

ブースターの息が荒い。
ダメージもかなりあるな。
ボールに戻しておけば、少しは回復を……いや、あまり変わらんか。

イヴ 「ブースター、『かえんほうしゃ』!」

ブースター 「ブゥゥ……ブーッ!!」

ブースターは口から炎を放ってアンノーンを攻撃する。
しかしやはり小さい的だからかアンノーンはアンナ選手の命令なく鮮やかに回避してしまう。

アンナ 「『めざめるパワー』」

アンノーンM 「アンノー!」

アンノーンは上空から『めざめるパワー』を放つ。
しかし見た目には何が起きているのかわからない。

ブースター 「ブゥ……? ブゥッ!?」

バァン!

突然、爆発するような音がしてブースターが倒れる。
馬鹿な……一体どういう攻撃だ?
少なくともアンノーンから何かが放射されたようには見えなかった。
エスパー系の技か?

審判 「ブースター戦闘不能!」

シャベリヤ 『ああっと! やはりブースター体力が残っていなかった! しかしアンノーンのあの技は一体!?』
シャベリヤ 『大変謎が残りますが、これでアンナ選手イーブンに戻した!』

イヴ 「く……もどれブースター」

念力系の技か……ブースターは技を食らう直前不思議な顔をしていた。
技の仕組みやタイプがわからんと判断に困るな。

イヴ 「サンダース、でてこい!」

俺は見えないにしろスピードで撹乱することで回避はできないかと思いサンダースを出す。

イヴ 「サンダース! 極力動きを止めるな! 相手の攻撃の手法がわからん!」

サンダース 「サンダッ!」

サンダースはフィールド内を駆け回り、アンノーンの目標を定めさせない。

アンナ (これは好機かもしれない……イヴさん相手じゃだましきれないかもしれないけどやってみよう)
アンナ 「アンノーン、『めざめるパワー』!」

アンノーン 「アンノーン!」

イヴ 「サンダース! 動き回りながら『でんきショック』!」

俺は極力サンダースに負担をかけない技を選択する。
『でんきショック』は相手を倒しうるダメージは発生しないが、確実なストッピングとこちらの自由な行動が確定する。
どんな技でも要は使いようだ。

サンダース 「サンッ!!」

バチチ……バァッ!!

イヴ 「!?」

サンダースは『でんきショック』を放つが、『でんきショック』は突然空中で拡散し、消滅してしまう。

シャベリヤ 『な、なん…ザザ…と!? サン……スの『でんきショック』……されました!?』

イヴ (!? シャベリヤの放送にノイズ……?)

サンダース 「!? サン……!?」

突然、サンダースが苦しそうな顔をして動きを止める。

イヴ 「!? どうしたサンダース!?」

サンダース 「サンッ!?」

バチチッ!

突然、サンダースの自慢の毛がゆらゆらと動き出した。
俺は何事かと思った時、その時ひとつのロジックが完成した気がした。

バァン!!

サンダース 「サンッ!?」

サンダースの周りで弾けたような音がする。
サンダースは少し苦しそうだったが、やがて正常通り動き出した。

シャベリヤ 『またもや謎の攻撃、サンダースも突然の異変は嘘のように動き出しています! 一体何が起こったのか!?』

イヴ (電気の拡散……ノイズ……静電気)

俺は頭をフル回転させ、このロジックを解こうとする。
ユウキ君ならすぐにでもこの答えを出すのだろうな……だが、多少時間がかかった気がしたがこの答えはわかった。

イヴ 「サンダース、動く必要は無い……お前の場合回避は『不可能』だからな」

あの技が放たれるとサンダースでは回避が出来ない。
なにせサンダースは動かなくなったのではなく動けなくなったのだからな。
だが、その代わり受けるダメージも少ない。
俺はおおよそのタイプ、そして攻撃方法は検討がついた。
合っているかどうかはわからない。
ただ、俺の予想通りなら打ち合うしかないな……。

アンナ 「……アンノーン、『めざめるパワー』」

アンナ選手は少し迷った様子だったが、アンノーンに攻撃を命令する。
俺はアンノーンが攻撃モーションに入ったのを確認すると命令する。

イヴ 「サンダース、『かみなり』だ!」

サンダース 「! サーン!!」

サンダースは『かみなり』を放つ。
『かみなり』は相手の空中で形成され、それがアンノーンに落ちる。

バチチチチィン!!

アンノーンM 「ア、ア、ア、ア、アンノーッ!?!?」

バァン!!

サンダース 「!! サンッ!」

シャベリヤ 『あーと! 両者ダメージ! しかしアンノーンの一撃効果が薄い! 大してアンノーンは!?』

アンノーンM 「ア〜ンノ〜……」

アンノーンは強力な電撃を浴びて黒コゲになり、地面に落ちていた。

審判 「アンノーン戦闘不能!」

アンナ 「あ……」

イヴ 「最初は戸惑ったが、わかればなんてことのないロジックだったよ」

アンナ 「え?」

イヴ 「あのアンノーンの『めざめるパワー』のタイプは鋼、攻撃方法は正面放射拡散型、特徴は磁力による暴発ダメージ」
イヴ 「サンダースの毛並みは磁力に敏感だからな、あれだけ強力な磁場が発生すれば電気タイプでは逃れられるはずがない」
イヴ 「だが、その反面ダメージが相当薄かった、そしてノイズだ……あれだけの強力な磁場……それこそサンダースの『でんきショック』を正面から消滅させるほどの」
イヴ 「答えを導き出すには十分すぎる材料だったよ」

シャベリヤ 『あ……なんと、そういうことだったのか! さすがはイヴ選手です! アンナ選手ただただ呆然!』




ケン 「なぁ? わかった?」

リュウト 「いや……」

チカ 「わかる方が普通じゃないわよ」

サティ 「さすがイヴさんかしら〜……」

アスカ 「ポケモンのみならず、トレーナーも超一流……憧れるよねぇ」




アンナ 「……戻ってアンノーン」
アンナ (強いなぁ……凄く強い……やっぱり勝てないのかなぁ?)

審判 「アンナ選手、次のポケモンを!」

アンナ 「あ……はい。出てきてアンノーン」

アンノーンQ 「アンノー」

イヴ (サンダースはそこまで打たれづよい訳ではない……詰める気なら交換だな……どうする?)

今回の相手はたしかサティアーラ選手とのバトルで出ていた時は地面タイプだった。
たしかにサンダース相手にはセオリー通りだと思う。
だが、一度見せた物をもう一度……というのはやはり苦しいな。

イヴ (もう少し楽しめるかと思ったが、やはりここまでか……アンノーンだけで良く頑張ったものだ)

アンナ 「アンノーン、『めざめるパワー』」

イヴ 「交代だサンダース、出て来いシャワーズ!」

俺はサンダースを戻し、シャワーズを出す。
アンナ選手の気はすでに萎んでおり、このまま気を折るのは簡単だろう。
本来ならあまりそういった行為は好まないが、本気を出せないのならこれ以上はただの遊びに過ぎない。

イヴ (結局、君も俺の本当のバトルはさせてくれないか……)

シャベリヤ 『イヴ選手ここでポケモンをボールに戻した! 出てきたのはシャワーズ!』

シャワーズ 「シャワ〜……ズゥッ!?」

ズドォン!!

地面が隆起するほどの強烈な地震がシャワーズの周辺に起きる。
しかし、体力の高さを誇るシャワーズには致命的なダメージを与えたとはいえない。

イヴ 「シャワーズ、『あまごい』」

シャワーズ 「シャワ〜!」

シャワーズは青い球体を作り出すと、それを空中に打ち出す。
空中で弾けたかと思うと、暗雲が立ち込め会場は土砂降りとなる。

アンナ 「! アンノーン、もう一度『めざめるパワー』」

イヴ 「シャワーズ、『なみのり』!」

シャワーズ 「シャワーッ!」

ザザザァァァ……ザァッパァァン!!!

シャベリヤ 『会場は土砂降りとなり、『なみのり』は荒れ狂う津波となりアンノーンを飲み込んだぁッ!!』

アンナ 「!? アンノーン!?」

シャワーズの放つ『なみのり』は高さ10メートルは及ぼうかという高波となって小さなアンノーンを飲み込んでしまう。
何もかもが水に覆われ、水が引いた時、フィールドアンナ選手側の端にはシャワーズとアンノーンの姿があった。

アンナ 「! アンノーン!?」

シャワーズはアンノーンを口に咥えている。
シャワーズはポイッとアンノーンを放り投げると、アンノーンは力なくフィールド中央で倒れた。

審判 「! アンノーン戦闘不能!」

シャベリヤ 『ああっと、アンナ選手ここでまたポケモンを失ってしまった! それにしてもイヴ選手の目の覚めるような猛攻! まさに嵐!!』
シャベリヤ 『さぁ、それではこれより10分のインターバルに入ります!』

イヴ 「……戻れ、シャワーズ」

シャワーズ 「……」

シャワーズはつまらなさそうな顔をしていた。
つまらないのは俺も同じだ。
結局、アンナ選手も俺たちに真の実力を出させる程の実力はない。
トレーナーとしては優秀だが、やはりアンノーンだけで戦うというのには無茶がある。
こういった多極的な戦術において、アンナ選手はその能力を活かしきれない。

アンナ 「……戻ってアンノーン……」

アンナ選手は酷く落ち込んでいた。
俺はそんな見るに耐えないアンナ選手を尻目に会場の出口へと向かう。

アンナ (一瞬でも勝てるかなって思ったのが甘かった……やっぱりだめ……もう限界)
アンナ 「あの……」

審判 「? なんでしょうかアンナ選手?」

アンナ 「私の負けです……降参します」

審判 「え? あ……はい。えー運営局!」

シャベリヤ 『? えー、既に会場を立っているお客様今しばらくその場を動かずお待ちください!』
シャベリヤ 『えー、10分後後半戦を行う予定でしたが、アンナ選手の降参により中止となりました』
シャベリヤ 『これによりイヴ選手はBブロック決勝戦へと駒を進めることとなります』

イヴ 「……」

折れた…か。
俺は振り向きはしない。
正直、ここから俺もラストスパートをかけようと思う。
今までは試合で練習を行ってきたが、さすがにそのままではポケモンたちも勘が取り戻せない。
ユウキ君と当たるかレン君と当たるかはわからないが、決勝では文句のないバトルがしたいものだ。





『同日 同時刻 サイユウシティ』


ユウキ 「よぉ……来てくれたか」

俺はホテルの前でとある人物の到着を待っていた。
俺の目の前に現れたそいつは少し不機嫌そうな顔をしていた。

シャドウ 「一体なんのようだ……俺を呼ぶとは?」

俺が呼んだのはシャドウだった。
シャドウはスコールにでもあったのか着ていたローブをびしょびしょにしていた。

ユウキ 「目的は二つ、ひとつは白夜の能力の試験」

俺は白夜の可能性の一環としてとある実験を行ってみた。
空間を司る能力を用いて、シャドウに空間の穴を開けて連絡を入れたのだ。
実験は思いの外良好で、電話のようにとは行かなかったものの俺の言葉をシャドウに伝えることには成功した。

シャドウ 「いきなり急いでサイユウシティに来いなんて、無茶苦茶だぞ……」

ユウキ 「悪いな、そいつは目的其その2のためだ」

シャドウ 「? 一体俺に何をさせようというのだ?」

ユウキ 「俺の部屋に居る娘と一緒に居て欲しい、俺がいない間だけでいいから」

シャドウ 「護衛か?」

ユウキ 「そんなところだ、これが俺の鍵ね」

シャドウ 「……ふん、わざわざあんな無茶をしてまで俺を呼ぶとは一体何者なんだ?」

ユウキ 「会えばわかるさ……じゃ、俺は会場に向かうんで」

シャドウ 「ん? ああ……ポケモンリーグか」

ユウキ 「そゆこと、じゃあな」

シャドウ 「ふん……」

俺は後はシャドウに任せて再び会場へと戻るのだった。



シャドウ 「全く俺に護衛をさせるとは良い度胸だ」

聖緑 『そう言ってエメル……あなた彼に頼られて嬉しいんでしょ?』

シャドウ 「ば……馬鹿なことを言うな……そんなわけあるか」

聖緑 『ふふ……照れなくてもいいのに』

シャドウ 「……」

俺の肩に背負われた意思を持った槍聖緑はそう言って茶化す。
俺は押し黙ってユウキの渡した鍵の部屋へと向かった。

シャドウ 「ここか?」

俺は鍵の番号を確認すると、開錠して中へと入る。

シャドウ 「……な!?」

ペル 「……あ」

俺が部屋に入ると、そこには見たことのある顔があった。
知り合い……なんて気の良い仲じゃない。

シャドウ 「ふ……ふざけている、なぜザンジークを!」

コイツの名はザンジーク・ジョーカー。
かつて死さ許されない存在をかけた戦いをした仲だ。
なんどもやりあったことがある……こいつの底知れぬ強さ……そして残酷さ。
恐怖さえした……だが、あの最後の戦いの時こいつは……。

ペル 「エメル?」

シャドウ 「ジョーカー……よもやお前が生きていたとはな!」

ペル 「私を殺すの?」

シャドウ 「……ふん!」

俺はドカッとその場に座る。

シャドウ 「あいつの頼みだ……無碍には出来ん。だが……貴様がよからぬことをするのなら話は別だ」

ペル 「……そう」

シャドウ 「……」

俺はチラっとジョーカーを見る。
ペルは特に思うことは無いのか、無表情のまま俯いていた。

シャドウ 「お前……ユウキとはどういう関係だ?」

俺は少し気になってジョーカーに聞いてみた。

ペル 「私とユウキの関係……? 関係……わからない」

シャドウ 「……じゃあお前はあいつをどう思っている?」

ペル 「私……ユウキを……ユウキ……好き……私に何かを与えてくれる特別な人……」

シャドウ (笑った? あのジョーカーが……?)

うっすらとだが……ジョーカーが笑ったように見えた。
ユウキが……特別な人か。

シャドウ 「変わったな……お前」

ペル 「……?」

シャドウ 「……」

俺はそれっきりジョーカーとは口を利かなかった。
ただ……横に居ながらこいつには不思議と悪い気はしなかった。
かつては命がけの戦いさえした仲なのに……不思議なものだ。
こいつにだけはないと思っていた感情……長い月日はジョーカーに感情を芽生えさせたというのか?

俺は……ジョーカーと一緒に部屋に居ながら、少し暇なのでテレビを着けるのだった。




ポケットモンスター第90話 『落胆』 完






今回のレポート


移動


サイユウシティ


3月6日(ポケモンリーグ本戦4日目)


現在パーティ


ラグラージ

サーナイト

チルタリス

ユレイドル

ボスゴドラ

コータス


見つけたポケモン 66匹






おまけ



その90 「ユウキの行動」





シャベリヤ 『えー、運営委員会のスケジュール以上に進行が早いため、Aブロック決勝戦は予定より30分早い13:35からスタートとなります』


ユウキ 「そうなの?」

俺は会場に着くと、そう言った放送が流れてきた。
予定では2時からだったと思うが早送りになったか。
まぁ、とはいえ一応昼休憩があるからな。
これが早まったと思えばいいか。

ユウキ 「昼飯どうしよう……?」

昼飯はどうしようかと悩んだが、結局コンビニで軽い物を買ってその後は選手控え室で一眠りするのだった。
今回のおまけはこれだけ、じゃかったるいんで終了〜。




おまけその90 「ユウキの行動」 完


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