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POCKET MONSTER SAPPHIRE 外伝



クリスマス特別企画!? 『ユウキ、空間転移の巻!?』




ユウキ 「ふん、ふーふっふっふっふ、ふっふふー♪」
ユウキ 「ん? 何だ?」

それは、トウカシティに向かう途中の、トウカの森での出来事だった。
この時、俺は何も考えずに行動を起こしたのが悪かった。
ただでさえ、鼻歌なんぞを歌いながら珍しいモノ見たさに手を出したのが原因だ。
まさに宇宙ガマルゴトヤッテ来タ…だ!
…冗談にもなりゃしない。

ユウキ 「こいつって…まさか!?」

私はすぐに足元で寝そべっているポケモンと思われる、緑色の生物を図鑑で参照しようとした。

ポケモン図鑑 『データ参照失敗…未登録のポケモンです』

しかしながら、そんな反応をされる。
当然といえば当然かもしれない…。
なぜ…時渡りポケモンが?
そう、それはまさしくとき渡りポケモン『セレビィ』だった。

セレビィ 「…ビィ?」

ぐったりと寝そべっていたが、やがて俺に気付いてか目を覚ます。
どうやら怪我などもなくただ単に寝そべっていただけのようだった。
事実、その証拠にセレビィは俺の頭上を元気に飛びまわった。

ユウキ 「おおよそ、現実のものさしで図れるポケモンではないが…ゲットするべきか?」

多少抵抗はある。
なんせ伝説上に出てくるポケモンだ。
ジョウトにはこのポケモン以上に有名なポケモンはいないだろう。
そんなポケモンを偶然とはいえ、ゲットしていいのか?

セレビィ 「ビィィィィィィ!」

ユウキ (『森の声』!?)

セレビィは突然波長の強い脳に直接訴えるような声を放つ。
森の声…ジョウト地方に伝わる、時間跳躍を行うサイン。
つまり…!?

ユウキ 「セレビィ…おま…!?」

瞬間セレビィとこの森自身が淡い青っぽい色の輝きだす。
やがて、閃光のようにセレビィは輝き、俺はその光に飲み込まれる。

ユウキ 「く…うぅ!?」

急に重力を感じなくなってしまう。
まるで、宙に浮いているような感覚、足場のわからない状態に俺は少なからずうろたえる。
無重力状態がしばらく続いたと思うと、視界がわけのわからない場所を捉える。
何て言うか…緑色のグニャグニャした空間?
とにかく形容できない…こんなこと初めてだ。
まるで、その空間に流されていくように俺はただ身を任せた。
そして、一瞬…意識は完全に途切れてしまった。





………………………。





ユウキ 「…う、うう」

意識を取り戻した俺は、ふと頭痛を覚える。
ここは、どこだ?
少なくとも見た感じ、森のようだ。

ユウキ 「トウカの森…か?」

どことなく周りの森は見覚えのあるようなないような…そんな場所だった。
セレビィの姿はない…夢だったのだろうか?
それとも…伝説の通り俺は時を渡ってしまったのか?

ユウキ 「考えても仕方がないか…動くしかないな」

少なくとも、俺に選択肢があるようには思えない。
ここが森であることに変わりないし、俺が旅のトレーナーであることも確かだ。
というより、ここにいても意味がないと思う…最低でも自分の状況を把握できなければ行動できない。

ユウキ 「…荷物は…大丈夫だよな?」

俺はふと、自分の持ち物に気がついた。
良かった、ちゃんとバッグもある、モンスターボールもだ。
俺はホッと息をつくが、次の瞬間、ため息が漏れた。

ユウキ 「…はぁ、雪かよ」

空からは雪が降ってきた。
降り始めで銀世界になるにはまだまだ時間がかかる。
しかし、その時点でここがトウカの森であるかというとはなはだ怪しく感じた。
まず、木々だ、同じように見えるが、トウカの森の木々ではない。
これは針葉葉緑樹、モミの木の一種だ。
トウカの森木々は雪の降らない気候ゆえに常緑樹だ。
種類が違う。
そして、その時点でここが俺の生きている時間ではないということがわかった。

ユウキ 「実はこれは全部ドッキリで、この雪もポケモンバトルの天候変化技だったり…するわけないよな」

我ながら見事な矛盾だ。
わざわざ、そんな手間のかかるドッキリを用意する奴もいないと思うし、第一雪を天候として降らす技は存在しない。
天候変化技は4つ、あまごい、にほんばれ、あられ、すなあらしだ。
これはその全てに当てはまらない。
粉雪の技や、技同士のぶつかり合いとも考えられるが、これは明らかに天然だ。
周囲に3キロ以上を覆うようなポケモンバトルなんて戦争じゃあるまいし…。

ユウキ 「はぁ…出ろグラエナ」

俺はグラエナをモンスターボールから出す。

グラエナ 「…ガウ」

ユウキ 「グラエナ、何か匂いはないか?」

俺はグラエナに気配を探らせる。
とりあえず人なり何なりに会わないことには話にならない。

グラエナ 「…ガウ」

グラエナは鼻をくんくんとさせ、状況を確かめようとする。
そして、何かを嗅ぎ取ったのかグラエナは走り出す。

グラエナ 「…ガウッ」

ユウキ 「何か見つけたのか!」


俺ははグラエナの走る方向に向かって走っていく。
およそ道と言えない獣道を俺たちは走っていく。
そして、10分ほど走ったところで、俺は森を出ることができた。

ユウキ 「街…か」

俺は小高い丘の上に出た。
下を見下ろすと街があった。
かなり大きな街だ。
トウカシティじゃなさそうだな。

グラエナ 「ガウ…」

ユウキ 「行ってみるしかないな…」

俺はその街を目指して、丘を下る。
念のためグラエナに先行はしてもらう。
俺一人だったら絶対迷うからな…。


グラエナ 「…がう」

大体1時間くらい歩いただろうか。
俺はグラエナと共に雪の降る林道を下り、街の入り口に入った。

ユウキ 「ここはどこだ?」

少なくとも俺の知る街ではない。
そもそも、俺が一体どうなったかもわからないのだから当然だが。

? 「わっ、真っ白…大変、凄い雪被っているわよ?」

あんまり、大変そうな声じゃないぞ…。
そんなことを思いつつ、驚いた顔をしたその声の主はゆっくり俺に近づいてくる。
女性だった。
毛皮のコートを着込んでいる、寒さがヨリわかった木がした。

女性 「頭が真っ白になっているわ、よほど雪を被ったのね…」

ユウキ 「……」

そういうことかい…。
これは白髪であって、雪ではないのに…。

女性 「あれ? あれれ? 雪じゃない?」

そんなことを言いながらいきなり女性は俺の頭を払い始めた。
しかし、これが髪の毛だと気付くととても驚いた顔だった。

女性 「も、もしかして髪の毛?」

ユウキ 「もしかしなくてもです…」

今の今までこれの性で大抵はろくな目に会わなかった。
まぁ、代わりといっては何だが、年齢は逆サバ読めたが。

女性 「し、失礼! てっきり雪かと…」

ユウキ 「いえ、仕方ないですから…それよりつかぬ事お尋ねしますが」

女性 「はい…?」

ユウキ 「今日は何日ですか」

女性 「12月24日ですけど…?」

そうか、思いっきり時間は吹っ飛んだな…。
これがキン○クリ○ゾンか…。
今度は○イツァー○ストをかける必要性があるな…。

ユウキ 「ちなみに何年?」

女性 「? 西暦2055年ですけど?」

ユウキ 「西暦2055年ね…50年後!?」

こいつぁ驚いた!
まさか、50年もすっ飛んでいるとは…。

女性 「本当に変なこと聞きますね…それより雪も強くなりつつありますから、ここにいるのはまずいと思いますよ?」

ユウキ 「…そうですね」

俺は空を見上げてそう言う。
空からは強くならずとも暗い空から深々と雪が降ってきた。
50年後の雪か…滅多に拝めるものじゃないな…。

女性 「ここから真っ直ぐ進んだ所にポケモンセンターがありますから、そこを利用することを勧めますよ?」

ユウキ 「そうですか、ありがとうございます」

俺はそれを聞くとそのポケモンセンターへ向かうことにする。
とりあえず、公共的に利用できる施設、ポケモンセンターはありがたい。
とりあえず色々と情報を集める必要があるしな。

ユウキ 「じゃ、行くぞ、グラエナ」

グラエナ 「…ガウ」



……………



ウィィィィィン。

シャッター独特の機械的音。
俺は半透明のシャッターを潜るとポケモンセンターの中に入った。

店員 「いらっしゃいませ、あら? 見ない顔ね…旅人かしら?」

中に入ると50年前とさして変わらない造りの内部だった。
とりあえず正面奥にカウンターがあり、そこにポケモンナースが一人立っていた。
しかし、ナースと言ってもナース服ではない。
赤いスーツ姿だ。

ユウキ 「えと、はい」

とりあえず、向こうの質問にはYESで答えておく。
旅のトレーナーと言うのは間違いではないからな。

店員 「めずらしいわ…ポケモントレーナーがやってくるなんて」

ユウキ 「珍しい? ポケモントレーナーが?」

いまやポケモントレーナーは世界中にいると言うのに…。
未来なら未来でなんか事情があるのか?

店員 「そういえば…この間○ーヨッマがやってくるとか…言っていたような」

ユウキ 「は…?」

店員 「あ、違った、用心棒だ」

店員は思いついたようにぽんと手を叩く。
用心棒って…世界情勢どうなっているんだ。

ユウキ 「あの用…」

ドカァン!!

突然外から物凄い音が聞こえる。
ちょっとまて、ここは紛争地帯かなにかか?

俺は慌てて外に出る。

ヤンキーA 「ヒャッハッハ!」

ヤンキーB 「土下座しろー! 消毒されてぇか!?」

ユウキ 「………」

さすがに唖然とする。
モヒカン頭のいかにも頭の悪そうな連中がたむろいでいた。
火炎放射器持った奴までいるぞ…おい。
まさに時代は乱世に突入した、というやつか。

ヤンキーA 「ん? 何だあいつ」

ヤンキーのひとりが俺に気付く。
先立つは不幸か…。

ヤンキーB 「ん? あいつポケモン連れてやがるぞ!?」

ヤンキー C 「おっ! てことは俺達もついに!」

ユウキ (…ということは、こいつらポケモンを持っていないってことか)

俺はこれまでの経緯からそう推理する。
少なくともこの時代はポケモントレーナーが少ない。
=ポケモンも少ない。
ゆえに、こいつらはポケモンを持っていない。
そして、次にこいつらが行う行動は。

ヤンキーA 「てめぇのポケモン貰ったー!」

ユウキ 「出て来い! サーナイト、ラグラージ!」

俺はバイクに乗って襲ってくる前にラグとサーナイトを出す。

ヤンキーA 「増えた!?」

サーナイト 「て…わわっ!?」

ラグラージ 「!?」

サーナイトは条件反射的にサイコキネシスを放ち、突撃してくるヤンキーを空中で止める。

サーナイト 「マスター…一体?」

ユウキ 「とりあえず投げ捨てろ」

俺はサーナイトにそう命令する。
サーナイトはとりあえずヤンキーを投げ飛ばす。

ヤンキーA 「ぎゃぁぁあ!?」

ヤンキーはバイクごと飛んで行く。
さようならだ。

ヤンキーB 「なんだてめぇ!」

ヤンキーC 「いい度胸してるじゃねぇか!!」

今度はバイクを降りて残りの二人が俺の前に来る。

サーナイト 「わわっ!?」

ユウキ 「下がってろ…」

俺はサーナイトとラグにそう命令する。

ヤンキーB 「てめぇ、タダで済むと思っているんじゃねぇだろうなぁ!?」

ユウキ 「…はぁ、あんたには無理だよ」

俺は素直にそう言う。
『本気』になったらこいつらにの内臓が空中に舞うぜ…?
それでなくても、あまり負ける気はしない…。

ヤンキーC 「んな!? 野郎!」

ヤンキーのひとりはそう言って服の中に手を突っ込む。

ユウキ 「へい! おっさん、あんたのメリケンならそこにはないぜ!」
ユウキ 「あんたのメリケンならズボン後ろポケットにあるぜ!」

俺は指を突きつけて、黒いスーツを着た男に言う。
ヤンキーといっても上半身裸ではない。
この雪の中ちゃんと上着も着ていた。

サーナイト 「?」

ヤンキーC 「まさか!」

ヤンキーは慌てて手をズボンの後ろポケットに突っ込む。

ヤンキーC 「デッ!!」

そして、後ろポケットからは見事にメリケンが出てきた。
ちなみにメリケンとはメリケンサックと言う拳につける凶器のことである。
賢明な良い子は知らなくてもいいものだ。

サーナイト 「あっ! メリケンサックがほんとにズボンのポケットにあったァ!」

ユウキ 「そして、お前の次の台詞は『なんでメリケンの場所がわかったんんだこの野郎!』と言う!」

ヤンキーC 「なんでメリケンの場所がわかったんだこの野郎! …はっ!?」

ユウキ 「ふっ、お前のその利き腕の指のスリムケをみればそれはメリケンをはめてケンカしたばかりのものとわかる!」
ユウキ 「そして! お前の上着の下のシャツについているのは血! それも返り血!」
ユウキ 「さっき人を殴ったばかりだな! そして上着にではなくシャツに血がついているのは上着を脱いでケンカをしてきたと言うこと!」
ユウキ 「つまり、メリケンを指からはずした時上着は着ていないからズボンのポケットにしまったのは当然の結果だ!」

ユウキ 「そして、次の台詞は、『わかったからどうだって言うんだよこのクソガキが』という」

ヤンキーC 「わかったからどうだって言うんだよこのクソガキが!」

ヤンキーはそう言ってメリケンで襲い掛かってくる。

ユウキ 「ラグ、マッドショット」

ラグラージ 「ラグーッ!」

バシャアアアア!!

ヤンキーC 「いってれぼ!?」

サーナイト (かっこいい…)

ヤンキーはまたひとり吹っ飛ばされる。
ばかだねぇ、誰がタイマンはるって言ったよ?

そして、残ったヤンキーはひとりになった。

ヤンキーB 「まずい! このままでは全滅だ!」

ていうか、コイツを倒したら全滅なんだけど。

ユウキ 「先立つのは不幸…じゃ、後に悔やむのは?」

ヤンキーB 「?」

ユウキ 「後に悔やむのはなんだ?」

ヤンキーB 「後悔?」

ユウキ 「そういうこった! サーナイト、サイコキネシス!」

サーナイト 「はぁ!」

ヤンキーB 「ギャアアア!?」

と、いうわけでヤンキーには全員地平線のかなたまで飛んでいってもらう。
某ロケット団団員(再就職)は次の週には戻ってきている辺りさすがだが、あいつらはどうかな?
普通なら、地面に激突でマグロだが…。

店員 「すごーい! つよーい!」

ユウキ 「ん…?」

後ろを見るとポケモンセンターの人がいた。
いたね、そういえば。

店員 「さっすが、用心棒! これならあいつらにも勝てるかも!」

男A 「用心棒!? て、ついに来たのか!」

女性A 「これでこの街は助かるのね!」

ユウキ 「…なんか嫌な予感…」

サーナイト 「マスター…何がどうなっているのか僕にはさっぱり…」

ユウキ 「悪い…俺にもよくわからん」

用心棒と勘違いされている…それは間違いない。
おそらく、またあんな奴らがくるのだろう。
それにして嫌な時代だぜ…これが50年後かよ。

店員 「お願いします! あの山にいる盗賊団を倒してください!」
店員 「お金は…これだけしか出せませんけど…」

店員さんはそういうと、お金が入っているであろう袋をさしだす。

グラエナ 「ガウ…?」

サーナイト 「マスター…?」

ユウキ 「やれやれ…報酬金は後払いだ、あの山の盗賊団を壊滅させればいいんだな?」

俺はそう言って俺が下りてきた山を指した。

店員 「はい! お願いします!」

どうやら、俺は盗賊団の根城とする山から下りてきたようだ。
よく襲われなかったものだ。

ユウキ 「行くぞ、お前ら!」

ラグラージ 「ラグ…」

グラエナ 「ガウ」

サーナイト 「はい!」

俺はそう言ってポケモンたちを連れてまた山に戻る。

店員 「あ! 待ってください!」

ユウキ 「…はい?」

いきなり止められてしまった。
何なんだよ…。

店員 「せめて、このコートを持っていってください」

ユウキ 「コート?」

そう言って店員さんはちょっと大きめの茶色いコートを差し出してくれる。
たしかに、この雪だと俺の服装でも少し寒いな…。

ユウキ 「ありがとうございます、お借りしますね」

俺はそう言ってコートを着て、改めて山に向かうのだった。



男 「…あの少女のこと伝えなくて良かったのかな…」

女性 「『人間』じゃないんだし、いいんじゃない…?」

店員 「……」

あの山にはひとり少女がとらわれている。
名前はフェルフェ…。
元々は人間としてこの世に生を受けるはずだったけど、この戦争の発端者は彼女を『兵器』に作り変えた。
合成ポケモン…彼女はキュウコンと言うポケモンと人間の合成だ。
それゆえ彼女は疎まれる、人間からもポケモンからも…。
ちょっと違うだけなのに…なぜ?
ちょっと人間と違うだけなのに…。
…でも、これが運命なのかもしれない…。

雪は降る…降り続ける。
ホワイトクリスマス…昔そんな言葉があったらしい。
まさに今がその日らしい…今はこの雪の儚さが、時代を表すように思えた。
お願い、未来へとなって…用心棒さん…。




…………




族A 「野郎!」

サーナイト 「はぁ!」

僕は敵にサイコキネシスを放つ。
今回はちょっと状況が違う。
まさか、人間と戦わないといけないなんて…。
ためらわられるけどやらないといけない!

コドラ 「このぉ! そんな銃剣で私の鋼の体が傷つくわけないでしょ!!」

ラグラージ 「くっ! はぁ!」

皆も足止めに頑張っている。
マスターは今この場にはいない。
マスターは単身奥へ進んだ。
僕達は陽動だ。
マスターを少しでも楽にするための。
でも、ここでやられる気はない。

サーナイト 「はぁ!」

お願いしますよ、マスター!



…………



ユウキ 「たく、大丈夫だよな…あいつら」

族Q 「死ねぇ!」

ユウキ 「甘い!」

ドカァ!!

族Q 「ぎゃああ!?」

盗賊は俺にサーベルを持って襲い掛かってくるが、俺は身をかがめて受け、力を下に流して盗賊を谷底に落とす。
この山に入ってからひっきりなしに盗賊が襲ってきていた。
アクア団やマグマ団と違って武装してやがるから、厄介だ。
おまけに山道をずっと登っている、斜面も急でさっきの奴みたいに足を踏み外したらいっかんの終わりだ。
もっとも、おれのスフィアフォルムを使えばどうということもないんだが…。
でも、本音は使いたくはない。
元々人間離れした力だ、俺は自分を人間だと思っているし、多用したくない。
あくまで、人間として生きたい。

ユウキ 「あれは? 洞穴?」

登っていくと洞穴が見えた。
恐らくあそこに盗賊団の首領はいるのだろう。
たく、やれやれだぜ…。


俺は迷うことなくその洞穴に入った。
罠と言う可能性も高いが、乗らなきゃ進まない。
やれるまで、やってやるか…。

グルルル…。

ユウキ 「あんだ? なんのうめき声だ?」

洞穴の中はランプもなく、真っ暗だった。
その奥からは嫌な予感しかしないうめき声が聞こえた。
まだ、引き返せるが…どうする。

→進む
 進まない


ユウキ 「進むしかないよな」

どの道俺に選択権はない。
どんな化け物でも立ちふさがるならぶったおすのみだ。

? 「グァァァァァ!!」

ユウキ 「!?」

突然、最悪の殺気を感じた。
どす黒い感覚だ…。
殺意をむき出しにして襲い掛かってきている。

ユウキ 「フォルム!!」

俺は瞬間、殺れると思ってスフィアフォルムを展開する。

? 「グガァァ!?」

バチィン!

ユウキ 「な、なんだよこいつ…」

スフィアフォルムは薄い膜が微弱ながらが光を放っている。
やつは襲い掛かってくるがおれのスフィアフォルムに拒絶されるようにはじかれる。
そして、薄い光で見た姿はまさに化け物だった。

? 「グググ…!」

トラのように大きな縞模様の体…。
尻尾は紫色の蛇だ。
そして、顔は猿…。
中国の化け物で知っている…。

ユウキ 「鵺(ヌエ)…?」

そう、それはまさしく中国の伝記に出てくるヌエそのものだ。
なぜ、そんな空想上の化け物が…?

ヌエ 「ぐあああああ!!」

ユウキ 「くっ!?」

その問いに答える者はいない。
そして、ヌエと思しき化け物は俺に飛び掛ってくる。
俺は俺を中心に公転するスフィアのひとつで俺を覆い、もうひとつをヌエの体の中に進入させる。

ユウキ 「悪いが…!」

バァン!!
ビチャ! ビチャビャ!!

ユウキ 「く…」

俺はヌエの攻撃を守ると同時に、進入させたスフィアを爆弾のように爆発させた。
体の内部で爆発したスフィアはヌエの胴から破裂して周囲に内臓の欠片や血をばら撒く。
俺の体に血は付いていない。
スフィアが護ってくれるかだ。
俺のスフィアは霊体のようなものだが、おれの意思で実体化できる。
だから、可能な技だった…。
…残酷だが、これがもっとも効果的な殺傷方法だろう…。

ユウキ 「どこだ…首領は?」

俺は罪悪感はさっさと切り捨て、首領を探す。
ここは間違いなく罠だ。

ユウキ 「この部屋が首領のいる部屋と繋がっていると嬉しいんだけど…」

俺はそういいながらスフィアを動かして周りを調べる。
どうやらここ半径10メートルくらいのドーム型の空洞らしい。
奥は無く、見事に罠と言うことがわかる。
してやられたというわけだ。
しかし、ここで行動を止める俺ではない。
今度は壁の向こうを調べてみる。
空洞があればわかるし、人がいればそのマナがわかる。
相変わらず便利な能力なので使わせてもらう。

ユウキ 「慣れていくのね…自分でもわかる」

なんて某妹の台詞をつぶやいていると早くも空洞発見。
俺はその空洞のある壁に近づく。
どうやら厚さは30センチくらい。
普通なら割れないわな…。

ユウキ 「しかし!」

俺はスフィアフォルムを使ってなんなく破壊する。
厚さとか、防御力なんてあまり意味は持たない。
たとえば壁なんて、外からなら30センチの厚さでも、内部から名から左右に15センチで済む。
所詮、そんなものだ。

ユウキ (もっとも、俺のスフィアだからこそ出来ることなんだが…)

と言うわけで俺は破壊された先を見る。
光を感じたのでとりあえずスフィアは解除する。

ユウキ 「ランプか」

地味にランプが灯された通路にでた。
どうやら、本丸はここのようだ。
なんでこんな所に通路があるのか知らないが、先に進むべきだな。

ユウキ 「道に迷いませんように…」

などと無駄な願いをしながら俺は進む。
さて、内部地図もなしに一発で首領の場所にいけるだろうか?←絶対無理。



…………



盗賊 「へへ、どうやら例の街の用心棒がやってきたみたいだな」
盗賊 「だが、我ら271名の大盗賊団にはさしものポケモンも苦戦一方のようだ」
盗賊 「げへへ、まぁ、仮にここまでこれてもお前を助ける奴なんていないだろうけどな、なぁ、フェルフェ!」

フェルフェ 「ア…く…う…」

盗賊 「ゲヒャヒャ! 無様なもんだな! ギャハハ!」
盗賊 「てめぇみてぇなクズは死んでいく運命なのさ!」

ユウキ 「さよか…」

盗賊 「あ!? あんだてめ…!!」

ドカァ!!

俺は間髪いれずに後ろの首の頚椎を思いっきり岩石で叩く。
当然、盗賊は一発でダウン。
どうやら、牢屋のようだ。
鉄格子の奥に少女…? …がいた。

ユウキ 「ふぅ…まさか人間じゃないとはな」

鉄格子の奥には裸にされ、今にも死にそうな九本の金色の尻尾を持った少女がいた。
たしか、フェルフェとか言われていたな。
フェルフェという少女は歳は6歳位だろう。
しかし、頭からは耳が出て、9本の尻尾もある。
まさに、九尾の狐、キュウコンだな…これは。

ユウキ 「…鉄格子、カギかかってないじゃないか」

鉄格子の扉を持つと、鍵がかかっていないことに気付く。
無用心な者だな…。

俺はそのまま、中に入る。

ユウキ 「大丈夫か?」

フェルフェ 「…!!」

少女は憎むような目で俺を見る。
怯えているようにも見えるが、まず俺を信用していない…それは確かだ。

ユウキ 「…大丈…」

フェルフェ 「!!」

ユウキ 「つ!」

俺はフェルフェに手を差し出すとフェルフェは突然俺の手に噛み付いてくる。
さすがに洒落にならんが、ここは我慢だ。

ユウキ 「大丈夫だ…敵じゃない」
ユウキ 「もう、大丈夫だ」

俺は少女フェルフェを抱いてそう言う。
相当怯えてもいるのだろう。
俺はせめて、安らぎを与えてやりたい。

フェルフェ 「…?」

少女の口から力が抜ける。
噛むのをやめたらしい。

ユウキ 「すまないな…驚かせて、せめてこのコートで暖まってくれ」

俺はそう言って自分の着ていたコートをフェルフェに着せる。
もっとも、これは借り物だけどな…。

フェルフェ 「あ…う…」

フェルフェは泣きそうな顔で俺にしがみ付いた。
余程、辛い目にあったのだろう…。
人間じゃない者か…。
ある意味、共感するものがあるかもしれない。
俺は表面上にそれがでないから、人間と区別できないが、この少女…フェルフェは見た目から人間ではない。
人間じゃない奴に人権はないってか?

ユウキ 「…最悪だな」

つくづく、人の世は嫌な物だと思う。

ユウキ 「さってと、とらわれの少女も助けれたし、後は首領を潰すだけなんだが」

ちょっと手が痛いが何とかなるだろう。
問題があるとすればどうやって首領のいる場所まで行くかだな。

フェルフェ 「…あっ…ち」

フェルフェは指で奥を指す。
フェルフェはからからの声だった。
どうやら、水さえ与えられていないらしいな。

ユウキ 「ただの水だが、飲め」

俺はそう言って水筒の水を差し出す。

フェルフェ 「…ングング」

フェルフェは水筒の水をゴクゴク飲んだ。
相当、のどが渇いていたみたいだからな。

フェルフェ 「ありがとう…おにいちゃん」

ユウキ 「なんだ、やっぱ喋れたのか、でも、無茶するな、水は急には馴染まんからな」

フェルフェ 「うん…」

フェルフェは小さく頷く。
水一杯で人の命が助かるなんてな、水が豊富な国に生まれてよかったよ。

ユウキ 「それで、あっちってのは?」

フェルフェ 「ボスはあっちにいるの…」

ユウキ 「そうか…ありがとな、フェルフェ」

フェルフェ 「うん…」

俺は少女を抱きかかえるとその首領のいる場所に向かう。
こうやって見ると、フェルフェは至って普通の少女に見える。
どうして、少女フェルフェはこのような目にあったのか…この時代…一体何があったのか?
不明瞭な部分が多くて困るが、今はやるべきことをやるしかない。



…………



首領 「どうでい! 状況は!」

盗賊A 「ヘヘッ! 奴らも時間の問題ですぜ!」

盗賊B 「それより、殺すのは惜しいですぜ、ありゃあいいポケモンたちだ」

首領 「そうだな、ありゃ売れば良い値が付く、相当に鍛えられたポケモン達だからな!」

盗賊A 「でも、奴らのトレーナーはどこでしょうか?」

首領 「なーに、所詮人間よ! 怖くて逃げたんだろうさ!」

盗賊B 「ギャハハ! ちげーねぇや!」

ユウキ 「実は、こんな所にいたり…」

盗賊A 「んな!?」

俺は盗賊の首領のいる大きな間に来た。
なんか、最近こんな役回りが多い気がするな。

首領 「んだ〜? ガキじゃねぇか! へへ、よくここまでこれたなぁ!」

ユウキ 「あんだけ、警備が手薄ならな…」

なんせここまで来るの戦ったのはざっと7名って所。
たしか、272名いるとか言っていた気がするがそのほとんどがラグたちの方に行ったみたいだな。
こりゃ、早く片付けないとやばいかも…。

盗賊A 「ボス! あいつ! フェルフェもいやすぜ!」

首領 「んな!? なんであいつが!?」

ユウキ 「助けたから、それ以外に何か?」

俺は至ってシンプルにそう言う。
実際そうだし。

盗賊B 「何考えていやがるんだコイツ…あんな化け物を助けやがるなんて…」

ユウキ 「化け物ねぇ…」

フェルフェ 「……」

フェルフェは特に気にしていないようだった。
もう、慣れたってか?

首領 「てめぇら! ぶち殺せー!」

盗賊A&B 「おー!!」

二人の下っ端は俺に素手で襲い掛かってくる。
こいつらは武器を持っていないみたいだな。

ユウキ 「ぶったおす前にひとつ聞く、なんでフェルフェにあんな酷い事した?」

俺は下っ端共には構わず、首領に聞いた。

首領 「あーん? そんなやつに人権なんていらねぇだろ! でもよ、そんな化け物でも買ってくれる奴はいるんだよ、ギャハハ!」

ユウキ 「そうか…」

盗賊A 「おらー! 死にやがれ!」

俺はそれを聞くと、一歩前に出る。

盗賊B 「てめぇのその頭俺の鉄拳で粉微塵にしてやらぁ!」

ユウキ 「フォルム!」

盗賊A 「ギャ!」
盗賊B 「グア!?」

俺はスフィアを展開して、盗賊二人を吹っ飛ばす。

首領 「な、ななな、なんだ!?」

フェルフェ「!」

首領は明らかに驚く。
やっぱ人間に見せない方が良さそうだ。
こういった偏見はなくならないからな…。

首領 「化け物!! 死ねぇ!!」

首領はどこからか斧を取り出し襲い掛かってくる。

ガキィン!!

しかし、当然のように俺のスフィアの前では斧は弾かれる。
と、いうより折れた。
どうやら、消耗品だったようだな。

首領 「ひ、ひえ〜!?」

首領は自分の斧が折れるのを見ると俺の後ろの出口へ逃げようとする。
しかし、当然俺は逃がさす首根っこを掴む。

首領 「ヒィィ!?」

ユウキ 「おい、あんたさっきなんか言ってたよな? 俺耳遠いんだよ、もういっぺん言ってくれない?」

首領 「た、助けて…」

ユウキ 「ざけんなー!!」

俺はスフィアを鉄球のようにぶん回して、首領に叩きつける。

首領 「ギャアアア!?」

ドカァン!!

そのまま首領は吹っ飛んで壁を突き破って飛んでいった。
そのまま逝きやがれ。

盗賊A 「ひぇぇぇ! ボスがやられた!!」

盗賊B 「もう悪いことしません〜!!」

盗賊たちは既に白旗を上げている状態だった。

ユウキ 「これ以上、悪さをするんだったら地平線の彼方までお前らの首を追うからな」

盗賊A 「すいませんでしたー!!」

盗賊B 「すぐに戦いを止めさせますー!!」

盗賊の二人組みはそう言って走り去ってしまう。
たく、ロクでもない奴らだったぜ。

フェルフェ 「おにいちゃんも…人間じゃなかったの?」

ユウキ 「…そう思うか?」

フェルフェは暗い顔でそう聞いてきた。
俺は聞き返すとフェルフェは困った顔をした。

フェルフェ 「わからない…」

ユウキ 「ふ、少なくとも俺は自分を人間だと思っている」
ユウキ 「フェルフェはどうおもっている、自分を?」

フェルフェ 「わからない…」

ユウキ 「…少なくとも、俺は人間だと思っている」
ユウキ 「いうなれば、突然変異だ、気にするな」

フェルフェ 「…私、人間でもいいの?」

ユウキ 「いいんじゃないか? 俺は少なくともそう思うぜ」

俺はそう言った。
これは本音だ。
フェルフェは自分がわからないくらい、酷い目にあったのだろう。
ひとりくらい、俺みたいな馬鹿がいてもいいだろう。
だが、こんな世の中でもきっとフェルフェを認めてくれる、人間はいる。
俺はそう信じている…。

ラグラージ 「ラグー!」

サーナイト 「大丈夫ですか!? マスター!?」

チルット 「チルーっと参上!」

ユウキ 「お前ら!」

そこへ突然やってきたのはラグたちだった。
どうやら全員無事のようだった。

ユウキ 「よかった、お前ら無事だったんだな」

サーナイト 「はい、なんとか…」

リリーラ 「リリ…」

『いやぁ、ブラオボーブラボー!』

ユウキ 「ん!?」

突然、頭の中に声が響く。
知らない声だ。
一体誰だ?

『ちょっと冗談がてら、未来に送ってみたらなかなかドラマ見せてくれるじゃないか!』

ユウキ …お前、まさかセレビィ!?」

『Exactly! その通りだよ、さぁてお遊びはおしまいだ! 今から元の時代に返す! 別れの言葉を言ってやりな!』

セレビィの奴はそう言ってくる。
チッ、くえない奴だ…。

フェルフェ 「…?」

ユウキ 「誰かを信じれば、きっと信じてもらえる」
ユウキ 「まぁ、俺の言葉なんて当てにならないけどな、じゃあな」

フェルフェ 「待って!」

ユウキ 「?」

フェルフェ 「私はフェルフェ、あなたは?」

ユウキ 「ユウキ…」


フェルフェ 「そう、ユウキと言うのね」

気がつくと、ここは無人だった。
あのおにいちゃんはおろか、ポケモンたちもいない。
あのおにんちゃんはその名の通り勇気だったのかもしれない。
私は少し勇気を持てる気がする。
この世の中…凄く荒廃している。
私は受け入れがたい存在…でも、きっと今の私なら生きられる。
誰かを信じれば、きっと信じてもらえる…。
私はあなたを信じます。
そして、きっとあなたのような素晴しい人物になります。
ユウキさん、ありがとう。





………………………。





『西暦2005年 11月12日 某時刻』



ユウキ 「……」

俺は恐る恐る目を開いた。
そして、そこに入ってきた光景は、まさしくトウカの森だった。

キノココ 「キノ〜」
ジグザグマ 「ジグジグ!」
ナマケロ 「ナマ〜〜」

ユウキ 「…行くか」

俺は気持ちをすぐに切り替える。
嘘か真か…そんなことはどうでもいい。
戻ったなら戻っただ。
俺はパパと…センリさんと戦う!
あの体験は俺に少なからず力を与えた…そんな気がする。

俺はそう思うとトウカの森を抜ける。
俺は、勝つ!




フェルフェ 「ありがとう…ユウキさん」

シャドウ 「…ふん」

フェルフェ 「シャドウさんにもすみませんね」

シャドウ 「…ユウキを巻き込むとこは許さんぞ…」

フェルフェ 「ええ、大丈夫です、私はユウキさんを巻き込む気はありません…」

あれから50年前…。
言い方が変だけど、私は200年ほど生き、死んで輪廻した。
正確には逆輪廻。
私は時を遡った。
まさか、あなたと…ユウキさん出会えるとは思っていませんでした。
いまさらながら、本当にありがとうございました…ユウキさん。



…To be continued




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